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繊維系断熱材を使ったコンクリート建築物の外断熱工法
繊維系断熱材を使ったコンクリート建築物の外断熱工法は、欧米でも特に寒さの厳しい北欧で発展してきた断熱工法です。
ストックホルム、オスロなど北欧の都市では真夏でも月の平均気温が20℃を超えることがなく、常に室内の気温と水蒸気圧が外気よりも高い状態に保たれます。
私たちの日本でも、冷房をしない時代には床下など一部の例外を除いて、室温は外気温度と等しいか高いのが普通でした。
冷房を使わなければ外気温度と室内の温度に大きな差はありませんから、室内外の温度差・水蒸気圧の差が問題になることもありません。
冷房を使うとき、室内外の温度と水蒸気圧の関係は逆転する可能性を持ちます。室温=コンクリ−ト温度が外気の露点温度以下になれば、水蒸気の移動に抵抗力を持たない繊維系断熱材の内部にどんどん水蒸気が入り込み、コンクリート表面で結露を起こします。結露水が断熱材を濡らすと断熱材の繊維を癒着させ断熱性能を低下させます。 |
夏の気象
最高露点温度
地域ごとの外気が最大どれだけの水蒸気を含んでいるかを示す指標が最高露点温度です。
最高露点温度以下の温度で冷房する場合、繊維系断熱材を使ったRC外断熱工法や壁の室内側に気密・防湿層を持つ木造住宅では逆転結露を招きます。
最高露点温度が冷房設定温度マイナス3℃以上になる場所では壁の内部結露あるいは壁内部でカビや腐朽菌の発生を考慮する必要があります。
相対湿度の高い場所
さらに、相対湿度が高い状態で推移する地域では外気温度と外気の露点温度の間にあまり余裕がなく、RC外断熱工法のように大きな熱容量を持つ躯体は音頭変化が緩慢なため急に外気が含む水蒸気量が増えたとき結露を起こしやすい傾向があります。
各地の気象台では定時ごとに気温・湿度・風向など気象データを観測し発表しています。このデータはインターネット http://www.data.kishou.go.jp/ で公表されています。
このデータのうち、2004年6月10日から8月31日までの83日間について、札幌、石巻、東京、甲府、静岡、大阪、金沢、福岡、室戸岬、鹿児島、長野、秋田、新潟、呉、相川、名古屋、那覇、銚子、浜田、高知、潮岬の21ヶ所について気温と相対湿度のデータから露点温度を計算し、気温と露点温度のグラフを作りました。
計算は近似式 飽和水蒸気量=5.03×e0.061T を使用して飽和水蒸気量を求め、これに相対湿度を乗じて水蒸気量を求め、さらに前の式で逆算して露点温度T0を求めました。
グラフのデータのうち主な指標を下の表に示します。
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最高気温 |
平均気温 |
最高
露点温度
|
平均
露点温度
|
最高
水蒸気量
|
露点温度23.5℃以上
|
|
最大継続時間
|
延べ時間
|
回数
|
|
℃
|
℃
|
℃
|
℃
|
g/kg
|
時間
|
時間
|
回
|
|
長野
|
35.4
|
24.2
|
22.5
|
17.3
|
19.8
|
0
|
0
|
0
|
|
札幌
|
32.1
|
20.3
|
23.8
|
15.1
|
21.4
|
2
|
2
|
1
|
|
石巻
|
31.4
|
21.8
|
23.7
|
17.7
|
21.2
|
4
|
4
|
1
|
|
秋田
|
36.0
|
23.3
|
24.4
|
18.3
|
22.2
|
9
|
24
|
8
|
|
甲府
|
39.1
|
26.3
|
24.4
|
18.9
|
22.2
|
6
|
9
|
4
|
|
新潟
|
36.4
|
25.1
|
24.7
|
19.1
|
22.5
|
9
|
37
|
14
|
|
東京
|
38.9
|
27.0
|
24.8
|
19.4
|
22.8
|
9
|
63
|
19
|
|
呉
|
35.1
|
26.9
|
25.2
|
21.1
|
23.4
|
25
|
160
|
50
|
|
福岡
|
36.9
|
27.6
|
25.3
|
21.0
|
23.5
|
35
|
256
|
53
|
|
大阪
|
36.0
|
28.1
|
25.7
|
20.7
|
24.1
|
15
|
181
|
50
|
|
相川
|
35.8
|
24.3
|
26.0
|
19.8
|
24.6
|
23
|
136
|
35
|
|
金沢
|
37.6
|
26.3
|
26.2
|
20.3
|
24.7
|
37
|
190
|
27
|
|
鹿児島 |
35.3
|
26.3
|
26.2
|
22.2
|
24.8
|
48
|
256
|
89
|
|
名古屋 |
37.0
|
27.3
|
26.2
|
20.8
|
24.9
|
63
|
237
|
23
|
|
那覇
|
33.3
|
28.5
|
26.3
|
23.5
|
25.0
|
124
|
1184
|
102
|
|
静岡
|
37.7
|
26.7
|
26.5
|
21.6
|
25.3
|
64
|
421
|
54
|
|
銚子
|
34.9
|
23.5
|
26.5
|
21.4
|
25.3
|
85
|
528
|
64
|
|
浜田
|
33.9
|
25.9
|
26.8
|
21.8
|
25.7
