3-9-9/11空調設備>更なる省エネに向けて
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更なる省エネに向けて
 ここまでに、従来の建物における一般的な空調設備について述べてきました。

 ゼロエネルギーハウス、パッシブハウスと呼ばれるようなエネルギー消費量を削減した住宅では、従来の低エネルギーハウスまでの空調エネルギー消費のみを抑制するだけでなく、給湯、照明・動力、換気を含む家全体のエネルギー消費を従来の数分の1に激減させる考え方が実施に移されています。



 パッシブハウスでは、低エネルギーハウスまでの空調エネルギー使用量削減に加えて、給湯エネルギーや照明・動力エネルギーも大幅に削減されています。

 それでは、この大きなエネルギー消費の削減はどのように実現したものでしょうか?

 まず、従来の建物より厚い断熱材性能の良い窓を使って断熱性能を高めエネルギー性能を減らしていることは間違いありませんが、従来の建物では電力や石油を使っていた熱源を太陽熱や地熱などの自然エネルギーを取り入れるほか、建物から排出される排気や排水の持つエネルギーをできる限り回収しています。


Q値を変えるとエネルギー消費はどう変わる?

 省エネを実現するためにはQ値とエネルギー消費の関係を知る必要があります。

 空調時に建物の内外を移動するエネルギーは内外温度差とQ値に比例すると考えますが、建物内部では人間活動に伴う発熱があり、暖房エネルギーは温度差とQ値に比例する熱損失から内部発熱を差し引いたもの、零部うエネルギーは熱損失に内部発熱を加えたものになります。

暖房エネルギー消費

 暖房ではどんなときでもQ値を小さくすれば次のグラフのように消費エネルギーが少なくなります。実際にはありえない話ですが、Q値0の建物があれば暖房負荷が0になるだけでなく、内部発熱による室温上昇のために冬でも冷房が必要になります。

 グラフのほぼ直線になる線を左に伸ばすといずれもQ値が0になる前にX軸と交わることがそれを示しています。

 建物内部には内部発熱があり、Q値が小さくなると理屈では内部発熱だけで暖房エネルギーを満たすことができるQ値をX軸と交わった値が示しています。


冷房エネルギー消費

 ところが年間冷房エネルギーは暖房のような直線的変化を示しません。Q値が 1.5よりも小さくなり、外からの熱の影響が小さくなると建物内部での発熱の影響が大きくなってきます。

 一般的な換気運転をしているときも、冷気を逃がさないように熱交換換気をするときもこの傾向は変わりません。
 冷房エネルギーを最も減らすのは地中熱を使って換気で取り入れる外気を予冷する場合です。

 換気で取り入れる外気を室温以下に冷やしたうえで取り入れるので、Q値が相当大きな建物でも冷房エネルギーを一般の場合の半分以下に減らし、Q値が小さくなると暖房と同様にほとんど冷房負荷がなくなります。

 したがって、換気で取り入れる外気を自然エネルギーを使って予冷する方法は断熱性能の高い建物では冷房ゼロエネルギー化の可能性を持つ極めて有効な方法です。



 地中熱による予冷なしに換気用外気を取り入れる場合、Q値を小さくするとエネルギー消費が増加する傾向があります。しかし、暖房用エネルギーは冷房用エネルギーの増加を上回る減少を示すのでトータルなエネルギーが増えることはありません。

 以上のQ値と空調エネルギーの検討は東京の気象条件を前提にしたものです。

 各地の気象条件でこのような計算をすることによって地域ごとの望ましい空調と断熱のあり方を提示することができると考えています。





利用可能な自然エネルギー

太陽熱温水器(ソーラーシステム)

 地球表面に降り注ぐ太陽エネルギーを電気に変えるのが太陽光発電装置、温水に蓄えるのが太陽熱温水器だとこの章のはじめの項で説明しました。

 2004年の一年間の東京の日射量を月ごとに集計すると次のようになり、夏に大きなエネルギー輻射があります。

月別
 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月 10月 11月 12月 年間
日射量 MJ/u
307
368
409
559
472
514
643
506
384
261
261
244
4927
日射量 KWH/u
85
102
113
155
131
143
179
141
107
73
73
68
1369



 下の図は1995年から2005年までの11年間の月別平均気温(縦軸)と月別日射量(横軸)を図にしたものです。
 日射量が最小になるのは冬至に近い12月ですが、平均気温が最低になる1月には日射量がやや増え、2月・3月には気温が低くても大きな日射量を得られることが判ります。

 一年間の分布図はほぼ反時計回りに推移しますが、梅雨前後の5・6月には梅雨などの影響で日射量が落ち込んでいます。



 夏と冬とでは日射量自体には2倍以上の差がありますが、輻射熱を利用する温水システムでは水温が高温になるほどエネルギー効率が低下するので実際に装置が取得できる熱エネルギーは季節変動の小さいものになります。水道水の温度をソーラーシステムを使って上昇させる温度は夏も冬も大きく違わないという解説がされています。



