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ドイツは2000年以降、新築住宅の年間空調エネルギー消費を70KW抑制しています。ヨーロッパ
全域に広がるパッシブハウスへの挑戦は住宅の年間空調エネルギーをさらに減らし、空調エネル
ギー消費を15〜30KWH/m2・aに、家庭で1年間に使う全エネルギー消費を130KWH/mH/m2・aに削減
しようとするもので、EU諸国は京都議定書によるCO2排出量削減期間終了後の新しい温暖化
防止対策をこれを基本に提案しようとしています。
現在の日本の住宅の空調エネルギー消費量は、W地域で連続空調した場合で約130KWH/mH/m2・
a、間歇空調によって空調エネルギーを節約しているとしても空調エネルギー消費を70KWH/mH/m
2・a以下に抑えることはきわめて難しく、日本が「次世代省エネ基準」以降国際水準と肩を並べ
られる省エネルギー対策のガイドラインを持てずにいることは極めて残念です。
今、日本で「パッシブハウス」と呼べるものを造ろうとしても直ちに前のページに示した「パ
ッシブハウス」の要件を満たす家を造ることはそれほど簡単なことではありません。
日本型パッシブハウスを目指す
イギリス、フランス、スペインなどヨーロッパでも温暖な地域でも建てられ始めているパッシ
ブハウス建設の考え方に学び、出来る限りパッシブエネルギーを使いながら小さなエネルギー消
費で快適な生活環境を維持できる「日本型パッシブハウス」を模索し、その建設方法を提案した
いと考えています。ここで結論を出すことはできませんが、なるべく費用を掛けず、従来の家と
の建設費の差を少なくとも20年ほどのランニングコストの差で償還できるような経済的なパッシ
ブハウスを目指します。
パッシブハウスには年間暖房エネルギー15KWH/m2・aという目標があります。
従来の断熱中心の考え方でHDD約1800の東京でこれだけの年間空調エネルギーを実現しよう
とすれば、
年間空調エネルギー(KWH/m2・a)=Q値(W /m2・K)×HDD×24/1000
よりQ値を求めると
Q値=年間空調エネルギー(15KWH/m2・a)/HDD(1800KD)/24*1000
=15/1.8/24=0.347
Q値を0.347にしないとパッシブハウスにはならないことになります。
ところで、どんな家にも内部発熱があります。床面積120m2の家で内部発熱を1日12KWH(1時
間当たり0.5KWH)を4ヶ月(120日)間見込むと、空調エネルギー15KWH/m2に年間床面積あたり
12KWH/m2の内部発熱を加えることができますから、Q値を求める式は
Q値=年間空調エネルギー(15+12KWH/m2・a)/HDD(1800KD)/24*1000
=27/1.8/24=0.625
と書き直すことができます。さらに、冬の直射日光から熱エネルギーを取り入れることができれ
ば、もっと大きなQ値でも所期の年間暖房エネルギーに納めることができます。
直射日光から得られる熱エネルギー(ダイレクトゲイン)は緯度(高緯度か、低緯度か)や気
候パターン(例えば太平洋型か日本海型か)によって様々に異なっていますから、実施設計に当
たって個別の立地条件に対する検討が必要なことは言うまでもありません。
適応快適理論
Adaptive Comfort(適応的快適性)理論は英国のハンフリーズ教授とニコル教授が世界各地の
膨大なフィールド調査のデータを統計的に要約して快適な室温が調査地の月平均外気温に依存す
ることを明らかにして1970 年代に提示されました。そこでは熱的快適性とは、人と環境との熱交
換だけでなく、人の環境への働きかけによっても決まる自律制御システムであると定義されてい
ます。その後、地球環境問題が顕在化するなかで「適応」を考慮した環境負荷の低い温熱環境設
計に注目が集まり、ここ2〜3年のあいだにASHRAE やCEN の熱的快適性に関する基準が適応的快
適性を導入してあいついで改訂されるに至り、欧米では実際の建築設計への適用がすでに始まっ
ています。
下の図は中国の気象データに基づいて湿り空気線図のエリアごとに望ましい空調方式を示した
ものですが、(1)伝統的な暖房と(7)伝統的な冷房に割り当てられる部分は緑に塗られた従来の快
適域以外の部分に比べて極めて小さい範囲に限られています。

ヨーロッパのパッシブハウスの年間空調エネルギーは、この図のような考え方に基づいて削減
される方向にあるようですが、高温多湿な日本の夏に果たしてこの図の考え方で充分快適に暮ら
せるのだろうかという疑問を完全に消し去ることはできません。
ここで使われている空調手法は伝統的な暖房・冷房(1・7)のほかに直射日光を利用したソーラ
ー暖房(2)、自然換気(4)、熱容量と夜間通風(5)、砂漠のような乾燥地で使われる気化熱冷房
(6)です。日本のように常時水蒸気量が15g/Kg(露点温度20℃)を越える多湿な環境では、井戸
水を利用した換気用外気の予冷と除湿によって高温多湿な外気環境時においてもより熱的快適域
に近い室内環境を実現できるのではないかと考えています。
こういった空調方法は厳密にはパッシブな手法と呼べないかもしれませんが、大きなエネルギ
ーを使わずに室内環境を快適に保つ手法として省みられていい方法ではないかと思います。
なお、パッシブハウスの具体的内容については個別の設計ごとに検討すべき問題がありますの
で、ここでは概要を紹介するにとどめます。
また、「適応快適理論」について次のページに私なりに理解していることを解説しました。
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