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この項目は「暫定稿」です。
排気量や最大出力、最高速度のような指標で表わされた自動車の性能が自動車そのものの評価だと思っていた時代がありました。
これを建物の断熱性能に例えれば、使われている断熱材の厚さや、建物のQ値の小ささが建物の性能であると考えていたことと変わらないような気がします。
今、「車の性能を何で測るか?」と尋ねたら、多くの人が「『乗り心地』と『燃費』を両立させること」と答えるでしょう。「燃費」と言っても定速で高速道路を走るときのものではなく、信号や渋滞にあわせて実際に必要とする燃料を踏まえたものでなければ意味がありません。
家を評価する場合でも「断熱材がどれだけの厚さで使われているか?」、「Q値がどれだけになるか?」よりも「1年間にどれだけのエネルギーを必要とするか?」の方が重要な問題です。
「エネルギー」も初めは空調エネルギーだけを減らすことを考えていればいいと思っていましたが、給湯や照明を含むすべての消費エネルギーの削減が俎上に上げられるようになりました。
私も少し前まで、「Q値がどれだけになるか?」と「1年間にどれだけの空調エネルギーを必要とするか?」は同じことを別の見方で表わしていると思っていましたから、前の文章を読んで不思議に思われた型もあると思います。
同じQ値を持つ建物でも日射に代表されるダイレクトゲインなどパッシブエネルギーや自然エネルギーの活用の仕方が違えば必要とする購入エネルギーに差を生じることに気づいてくだされば、私が言いたいことを理解していただけるでしょう。
ヨーロッパを中心に住宅の消費エネルギーをどんどん減らす試みが行なわれています。
ここで「間違いだらけの外断熱」に含めたいものは、お金を掛ける割に最適性や省エネ性の結果が出せない、いわば「外断熱工法であること」や「断熱材の厚さ」に自己満足しなければならないメリットの少ない外断熱工法です。 |
建物の断熱性能がどんなに優れていても、
造り方や使い方が間違っていれば何の意味もありません。
設計者と発注者が「どんな温熱性能の建物をつくるか?」、「建物を快適に使うには毎年どれだけのエネルギーと空調費用を必要とするか?」を確認しながら建物を造りましょう。
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「鉄筋コンクリート造の建物では、内断熱工法に比べて外断熱工法のほうが遥かに優れている
らしい」という認識は建築を職業とする建築士の間にも漸く知れ渡ってきたようです。
私のところにも外断熱工法で設計をしてみたいと考えた建築事務所や施主から様々なお問い合
わせを戴くようになりました。
「外断熱工法で鉄筋コンクリートの住宅を設計したいんですが、どんな断熱
材を使ってどんな外装をすればいいでしょうか?断熱材と外装材の間には通気
層を取りたいと思っています。」
その答だけを聞き出せればあとは自分で設計を進めるからお前には用はないと思っているのが
手に取るように判るこんな質問をされると、私は次のような質問をすることにしています。
「外断熱で設計されたことはありますか?」
基礎的な質問をしてきた建築士が不思議なことに「はい、経験があります」と返事を返してく
ることに驚きながら、私は次のように話を続けます。
「断熱材と外装材の間に通気層を取る外断熱工法は一般に鉱物繊維系断熱材
を使う乾式断熱工法で、冬の断熱材内部での結露を防止するには有効ですが、
夏の逆転結露を防止する力はほとんどありません。」
「北欧など厳しい冬を過ごす地域では鉱物繊維系断熱材を使った外断熱工法
が最適ですが、日本のように高温多湿な地域では「水蒸気を透しやすい鉱物繊
維系断熱材を使う外断熱工法よりも、水蒸気を透し難い発泡樹脂系断熱材を使
った外断熱工法のほうが望ましい」と言えます。
外断熱工法を使って熱容量の大きい鉄筋コンクリート建築物を設計するときには、次の三つの
ポイントを押さえ、建設地の気候条件にあった設計をしなければ外断熱の建物として本来持たな
ければならない性能を備えることができないばかりでなく、却って使いにくく余分なエネルギー
を使う不経済な建物を造ることになります。
1.何を基準にどんな素材を使った外断熱工法を選べばいいか?
2.どれだけの断熱性能を持たせれば毎年の年間冷暖房費をどれだけに抑えられるか?
3.空調設備・換気設備と断熱計画は適切に組み合わされているか?
