断熱・気密・防湿                                 有限会社 日本外断熱総合研究所
3-7日本の気象と断熱工法 (4/6)
日本の気象と断熱工法
君は沖縄にまで外断熱工法が正しいと思うのかね? 日本の気象の特色 ・夏の気象と断熱工法
地域の気候特性と結露の危険 ・各地の結露特性 各地の結露特性2 逆転結露の起きにくい外断熱工法
冬の気象と断熱工法 ・冬の結露を防ぐには
 

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逆転結露の起きにくい外断熱工法

逆転結露が起きるのは外気の水蒸気圧と温度が高い状態で、熱抵抗が大きく透湿抵抗が小さ
い断熱材の室内側で温度が低下して水蒸気圧は下がらない状態になると逆転結露が起きる状
態になります。

図-1繊維系断熱材によるRC外断熱工法

図-2,3 繊維系断熱材による木造断熱工法


 RC外断熱工法で逆転結露を起きにくくするには

 1.樹脂系断熱材を使って躯体外側の透湿抵抗を大きくする。


図-4 樹脂断熱材によるRC外断熱工法

ことがおそらく唯一の解決策になると思います。また繊維系断熱材を使う充填断熱工法では

 2.気密・防湿層を高温になる屋外側に移動させる。

ことでよい結果が期待できることがあります。

 図 -3でも判るように逆転結露を防ぐには気密防湿層が屋外側に移動するほど安全になり
ますが、冬の結露対策では気密・防湿層が室内側に移動するほど安全です。

 かといって、屋外側と室内側の両方に気密・防湿層を設けると二枚の気密防湿層に挟まれ
た部分が乾燥しにくい状態になり、建物をいためる原因になります。

 付加断熱による断熱材の中間に気密・防湿層を設ける方法は、夏と冬のどちらにも結露し
ない気密・防湿層の位置を探り当てようとするもので、どんな場合でも適切な気密防湿層の
位置が求まるとは限りません。付加断熱で充分な結露防止ができない環境では

 3.樹脂系断熱材による断熱を採用する。

ことを考える必要もあるでしょう。

 1の方法は繊維系断熱材の変わりにある程度の透湿抵抗(繊維系断熱材の約40倍、コン
クリートの約半分)を持つ樹脂系断熱材を使用することで比較的簡単に実用化できます。
 断熱材のジョイント部分は一種の防湿層になるので、防湿シールをする、あるいは全面を
躯体に密着させるといった施工上の配慮が必要なことはいうまでもありません。

 2の方法は木造住宅の気密・防湿層の温度を上昇させるために断熱材を気密・防湿層の外
側に2/3、内側に1/3配分する方法が知られています。木造住宅の断熱材表面、あるい
は外断熱RC建築物の外壁室内側表面では室内の相対湿度が100%にならないかぎり結露
は起こりません。その余裕の範囲で気密・防湿層の外側の断熱材を気密・防湿層の内側にま
わせば、夏の躯体温度は室内の冷房温度より僅かに上昇し、逆転結露が起こり難くなるとい
うわけです。


 前のページで検討した外気の最高露点温度をいくつかのグループに分け、繊維系断熱材と
樹脂系断熱材を使った外断熱工法の結露計算(定常分析)の結果を比較することによって、
その性能を確認します。

グループ
地点
最高露点
温度
想定気温
相対湿度 水蒸気量 露点温度23.5℃以上
最大継続時間 延べ時間 回数
g/kg
時間
時間
長野
札幌
石巻
22.48
27.5
80
20.8
0
0
0
23.80
2
2
1
23.65
4
4
1
甲府
24.40
28.1
80
21.6
6
9
4
新潟
東京
福岡
大阪
24.66
29.4
80
23.4
9
37
14
24.80
9
63
19
25.34
35
256
58
25.74
15
181
50
相川
金沢
鹿児島
名古屋
那覇
26.13
29.8
80
24.2
29
136
35
26.13
37
190
27
26.19
48
565
89
26.22
63
237
23
26.29
124
1184
102
静岡
銚子
浜田
26.52
30.4
80
24.6
64
421
54
26.54
85
528
64
26.78
33
540
80
室戸岬
27.78
31.4
80
26.5
92
1035
92


