有限会社 日本外断熱総合研究所          Japan Institute of Insulation
3-3-1 コンクリート造の断熱 (6/8)
コンクリート造の断熱

コンクリート造の断熱
 コンクリートの蓄熱性を使いこなす ・ 高温多湿な夏 ・ 四つの外断熱工法 ・ 断熱厚さと断熱性能
 ・ 内断熱工法と外断熱工法 ・ 空調しないときの躯体温度変化 ・ 空調中の躯体温度変化
 ・ 空調を切ったあとの室温変化 ・ 空調を入れたときの室温変化 ・ 断熱工法と経済性
 ・ 結露 ・ 各部分の断熱方法 ・ 働かない断熱材 ・ 熱橋 ヒートブリッジ


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付録
付1断熱材性能比較リスト
付2断熱用語辞典
付3住まいと断熱の掲示板
各部分の断熱方法
 この項を作ろうと考えたきっかけは次のような質問のお便りです・

 「地下室を予定しておりますが、どのように断熱をすればよいのか。地熱の活用とのバランスは
とれないものなのかにつき検討課題としております。」

 欧米では木造住宅でも床下を掘り下げた半地下式のユーティリティを持つ家が多く、空調機器の
置場や物置として使われてきました。
 半地価空間を居室として利用する例も多く、半地下室を空調する場合にどのように結露防止をす
るかについてこと細かく解説されたマニュアルなどもよく目にします。

 日本では床下空間の利用はあまり一般的ではないと考えていましたが、最近の都市住宅の中には
北側斜線制限を満たすため1階フロア全体、あるいは1階フロアの一部を地盤面より下げる例が増
えています。

 ベタ基礎、半地下室、地下室などが接する地盤は壁や屋根に接する大気とは違った温度特性と熱
容量を持ち、格別な配慮を必要とします。

 基礎や地下壁の断熱についてコンテンツを細くしようと考えて全体を見渡したところ、屋根や壁
の断熱に関して特別なコメントをしていないことに気付きました。

 このたび、屋根、外壁、バルコニー及び基礎・地下壁の断熱方法と断熱サッシの選定方法につい
て解説するページを加えることにしました。

 各部分ごとに断熱方法を考えるうえのポイントを述べていきますが、最大のポイントは各部分の
断熱が一体となって機能することが大切です。各部分の断熱が一体となって機能せずヒートブリッ
ジを挟むようでは建物全体の断熱性能を担保することが出来ません。


 屋根の断熱
 屋根は夏に大きな輻射熱を受け大きな冷房負荷を生じる場所です。

 「3-8熱負荷のメカニズム>熱負荷の定量化」に示したように、東京の気候を例に取ると屋根は輻 射熱を受けない場合に比べて内断熱工法では約2倍、外断熱工法では約5倍の熱負荷を受けること になります。

         図3-3-1-6-1 日射を受ける屋根の熱負荷

 一般的に使われる対策は屋根に使う断熱材の厚さを壁より厚くして熱負荷を軽減する方法を採用 しますが、屋根材の温度上昇が室内に伝わりにくいように屋根材と断熱材の間に通気するなど日射 の影響が室内に及びにくい対策を講じることも熱負荷を軽減する有効な対策になります。

 内断熱工法の屋根から侵入する輻射熱が外断熱工法の屋根から侵入する輻射熱より比率が小さい ことから、屋根からの輻射熱に対して内断熱工法の方が有利だと考える方があるかもしれません。
 内断熱工法では断熱材の内側の熱容量が小さいため、大きな温度変化があるうえ、断熱材の外側 に通気して輻射熱の影響を和らげるなどの対策が取りにくくなります。

 夏激しい輻射熱を受ける屋根は冬は積雪の影響を受けます。積雪期間中屋根面の温度は常に氷点 下となります。


 外壁の断熱
 外壁は面する方位によって輻射熱の受け方が変わります。強い輻射熱を受ける夏には南面よりも 東西に面する壁面が受ける輻射熱のほうが大きくなリます。壁面が受ける日射は屋根に比べて時間 も短く、長時間正面から日射を浴びることもないので特別な輻射熱対策を考える必要はありませ ん。

 「四つの外断熱工法」などの項で説明してきた断熱方法は外壁の断熱方法について述べています ので、外壁の断熱方法についての注意は他の項にも書かれています。


 基礎・地下壁の断熱
 基礎や地下壁は土に接しています。地下水位以下の土は水に近い熱伝導率を示しますが、地下水 位よりも高い土は木材よりもやや大きい熱伝導率を示します。
 建物中央部のスラブ下の土はかなり小さい熱貫流率を持つことになり、土間下の断熱は建物の外 周部だけに限定しても構わないという考え方が広く普及しています。

