結露
結露は氷水の入ったコップの廻りが濡れてくるように空気中に含まれる水蒸気が冷やされ水に
なる現象です。
コップにできる結露も、家の結露も、小学校の理科で習った「飽和水蒸気量を超えた水蒸気が水
に戻る現象」で、特別難しいことではありません。 |
一般に結露は「冬の室内で起きる」とされています。冬の室内は暖かく、多くの水蒸気を持った空気で満たされています。暖かく多くの水蒸気を持つ空気が冷やされると結露が起きます。
大陸西岸や地中海式気候の地域では夏の大気が比較的乾燥しているため、夏の結露が問題になる地域は余りありません。これに対して東アジアやアメリカ東海岸など大陸東岸では夏の外気に大量の水蒸気が含まれます。
日本では暖流から蒸発する水蒸気の影響と思いますが、関東・甲信越以西の海沿いの地域で梅雨から9月初めにかけて冷房温度よりも外気の露点温度の方が高い状態がしばしば現われます。
外気の露点温度が冷房温度を上回る場合、透湿抵抗の小さい断熱材を使った外断熱工法では躯体外側に「逆転結露」と呼ばれる結露の危険があります。
日本の気候では多くの地域で冬の結露と夏の逆転結露の両方の結露に対する備えをする必要があります。
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前項「断熱材ってどんなもの?」で断熱材の使い方によってどんなところに結露が起きるかを示しました。ほとんどの場合建築物に起きる結露の説明は前項のように定常分析図を使って説明しています。
でも、建物は定常分析図にあるような壁の中心部分ばかりではありませんし、温度・湿度もいつも変動しています。建物に出る結露も定常分析図のように「絵に書いたような」結露よりも、温度が下がりやすい場所で起こる結露の方が圧倒的に多いのです。
空気中に水蒸気が少ないとき、つまり室内が乾燥しているときは結露が起こりにくいのですが、人間の体の70%は水で出来ています。空気が乾燥していると結露が起きない代わりに肌が荒れる・喉が痛み風邪をひきやすくなるなど健康障害の原因になります。また、体の表面から蒸発する水蒸気が増えるため、湿度が下がるほど体感温度が下がります。
「冬の室内では50〜60%の相対湿度に保つのが良い」と言われ、相対湿度が40%を切ると様々な問題が起きます。しかし、建物の建つ地域の外気温度によって室内の相対湿度を調節しないと窓ガラスや壁の内部に結露を起こすことになります。
カナダの天然資源省のホームページには、室温が20℃のとき、外気温度に応じて次のような室内相対湿度の目安が示されています。
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外気温度(℃) |
室温20℃の時の
最大湿度 (%) |
|
-30℃以下
|
15%
|
|
-30℃〜‐24℃
|
20%
|
|
-24℃〜‐18℃
|
25%
|
|
-18℃〜‐12℃
|
35%
|
|
-12℃〜 0℃
|
40%
|
この数値は建物の結露を最小限にすることを目的としていて、建築方法によっても一律にこれが最適というものではないように感じます。
22℃で暖房しているときの相対湿度と結露が始まる温度、結露が始まるまでの許容温度低下幅は次の表のようになります。
|
|
|
相対湿度 |
80%
|
70%
|
60%
|
50%
|
40%
|
30%
|
20%
|
|
露点温度 |
18.34℃ |
16.15℃
|
13.63℃
|
10.65℃
|
6.92℃
|
2.26℃
|
-4.38℃ |
|
許容低下幅 |
3.66℃
|
5.85℃
|
8.37℃
|
11.35℃
|
15.02℃
|
19.74℃
|
26.38℃
|
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上の表では室温を22℃に固定しましたが、部屋の温度が露点になるまでの温度差は室温に関係なく相対湿度によって決まります。この関係をグラフに示すと次のようになります。 |

この表は相対湿度が70%のときでも6℃近く温度が下がらないと結露が始まらないことを示しています。
「結構余裕あるんだな!」そんな印象があると思います。
でも、この先を読むと少し心配になる筈です。
家の中の絶対湿度(あるいは水蒸気分圧)は浴室や台所を除いて比較的安定しています。空調をしていない部屋でも、押入でも16.15℃以下になる場所があれば結露が始まります。
居間で生活しているとき、お宅の寝室の気温は16.15℃以上になっていますか?トイレや脱衣場の温度も大丈夫ですか?