@透湿抵抗を持つ樹脂系断熱材を使用する方法
 グループ1 札幌・石巻
 繊維系断熱材を使っても樹脂系断熱材を使っても結露発生に大きな差が見られない。


 外断熱工法の室温と外気の露点温度を比較すると躯体表面における結露リスクを確認する
ことができます。札幌では下の図のように室温が露点温度より高い状態に保たれています。




 グループ2 甲府
 繊維系断熱材を使う場合、ややコンクリート面の相対湿度が高くなる。空調温度の厳密な
管理をすれば逆転結露は避けられる。


 甲府では梅雨末期の段階で外気露点温度が室温に近づきますが、ほぼ安全な状態が維持さ
れます。




 グループ3 東京・大阪・福岡
 繊維系断熱材を使う場合、かなりコンクリート面の相対湿度が高くなる。水蒸気量が増え
たり、空調温度が低めに設定されたりすると結露が置きやすい状態になりやすい。樹脂系断
熱材を使う場合、結露発生防止効果が認められる。


 東京では梅雨末期に急激に上昇した露点温度がゆっくり上昇する室温を越える時期があり
ます。その後も結露にはいたらないもののカビの発生の心配があります。
 冷房温度を26℃あたりに設定するときには繊維系断熱材を使うべきではないでしょう。




 グループ4 那覇
 繊維系断熱材を使う場合、室温を26℃に設定してコンクリート面で結露寸前の状態にな
る。水蒸気量が増えたり、空調温度が低めに設定されたりすると結露が発生する。樹脂系断
熱材を使う場合、結露発生防止効果が認められる。


 下の図ではシミュレーション開始直後の結露に室温を低く見すぎている可能性がありま
す。
 冬の室内側の気密・防湿層をほとんど必要としない那覇では繊維系断熱材は使用すべきで
ないかもしれません。




 グループ5 金沢・鹿児島・浜田・静岡
 繊維系断熱材を使う場合、室温を26℃に設定してコンクリート面で結露が発生する。樹
脂系断熱材には、結露発生防止効果が認められる。


 上の那覇に比べて外気の露点温度の変動が大きく、カビ発生リスクが高い時期があり、梅
雨末期から梅雨明けに掛けて数度結露が起きます。
 繊維系断熱材の使用は望ましくありません。




 グループ6 室戸岬
 繊維系断熱材を使う場合、室温を26℃に設定してコンクリート面で激しい結露が発生す
る。樹脂系断熱材には、結露発生防止効果が認められる。


 室戸では躯体温度が充分に上がるまでの約1ヶ月間にわたって外気の露点温度と躯体温度
を示すグラフが干渉しあっています。
 どんな設定温度で冷房するにしても繊維系断熱材を使って断熱すべきではない環境です。





 定常分析の図を比較すると繊維系断熱材(MW)内では外気の露点温度がそのままコンク
リートに伝わるのに対して、樹脂系断熱材内部ではコンクリート内での勾配に比べれば半分
程度になるものの水蒸気圧が減らされる結果,露点温度が3℃程度低くなるので、結露防止効
果が発揮されます。
 いずれの例でも室内は26℃−50%に保つことを前提にしていて、室内が除湿されてい
ないと断熱材とコンクリート中には水蒸気圧勾配が発生しないので結露防止効果を期待する
ことはできません。

A 室内側に断熱材の一部を配置して躯体温度を上げる方法
 グループ1 札幌・石巻  グループ2 甲府
 省略(外気温度と室内温度の差が小さく断熱材を室内側に使う意味がない)


