断熱・気密・防湿                                 有限会社 日本外断熱総合研究所
3-7日本の気象と断熱工法 (1/6)
日本の気象と断熱工法
君は沖縄にまで外断熱工法が正しいと思うのかね? ・日本の気象の特色 ・夏の気象と断熱工法 
地域の気候特性と結露の危険 ・各地の結露特性 各地の結露特性2 逆転結露の起きにくい断熱工法
冬の気象と断熱工法 ・冬の結露を防ぐには
 

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付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸 WEB見学会
付5RC外断熱工法と
付6間違いだらけの外断熱に

 
 
「君は沖縄にまで外断熱工法が正しいと思うのかね?」
 この言葉はもう5年ほど前に私の恩師で、日本建築学会の副会長を務められたこともある宮野秋彦先生から尋ねられた言葉です。

 そのころの私はまだRC建築物の外断熱工法としては、鉱物繊維系断熱材を使うものしか知りませんでした。市中にもその他の外断熱工法はほとんど知られていませんでしたから、先生のお尋ねも繊維系断熱材を使った鉄筋コンクリート建築物をどういう気候の土地に建てるのが適当なのか? それをよく吟味することが必要だという趣旨だったのでしょう。

 宮野先生は、北海道や東北では問題なく機能するだろうが、外気が多量の水蒸気を含む東京から西の地域では夏の水蒸気対策に問題があると指摘されました。
 RC建築物の外断熱工法には繊維系断熱材を使った乾式外断熱工法と樹脂系断熱材を使った湿式外断熱工法がありますが、そのうち乾式外断熱工法を高温多湿な地域で採用することに警鐘を鳴らされたものだったのでしょう。

 鉱物繊維系断熱材、つまりグラスウールやロックウールを使う断熱工法は北欧を中心に発達してきたもので、RC外断熱工法に限らず、木造建築物の充填断熱工法でも室内側に気密・防湿層さえきちんと施工してあれば暖房中に結露を生じることはありません。

 しかし、夏が高温多湿になる日本やアメリカ大陸のフロリダなど大陸東海岸では冷房温度が大気中の水蒸気の露天温度を下回るときに夏型結露を招くことになります。

 RC外断熱工法でも、気密防湿シートを使った木造建築物の充填断熱工法でも、コンクリート躯体や防湿シートの屋外側に夏型結露を起こすメカニズムはほとんど変わるところがありません。防湿シートに比べてコンクリート躯体の熱容量が大きい分だけRC外断熱工法の結露は長時間継続して現れ、コンクリートに結露水を吸い込ませ続けます。


 この問題についての外断熱工法関係者の発言は非常に曖昧なものになっています。

 以下の説明にも出てくるように、関東・甲信越以西の沿岸部で観測される最高露点温度は24℃台後半から27℃台後半に及びます。高い露点温度が年間に出現する回数や延べ時間、最大継続時間もそれぞれ大きな回数になります。

 冷房温度を28℃としても建物の外壁表面で相対湿度を80%以下に保つには外気の露天温度が冷房温度より 4℃以上低くく保たれる必要があります。高湿状態が常時続くわけではないことを考慮しても 3℃以上低くなければならないと考えられるので、2004年の気象データを基準に考えると28℃の冷房温度が守られるという前提の下で下の表の都市の内上から東京までは繊維系断熱材を使った乾式外断熱工法が許容されることになります。ただし、冷房設定温度を27℃にするなどより低い温度で冷房する場合には東北地方の海岸部でも繊維系断熱材のよる乾式外断熱工法の採用を控えるべきだと思います。

