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日本に初めてRC外断熱工法を紹介した本「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」
は、鉱物繊維系断熱材を使う外断熱工法「EV外断熱工法」の宣伝本として書かれたものです。
ここで取り上げられた「繊維系断熱材を使い通気層を持つ外断熱工法」だけが外断熱工法のよう
なインパクトがありました。
しかし、太平洋高気圧に覆われる日本の夏は「高温多湿な夏」で見たようにヨーロッパに比べて
はるかに高温多湿です。北欧はもちろん、地中海式気候のイタリアやスペインでも夏の外気の露点
温度が室内気温を超えることはありませんが、日本では「日本の気象と外断熱工法」に示したよう
に静岡・浜田・銚子・室戸岬などで沖縄の那覇よりも高い最高露点温度を記録するほか、各地で高
い最高露点温度が記録されています。
ここでもう一度、断熱材の透湿性能について確認します。断熱材はコンクリートに比べていずれ
も大きな熱伝導抵抗を持っていますが、透湿抵抗に着目すると次の4種類に分類できます。
夏の外気の水蒸気圧がそれほど高くならない地方では透湿抵抗のほとんどない断熱材を使っても
逆転結露が起きる心配はありません。
冬に断熱材の外側で結露が起きれば当然凍結するような地域では結露は凍害に直結します。北
欧・北海道など寒冷地では通気層によって僅かな水蒸気でも抵抗なく外部に排出できる通気層型の
繊維系断熱材を使った断熱工法が望ましいものになります。
しかし、関東甲信越以西の多くの地域で繊維系断熱材を使うと逆転結露が起きる恐れがありま
す。これらの地方では発泡樹脂系断熱材を使用するほうが好ましいでしょう。また、暖流に面した
臨海部ではより透湿抵抗の大きい断熱材を使うほうが良いでしょう。
2004年の気象庁による気象観測データに基づく各地の水蒸気量と露点温度を「日本の気象と外
断熱工法」に掲載しました。併せてごらんください。
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透湿性能の区分
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断熱材の種類
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1.
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ほとんど透湿抵抗がないもの
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鉱物繊維系断熱材
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2.
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コンクリートより透湿抵抗が小さいもの
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ほとんどの発泡樹脂系断熱材
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3.
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コンクリートより透湿抵抗が大きいもの
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ロックセルボード、
一部の発泡樹脂系断熱材
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4.
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極めて透湿抵抗が大きいもの
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フォームグラス
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「壁の内部結露を防止するには外側ほど透湿抵抗の小さい素材を使わなくてはならない」
こういう解説ををご覧になったことがあるでしょう。
これまで、コンクリートよりも透湿抵抗の小さい1および2の断熱材が使われていました。これ
らの断熱材を使う場合、コンクリートが防湿層の役割をします。防湿層から漏れ出した水蒸気が外
側で堰き止められればそこで結露が起きる。これがこの解説の趣旨です。
ところが、3と4の断熱材ではコンクリートよりも断熱材の透湿抵抗の方が大きくなりますか
ら、木造の外張り断熱と同様に断熱材自体が防湿層の役目をします。
4のフォームグラスは透湿性がありませんから、断熱材の外側は外気の、内側は室内の水蒸気圧
と等しくなり、壁の他の構成部材中に水蒸気圧勾配を発生させません。
理屈はともあれ、1〜3の断熱材中の温度と水蒸気の分布がどうなるのか定常分析図で確認して
みましょう。
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1.冬の水蒸気圧分布
A.寒冷地
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図は、上から繊維系断熱
