断熱・気密・防湿
有限会社日本外断熱総合研究所
3-1-5 やさしい断熱講座 繊維系断熱材(6/14)
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繊維系断熱材の使用方法
A.コンクリート系の建築物に使用する場合
コンクリートは繊維系断熱材に比べて約35倍も熱を通しやすく、約200倍水蒸気を通しにくい性質を持っています。
したがって、コンクリートと断熱材を合わせて使うとコンクリート内部では温度変化が少なく、断熱材内部では水蒸気圧の変化が少なくなります。
下左の図は外断熱工法・下右の図は内断熱工法の場合を示していますが、内断熱工法では断熱材とコンクリートの境付近に大きな結露域を生じます。
昭和40年代には断熱材の内側に防湿層を設けるなどの対策が試みられましたが、有効な結露防止策はなく、繊維系断熱材が内断熱に使われることはなくなりました。
以下の結露分析は、室内の相対湿度は除湿加湿によって一定に保たれている前提で行っています。
繊維系断熱材による外断熱と内断熱 (冬)
外断熱
室温22℃-60% 外気5℃-50%
内断熱
室温22℃-60% 外気5℃-50%
従来、結露対策といえば上のような図が示されていました。ヨーロッパの大半の地域ように乾燥した夏を持つ地域ではこの検討だけでも充分ですが、湿度の高い梅雨がありその後急激に気温と湿度が上昇する日本では高温多湿な外気が躯体に触れて結露を起こす「逆転結露」(または「夏型結露」)に対する検討も必要です。
逆転結露は冬の結露に比べて短時間しか起きませんから、「その危険性を無視しても良い」という立場を取る向きもありますが、結露水が炭酸ガスをコンクリート内に運ぶ作用をすること、衛生環境を少しでもよくすることを考えればできる限り防ぎたいものです。
夏型結露について定常分析図を示すと下の図のようになります。温度条件は外断熱のコンクリート温度が25℃と想定して決めたので内断熱では結露がない状態が示されていますが、内断熱でも建物北側のコンクリート温度が上昇し難いところではコンクリート表面に結露する可能性があります。
ただし、夏型結露は危険な状態が定常的に続くものではなく、数時間から十数時間外気条件が変動することによって起こります。
繊維系断熱材による外断熱と内断熱 (夏)
外断熱
室温25℃-70% 外気31℃-75%
内断熱
室温25℃-70% 外気31℃-75%
防湿。防風など使用上の配慮を必要とする繊維系断熱材に比べて樹脂系断熱材は使いやすいと思うのですが、繊維系断熱材は北欧・カナダなど冷え込みの厳しい地域で特に好まれて使われています。
繊維系断熱材は厳しい気候条件でも使い方を誤らなければ劣化に対する信頼性が高く、損傷を受け難い面が評価されているようです。
B.木造に使用する場合
木造では構造体である木材が断熱材の1/3程度の断熱性能を持っています。充填断熱では壁や屋根の面積に対し10〜20%程度木材の下地があり、断熱材が充填できない部分ができます。
下地のある部分の面積が20%あるとすれば断熱材で全面を覆う場合に比べて熱損失量が40%ほど増えますから、実際の断熱材の厚さの70%ほどの断熱性能を持つと考えて断熱材を選定します。
繊維系断熱材は通気性が高く単独で使うと気密性がなく水蒸気の移動が大きいため断熱材の室内側に気密・防湿層(ヴェーパーバリア)、屋外側に透湿・防風・防水層(ウェザーバリア)を設け、この三つが一体となったかたちで正常な機能を果たします。
気密・防湿層(ヴェーパーバリア)を断熱材の室内側に設けると書きましたが、最近断熱材内部の室内寄りにヴェーパーバリアを設ける例もあります。こうすることによって
@
夏型結露を発生しにくくする効果がある
A
コンセントの取り付けなどで防湿層を傷める恐れが少ない
B
配線・配管をヴェーパーバリアの室内側(付加断熱層内)に設置できる
といったメリットがあります。
繊維系断熱材は圧縮や変形によって断熱性能が大きく低下します。寸法が足りなくて空隙があると空気の対流が起こり断熱性能を損ないます。