 最近では自然循環型のものを「太陽熱温水器」と呼び、蓄熱槽を持ち強制循環するものを「ソーラーシステム」と呼んで区別するようになっています。

 「太陽熱温水器」も「ソーラーシステム」も集熱器が面積あたりに受ける太陽からの輻射熱量は同じですが、蓄熱槽を持つ「ソーラーシステム」のほうが利用可能な熱エネルギーは大きくなります。

 ソーラーシステム振興協会のデータでは年間の集熱量について次のような比較がされています。
 しかし、この数字は集熱器の理論的な性能を示したもので、夜間の放熱や季節ごとのエネルギー利用量を考慮したものではありません。

 週熱量としてしい産された熱量の中には夏に使われないものや、冬に補助熱源を必要とするものも含まれています。

太陽熱利用機器1台あたりの年間効果
比較
エネルギー
太陽熱温水器
集熱面積 3.0m2
集熱量 156万kcal
ソーラーシステム
集熱面積 6.0m2
集熱量 312万kcal
節約量 CO2削減量 節約量 CO2削減量
LPG 節約量/163kg
節約額/45,640円
134kgC
節約量/325kg
節約額/85,200円
267kgC
都市ガス 節約量/177m3
節約額/27,789円
103kgC
節約量/355m3
節約額/49,935円
206kgC
灯油 節約量/220L
節約額/9,900円
152kgC
節約量/441L
節約額/14,045円
304kgC
深夜電力 節約量/2267kWh
節約額/15,869円
188kgC
節約量/4535kWh
節約額/25,945円
376kgC
『出典:(社)ソーラーシステム振興協会』

 太陽熱温水器、ソーラーシステムとも東京の太陽輻射熱を基準にしてその約44%を集熱し、太陽光発電設備に比べて太陽輻射熱を熱として取り入れる温水器は、発電設備よりもエネルギーを効率よく取り入れることができます。

 一方で、真夏の日妻にどんなに熱を取り入れても、熱の使い道がないとせっかく取り入れた熱を使うことができませんし、電気のように余ったものを転売することもできません。

 太陽のエネルギーを集めやすい夏に大量の湯を沸かす能力がありますが、日射の弱い冬には、高温の湯を作る能力はありません。しかし温度の低い(低エクセルギーな)湯が利用可能な暖房などでは充分に需要を賄う能力があります。

 集熱面積 6.0m2のソーラーシステムの集熱能力を平年の日射量を基準に計算すると次の表の数値になります。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
日射量 MJ/u・月
288
324
413
472
504
433
512
464
348
308
243
246
日射量 MJ/u・日
 9.3
11.5
13.3
15.8
16.3
14.4
16.5
15.0
11.6
 9.9
 8.1
 7.9
集熱量 KWH/月
192
216
275
315
336
289
342
309
232
205
162
163
集熱量 KWH/日
6.2
7.7
8.9
10.5
10.8
9.6
11.0
10.0
7.7
6.6
5.4
5.3


 太陽熱温水器やソーラーシステムだけで暖房負荷に対応しようとすると空調負荷に充分な週熱をするには大きな面積の集熱器が必要になり、電気や化石燃料に依存した暖房システムを採用したくなるかもしれません。

 まず、昼間の太陽からの輻射熱で室内を暖め、断熱性能を高めて建物から熱を逃がし難くしたうえで、ソーラーシステムの熱を暖房に使い、それでも不足する熱を補助熱源に求めることで効率的なエネルギー利用が可能になります。

 ソーラーシステムに関して次のリンクを参照してください。
 新エネルギー財団           http://www.nef.or.jp/solarthermal/index.html
 ソーラーシステム振興協会ホームページ http://www.ssda.or.jp/energy/index.html


太陽光発電設備

 「光熱費ゼロの家」といったキャッチフレーズで販売しているハウスメーカーの住宅には間違いなく太陽光発電装置が着いています。
 およそ3KWの発電能力のある装置を載せると1日に30KWH、年間平均でおよそ11,000KWHの発電能力があります。(地域によって晴天率や日射量が異なります)

 昼間の余剰電力を電力会社に売り、発電能力がなくなる夜間には電力会社から買い取ってそのトータルがほぼゼロになるように発電能力を設定します。
 11,000KWHの電力料金はおよそ24万円/年、設備の初期投資額は240万円前後になるので、「クリーンエネルギーを使っている」という気持の問題を別にすれば初期投資の投資効率としては10年以上の耐用年数があってようやくトントンになります。省エネを進めるほど電力会社への売電が増えるので、省エネマインドを養う効果もあるようです。

 およそ7.5m2のパネルが1KWの発電能力を持つので、太陽光を電気に変換する効率は13%程度ということになります。

 太陽光発電装置の耐久年数は約20年といわれています。ほぼ10年で投下費用相当の電力を発電しその残りが経費と利益に相当するとすれば、太陽光発電を採用するkとはまずまずの投資になるのかもしれません。

