省エネな家造りの進め方 第三章 水は建物の敵
 第一章 準備段階 第二章 建物の省エネ性能を数値でつかむ 第三章 水は建物の敵 第四章 相談相手を選ぶ
 第五章 次に家を壊すまでのお金のことを考えてみよう 第六章 皆さんの問題を解決しましょう

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 数日前に書き始めたこの項も、第三章に入りました。

 今回は湿気による被害を避けることについて書こうと思います。
 じめじめと湿気の多い建物はカビや害虫の発生など建物の衛生環境としても問題がありますが、同時に建物を傷め耐用年数を縮める原因にもなります。

第三章 水は建物の敵
 私たち日本人は味噌、醤油、納豆、酒、漬物・・・・多数の発酵食品に囲まれて生きてきました。

 カビが作り出す食品を日常的に食べ、お餅などはカビが生えても水餅にする習慣を持っていた日本人は世界でもカビに対して鷹揚な民族かもしれません。

 梅雨前後には外気の湿度が80〜90%、ときには 100%を記録することもある日本で、部屋の湿度を最高でも80%を超えないように管理しなければならないと言えば多くの方が「それは無理だ」と思うでしょう。
 カビや湿気に対する鷹揚さは日本の気候風土に深く根ざしています。

 日本人と比べてヨーロッパ人はカビ毒(マイコトキシン)やカビアレルギーに対して非常に神経質な態度で接します。日本酒の製造過程で麹カビが使われるといって輸入禁止になったことさえありました。


 一時、「木造住宅で結露やカビを防ぐには高気密・高断熱が不可欠である」といわれていたことがありました。今でもそう言う人がいるでしょう。
 でも、「断熱と気密に配慮すれば結露やカビは防げるのでしょうか?」
 私もその答が「Yes」だと思っていた時期がありました。

 しかし、「結露問題は解決済み」と言われるヨーロッパで多くの湿気問題を抱えた建物があることを知り、結露は湿気問題のほんの一部でしかないと思うようになりました。
 建物の湿気によるトラブルの原因が結露によるもの以外絶対に起きないのなら、前の問いへの答えは「Yes」で良いのかもしれません。

 建物に損害を与える湿気には多くのものがあります。

 それらを単純に区分すると次のようなケースに分けることが出来ます。

1.  室内の水蒸気が低温部分で水に変わるもの。    (結露)
2.  給排水配管からの漏れによるもの。        (漏水)
3.  使用材料が多量の水を含んでいたもの。      (水濡れ)
4.  屋根や壁のクラックなどから雨水が浸入するもの  (雨漏り)
5.  土間や地下壁のクラックから表流水が浸入するもの (漏水)

 これらいずれかの原因で建物内部に湿気が入るとしても、速やかに乾燥する場合はトラブルに発展することがありません。反対に湿気を建物の内部に封じ込めてしまうと建物に重大な損害を生じさせます。


主な湿気対策
結露防止
 熱橋を生じないように断熱する。(外断熱工法が好ましい)

 内断熱工法の中でも複合板によるGL工法は激しい結露の原因になります。
 公団方式などと呼ばれた複合板による断熱は本来密着貼りが原則ですが、コスト削減のためにGL工法で施工されることがあり問題を起こします。

 室内の温度が暖房時よりも5℃以上下がらないようにする。

 暖房のない部屋(押入)などを作らない。全体の温度差を5℃以内に抑える。

 木造の建物では適切に気密・防湿対策を講じる。またはセルロースファイバーなど吸湿性の有る断熱材を適切に使う。


漏水防止
 設備配管や浴室の床からの漏水を防ぐ。

 埋設配管を避け鞘管を使うなど漏水があっても容易に点検修理が出来る構造にする。


雨養生と水蒸気を篭らせない設計
 雨の多い日本の気候では木造住宅の建前から屋根付記工事が終るまでに雨が降り出して木材や構造用合板その他の建材が雨水を含んでしまうことが多くあります。

 木材は水に濡れると木材繊維中に最大で重量の30%近い水を含むことになります。
 木材繊維中に含まれた水は温度が上がり相対湿度が下がると木材繊維中から空気に放出されますが、そこで気温が下がると再び水に戻る(結露する)原因になります。

 構造材だけでなく吸水性を持つ建材を現場で保管するときには雨に濡れないよう確実に養生していることを確かめてください。

 建物に例えば防湿シートと樹脂系断熱材の間にグラスウールを充填するなど両面を透湿抵抗の大きい素材で囲まれた部分があると、この部分に一旦水が入るとなかなか乾燥させることが困難になります。雨養生と並んで、水蒸気を篭らせない設計をすることが大切です。


雨漏りは早く見つけよう
 防湿シートを使った高気密高断熱住宅では雨漏りを見つけるのが難しいかもしれません。注意してもなくならないのが雨漏りですが、建ててみないとあるかどうかもわからないのが雨漏りです。事前に立てられる対策はほとんどありません。


地盤からの漏水
 地下室や半地下室で多いのはこのタイプの漏水です。
 地下水位よりも深いところに地下室を造るときには充分な止水を織り込みますが、地下水位より高い位置の地下室・半地下室では充分な配慮を欠くこともあります。
 大雨の後などに土の中の水道に当たる部分にクラックなどがあるとそこから室内に水が浸透してくることになります。

 サイトの中で何度もお話していますが、建物周囲の土中には透水管を埋設して、基礎底盤の深さまで人工排水により水圧を持った水が室内側に浸透しない措置を講じるようにします。基礎の埋め戻しに粘土質の土を使うことも避けるようにして砂礫、リサイクル砕石など水はけの良い埋め戻し材料を使用します。

 地下室・半地下室の床スラブ部分に土間配筋は禁物です。土間配筋した床には必ずクラックができます。

 土間配筋は最も工事費が少なく、スラブ配筋がこれに継ぐ安さですが、クラックを生じないよう耐圧版仕様のベタ基礎とすることが問題のおきにくい対策になります。

 「安物解の銭失い」というように、安いからといって耐久性のない建物を造ると、必ずよくない結果が待っています。

 水と湿気に対する配慮はしすぎることがありません。日本の建築設計ではここに書いた内容について無頓着に計画が進められることが多いので発注者であるあなたがしっかり目を光らせてください。


 梅雨時の除湿に、自然エネルギーとして注目している地下水と換気で取り入れる外気の熱交換が有効に作用するはずです。16℃の井戸水と熱交換して20℃まで気温を下げた外気の含む水蒸気はおよそ15g/Kg、室温が26℃あっても湿度は70%になります。
(つづく)


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