 グループ3 東京・大阪・福岡

 コンクリート外側の相対湿度が96%から91%に改善し、結露防止にやや効果が認められ
る。

 グループ4 金沢・鹿児島・那覇

 コンクリート外側の相対湿度が98%から92%に改善し、結露防止にやや効果が認められ
る。

 グループ5 静岡・浜田

 想定した条件で,境界の相対湿度は101%から95%に改善します。しかし。結露しやすい状
態が解消されるとは言えません。

 グループ6 室戸岬

 107%の結露状態が98%の結露寸前の状態まで改善されます。しかし、この状態が安全なも
のと考えるのは適当ではありません。


まとめ
 高温多湿下で高湿となるコンクリート表面の相対湿度を抑える断熱方法として樹脂系断熱
材を使う方法と繊維系断熱材による両面断熱の方法について定常解析により安全性を比較し
てきました。
 下の表に示したように、コンクリート表面の相対湿度は繊維系断熱材を使った外断熱工法
>外側に繊維系断熱材を使った両面断熱工法>樹脂系断熱材を使った外断熱工法の順に高い
値を示します。
 繊維系断熱材(MW)を使う場合は水上気圧の年最高値に対してコンクリート表面の相対
湿度が90%を超えないような配慮が望ましいものと思います。
 数少ない地点の検討結果ではありますが、東北・北海道の全域、本州の内陸部の多くの地
域で繊維系断熱材を使った外断熱工法は適切に機能すると思われます。
 しかし、臨海・沿岸地域では樹脂系断熱材の使用が適切だと思います。両面断熱工法は外
気温度が高い場合に結露防止効果が期待できますが、水蒸気量が多い場合にはコンクリート
表面の相対湿度を充分に下げきれない傾向があります。関東ややや内陸よりの最高露点温度
が25℃未満の地域では活用できるとしても、関東以西の海沿いの地域ではコンクリート表面
の相対湿度上昇を防ぐことはできません。

グループ
地点
最高露点
温度
想定気温
相対湿度 水蒸気量
コンクリート外側の相対湿度
g/kg
繊維系断熱 樹脂系断熱 両面断熱
札幌
石巻
23.80
27.5
80
20.8
86.7%
75.6%
85.0%
23.65
甲府
24.40
28.1
80
21.6
89.5%
80.2%
86.6%
東京
福岡
大阪
24.80
29.4
80
23.4
96.0%
82.7%
91.0%
25.34
25.74
金沢
鹿児島
那覇
26.13
29.8
80
24.2
98.1%
84.2%
92.4%
26.19
26.29
静岡
浜田
26.52
30.4
80
24.6
101%
86.6%
94.5%
26.19
室戸岬
27.78
31.4
80
26.5
107%
90.8%
98.0%

 ここに示した検討は室温(=躯体温度)を26℃に設定したときのものです。さらに空調
温度を下げる場合には逆転結露の危険性が増加します。


 内断熱の建築物では一般部分の躯体は太陽の輻射熱で暖められ、温度が高くなっているの
で逆転結露が発生することはありませんが、結露よりはるかに大量の雨水に濡れ結露以上の
ダメージを受けます。また、地盤に接する部分は露点温度に比べてはるかに低温になり、恒
常的な逆転結露が起きる危険を孕んでいます。さらに空調エネルギー使用量は外断熱工法の
建築物に比べて約5倍に増加します。

 人が、自分の「暑い・寒い」と感じる感覚に従って空調を操作すると結露を招く恐れのあ
る建築物は「一種の欠陥建築物」といえるのではないでしょうか?

 「断熱材がコンクリートの外側にあれば『外断熱建築物』となり、その性能は同等のもの
だ」といった感覚の外断熱工法がで市場に多く氾濫しています。

 私たちは「断熱材が外側にあるだけではなく、充分な断熱性能や熱橋対策が必要なこと」
を繰り返し発表してきました。

 今回、日本の夏の水蒸気量を調査した結果、日本の大部分の地域ではこれまで述べてきた
対策に加えて、夏のコンクリート表面の水蒸気量を減らす工夫にも留意すべきです。

 このページのコンクリート表面の相対湿度を上昇させにくい外断熱工法の定常分析結果
は、どの断熱工法を採用すべきか比較する場合の指針になります。

 建設地の気象条件に配慮した適切な外断熱工法を選択し、使いやすい建物を建てるために
お役立て下さい。



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