次は、部屋の中の温度差です。「暖房中の部屋の温度が22℃になっている」と言うとき、それはどこの温度でしょうか? 天井や床で温度を測ることは滅多にないでしょうから、ダイニングなら食卓テーブルの近くや壁に掛けられた温度計が示している温度かもしれません。
エアコンやストーブで部屋を暖めているとき、普通の住宅では天井と床付近で5℃近く温度差があると言われています。つまり、暖房している部屋の温度が22℃と言ったとき、天井近くでは約24℃、床は約19℃これが普通の状態です。
空調機で暖められ軽くなったた空気は天井付近に集まり、壁や窓ガラスに冷やされて重くなった空気は床付近に集まります。昼間留守にして、空調を切っていた部屋の躯体の温度は5度以上も下がることがあります。
例えば、外気温度0℃の夜中に8時間空調を切ると室内温度が5℃下がる部屋では、先程の19℃から5℃下がれば床の温度は14℃まで下がっているとします。暖房で空気を暖めても床の温度が19℃に戻るまでに一日以上かかります。一日暖房を付けっぱなしにすることはないでしょうから、床はいつも冷たいままです。床暖房の人気の原因はこんなところにあります。
暖房のある部屋でも結露が起きるほど温度が下がりますから、一日中ほとんど暖房することのない押入・トイレ・玄関など(「僕のうちは全館暖房だ」って、失礼しました!)では、相対湿度が60%以下でも結露して不思議ではありません。
「湿度を40%以下にしているのに結露が起きる」というお宅が実際にあるほど結露がおきやすい、つまり、温度のムラができやすいのです。
ここで言う「温度のムラ」とは、次の4種類の原因によるものがあります。 |
|
|
@ |
空調している部屋の中の場所による温度差 |
|
A |
空調している部屋と空調していない部屋の温度差 |
|
B |
空調している時間と空調していない時間の温度差 |
|
C |
布団を詰め込んだ押入など空調の熱の届き難いところの温度差 |
|
結露のない家を造るにはこれらの原因によって起きる温度差が前の表の許容低下幅に収まらなく
てはなりません。さらに、カビの発生を防ぐためには結露が起きないだけでなく、相対湿度が8
0%を超えないように温度低下を抑える必要があります。
相対湿度80%以下を確保するには前の表を次のように替えて許容温度低下を管理しなければな
りません。
|
相対湿度 |
70%
|
60%
|
50%
|
40%
|
30%
|
|
相対湿度80% |
20.6℃
|
18.3℃
|
14.2℃
|
10.6℃
|
7.0℃
|
|
許容低下幅 |
1.4℃
|
3.7℃
|
7.8℃
|
11.4℃
|
15.0℃
|
結露量の推定
結露する水の量を正確に求めるには複雑な非定常分析により計算する必要があります。ここでは
定常分析により結露量を求める簡単な方法をご紹介します。
定常分析で結露域を生じる場合、断熱材と防湿層の境界の水蒸気圧は境界の実際の温度に対応し
た飽和水蒸気圧まで下がり、余剰な水蒸気は水になります。これを定常分析図で表現すると次の図
のような形になります。

結露がある場合、断熱材とコンクリートの境界の水蒸気圧は上の図の下に示したように実際の温
度に対応した水蒸気圧に下がり、断熱材中の水蒸気圧勾配は増加しコンクリート中の水蒸気圧勾配
は減少して、断熱材の中を浸透する水蒸気は増加しコンクリートの中を浸透する水蒸気は減少しま
す。
こうして、浸透する水蒸気量に生じた差が蓄積する結露量と考えられます。
上の図に示したような論理で説明される結露のほかに、暖房していない寒い部屋で尾きり結露があります。
実際に問題になっている結露のほとんどが、暖房していない、あるいは暖房を切った後の寒い部屋で起きていると考えたほうが事実とよく整合します。
「内断熱工法と外断熱工法」に詳しい説明をしたのでご覧ください。
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結露量の概算値
冬の結露 内断熱 室内温度23℃ 相対湿度60%の場合
屋外気温を変え 相対湿度は50%に固定
|
断熱仕様 |
EPS25mm |
MW 50mm |
備 考
|
|
外気温度 |
|
13
|
0.00
|
2.47
|
|
|
12
|
0.03
|
4.91
|
|
|
11
|
0.78
|
7.20
|
|
|
10
|
0.12
|
9.36
|
|
|
9
|
0.16
|
11.43
|
|
|
