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長い外出のとき
「内断熱の建物に比べて外断熱の建物は一旦温度が下がると暖め難い」、「一旦温度が下がる
と外断熱の建物の気温を上昇させるには時間がかかる」と言われています。「長い旅行に出かけ
る家には外断熱は適さない」と言い切っている例まであります。
こういう説明を聞く前に、月平均気温5.8℃の東京の1月、室温20℃の部屋の暖房を切っ
た後、熱損失係数0.759の外断熱と熱損失係数3.519の内断熱の建物の室温がどのように下がるか
を知る必要があります。思い込みに似た観念的な思考から、正しい判断をすることはできませ
ん。
下の図のように二つの建物の熱損失係数には約4倍の差がありますが、暖房を止めてから外気
温と室温の中間の温度である12.9℃まで室温が下がるまでに必要な時間は内断熱の建物では約1
6時間なのに対し、外断熱の建物では12日と18倍もの差になります。
外断熱の鉄筋コンクリート建物の温度変化が内断熱の建物に比べて非常に小さいことをま
ず覚えておいてください。

このグラフは照明器具や冷蔵庫の電源が入っていないものとして描かれています。室内でエネルギーが使われていれば室内温度は次の式で示される平衡温度
平衡温度=外気温+時間あたり内部発生エネルギー/Q値×床面積
までしか下がらないので、平衡温度は外気温より高くなります。
上の式から同じエネルギーを使っていればQ値の小さい建物ほど平衡温度が高くなることも判ります。 |
このように室温変化に差がある理由は
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@ |
外断熱の建物が外壁・屋根など熱容量の大きい躯体コンクリートのほとんどすべてを
断熱材の内側、つまり室内側に抱え込んでいるのに対して内断熱の建物は躯体コンクリ
ートの7割以上を断熱材の外側に追いやっていること |
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A |
外断熱工法では内断熱工法に比べて3倍以上の断熱性能を持たせるように設計されていること |
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があります。
次に、二つの建物の空調費の差額を比較してみましょう。
北欧やカナダでは高断熱住宅の外出中の空調の取り扱いについて「長期間外出する場合でも、
暖房は切らずに設定温度をふだんより2〜3℃低めに設定してください」と書かれています。長
期間暖房を切っていた建物を暖め直すのに必要なエネルギー費用と長時間寒さを堪えて建物が温
まるのを待つ苦痛を比べれば高断熱な建物の空調を切らずに外出することで生じるエネルギー費
はそれほど大きなものではないことがその理由です。
暖房を17℃に設定して10日間留守にしたときの電気代(エアコン使用)は次の表のように
なります。
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熱損失係数
w/K・u |
空調稼働時間
h |
床面積
u |
使用電力量 KWh
cop=3 |
電気料金 |
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外断熱 |
0.759
|
128
|
120
|
43.5
|
957
|
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内断熱 |
3.519
|
234
|
120
|
368.9
|
8,115
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空調を切って外出した場合、帰宅時の室温は次のとおりです。
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室温 |
建物熱容量 |
17℃まで暖めるのに
必要なエネルギーKWh |
使用電力量 KWh
cop=3 |
電気料金 |
上記との
差額
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外断熱 |
14.37
|
43427
|
113.34
|
37.8
|
831
|
126
|
|
内断熱 |
5.80
|
10949
|
122.63
|
40.9
|
899
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7,216
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どうです? 内断熱の建物の空調を切ったときの節約額は節約額は7,216円ですが
外断熱の建物では空調を切っても126円の節約にしかなりません。
126円節約して、その後1週間以上も寒さを我慢して暮らそうと思いますか?
ここで、ひとつ補足しておきたいことがあります。上の表で17℃まで暖めるのに必要なエネル
ギーを、外断熱の建物では113.34KWH、内断熱の建物では122.63KWHと示しています。連続空調に
適した空調設備を使ってこれだけのエネルギーを供給するのにどれ従来の時間が掛かるかを知っ
ておいてください。
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室温を20℃に維持する
設備容量 (W) |
17℃まで暖めるのに
必要な電力量(KWh) |
単純
稼働時間 |
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外断熱 |
431
|
37.8
|
88.0
|
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内断熱 |
1999
|
40.9
|
20.5
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上の表で計算した単純稼働時間は必要な電力量を設備容量で割ったものです。実際には室温の
上昇と共に建物からの熱損失が増加するためもっと時間が掛かります。温度上昇をシュミレーシ
ョンすると次の図のような温度変化になります。

連続空調をする場合、外断熱の建物では出力1.2KW、内断熱の建物は出力6.0KWの空調機器を必
要とします。約2割の余裕をみた外断熱で1.5KW、内断熱で7.0KWの空調機器を使う場合、内断熱
の建物は約8日で室温を20℃に回復できますが、外断熱の建物では10日後でも17℃あまりの
室温にしかなりません。
はじめにお話した「内断熱の建物に比べて外断熱の建物は一旦温度が下がると暖め難い」、
「一旦温度が下がると外断熱の建物の気温を上昇させるには時間がかかる」という指摘はこのこ
とを指しています。
もうお気づきでしょうが、外断熱の建物では大きな空調機を使うより、小さな空調機を切らず
に使うほうが合理的です。
以上2005/02/28追加
断熱性能の高い建物では、空調を使用していても熱を逃がさない設計になっています。一方、
断熱性能の低い建物は空調中に多くの熱を逃がしてしまいます。言い換えると、断熱性能の高い
建物では空調を使いながら省エネ【=節約】ができるのに対して、断熱性能の低い建物では空調
を使わないことでしか省エネ【=節約】ができません。
長い間断熱と無縁な生活をしてきた日本人には、空調の節約とはスイッチを切ることという
意識が染み付いています。上の二つの表をご覧になれば断熱性能の差が3倍ほどだとしてもその
節約効果が遥かに大きいことがわかります。
空調を切って外出して外気温まで温度の下がった室内を、帰宅後もとの温度まで暖め直すには
相当な時間がかかります。暖房機器の能力にもよりますが、内断熱の場合でも数日外断熱の場合
には外出していた期間と同じくらいの時間が必要と考えてください。
ここに書いたことは主に戸建住宅においてのみ問題になることです。集合住宅では建物全体が
「熱共同体」つまり、建物全体で熱を融通しあう関係になっています。ある一部屋で空調してい
なくても上下左右の部屋で空調していれば隣接した部屋から熱が伝わってくるためどの部屋の温
度も極端に下がることはありません。
ある外断熱マンションで、空調機の温度設定を18℃にしていた住戸では常に他の部屋から伝
わってくる熱でいつも18度以上の気温があり、暖房機が作動しないで一冬が終わってしまった
という実話があります。
外断熱の集合住宅では空調費は共益費と同じような性格をもっていると考える方が実情にあっ
ているのかもしれません。
集合住宅と逆に通常はほとんど使われていない別荘のような建物では突然建物を使おうと思っ
ても寒い思いをすることがあるかもしれません。電話やインターネットで操作できるリモコンを
使って、事前に空調を作動させられる工夫が必要になります。
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