材、樹脂系断熱材、ロック
セルボードを使用した場合
の温度と露点温度の分布を
示しています。
「繊維系断熱材を使った
通気層工法は見慣れてい
る」方もいらっしゃると思
いますが、100mmの断熱材
を使用した場合、いずれの
工法でも結露の危険はあり
ません。
繊維系断熱材、樹脂系断
熱材を使う場合はコンクリ
ートが防湿層になります
が、ロックセルボードや図
にはありませんがフォーム
グラスを使う断熱工法では
断熱材が防湿層を兼ねてい
ます。
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B.関東以西
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図は、寒冷地と同様に上
から繊維系断熱材、樹脂系
断熱材、ロックセルボード
を使用した場合の温度と露
点温度の分布を示していま
す。
外気温度、外気の露点温
度が高い以外に寒冷地と基
本的な違いはありません。
コンクリートと断熱材の
境界面での温度と露点温度
の差は使用する断熱材によ
ってこ止まりますが、いず
れの図でも室内・屋外に比
べて境界面での差が大きく
なっていることは、結露の
危険がないことを示してい
ます。
発泡樹脂断熱材・ロック
セルボードの定常分析図は
断熱材のジョイント部分が
適切に防湿処理されている
ことを前提にしています。
防湿処理がされていない
場合、あるいは不充分な場
合は水蒸気の通貨経路に結
露や凍害が発生しますので
注意深い施工が必要です。
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2.夏の水蒸気圧分布
A.長野
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日本国内で最も外気の水
蒸気圧の低い地域の代表と
して長野市の例を示しま
す。
いずれの断熱材を使って
も逆転結露の恐れはなく、
極端に室温を下げない限り
逆転結露の心配はありませ
ん。
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B.東京
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東京、新潟など外洋から
やや離れた海岸部、あるい
は日本海沿岸の北よりの地
域における外断熱工法の定
常分析結果です。
上記の長野市を含めて夏
の逆転結露の検討は室温を
26℃に設定して計算して
いますが、冷房温度設定を
26℃以下とすれば繊維系
断熱材を使った外断熱工法
では確実に逆転結露が起こ
ることを示しています。
繊維系断熱材を使った外
断熱工法では、室温26℃
でコンクリート外側の相対
湿度が92%と極めて高湿な
状態になります。
発泡樹脂断熱材を使った
外暖熱工法では、同じ室温
設定でコンクリート外側の
相対湿度が81%と11%改善
し、ロックセルボードを使
った外断熱工法では相対湿
度が約63%まで低下しま
す。
(ここで示した相対湿度
は、いずれも断熱材の厚さ
を100mmとした場合です。通
常の厚さが35mm程度ロック
セルボードを使った外断熱
工法では、上の二つに比べ
て熱損失が3倍以上大きく
なりますが、優れた結露防
止性能はあります。)
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C.那覇
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那覇市の観測データをも
とに定常分析したものです
が、金沢、名古屋、大阪な
ど本州の多くの都市の最大
水蒸気圧とほぼ同等です。
3年ほど前に、私の恩師
で日本建築学会の副会長を
務められた宮野秋彦先生と
外断熱工法の話をしたこと
があります。
その中で先生は、「日本
のような高温多湿な国で、
本当に外断熱工法が適して
いるとは思えない。
東京でも問題があると思う
が、沖縄のようなところで
も外断熱が良いと思う
か?」と話されました。
左の繊維系断熱材を使っ
た外断熱工法の定常分析図
から、宮野先生が繊維系断
熱材を使う外断熱工法の問
題点を指摘されていたこと
がよく判ります。
コンクリート外側の相対
湿度は繊維系断熱材を使っ
た場合99%、樹脂系断熱材
を使った場合87%、ロック
セルボードを使った場合
66%になります。
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D.浜田
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「日本海側は太平洋側に
比べて湿度が低い」そんな
印象があるかもしれません
が、日本海にも黒潮の支流
「対馬海流」が流れていま
す。
左の図は浜田市の観測デ
ータをもとに定常分析した
ものですが、銚子、静岡な
ど本州の臨海部で見られる
水蒸気圧に相当します。
データが未整理ですが、
太平洋側では、九州、四
国、紀伊・伊豆・房総半島
など、また日本海側でも暖
流の影響を受ける多くの地
点で沖縄を超える高い水蒸
気量が観測されていると考
えられます。
繊維系断熱材を使った外
断熱通気層工法では室温
26℃でコンクリート面の相
対湿度が101%となり逆転結