8
|
0.20
|
13.37
|
|
|
7
|
0.23
|
15.20
|
|
|
6
|
0.27
|
16.94
|
|
|
5
|
0.31
|
18.58
|
東京1月平均気温 |
|
4
|
0.34
|
20.13
|
|
|
3
|
0.37
|
21.59
|
|
|
2
|
0.39
|
22.97
|
|
|
1
|
0.43
|
24.27
|
|
|
0
|
0.45
|
25.51
|
東京1月最低気温 |
|
-1
|
0.48
|
26.67
|
|
|
-2
|
0.50
|
27.78
|
|
|
-3
|
0.52
|
28.82
|
|
|
-4
|
0.54
|
29.80
|
|
|
-5
|
0.56
|
30.73
|
|
|
-6
|
0.57
|
31.61
|
|
|
-7
|
0.60
|
32.44
|
|
|
-8
|
0.61
|
33.22
|
|
|
-9
|
0.63
|
33.96
|
|
|
-10
|
0.64
|
34.66
|
|
|
単位:g/u・h |
この表の結露量は断熱されたコンクリート部分を対象にしています。EPSなど樹脂系断熱材を
使った内断熱工法の熱橋部分ではMWを使った場合と同様な大量の結露が発生する恐れがありま
す。
雨量1mm/hのときの降雨量は10g/u・hに相当します。気温0℃の時の結露量はその4%余り
にしかなりません。「この程度の結露はコンクリートに吸収され知らない間に乾いてしまうから問
題がない」と考える人もいますが、東京でも1日に7.4g/u、ひと月に230g/uの結露水が蓄積さ
れることになります。
夏の結露 外断熱 室内温度25〜26℃ 相対湿度60%
屋外気温を変え 相対湿度は80%に固定
|
断熱仕様 |
EPS100mm |
MW 100mm |
外気
水蒸気量
|
外気
露点温度
|
対象地域 |
|
室内温度 |
25℃
|
26℃
|
25℃
|
26℃
|
|
外気温度 |
|
|
0.53
|
|
22.86
|
25.35
|
呉、福岡 |
|
29.0
|
|
29.5
|
|
|
2.82
|
|
23.57
|
25.85
|
大阪 |
|
30.0
|
0.01
|
|
5.49
|
0.25
|
24.30
|
26.35
|
金沢、鹿児島、名古屋、那覇 |
|
30.5
|
0.06
|
|
8.25
|
3.00
|
25.06
|
26.85
|
静岡、銚子、浜田、高知 |
|
31.0
|
0.12
|
0.01
|
11.10
|
5.84
|
25.83
|
27.35
|
潮岬 |
|
31.5
|
0.17
|
0.07
|
14.05
|
8.77
|
26.63
|
27.85
|
室戸 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
単位:g/u・h |
冬の結露が長時間続くのに対して夏の結露は年に数回起きるだけで数時間で解消します。繊維系
断熱材を使った乾式外断熱工法のメーカーなどはこれをもって「心配のない程度のもの」と言う立
場をとると思います。
しかし、結露は無害なものではありません。結露の起きにくい外断熱工法を選択するに越したこ
とはありません。
壁内結露の原因
壁の内部で起きる結露の原因は複数の素材(一般にはコンクリートと断熱材)で構成される壁が
温度と水蒸気に別の部材で抵抗することにあります。断熱材内部では大きな温度変化がありますが
水蒸気厚保はほとんど変化しません。反対にコンクリートの中では温度はほとんど変化せずに、水
蒸気圧は大きく変化します。
このような断熱材を使うとき、温度と水蒸気圧の低い側に断熱材があれば結露は起きませんが、
反対に断熱材の側が暖かく大量の水蒸気を含む場合に結露が起きます。
ほとんどの地域で内断熱は冬の結露の原因になり、外気の水蒸気量が22g/kg(露点温度24.
7℃)を超える地域で繊維系断熱材を使った外断熱工法は夏型結露の原因になります。
断熱材の中で温度と水蒸気圧の変化が起きるフォームグラスのような断熱材では水蒸気圧と温度
が均等に変化するので壁内結露が起きることはありません。
※ ただし、フォームグラスは価格も高く、多くの意匠的な制約もがあるので、繊維系断熱材とフ
ォームグラスの中間的な性質を持つ発泡樹脂系断熱材やロックセルボードを含めた断熱材の中から
建設地に適切な断熱材を選択するのが適当です。 |