|
33
|
540
|
30
|
|
高知
|
37.1
|
27.1
|
26.9
|
22.2
|
25.9
|
72
|
675
|
97
|
|
潮岬
|
32.8
|
26.0
|
27.5
|
23.3
|
26.9
|
102
|
1021
|
70
|
|
室戸岬 |
31.9
|
25.2
|
27.8
|
23.0
|
27.4
|
92
|
1035
|
92
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この表の最高露点温度は2004年06月10日から08月31日までのものです。
「蒸し暑い」と言われる日本の夏、各地で25℃を超える露点温度が観測され、沖縄の那覇よ
りも高い最高露点温度を記録する地点も見受けられます。
夏の最高露点温度が高いことはRC外断熱工法、木造充填断熱工法ではそれぞれ定常分析図で赤い印をつけた外気側の気温と露点温度の差が小さいことを意味して、コンクリート系外断熱工法ではコンクリート表面に、木造住宅の充填断熱工法では防湿層に結露を発生させやすくなります。
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逆転結露に対する安全性を確保するには過去数年間にわたるデータの検証と、将来の気候
変動による影響を考慮する必要があります。
繊維系断熱材を使った鉄筋コンクリートの外断熱工法では躯体温度が露点温度を下回る
と、冷たいコップの表面に水滴が付くように躯体表面に結露が発生します。
躯体温度が露点温度よりも高いときでも、露点温度との差が1.7℃になると相対湿度は90%
に、露点温度と気温の差が3.6℃あっても相対湿度は80%とカビの発生しやすい状態になります。
外気の水蒸気量の多い地域では、最高水蒸気量と冷房設定温度、さらに高湿状態の継続時
間に配慮して適切な断熱工法を選択する必要があります。
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1.夏の気温と露点温度の差が小さいパターン(海洋型)
一日の温度変化幅が小さく湿度が高い
海水温の影響で日間温度変動幅が小さい。露点温度は気温変動域に接近(あるいは重複)
して湿度が上昇したときに結露発生のリスクが高い。
2.準海洋型 露点温度が気温に接近する海洋型に近いタイプ
最高露点温度が最低気温よりたまに低くなる。
3.臨海型 露点温度が比較的高いが気温と露点温度の間に差が認められるタイプ
空調をしない限り急激に気温が上昇する梅雨末期から夏の初めに掛けてを除いて夏型結露
のリスクは高くない。
冷房設定温度を最高露点温度+3℃異常にする場合は夏型結露に対する懸念は少ない。
4.内陸タイプ
露点温度は比較的低いが、最高−最低気温差がおおきい。
気温の変動幅が大きい。露点温度の最大値は23℃を大きく超えることはない。
室温が適切な範囲に保たれていれば夏の結露リスクは最も少ない。
夏の逆転結露はRC外断熱工法ではRC躯体表面で、充填断熱工法では気密・防湿層の屋外側表面に発生します。
逆に言えばRC躯体表面や気密・防湿層表面に結露が発生しないような壁構成とすることで結露発生を回避することができます。 |
これら5ヶ所のデータでは冷房温度を27℃以上にしても躯体表面の相対湿度は90%をこえ
ることがあります。(室戸岬では 100%を超え実際に結露が起きます。)
これらの地域では室内の不快指数を全員が快適と感じる70以下に抑えようとすれば躯体表
面に結露する状態が長時間継続することになり、好ましいことではありません。
補足説明
以上の説明は、冷房中に冷やされたコンクリート表面で害期中の水蒸気が結露を起こすことを想定して書いてきました。
ところが、室戸・潮岬・銚子・石巻など外洋に面した観測地でCDD(冷房度日)を計算すると意外に低い値を示します。CDDの値は 断熱と「省エネ・耐久」>暖房度日と冷房度日 に示したのでそちらをご覧ください。
これら比較的気温の低い海辺の町でRC外断熱工法や木造高断熱工法の住まいを造れば、冷房稼働時間はかなり少ない筈です。
そこで、最高露点温度を記録した日を含む過去一週間の平均気温と観測された最高露点温度を対比してみました。冷房のない場合、躯体の温度は過去一週間の平均気温に近い数値を示すものと想像されるからです。
最高露点温度(Y軸)と過去1週間の平均気温(X軸)をプロットしたものが次の図です。
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上の図の対角線は観測された最大露点温度とその前1週間の平均気温が等しかったことを示します。ある土地のポイントが左上にあるほど露点温度がその前の平均気温より高かったことを示しています。逆に右下にプロットされるほど最高露点温度は直前一週間の平均気温よりも低かったことを示します。
銚子・室戸など左上にプロットされた都市では冷房しなくても繊維系断熱材を使えば逆転結露が起こる恐れがありますし、長野・新潟などでは極端な冷房をしない限り繊維系断熱材を使うリスクはないと言えます。
梅雨明け直後を含めた結露リスクを評価するには、断熱仕様に基づいて躯体温度と壁の中の水蒸気量をシュミレーションして結露リスクを評価する必要があります。
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