|
日本古来の家造りでは冷房はもちろん、暖房を前提とした家造りはありませんでした。
暖を採る道具としては火鉢、こたつのように局所を暖めるものしか使われませんでした。夏の通風を重視した家を部屋ごとあるいは家ごと暖めたり冷やしたりするという発想がなかったと言えるでしょう。
日本の採暖具の中で最も大きな熱量を持った囲炉裏でさえ部屋を暖めるものではなく、焚き火のように輻射熱に「あたる」もので、西洋の暖炉のような煙突はなく、煙は暖められた空気と一緒に屋根の換気窓から屋外に自然排気されるものでした。
部屋の空気を暖めるという発想がなかった日本で建物を断熱するという考え方が生まれたのは1970年代のオイルショックが契機になりました。この時期は日本だけでなくヨーロッパでも共通しています。
石やレンガなど熱伝導率の大きい素材を使って家を造る習慣を持ち、冬の寒さが厳しいヨーロッパでは歴史的に外壁を「空気層を持つ二重壁」にする習慣がありました。
欧米のRC造や組積造の建物の断熱はこの空気層に断熱材を充填する形で進められました。私達が「外断熱工法」と呼ぶ断熱工法です。
これに対し日本のRC造の建物の断熱は壁の内側に断熱材を貼り付ける内断熱工法で進められました。当初は防湿層を持つグラスウールが使われ結露問題を起こしましたが、発泡ウレタンなど樹脂系断熱材が使われるようになり激しい結露の問題は一段落しています。
内断熱工法と外断熱工法の違いには次のようなものがあります。
|
1. |
内断熱工法では床と壁の取り合い部分に断熱できない熱の逃げ道(熱橋)ができる。
外断熱工法ではバルコニーや庇の取り付け方法を工夫すれば熱橋をほとんど作らないことができる。 |
|
2. |
熱橋がある内断熱工法では断熱材の厚さを増しても断熱性能が改善しない。
熱橋のほとんどない外断熱工法では断熱性能(熱貫流抵抗)は断熱材の厚さに比例して大きくなる。 |
内断熱工法の建物では熱損失率(Q値)を4〜5W/m2K以下にはできないのに対し、外断熱工法ではQ値を1前後まで小さくすることができます。
欧米の木造住宅(枠組壁工法)では2×4や2×6の枠材で造られた壁の空洞に断熱材を完全充填するのが一般的な断熱方法です。日本の在来木造工法では壁の中に筋交や胴縁があり、真壁形式の壁もあるため柱の径の約半分にあたる50mmの断熱材を充填できればいいと考えられてきました。
100mmの空洞に50mmの断熱材を充填すれば内側の壁下地に断熱材を密着させることはほとんど不可能です。断熱材と壁下自在の間に隙間があると室内側で暖められた空気は対流を起こして熱を外に運びます。
さらに在来木造工法では外壁にも間仕切壁にも土台・根太・床・壁の取り合い部分に隙間ができ、床下から小屋裏まで連続する空気の通り道ができます。
この部分の空気の流れを完全に塞がなければ計算外の大きな熱損失を生じてしまいます。
形だけの断熱では充分な断熱性能を発揮することはできません。
同じ温度に保つために使う空調エネルギーはQ値に比例します。断熱性能の不充分な建物を充分に空調するには大きなエネルギーを必要としますが、適切に断熱すれば少ないエネルギーで快適に暮らすことができます。
雪の降った後並んだ屋根に積もった雪を見ると断熱性能の違いを目に見える形で確認できます。
屋根の雪がすぐ融ける家は断熱性能が低く、解けない家は高い断熱性能を持っていると考えて間違いありません。
日本の家が(多分)エスキモーの家より寒いのは充分に暖房するだけの断熱をしていないからで、適切な断熱をすればより快適な暮らしをより少ないコストで楽しむことができます。
|