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逆転結露の可能性について
土地にはそれぞれの特徴的な気候があります。
日本の気候は高温多湿な特徴を持つと言われますが、北海道から沖縄まで南北に大きな広がりを持ち、また内陸と臨海地方、冬に日本海を吹く季節風が高湿な空気を運ぶ日本海沿岸と乾燥した冬を特徴とする太平洋岸など狭い日本の中でも大きな機構の違いがあります。
ここで、初めに検討するのは「逆転結露」という現象です。外断熱工法のコンクリート建築物等の躯体温度は外気温度が上昇してもなかなか上昇しません。一方、外気温度が上昇し湿度も高くなると外気が含む水蒸気が結露を起こす温度(露点温度)も上昇します。
次の図は日本で最も逆転結露が起こりやすいと思われる室戸岬の気象条件で、冷房も暖房もしないときの建物の躯体温度と、外気の含む水蒸気量から躯体コンクリートの外側の湿度を計算したものです。
以下の検討でも同じ下地の色を使っていますが、黄色に塗った相対湿度が80%を超える部分では結露がなくても温度条件が整えばカビが発生すると言われている湿度域を、白く塗った相対湿度が 100%を越える部分は結露域です。
一般には冬は暖房されているので躯体温度が20℃前後に保たれているので結露が起きることはありません。しかし、長期間空き家になっているような場合、夏よりも冬から春にかけて繰り返し逆転結露に襲われる可能性があることを下の図は示しています。

次に同じ室戸で暖房温度を20℃、冷房温度を26℃と28℃に設定したときに外気の露点温度と建物の躯体温度がどんな関係になるかを見ることにします。
暖房で室温が20℃に保たれている間は12月初頭の1回を除いて実際に結露が起きることはないようです。春から夏にかけて建物の温度が上昇しない内に年に10回あまり逆転結露を起こすようです。
夏の高温な時期には冷房設定温度を28℃に維持すれば逆転結露が結露が起きることはないと考えていいと思います。

しかし、室温を28℃に維持したとき、室内の湿度は85%を超えることもあります。
窓を閉め切って眠ることができなくて窓を開けられる環境なら、風を入れて体感温度を下げることもできますが、密閉どの高い静粛な室内環境に慣れると窓を開けて眠ることができなくなると言います。
窓を閉めて快適に眠るためには除湿のために冷房設定温度を26℃程度まで下げることがあると考えておかなければなりません。
下の図は桃色が冷房設定温度を28℃としたときの躯体表面湿度、紺色は冷房温度を26℃に下げたときの躯体表面湿度です。

7〜8月にかけて冷房温度を28℃に設定するとほとんど逆転結露が発生しませんが、冷房温度を26℃にすると2ヶ月間に10日余りも逆転結露が起きるようになります。
冷房温度を28度以下にすることについてチームマイナス6%の議論もありますが、しっかり断熱した建物で地中熱や太陽熱を使えば従来の平均的な住宅に比べて70%以上のエネルギーを節約しながら26度の冷房温度を維持することができます。
断熱を改善しないでエネルギー節減のために多少の暑さ寒さを我慢すべきだと考えることが問題なのではないでしょうか?
このグラフを見てどのようにお感じになったでしょうか?
「 100%を超えても少しだけだから大したことはない。」それとも「春から秋に湿度が80%以上の状態が連続して、壁の裏に隠れて見えない部分はカビだらけになるのではないか?」どちらでしょう?
私は、「80%を超える湿度には問題がある」と考えます。このような条件の場所で繊維系断熱材を使うのは問題であり、日本の多くの場所で透湿抵抗のある樹脂系断熱材を使うほうが望ましいでしょうす。
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前のページでは各地の夏の気温と露点温度を比較して逆転結露の起きやすさを推定するヒントにしましたが、実際の建物の躯体温度と外気の露点温度をつき合わせて見なければ結露の危険は確かめられません。
札幌、東京、静岡、金沢のうち最も逆転結露が起きやすいと思われる静岡を例にとって建物の躯体温度と外気の露点温度がどのような関係になるかシミュレーションしてみました。
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1. |
5月に入って気温が20℃を超えるようになると水蒸気量も増加します。熱容量が大きく熱損失率の小さい外断熱建築物の躯体温度は外気温度よりもゆっくり上昇するので、逆転結露が起きやすい情況になります。 |
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2. |
真夏の暑い時期、外気の露点温度は最高26℃台を記録します。冷房を28℃に設定すれば逆転結露は起きないはずです。
湿度の高い夏の期間、窓を閉めて就寝するときには室内湿度が上昇し寝苦しい時期があります。除湿のためにエアコンを掛けるとき、冷房温度が26℃程度まで下げられると逆転結露を起こすリスクが高まります。 |
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3. |
2004年12月 5日日本を覆った低気圧に向けて南海上から湿気を含んだ空気が運ばれ、東
京や静岡には季節外れの湿った空気が吹き込みました。 |
札幌では外気の露点温度が躯体温度を上回ることはそう多くないと思いますが、関東甲信越以西の本州沿岸地域では静岡や東京のシミュレーションに示されるように躯体温度と外気露天温度は極めて接近しやすくなっています。
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上の図は2004年の年間気象データに基づき、外気の露点温度と外断熱工法の建物の躯体温度を比較し、さらにそのときの壁表面の相対湿度を示したものです。
金沢や東京では躯体温度がまだ上昇しない5・6月に外気の露点温度が躯体温度に接近します。
7・8月の夏の盛りには躯体温度も冷房設定温度にほぼ落ち着くので、東京では余程低い冷房設定温度にしない限り逆転結露が起きる可能性はありませんが、梅雨寒や秋雨の時期に逆転結露が起こりやすい時期があります。
金沢では外気の露点温度が26℃に達することがあり、このときの相対湿度は90%を超えることもありえます。除湿のために冷房を掛けたために躯体温度を下げることになることがあることを忘れると結露によりコンクリートに吸湿させる原因になります。
逆転結露の起きやすさを見るには建物の熱容量、Q値、建物内部での内部発熱の大きさなどをきちんと評価する必要があります。
熱容量が特に大きい建物でQ値を特別小さくし、省エネを徹底して内部発熱を抑えた建物で繊維系断熱材による乾式外断熱をすると逆転結露のリスクを大きくすることになります。
もう5年ほど前に学生時代の恩師に外断熱工法の話をしたときに、「君は沖縄のような温
暖な場所でも外断熱工法が適当だと思っているのかね?」と言われたことがあります。
当時、「冷房負荷にしても断熱があれば削減できるはずなのに?」と怪訝な思いをした記
憶がありますが、先生の指摘は「繊維系断熱材を使った外断熱工法で躯体温度が外気の露点
温度を下回ることがあるのではないか、そのときの逆転結露の問題をどう考えるのか?」と
言うものだったのだということが判ってきました。
確かに、「毎年確実に逆転結露が起きる」ほど大きなリスクではなくても、リスクの存在
があることを知ってリスクを冒すべきではありません。
外断熱工法全体が逆転結露に対処できないのではなく、繊維系断熱材を使った外断熱工法
が逆転結露のリスクを持つのですから、関東以西の沿岸地域では相当の透湿抵抗を持つ樹脂
系断熱材を使うことで快適で省エネな外断熱工法が実現できるのですから、繊維系断熱材に
拘らなければならない理由はどこにあるのでしょうか? |