露が発生します。発泡樹脂
系断熱材、ロックセルボー
ドを使った外断熱工法では
相対湿度がそれぞれ89%、
67%となります。
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E.室戸岬
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今回解析したデータの中
で最も大量の水蒸気を含む
外気は、高知県の室戸岬で
8月17日午前10時に観
測された外気の露点温度2
7.8℃でした。
これだけの水蒸気を含む
外気は冷房温度を27℃にし
ても繊維系断熱材を使った
外断熱工法の建物のコンク
リート表面に結露を発生さ
せます。
繊維系断熱材、発泡樹脂
系断熱材、ロックセルボー
ドを使った外断熱工法では
相対湿度がそれぞれ107%、
93%、69%となります。
詳細は非定常計算で確認
する必要がありますが、外
気の極端な高湿状態は長時
間続く訳ではないので、発
泡樹脂系断熱材を使った外
断熱工法以下では逆転結露
や躯体外部でのカビの発生
を心配することはないと思
います。
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3.第4の断熱工法
以上、繊維系・発泡樹脂系、ロックセルボードの3種類の異なる透湿性能を持つ断熱材を使った
外断熱の夏と冬の結露特性を比較してきました。第4の断熱材フォームグラスは透湿しないので、
コンクリート中の露点温度は室内空気に等しくなり、断熱材内部には水蒸気圧がありません。
上の室戸岬でフォームグラスを使った場合を定常分析図に表すと次のような形になります。同じ
部材に熱伝導抵抗と透湿抵抗を持たせることにより、水蒸気量と温度のアンバランスがなく、理想
的な水蒸気分布が実現します。
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フォームグラスはなぜか真っ黒
い色をしたガラスの泡。アスファ
ルトで継目をシールしながら積み
上げていきます。
透湿しないので、理論上他の素
材中に水蒸気圧・露点温度の変化
はありません。
(防湿施工精度によって、若干
の水蒸気勾配が発生すると考えら
れます。)
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今回の定常分析は2004年のデータをもとに行ったものです。気象データは10年・20年に1回観測
されるような大きな値があったり、地球温暖化やヒートアイランド現象のようにあるトレンドで変
化する要素があります。今年のデータは検討の参考にはなりますが、それで安全だからといって将
来も安全だと考えるべきではありません。一定の安全率(余裕)を持って考えるべきでしょう。
私たちは、高温多湿な環境の中で、数十年前まで冷房のない生活をしてきました。エアコンが普
及してからでも、不充分な断熱性能の建物では全館連続空調など「贅沢の極み」と考えてきまし
た。
しかし、100mm前後の厚さを持つ断熱材を使った外断熱工法の住宅はローコストで全館連続空調
ができるようになります。
「過度の空調の使用はエネルギーの浪費」と言う考え方は断熱性能の低い建物に住むときの知恵
でした。充分に断熱された住宅では8月の室温を27℃に保つ電力料金が戸建住宅で2500円前後、マ
ンションなら1000円前後です。さらに、1か月間室温を27℃に保つか25℃に保つかによって、空調
電力料金は戸建住宅で1,000円/月、集合住宅なら 400円/月ほどの違いがあるだけですから、暫
く外断熱住宅に暮らせば室内環境を快適に保ちたくなるでしょう。
しかし、鉱物繊維系断熱材を使う外断熱工法では躯体温度を26℃にすると臨海部の多くの地方で
逆転結露を生じ、あるいは結露しないまでもコンクリート表面が極めて高湿な状態になります。室
温=躯体温度を25℃以下に下げれば東北・北海道と中部山岳地方を除くほとんどの地方に逆転結露
の危険が広がります。
地域の環境条件を考えて断熱工法を選ぶべき理由がここにあります。
それぞれの断熱工法は、素材および施工のコスト、加工のしやすさ、気象条件との適合性など
様々な特色を持っています。使用する場所の気候条件、断熱にかけられるコスト、要求されるデザ
インや意匠のレベルなどを考慮して適切な外断熱工法を選択すべきです。
おまけ
ここからは、余談になります。 内断熱工法でもロックセルボードやフォームグラスを使えば
「壁の標準断面には結露しない」という結果が出ます。これらの防湿層を兼ねる断熱材は外断熱
工法の逆転結露を防ぐように、内断熱工法の冬の結露を防ぐことができます。
だからと言って、ロックセルボードやフォームグラスを使った内断熱工法をお奨めするわけでは
ありません。
内断熱工法では床面積に含まれる部分を断熱するので充分な断熱厚さを取ろうとすると部屋が狭
くなりますから、どうしても断熱が薄くなります。断熱補強しても床や天井と外壁の間の熱橋部分
から失われる熱を大きく減らすことはできません。
内断熱工法にロックセルボードやフォームグラスを使えば、壁の標準断面に結露が起きることは
ありません。しかし、床と外壁が接合する幅木部分など熱橋付近で結露を起こす可能性は少しも減
りません。
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