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建物が外気と熱交換しているだけなら屋根や壁の温度が60〜70℃になる訳がありません。
しかし、夏の昼間に屋根に登ると裸足では歩けないほど熱くなっています。砂浜の砂や屋根はなぜあんなに熱くなるのでしょうか?
日射と熱負荷の本題に入る前に、先ず従来の熱負荷計算方法について考えてみましょう。
外気温度と室内温度に差があると熱エネルギーが移動して各部分の熱貫流率に比例して熱負荷が生じるという考え方は、輻射熱による外壁表面温度の上昇を無視したものですが、暖房負荷を計算する場合安全側の結果を出します。
暖房負荷のピークが日照のない夜間に来ること、冷房に比べて暖房は古くから行われていた空調であること、先進国の大半の地域で夏に冷房を必要としないこと、冷房を必要とすると考えられる地域でも日本に比べて熱容量の大きい建物が作られていて実際の熱負荷が必ずしも実際の空調負荷に繋がらないケースがあることも、暖房負荷の計算方法が空調負荷計算の主流になった理由と言えるでしょう。
日本で快適な暮らしをするために輻射熱による熱負荷を検討しなければならない理由として次のようなものが考えられます。
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1. |
日本の夏はヨーロッパに比べて高温なうえに多湿で冷房が不可欠なこと |
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日本の建物は室内側の熱容量が小さく、僅かな熱を取得しても室内の温度変化が大きくなること |
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日射による冷房負荷のピークは気温差による冷房負荷のピークと重なること |
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4. |
日射による冷房負荷のピークは気温差による冷房負荷のピークよりも遥かに大きいこと |
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太陽の輻射熱(電磁波を受けると、電子レンジの中に入れられた食品と同じように物体表面で発熱します。この発熱量は日射を受けたエネルギーの一部であり、残りは反射されて他の物体上で発熱したり宇宙空間に放たれたりします。
受けた日射のどれだけが熱に変わり、どれだけが反射されるかは物体の色や材質・温度によって異なるとされています。輻射熱は物体表面で熱エネルギーに変わり、物体の内部に蓄積されます。
一方,物体の表面温度が絶対0℃(0K)より大きいとき、物体表面からも熱線(赤外線)が放出されて放射冷却の効果が出ます。
太陽から受ける輻射熱と物体表面から放射される熱線のエネルギーが釣り合い温度上昇が止まるのはおよそ70℃付近とされていて、太陽の輻射熱を受けた物体(例えば屋根のトタン板、海辺の砂)の温度はそれ以上に上昇することはありません。
熱容量の大きい物体では釣り合い温度に達する前に輻射熱が弱まるので、海や池の水の温度はずっと低い温度までしか上昇しませんが、黒いビニール袋に入れた水の温度は70℃近くまで上昇し、これが太陽熱温水器の原理です。
物体の表面積に対して熱容量が大きいほど、また熱伝導率が大きいほど物体は多くの輻射熱を取り込みます。幾つかの建材の層で構成された建物の屋根や壁ではそれぞれの熱伝導率にしたがって建物内部へ熱が移動していきます。
夏の昼、屋根瓦やRC建築物の防水の点検に屋根に登ると裸足では歩けないほど温度が上昇しています。冷房度日(Cooling Degree-Days)を基準とする冷房負荷計算では屋根表面の温度は気温に等しいと言う前提で計算を進めていますが、明らかに負荷を過小評価しています。 |
輻射熱を受けた屋根や壁の温度は間違いなく上昇します。しかし、受けた輻射熱のどれだけの割合が室内に伝わり冷房負荷になるか、あるいは暖房負荷を軽減するかを求めることはそれほど簡単ではありません。
受けた日射がどれだけの熱エネルギーに変わるかは大きな誤差を生じることなく計算が可能です。
しかし、その熱エネルギーがどれだけ室内に伝達されるかを決める要因は少なくありません。
先ず暖められた壁表面から建物の外に向かって熱エネルギー(赤外線)が放射されます。放射される熱量は壁や屋根の表面温度と、屋根や壁から見た放射熱を発散する各部分の面積と温度によって決まります。
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次の図は一定の温度の物体が輻射によって失うエネルギーをW(=ワット)で表示したものです。
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「環境温度」で示したものは輻射熱を交換する相手の温度で、絶対零度=-273℃です。
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天空と直面する屋上などの水平面が 990Wの日射を受けるとき、約90℃で太陽から受ける輻射量と赤外線として放出するエネルギーが等しくなります。
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空気の対流や熱伝導によっても屋根面からエネルギーが失われるため、屋根の温度は90度まで上昇することはなく、最高でも70℃前後までしか上昇しません。
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上の図は同じ温度の物体が環境温度が変わるとどのように放射エネルギーが変化するかを示しています。一方、次の図は環境温度を一定にしたとき(晴天時-250℃、雲天時-20℃と仮定)物体が冷えるにしたがって放射エネルギーの大きさがどのように変化するかを示しています。
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壁や屋根の表面温度を決める要因には輻射熱を受ける前の温度、素材の厚さ、室内に向かってどのような断熱性能を持つかなどがあります。
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これらの要因を整理したとしても、さらに断熱材の内側の壁表面温度が冷房温度を上回り、実際に冷房運転が必要な温度まで上昇して初めて冷房負荷が生じるわけです。
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この一連の熱移動を把握するには輻射を考慮した非定常解析によって冷房開始時期以前からの相当期間にわたるシュミレーションを行う必要がありますが、これまでそのような非定常解析手法が開発されたとの情報はありません。
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便宜的に屋根や壁の構成ごとに屋根や壁の表面温度変化を観測し、従来の外気温度に変えて観測されたデータを用いるのもひとつの方法になりえます。 |
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