枠組壁工法(2×4工法)の断熱材充填部分は刺身の柵のような直方体になっていて、マット上の断熱材の縦横を切断して嵌めこむだけで正確に充填できますが、日本の在来工法では大壁・真壁など柱の幅と壁内部に断熱材を充填できる厚さが異なり、さらに胴縁など下地材が壁内部に出っ張るなど充填部分が不整形な形になっていて正確な充填が難しくなっています。
在来工法では自由に変形できる密度が10kg/m
3(/sup>、厚さ5cm程度のロール状断熱材を多く使いますが、この断熱材は水を吸うと自重を支えることができない。めくれたり弛んだりしやすい。と言った欠陥があります。
「30kg/m
3(/sup>以上の密度を持つマット状断熱材を充填個所に正確に切断してはめ込む」、「吹込み用の断熱材を使う」など期待した断熱性能を実現できる施工方法を選択したいものです。
繊維系断熱材による断熱 (冬)
充填断熱
室温22℃-60%
外気5℃-50%
付加断熱
室温22℃-60%
外気5℃-50%
防湿層無
室温22℃-60%
外気5℃-50%
防湿層(ベーパーバリア)と防風層(ウェザーバリア)があって繊維系断熱材は正常に機能します。(図・左)防湿層はコンクリート造のコンクリートが果たしていた水蒸気の移動を抑える役目を果たします。
ベーパーバリアを断熱材のやや内側に入れても断熱材内部で結露を起こすことはありません。(図・中)防湿層の位置は地域の外気温度特性と室内暖房温度・湿度を配慮して決めます。
防湿層がないと防風層やサイディングなど二次的な部材の透湿抵抗が相対的に大きくなり結露域が発生します。(図・右)
定常分析では気流・対流がないものとして計算しますが、木造
では熱を貯める素材が少ないため防風層・防湿層のいずれが欠けても空気温度湿度のバラ
ンスが崩れ、激しい結露を起こす原因になります。
繊維系断熱材による断熱 (夏)
充填断熱
室温25℃-70%
外気31℃-75%
付加断熱
室温25℃-70%
外気31℃-75%
防湿層無
室温25℃-70%
外気31℃-75%
充填断熱ではベーパーバリア裏側で僅かに結露域が発生しますが、付加断熱をするとかろうじて結露の発生を回避できます。
防湿層がないと逆転結露はありませんが、冬の激しい結露がありますから逆転結露対策にはなりません。
繊維系断熱材は熱抵抗が大きく透湿抵抗が極めて小さい断熱材です。夏と冬の結露の定常分析図を見てわかるように断熱材外側の温度は外気と内側の温度は室内とほぼ同じですが水蒸気の露点温度は防湿層の位置で大きく変化しますが断熱材の中では変わりません。「透湿抵抗を持たないことが結露の原因になる」と考えてよいでしょう。
デュポン社が温度によって透湿性能が変化する「調湿シート」を発売しているとの情報もあります。想定どおりに働けば逆転結露対策に面白い素材です。
しかし、暖房時と冷房時のベーパーバリアの温度の差は数度しかありませんから、僅かな温度差で透湿性能の変化が起きるのか? 暖房温度を高めに、冷房温度を低めに設定したときに思わぬトラブルがないか? といった疑問もあります。
スマートベーパーバリア(あるいはスマートベーパーリターダー)と呼ばれる防湿層用材は相対湿度が高いほど透湿抵抗が下がります。これを室内側の防湿層に使うことで夏の結露を防ぐことができそうです。
タイベックや防水紙の代わりに防風層として使うことも考えてみましたが、夏の高温時には外気の相対湿度がそれほど高くなくても絶対湿度が屋内よりも高いことがありますから、両面にスマートベーパーバリアを使うことはお奨めできません。
※
繊維系断熱材を使った充填断熱工法は外張発泡樹脂系断熱材を使う外張断熱工法に比べて充分厚い断熱材を使えるため充分な熱伝導抵抗(小さなK値・Q値)を持つ建物の設計に適していますが、高い施工精度を要求し、施工マニュアルの整備が望まれます。
ロックウール断熱材は使用可能温度が600〜650℃以下、グラスウール断熱材は400℃以下と断熱材の中では比較的高温に耐える性質があります。
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