 当然、曇や雨の多い地方では発電実績が上がらないことになりますから、自分の地方の気候特性を充分に確かめて採用を検討してください。

 将来のエネルギー価格が上昇すると考えれば太陽光発電機は積極的に取り入れるべきものになります。



廃熱利用   
 熱交換換気装置をつけることで換気に伴う熱損失を大きく削減することができます。
 従来日本で使われている熱交換換気装置は熱回収効率が60%前後ですが、今ヨーロッパのパッシブハウスで使われている高性能熱交換換気装置は75〜80%の熱交換効率を持つと言われています。

 通常、熱交換装置なしに2時間に1回の換気をするとそれだけでQ値を 0.4増加させますが、熱交換換気をすると0.08(換気装置の運転エネルギーを考慮しない)と大きく空調エネルギーを減らします。

 日本国内で製造・販売されている熱交換換気装置の熱交換効率は60〜75%程度です。

 2時間に1回の換気を熱交換換気した場合、普通換気に比べて節約できる空調エネルギー(顕熱分)は次の式で表わすことができます。

 節約できるエネルギー=a×h/6×(HDD+CDD)×24×熱交換効率

  a : 床面積  h : 天井の高さ HDD : 暖房度日 CDD : 冷房度日

 熱交換換気装置を運転するコストは空調負荷に関係なく一定ですが、回収される熱エネルギーは暖房度日・冷房度日の合計に比例しますから、空調負荷の大きいところに建てる建物ほど同じ運転コストをかけて回収できるエネルギーが大きくなります。

 熱交換換気設備は「空調負荷の大きいところほど採算に乗りやすい」と言うことができます。


地熱利用   
 地熱の利用には様々な方法があります。ヨーロッパでは地中にパイプを埋設し、換気用に取り入れる氷点下20℃近い低音の外気を+5℃近くに予熱するなどの試みがあります。

 そのほか、地下水を汲み上げて気−水熱交換する方法、地中に冷媒配管を埋設しヒートポンプの熱源として利用する方法など様々な方式の地熱利用が可能です。

 ヨーロッパで行われている試みは日本でも真冬は暖房の予熱として、冬は冷房および除湿手段として使える可能性があります。

 地盤との熱交換をするのに空気を地下に導くのがいいか、地下水を汲み上げるのがいいかはまだ検討すべき課題です。

 外気温度は赤線のように変動しますが、地下水と熱交換した外気温度は黄色の線のようになります。外気温度が16℃から23℃までは室内を冷却しすぎるので熱交換を中止するとしても暖房負荷で1500KWH、冷房負荷で 600KWHを削減する効果があります。
 この図は月間平均気温で表しているので模式化されていますが、外気の最高気温は35℃程度まで上昇し、高温時低温時ほど大きなエネルギーが削減できます。


井戸の省エネ効果
 簡単な試算をしてみて井戸水を省エネに使えるような気がしてきました。
 ヨーロッパでは上記のように地中に空気の予熱パイプを埋設して暖房の予熱として外気を地中に通し、真冬の氷点下20℃近い外気を厳寒期でも+5℃程度まで気温上昇させる試みが行われています。
 日本でもこの方法は検討に値すると思いますが、梅雨前後に地中埋設間の中で結露を生じるとパイプから出てくる空気がカビ臭くなるのではないかという心配があります。

 地下にパイプを埋めるよりも井戸を掘って地下水を汲み上げ、地下水と空気の間で熱交換しても同じ効果が得られるのではないかと考えたわけです。

 室内空気全体を対象にした冷房システムを考えることもできますが、暖房では井戸水よりも暖かい室内空気との熱交換を行うことは却ってエネルギー消費を増やすことになると思いますから、まず換気システムの予熱・予冷装置を考えることにしました。

 気−液熱交換器の効率について充分な知識はありませんが、空調用(気−気)熱交換器の標準的な熱交換効率程度の性能を持つ熱交換器を使えば、外気温度と地下水温度の温度差の70%ほどを換気用外気の予熱・予冷に使えそうです。

 井戸水の温度を16℃とすれば、外気温度と予熱・予冷後の温度は次のようになると考えています。

外気温度  0℃  5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 25℃ 30℃ 35℃
予冷・予熱後 11.2℃ 12.7℃ 14.2℃ 15.7℃ 17.2℃ 18.7℃ 20.2℃ 21.7℃

 外気温度が16度以下のときは換気に伴う暖房エネルギー消費を2〜5割減らす効果があります。

 Q値が2以上の建物ではこの温度の外気を換気で取り入れても空調エネルギー全体に対する節減効果は余り大きいものにはなりませんが、Q値が1前後の高い断熱性能を持つ建物では外気温度30℃くらいまでは冷房を必要としないのではないかと思われます。
 さらに、換気用外気をこのシステムで予冷すると除湿することになるので、夏の室内を乾燥させる効果が期待できます。

 この熱交換に必要な地下水の量は床面積120m2の建物で1時間に100gほどで充分だろうと考えています。

 木造住宅では他に冷房の設備が必要になりますが、熱容量の大きいRC外断熱の建物では外気の取り入れ口で熱交換するだけで充分な冷房効果があると考えられます。


 従来ここに示していた省エネ住宅の試算は次のページに移動しました。



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