 「建物を常に定温に保つとすればスラブ下の地盤温度は一定になる」ということができるかもし れませんが、それは「建物の熱で地球を暖められる」というほどに大量のエネルギーを必要とする ことになります。

         ベタ基礎


         地中温度解析図
チャルマッシュ工科大学(スウェーデン・イエテボリ)
ハーゲントフト教授の資料より

 建物の建つ地表付近の熱の流れには次の三つのものがあります。

1.
 太陽や宇宙と輻射熱を交換し、大気の対流の影響を受ける地表面からの熱の流れ
(上の図では 左右の地表面)
2.
 年間を通じて温度の安定した地下水からの熱の流れ
(上の図では 下)
3.
 人工的に維持される建物の基礎や地下壁からの熱の流れ
(上の図では 上中央)

 上の図ではスラブ舌の断熱材内部に大きな温度勾配があります。
 下の図では建物直下の土が高い温度に維持されているように示されています。

 私が断熱に深い関心を持つようになったひとつのきっかけにある建物の地下室で起きた夏型結露 があります。
 初夏に漏水事故がおきたのではないかと思わせるほど床がびしょ濡れになる事態が起きました。 「結露するときは換気が最大の対策!」と換気をすればするほど床面をぬらす水の量は増えていき ます。
 そこで、床の温度を測ってみると19℃ほどしかありません。

 外気温度は28℃前後で80%近い湿度がありましたから、露点温度は約23℃。換気するほど結露が 増えたのも当然です。


 一般的な話はこれくらいにして、本題に入ります。
 夏の外気の露点温度(空調する場合は空調後の露点温度)、冬の室内空気の露点温度以上に躯体 温度を保てるのなら(理論的に)一部の断熱を省略することは可能です。
 しかし、基礎やスラブ下の温度が仮に20℃あったとしてもその土を暖めてスラブ表面温度を25〜 26℃以上に保つことは先ず不可能なことではないかと思います。

 また、冬の室内と地盤の温度差がせいぜい5℃前後と外気温度との差に比べて大きくないといっ ても無断熱のスラブからは大きな熱損失があるうえ、床の冷たさを招く原因にもなります。


 したがって、外部周りの基礎・地下壁は外壁と同じ厚さで断熱する必要がありますが、建物中央 部分の基礎やスラブについては50mm程度の断熱を行えば充分でしょう。

 断熱という視点から少し離れますが、毛細管現象によって地下水をスラブに誘導するような埋め 戻し材の使用を避け、砂・砕石など水はけの良い埋め戻し材を使うこと、基礎の周りに透水管を埋 設することは建物を長持ちさせる有効な方法です。

 基礎コンクリートには地中をの水蒸気が浸透してくるので、室内側表面に透湿抵抗の大きい樹脂 系シートを貼ることや透湿抵抗の大きい塗料を塗ることは避けます。

 根入れが浅く地表からの熱(寒さ)の影響を受けやすい基礎では建物の周囲に水平方向に断熱材 を埋設するスカート断熱をすることで地表からの熱の影響を弱めることができます。



 バルコニーの断熱
 躯体本体から突出した内断熱建築物のバルコニーは、オートバイのエンジンの放熱フィンのよう に建物から熱を外気に伝える表面積を増やします。
 内断熱工法の建築物では床スラブのヒートブリッジから建物の外壁に熱が伝わるので、バルコニ ーによって放熱面積が増えても熱損失が大きく増える訳ではありませんが、外断熱工法の建物に従 来の方法でバルコニーを取り付けるとバルコニー取り付け部分がすべて熱橋となります。

 外断熱建築物の熱橋を解消する手段には次のようなものがあります。

1.
 バルコニーのすべての表面を断熱材で覆う
2.
 バルコニー取り付け部分を片持ち梁として、外壁とバルコニースラブの間に断熱材を
貼るスリットをあける。
3.
 建物本体と独立したバルコニーを作る。建物本体と独立したバルコニーを作る。
4.
 ステンレスなど熱貫流率の小さいブラケットを使いバルコニーを躯体に取り付ける。
5.
 バルコニー取り付け部分に熱橋解消金物を使う。


バルコニーの熱橋対策の例


熱橋解消金物を使ったプレキャストバルコニー
ドイツ・ハンブルグにて
 熱橋解消用の金物は上の写真に見られるようにPC(プレキャスト)製品に使われる場合と、現 場打ちコンクリートに埋め込んでバルコニー部分を後打ちする場合があります。道路がよく整備さ れたヨーロッパでは大型トラックを現場に横付けにしてPC版を支保で支えたのちにコンクリート を打つケースを見ますが、大型重機を使えない現場では躯体に金物を打ち込むほうが作業性が良い ように感じます。