那覇の気温の変化幅は本州に比べて小さく、躯体コンクリート温度も3月から徐々に上昇を始めます。逆転結露が起きるかどうかは冷房温度を何度に設定するかにかかっています。
室内気温だけを考えれば28℃以上で冷房していれば結露を起こすことはないと思いますが、除湿のために冷房温度を26℃まで下げると躯体の外側は湿度90%以上の湿潤な状態が続きます。

冷房期間中、28℃に冷房を設定してもほぼ連日相対湿度が80%を超える日が続きます。除湿などのために冷房をやや強めに掛け、冷房設定温度を26℃にすると8月は連日95%を超える相対湿度となります。
相対湿度が1日に3時間以上80%を超える日が連続するとカビが著しく繁殖すると言われています。気温が5℃を超えるとカビは活性化し、20℃を超えると激しい繁殖を示します。
夏の断熱材とコンクリートの境目の湿度が高くなることに問題があります。
また、高湿になるとコンクリートが平衡含水比まで水分を吸収し、あわせてコンクリートを中性化させる炭酸ガスも水に溶けた形でコンクリート中に浸入します。
コンクリートの耐久性を保つためにも高温多湿な地域で透湿抵抗の小さい繊維系断熱材を使った外断熱工法には問題があります。
札幌で外断熱工法の建物を建てたとき、冷房温度を28℃に設定すればほとんど冷房が稼動することはありません。冷房設定温度を26℃にしても年に数日冷房を使う程度で内断熱工法の建物はともかく、外断熱工法なら「冷房はなくても苦にならない」と言えるでしょう。


このシミュレーションでは表現できませんが、梅雨時の外気の湿度は80%を超えることがあります。窓を開け風を入れれば眠れない気温ではないのですが、樹脂サッシを使った外断熱建築物に慣れてしまうと窓を開けて寝られなくなるというお話を伺いました。
睡眠中の人体からは1時間に 30gの水蒸気が出ていますから、狭い部屋で2時間に1回の換気をしていても明け方には90%を超える湿度になることがあります。
除湿のためにエアコンを運転し、躯体温度を下げてしまうなど計算外の結露リスクも存在します。
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最近、私は換気用外気を井戸水や地熱で熱交換することを提案しています。このような換
気は空調のように正確に室内温度をコントロールすることはできませんが、下の図のように
一般の冷房をしたときに比べて冷房期間を1/3程度に短縮する効果があります。
躯体温度がやや低くなる傾向があるので、関東より西の地方で地中熱利用を考える場合の
外断熱用断熱材としては透湿抵抗があり水蒸気を躯体に寄せ付けにくい樹脂系断熱材を使用
すべきです。
樹脂系断熱材を使った外断熱工法では断熱材の透湿抵抗によって躯体表面の水蒸気量が抑
えられるため結露が起きることはほとんどありません。また計算上結露が起きる場合でも繊
維系断熱材の 1/100未満の極少量の結露にとどまります。
これは、内断熱工法が結露の元凶のように言われながら一般部分より熱橋部分や極めて低
温のときの内装仕上面に結露が起き、定常分析図で結露が起きるといわれる断熱材とコンク
リートの境界面で結露が起きないのと同じ理屈が働いています。
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この項ではまだ充分に説明できていないことが多くあります。
関西、四国、九州など地域を増やして逆転結露のリスクを検証すること、冬型結露の防止の観点から繊維系断熱材の仕様が望ましい地域の特定、温暖な沖縄などにおける適切な断熱仕様の考え方など順次内容を書き足したいと考えています。
RC外断熱工法で逆転結露やそれに近い湿気の害を防ぐための方策について、「逆転結露のおきにくい断熱工法」に解説しています。 |
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