 |
「高断熱住宅」、「高断熱建築物」などの言葉をよく見かけるようになりまし
た。
ここで言う「高断熱」とは「高い断熱性能を持つ」意味で使われますが、そもそ
もQ値がいくつ以下なら高断熱と言えるかといった定義がある訳ではありません。
一般には「次世代省エネルギー基準」の地域ごとのQ値の目標値を下回るものが
「高断熱」とされているように思いますが、「次世代省エネルギー基準」の基準自
体がエネルギー消費量やQ値、あるいは各部分の熱貫流率(K値)などと絡んで判
りにくくなっています。
|
判りにくい話はさておいて、なるべく単純に話を進めましょう。
断熱性能が高いほど、建物の室内と屋外の温度に比例して建物の外壁や屋根そして床で区切られ
た区画を貫通して移動する熱エネルギーの量は少なくなります。
温度差1℃あたり、建物の床面積1m2あたりどれだけの熱エネルギーが建物の内外を分ける区
画を移動するかを示すのがQ値です。つまり、Q値が同じ建物では建物のない外の温度差が同じと
きには同じ大きさの熱エネルギーが建物の中から外へ、あるいは外から中に移動します。
またQ値が4の建物とQ値が1.5の建物では4:1.5の割合で熱が移動します。Q値が4の
建物では1.5の建物の2.7倍の熱負荷があることになります。
それでは、2.7倍の熱が移動したとき室温はどれだけ変化するでしょうか?
「熱の移動量に比例してQ値4の建物の温度が4℃上昇するとき、Q値1.5の建物の温
度は1.5℃上昇する」のでしょうか?
違います。熱容量が判らないとこれだけの条件では室温の変化を計算することができません。
「熱容量? 難しそうだな?」ですって? そんなことはありません。
珈琲を一杯いれるために水温15℃・200ccの水をお湯にするには17Kcalのエネルギーがあれば充
分ですが、同じエネルギーで200リットルの浴槽の水を温めても温度は0.085℃しか上がりません。
ある物体に熱が加わったり、物体から熱が失われたときの温度変化は熱容量に反比例します。
建物の構造方法によってそれぞれの熱容量が決まってきます。内断熱工法と外断熱工法の建物の
熱容量を比べると外断熱工法の建物のほうがおよそ4倍も大きくなっています。
したがって、先ほどの答は、
「Q値4の内断熱工法の建物の温度が4℃上昇するとき、Q値1.5の外断熱工法の建物
の温度は約0.4℃上昇する」ということになります。
RC外断熱工法の建物は充分な断熱性能を持たせられることを始め、大きな熱容量、建物内
部の温度差が小さいことなど断熱性能を高めたときに室内の快適さを高められる性質を備えてい
ます。
次に示す図は外断熱工法と内断熱工法の建物を冷房26℃、暖房を22℃に設定して一年間の温
度変化を比較したものです。外断熱工法の建物では温度変化が緩やかに変化しますが、内断熱工法
の建物では急激な変化があり中間期にも冷房や暖房を必要とする時期があることが判ります。

暖房エネルギー6451KWH 冷房エネルギー1744KWH
68KWH/年・u

暖房エネルギー27572KWH 冷房エネルギー3388KWH
258KWH/年・u
上の図では色をつけた部分の面積は温度差を表していて空調エネルギーの大きさを示している訳
ではありません。ふたつの建物の年間の空調エネルギー使用量を比較すると次の図のようになり、
内断熱工法では中間期にも冷房や暖房を必要とすることが判ります。
外断熱工法では4月初めの暖房終了から6月終りの冷房開始までと、9月終りの冷房終了から1
1月終りの暖房開始までの4ヶ月間は冷房も暖房も必要としない期間があります。この間躯体温度
は冷房温度と暖房温度の中間にあり外部からの熱を受けても大きな熱容量で吸収しています。
内断熱工法では突発的な暑い日寒い日に冷房や暖房を使わなければ快適温度に保つことができま
せん。

2×6の枠組材を使った枠組壁工法の木造住宅でもRC外断熱工法並みのQ値を持つエネルギー消
費の少ない建物を建てることができますが、建物内部の温度はRC外断熱工法の建物の数倍の幅で
変動します。
木造の建物では熱容量が小さいために内部発生熱で室温が上昇し、夏の早い時期から冷房が必要
になることがあります。
|