断熱・気密・防湿 
有限会社日本外断熱総合研究所
3-1-13 やさしい断熱講座 基礎の断熱(14/14)
やさしい断熱講座
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全館連続空調と局所間歇空調
 快適な全館連続空調で失敗しないための秘訣

 「全館連続空調」は建物内部を常にどこでも一定に保つような空調の運転方式で、「局所間歇
空調」は建物の空調の必要な部分を空調の必要な時間だけ空調する方式です。

 必要なときに必要な場所だけを空調する「局所間歇空調」のほうが必要とする空調エネルギー
が小さくなることは間違いありませんが、空著を切ったあとのエネルギー消費削減量は建物によ
って異なりますし、必要とされる空調機器の能力は「局所間歇空調」の方が大きくなるので、建
物の種類と性格によってどちらの空調方式が適しているかを選ぶことも必要でしょう。

 従来、日本では建物の断熱性能が充分でなく、空調を入れた後すぐに暖まる木造の建物が多か
ったことから局所間歇空調が当然の空調方法と考えられてきました。一方、石やレンガで造られ
た建物が多く、冬の冷え込みが厳しいヨーロッパなどでは一旦建物を冷やすと温めなおすために
数日あるいはそれ以上の時間が掛かるので建物全体を連続して暖め続ける連続空調が当たり前の
空調方法だと考えられてきました。

 石やレンガの建物を冬の間連続して暖房するとさぞ多くのエネルギーを使うだろうと心配にな
るかもしれませんが、連続空調する人たちは建物に高い断熱性能を持たせることで空調エネルギ
ーを減らしています。今、ドイツや更に寒い北欧で新築されている建物では全館連続空調をして
も日本の平均的な住宅の空調エネルギーと大差ないエネルギー負荷で空調できています。

全館空調と局所空調
 先ず全館空調と局所空調を比べてみましょう。下の図のように建物を四つの部分に分割して空
調できる建物があるとします。
 下の図で上のように四つの部分を同時に空調するときが全館空調のモデルになり、下のように
一部屋だけを空調するときが局所空調のモデルになります。



 全室を空調する場合隣接する部屋の間に温度差ができないので書く部屋から屋外に向かってだ
け熱エネルギーが流れ出します。

 一部屋だけを空調するとき、空調する部屋からは全館空調と同じように屋外に向かって熱の移
動が起きますが、同時に空調していないほかの部屋に向かっても熱の移動が発生します。熱が移
動した部屋からはまた屋外やほかの部屋に向かって熱の移動が始まります。
 そのために、各部分の面積が等しいとすると図の局所空調では全館空調で必要とするエネルギ
ーより少なく、その1/4より多くのエネルギーを必要とします。このとき必要とするエネルギ
ーの大きさは建物全体のQ値と部屋通しを仕切る壁のK値や開口部の様子などによって変わりま
す。

部分間歇空調と全館空調のエネルギー


 RC外断熱工法の住宅では間歇空調をしても連続空調をしても空調負荷がほとんど変わらず、
負荷を示すグラフがほぼ水平になる。反対に1室だけを12時間暖房しても小さな空調機では必要
なエネルギーを供給できないためグラフが途中で途切れます。
 Q値が5.0W/m2・K程度の木造住宅は建物の床面積の1/8を12時間未満、あるいは床面積の 1/4を
 6時間未満のように短い時間だけ空調するときにQ値の小さいRC外断熱住宅よりも少ないエネ
ルギーで空調ができますが、それ以上広くあるいは長く空調するときは大きなエネルギーが必要
になります。

 床面積の1/8を12時間程度、あるいは床面積の1/4を6時間程度しか空調しないという
前提で断熱仕様を検討すると多少寒くても我慢せざるをえないことになるのは仕方ないことでし
ょう。熱容量の大きいRC外断熱で小さなQ値になるよう断熱設計しておけばより広い面積をよ
り長く暖房しても空調負荷はほとんど増えることはありませんが、Q値の大きい一般の建物では
空調を使うほど空調負荷が大きくなります。