建物ができたあとになって欠陥を見つけたとしても手遅れです。
大きな費用を掛けなければ改修することさえ侭なりません。
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1.何を基準にどんな素材を使った外断熱工法を選べばいいか? |
日本にもそれほど高温多湿にならない地域もありますから、一概に繊維系断熱材を使う外断熱
工法は不適当であると言うつもりはありませんが、夏に冷房が必要な建物で鉱物繊維系断熱材を
使う外断熱工法を採用するのは控えたほうがいいと思います。
最近、1時間に 100mmを超す集中豪雨が10年に8割ほどの割合で増えていると言われます。集
中豪雨が多くなる原因は地球温暖化に伴う海水温度の上昇で、夏の逆転結露が起きるのと同じで
す。今後地球温暖化が進めば、冷房を掛けて冷やした建物を外側から結露が襲うリスクが拡大し
ます。
採用する外断熱工法が適当ではなかったとしたら、折角造った建物がほとんど経済的価値のな
いものになります。
この点について「四つの外断熱工法」というテーマで別に記事を纏めてあります。
次のページをご覧になっるほか、「四つの外断熱工法」もお読み戴ければより深く理解してい
ただけると思います。
私たちがこれまでに住んできた家は木造住宅にしても鉄筋コンクリートの内断熱工法の家にし
ても熱容量の比較的小さい建物でした。
熱容量の小さい断熱性能の低い建物での生活に慣れ、そのままの感覚で熱容量の大きい建物を
造ろうとすると予期しない事態を目の当たりにすることになります。
一体、どんなことがおきるのでしょう。
まず、熱容量の違いがどの程度あるかを知っておいてください。戸建住宅では木造の建物の熱
容量を1とすれば、内断熱工法の鉄筋コンクリート建築物の熱容量はおよそ2、外断熱工法の鉄
筋コンクリート建築物の熱容量はおよそ8になります。
つまり、外断熱のRC建築物は内断熱のRC建築物の4倍、木造建築物の8倍も暖めにくく、
冷めにくいのです。
これだけではまだ判らないと思います。暖めやすさと冷めやすさは車の加速度のようなものな
ので正確な表現がむずかしいのですが、模式的に言えば、空調を切ったあと木造の建物の室温が
8℃下がるとすれば、RC内断熱の建物の室温は4℃、RC外断熱の室温は1℃下がると考えて
ください。
それぞれの建物の熱損失係数(Q値)が同じなら、空調を切ったあと室温と外気温度の差が
1℃しか変化しないものよりも、4℃または8℃変化するものの方が建物からの熱損失が少なく
なることは判っていただけるでしょう。
少し前に熱容量とQ値を変えて局所間歇空調と全館連続空調をしたときにトータルな空調エネ
ルギーの消費量ががどのように変動するかを比較しました。
詳しくは以下をご覧ください。
http://www.sotodan-souken.com/3-9air_condition/page011.html
http://www.sotodan-souken.com/3-9air_condition/page013.html
一般的な断熱性能を持つ木造住宅では、床面積の1/8を一日3〜6時間だけ暖房するように
すれば建物全部を一日中暖房するときの半分程度まで空調エネルギーを減らすことができます。
間歇空調による空調エネルギーの使用量削減は、Q値が小さくなるほど、熱容量が大きくなる
ほどほとんど省エネができなくなり、Q値 1.5W/m2・KのRC外断熱の建物では空調エネルギーを
5%ほどしか削減できない(反対に、3〜6時間で連続空調とほぼ同じ出力を出すために連続空
調に比べて4〜8倍の能力の空調機が必要になる)という不経済を招きます。
それではどうすればいいのでしょうか?
具体的にどうすべきかをここには書きません。選択はいくつもありますが、Q値をいくつにす
るか? そして、その結果毎年どれだけのエネルギーを使って空調することになるかを予め確認
して決めてください。
RC内断熱工法や木造の建物と同じようなつもりでQ値を決めると出来上がった建物の温熱性
能は次のような傾向を持つことになります。
1.局所間歇空調をしようと思ってもまったくエネルギー消費を節約することはできません。
(全館連続空調したときとほとんど同じ空調エネルギーを使うか、エネルギー不足で快適さ
を感じられない室内環境に悩むかの二者択一<=不毛の選択>になります)
2.理想的な外断熱建築物は僅かな空調エネルギーを使って空調機を24時間運転して常に快
適な環境を保つものです。
局所間歇空調をしてきた習慣に従って不在の時間に空調を切るときは空調機の能力を割り
増す必要があります。
どんなにたくさんの断熱材を使ってQ値の小さい建物を造ったとしても、それだけで少ない空
調エネルギーで快適に暮らせる家ができるわけではありません。
北欧のような冬の寒い地方では先ずしっかり断熱をすることが住宅の温熱設計の基本になりま
す。しっかり断熱した上で、冬の僅かな日射エネルギーを取り入れ、一旦屋内に取り入れたエネ
ルギーをできるだけ屋外に逃がさないように熱交換換気装置を使う。これが寒い冬を迎える北欧
やカナダの家造りの基本です。
北欧やカナダではこういう家を造り、仮に夏のある時間に室内が暑くなったとしても換気窓を
開けて家の空気を入れ替えれば室内環境を快適に維持することができます。
そして、北欧やドイツでは暖房エネルギーを床面積1m2あたり年間空調エネルギー15KWHと
いう超低エネルギーハウス(パッシブハウス)の開発が進められています。さらに、それ以外の
イギリス、フランス、イタリア、スペインなど温暖な中欧・南欧諸国でも温暖な気候に適したパ
ッシブハウスの開発が進められています。
今のパッシブハウスの開発要件は、暖房エネルギーも冷房エネルギーも床面積1m2あたり年
間15KWH以下とすること、家で消費する床面積1m2あたり年間一次エネルギー使用量を120KWH
以下に抑えることの二点ですが、今後さらに照明・動力など家庭内エネルギー消費を削減する動
きがあります。
冷暖房用のエネルギー使用量を削減するには建物の断熱性能を高めることが有効ですが、内部
発熱を建物内に蓄えるために断熱性能の向上だけで対応しようとすると断熱性能を極めて大きく
する必要があります。
断熱以外の方法で室温を上昇させるためには
・ 冬の日差しを取り入れ、遠赤外線の発熱効果を取り入れる。
・ 熱交換換気装置を使い、換気に伴うエネルギー損失を減らす。
・ 夏は外気温度より冷たく、冬は暖かい地熱や地下水をエネルギーとして活用する。
・ パッシブな方法でエネルギーを経済的に取り入れられないときだけアクティブな手段を使
う。
などの方法があり、断熱とこれらの方法を組み合わせて活用することが省エネルギーで快適な家
を造る有力な手段となるでしょう。
快適で経済的な家を造るにはこれらのうちどれかが欠けるアンバランスな考え方に陥らないこ
とがとても重要です。 |