 開口部の断熱
 開口部の熱負荷対策には輻射熱に対する対策と熱伝導に対する対策、及び窓の気密性の検討を行 う必要があります。

 窓 

 窓は、建具・建具枠・ガラスによって構成されています。
 窓の熱伝導率は「建具と建具枠」の熱伝導率と「ガラス」の熱伝導率によって決まります。

 建具と建具枠の熱伝導率は、アルミサッシ>木製サッシ>樹脂サッシと右側ほど小さな数値を示 します。
 ガラスには、単板ガラスと複層(ペア)ガラスがあり、単板ガラスにも厚さや皮膜処理によって 様々なものがあります。複層ガラスは2枚の単板ガラスの間に空気やアルゴンガスなど不活性気体 を挟んだもので、単板ガラスの熱貫流抵抗にに比べて大きな熱貫流抵抗を発揮します。
 Lo-E複層ガラスはガラス面にアルミ蒸着処理して高温になるガラス面からの輻射熱を減らしたも ので、アルミ蒸着面の向きによって室内から屋外への熱損失を小さくした冬用のガラスと、屋外か ら室内への熱の流入を減らした夏用のガラスがあります。

 窓の断熱性能はH−1〜5の等級で表されます。高い断熱性能を持つ窓は価格も高くなります。
 壁からの熱負荷が大きい建物で窓からの熱負荷だけを小さくしても防寒コートを身に着けずに防 寒靴と帽子を被るようにコストのかけ方がアンバランスになります。
 窓からの熱負荷が壁や屋根からの熱負荷とおよそ等しくなるような建具選定をすれば良いでしょ う。

 普通の住宅では窓面積は壁面積の五倍程度ありますから、壁の熱貫流率と窓の熱貫流率抵抗の組 み合わせはおよそ次のような目安になります
断 熱 仕 様
K値 サッシの等級と熱貫流抵抗
内断熱(コンクリート18cm+ウレタン25mm)
0.80
H−2 (0.246)
内断熱(コンクリート18cm+EPS 50mm)
0.66
H−3 (0.287)
内断熱(コンクリート18cm+EPS 60mm)
0.56
H−4 (0.344)
内断熱(コンクリート18cm+EPS 75mm)
0.46
H−5 (0.430)

 一般の建物より大きめの窓を取り付ける建物では、サッシの断熱等級を1ランク上のものに変更 してください。

 ほとんどの窓で建具本体の熱貫流率は窓ガラスよりも大きな値を示します。デザインの都合で小 さな窓を並べた建物を良く見かけますが、わざわざ熱損失の大きい窓枠部分を増やすことになるの で、小さい窓を複数並べるより大きな窓に纏めたほうが熱損失を少なくすることができます。

 窓の気密性能
 開放可能な窓でも引き違い窓や上げ下げ窓のような移動式の建具は、開き戸や内倒し窓に比べて サッシ枠とサッシの間の気密性能が劣り、建具枠と建具の隙間から空気漏れを起こしやすい性質を 持っています。日本人は長く引き違い式の建具に慣れ親しんできましたから引き違い式の建具の使 用をまったく止めるわけにはいきませんが、目的と用途によって適切な建具を選ぶ棟にしましょ う。
 こう断熱な建物では、夏の厚さを凌ぐために通風を良くする必要はありません。(もしその必要 を感じたとしたら断熱性能に問題があります。)採光を目的とした窓では気密性能に優れた嵌め殺 し窓を使うことで窓に掛かるコストと空調コストをを減らすことができます。


 ドア 
 ドアも窓と基本的に同じです。ガラス面の大きいサッシに比べて断熱性能の高いドアを作ること はかなり難しく、現在仕えるドアの断熱等級はH−3等級程度のものになります。
 ドアの開口部面積は窓に比べて少ないので断熱性能が多少低くても居住性を損なうことはありま せん。

 ドアの選択はデザインに関心が向きがちですが、ドアと枠が密着するよう枠とドアの隙間に気密 パッキンが備えられたものを選ぶことが大切です。



 開口部の遮熱
 開口部の遮熱は次のふたつの方法で行います。

  1.  開口部から室内に差し込む日射を屋外の庇、ルーバー、オーニングなどで遮ること。
  2.  ガラス面からの輻射熱の貫流を減らすこと。
 高い断熱性能を持つ建物で、夏の輻射熱を室内に取り込むと室温が著しく上昇するので、直射日 光を遮る工夫が必要です。ガラス面からの輻射熱を減らす方法を窓のところに記載しました。




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