 熱容量の大きい高断熱建物と熱容量の小さい一般の建物の比較を見ましたが、次に同じ高断熱
で熱容量と界壁の熱貫流率だけを変えたときに局所間歇空調で空調負荷がどう変わるか比べてみ
ましょう。



 8室を24時間するときの空調負荷は約 65KWHでどちらも換わりませんが、空調時間が短くなっ
たり、空調面積が小さくなったりすると木造住宅の空調負荷が小さくなる傾向が認められます。

 この原因には、熱容量の大きいRCの建物はなかなか温度が下がらないために空調を切っても
熱損失が木造の建物のようにすぐには減らないことと、RCの建物は空調した部屋から隣接した
部屋への熱伝達が大きくなることの二つをあげることができます。


全館連続空調に適した家とと局所間歇空調に適した家
 A・B・C・Dの4部屋からなるRCの高断熱建物と木造の高断熱建物の1部屋Aだけを空調
したとき、それぞれの建物の中の部屋A・B・C・Dの室温は次のグラフのように変化します。

 木造の建物とRCの建物ののQ値は同じですが、熱容量が小さい木造の建物は暖房を止めると
9時間で室温が9℃近く下がり、その後暖房を入れると3時間で室温が20℃に戻ります。
隣接するB・Cの部屋の温度は空調中は12.5℃ほどまで上がり、空調を切ると10℃近くまで下が
ります。D室の温度はほぼ10℃で大きな変化はありません。



 RC外断熱の建物の室温は暖房を切ったあと9時間で3℃弱下がり、その後約12時間掛けても
との20℃に戻ります。空調室A以外の室温はB・Cが14.5℃、Dが13℃ほどでほとんど変化し
ません。
 非空調室B・C・Dの室温が木造よりも高くなる上に、空調室Aの温度変化が小さいために
(別の見方をすれば熱容量が大きい建物が熱を溜め込むために)局所間歇空調をしたときのRC
建築物の熱損失は木造高断熱建物よりも大きくなると言うことができます。



 もう一度木造とRCの高断熱建物の温度変化を見てください。9時間空調を切ったあと、木造
の建物では約3時間、RCの建物では12時間掛けて室温を回復させています。
 どちらも出力 3.1KWの暖房機を使うと考えているので、室温回復までに木造は9.3KWHの負荷
が、RCでは37.2KWHのあったことになります。
 高断熱RCと高断熱木造のグラフに表わした42KWHと30KWHの負荷の差はこんな形で現れます。


空調機器の大きさと最大消費電力
 連続空調では建物全体を一定な温度に保つため消費電力の最大値は
 Q値×床面積×(暖房設定温度−最低外気温度)
で表わすことができます。
 一方、局所空調や間歇空調では空調を切っていた間に下がった温度を戻すために使われるエネ
ルギーや、空調する部屋以外に流れていくエネルギーを必要とするために連続空調に使うよりも
大きな出力の空調機が必要になります。


 熱容量が小さく熱損失が大きい建物では空調を切ったあと室温が下がり熱損失が減っているた
め短時間高出力運転すればその後低出力運転に戻りますが、熱容量が大きく熱損失が小さい建物
では空調を切っていた時間に使わなかったエネルギーとほぼ同じエネルギーを使わなければ低出
力運転に戻りません。
 熱容量の大きい建物で長時間空調を切っていると再度空調を入れても目的の温度に戻すまでに
数日以上を要することもあります。

 従って、熱容量が小さく熱損失係数(Q値)が大きい建物(望ましくない建物の代表)では間
歇空調をする以外に選択の余地はなく、熱容量の大きい建物では熱損失係数を出来る限り小さく
して連続空調するのが望ましい対策です。

 熱容量の小さい建物でも熱損失を小さくすれば熱容量の大きい建物と同じように小さいエネル
ギーで連続空調をすることができます。またこの建物を局所間歇空調することによって更に省エ
ネを図ることができます。
 


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