最高気温
夏の
平均気温
最高
露点温度
平均
露点温度
最高
水蒸気量
露点温度23.5℃以上
最大継続時間
延べ時間
回数
g/kg
時間
時間
長野
35.4
24.2
22.5
17.3
19.8
0
0
0
札幌
32.1
20.3
23.8
15.1
21.4
2
2
1
石巻
31.4
21.8
23.7
17.7
21.2
4
4
1
秋田
36.0
23.3
24.4
18.3
22.2
9
24
8
甲府
39.1
26.3
24.4
18.9
22.2
6
9
4
新潟
36.4
25.1
24.7
19.1
22.5
9
37
14
東京
38.9
27.0
24.8
19.4
22.8
9
63
19
35.1
26.9
25.2
21.1
23.4
25
160
50
福岡
36.9
27.6
25.3
21.0
23.5
35
256
53
大阪
36.0
28.1
25.7
20.7
24.1
15
181
50
相川
35.8
24.3
26.0
19.8
24.6
23
136
35
金沢
37.6
26.3
26.2
20.3
24.7
37
190
27
鹿児島
35.3
26.3
26.2
22.2
24.8
48
256
89
名古屋
37.0
27.3
26.2
20.8
24.9
63
237
23
那覇
33.3
28.5
26.3
23.5
25.0
124
1184
102
静岡
37.7
26.7
26.5
21.6
25.3
64
421
54
銚子
34.9
23.5
26.5
21.4
25.3
85
528
64
浜田
33.9
25.9
26.8
21.8
25.7
33
540
30
高知
37.1
27.1
26.9
22.2
25.9
72
675
97
潮岬
32.8
26.0
27.5
23.3
26.9
102
1021
70
室戸岬
31.9
25.2
27.8
23.0
27.4
92
1035
92

※ 地球温暖化の影響なのでしょうが、季節外れに暖かい日が続いたり寒い日があったりする異常な気象変動が数多く観測されるようになっています。


 冬、普通に暖房されている建物では屋外での結露を心配する必要はありません。ただし、空調が常時使われていない別荘などでは、躯体温度が著しく下がっているときに、急に暖かく湿った外気に晒されると逆転結露する恐れがあります。

 外断熱工法に使われる断熱材にはグラスウールやロックウールなどほとんど透湿抵抗のないものから、フォームグラスのようにまったく透湿しないものまで様々なものがあります。

 断熱と室内環境のなかの「四つの外断熱工法」では

1.ほとんど透湿抵抗のない断熱材        (鉱物繊維系断熱材)
2.コンクリートより小さい透湿抵抗を持つ断熱材 (発泡樹脂系断熱材、EPS、XPSなど)
3.コンクリートよりも大きな透湿抵抗を持つ断熱材(ロックセルボードなど)
4.まったく透湿しない断熱材          (フォームグラス)

に分けて水蒸気に対する適応性を紹介しました。

 寒冷地型の外断熱工法では一般に透湿抵抗の小さい断熱材で躯体を覆い、コンクリートを浸透した水蒸気をスムースに屋外に排除するのが一般的な方法で、1.、2.の断熱材がよく使われます。
 3.、4.の断熱材を使う場合でも水蒸気の通り道が出来ないように均等な防湿性能があれば(水蒸気のショートカット経路が出来なければ)局部的に水蒸気が凍結して凍害を起こす恐れはありません。

 夏に外気が持つ水蒸気量が大きくなる地域では透湿抵抗の小さい鉱物繊維系断熱材を使用すると逆転結露を招きやすくなります。
 熱容量の小さい木造住宅の充填断熱工法では気密・防湿シートの室内側に付加断熱をして冷房中の気密防湿シートの温度をやや高めに保つことが出来ますが、RC外断熱工法の建物ではこのような方法は躯体の蓄熱能力を減らすことになるので既存建物の断熱改修以外ではこういう方法を取ることはありません。

 建物を建てる地域の気候に応じて断熱材にどれだけの透湿抵抗を持たせるのが適当か? と考えることが適切な結露防止性能を持つ、健全な建物を造ることに繋がります。


 個別の断熱工法がどの地域に適しているかを技術的に判断することはそれほど難しいことではありませんが、各種の企業が参加している団体が客観的な判断を公表するには参加企業の利害に絡みます。

 ユーザーにとって「どの地域にどんな外断熱工法がふさわしいのか?」は重大な関心事ですが、これにきちんとした見解を示すところは今のところ当社以外にない筈です。




有限会社 日本外断熱総合研究所