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Adaptive Comfort(適応的快適性)理論は英国のハンフリーズ教授とニコル教授が世界各地の
膨大なフィールド調査のデータを統計的に要約して、快適な室温が調査地の月平均外気温に依存
することを明らかにしてことをベースとしたもので、パッシブハウスの空調エネルギー削減に大
きな役割を果たしています。
適応快適性とパッシブな空調の手法
従来の建物の空調エネルギー需要は、下の図で言えば緑色に塗られた熱的快適域以外の領域で
は暖房なり冷房が必要だと考えて、室内の温度と湿度が熱的快適域にないときは暖房なり冷房な
りを使用して、室内を熱的快適域に保つように考えていました。
適応快適理論では、人間が快適と感じる温度が月間平均気温との関係を持ち、月間平均気温が
低いほど低い温度で快適と感じ、月間平均気温が高いほど高い温度で快適と感じるとされていま
す。湿り空気線図をゾーン分けし、ゾーンごとに(2)、(4)〜(6)のパッシブ空調手法を割り当
てた下の図が適応快適性理論の中核になりますが、誤解しやすい要因を含んでいるように思いま
す。

適応快適性が基準にする温度湿度
まず、この湿り空気線図に示された温度と湿度がどこの温度を示しているかという問題があり
ます。
熱的快適域 (3)は室内環境を示している、あるいは自然換気 (4)の場合も室内環境は屋外環境
と等しいと考えたほうが合理的かもしれませんが、伝統的暖房 (1)や受動的ソーラー暖房 (2)、
さらに伝統的冷房 (7)では間違いなく屋外の環境を前提に空調方式を選択していると考えること
ができます。
(4) は、自然の風を室内に取り入れて、通常の空調室よりも大きな風速を室内に導入してより
高い温度でも快適に感じるようにしようというもので、「風速が1m増えれば体感温度が1℃下
がる」といわれることと同じ考え方です。
(5) は建物の大きな熱容量によって昼間の高温字にも暑さを感じないようにしようとするもの
です。その効果は建物の熱容量と、その土地の昼夜の温度差によって大きく異なります。
(6) は気温が40℃あってもそのときの露点温度が15℃以下なら、打ち水をすれば理論的に露
点温度になるまで気化熱を奪って温度低下は続きます。乾燥地帯では、日本のような高温多湿な
場所で想像できないほど気化熱は有効に働きます。
屋外環境と室内環境
適応快適性を考える基準が屋外環境にあるとしても、私たちが問題にしているのは室内の居住
環境です。外部環境と室内環境が等しくないことと同じように、室内環境も建物の造り方によっ
て違います。
上のグラフは、例えば外気温度が10℃のとき、ダイレクトゲインを使ったソーラー暖房が適し
ていることを示していますが、建物によって室温が15℃にしかならないものも、また室温が23℃
になるものもあるはずです。室温の日変化が小さい建物では一旦快適温度を保てば大きな変動は
ありませんが、室温の日変化の大きい建物では昼間は室温が高くなりすぎ、夜間は低くなりすぎ
ると言った問題を持つかもしれません。
そう考えると、適応快適性とパッシブ手法を示す図は、「外部環境条件によってパッシブ空調
手法の中から適した物を選び出し、アクティブな空調手法を使わなくても済むように断熱性能を
初めとした望ましい温熱環境設計を目指す」方向を示すものと考えたほうがいいようです。
つまり、「外気温度が6℃以上あるときにはダイレクトゲイン(太陽からの輻射熱)によって
必要な暖房エネルギーを取り入れられる程度の断熱を行い、外気温度がそれ以下に下がったとき
のみ従来使っていた暖房を使う」、「冷房を使う前に換気や打ち水のような方法で室温を下げ、
それでも快適にならないときに限って冷房を使用する」といった方法で、年間空調エネルギーを
目標値まで押さえ込むことにより省エネ目標を達成しようとしていることになります。
問題点とその他の解決策
ここまで書いてきたことの中で、特に批判的に考えることはありませんが、人間の温熱感覚は
簡単に湿り空気線上に表わせるものではありません。初めに「快適な室温が調査地の月平均外気
温に依存する」と書きましたが、このグラフには月平均外気温の変動は考慮されていません。
また、人が快適と感じる温度はその人の働いている状況、あるいは休んでいる状況により変わ
り、睡眠導入期など生理的に体温を下げる必要のある時間に高温多湿だと不快感を感じることが
あります。
グラフには相対湿度が90%を超えても自然換気で快適に暮らせるようにゾーン分けされていま
すが、建物の断熱性能や熱容量によってパッシブ手法選択のゾーンを吟味する必要があるように
思われます。
また、「省エネルギーに役立つ考え方がここに示されたものに限られるわけではない」と考え
てもいいのではないかとも考えています。
具体的に言えば、私は数年前から地下水の温度を利用したパッシブと言うよりはアクティブと
考えられる熱交換手法などを考えていますが、
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1.
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換気で取り入れる外気を熱交換器で地下水と接触させて露点温度を下げ(当然気温も下が
る)特別に冷房をしないで室内の湿度を下げる方法
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2.
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屋根に散水して建物の表面温度を下げ、内外温度差を縮小して熱伝導で室内に侵入する熱
エネルギーを減らしたりする方法
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3.
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地下室を設けて、外気よりも室温に近い地盤との接触面積を増やして夏も冬も建物への熱
負荷を減らす方法
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なども建物を省エネにする方法として、パッシブな方法と併せて使えると考えています。
なぜ省エネを進めなくてはならないか?
2008年の洞爺湖サミットでも2013年以降の地球温暖化防止(CO2排出削減)対策が話し合われ
ましたが、中国・インドなど途上国を参加さえるかどうかといった手続問題に終始して具体的な
削減目標が話し合われることはありませんでした。
日本では民生部門、特に住宅部門からの排出量削減問題は全くといっていいほど前進していま
せんが、ヨーロッパの新築住宅は空調エネルギー需要が 70KWH/u・年の低エネルギー住宅から、
15KWH/u・年のパッシブハウスに向かっています。
2000年に低エネルギーハウスを導入したのはドイツだけでしたが、パッシブハウスの開発実験
はイギリス、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどヨーロッパ全域、しかも冷房が空
調の中心になる地中海沿岸地域までも含んでいます。
しかし、日本では東京などW(4)地域で127KWH/u・年の次世代省エネ基準以降住宅の空調エ
ネルギーを削減する対策は全く進んでいません。
日本の既存住宅の平均で見れば次世代省エネ基準を遥かに超えた250KWH/u・年以上の空調エネ
ルギーが必要になる(すべてヒートポンプを使えば 80〜90KWH/u・年)はずですが、間歇空調や
我慢によって平均的な空調使用エネルギーは 35KWH/u・年程度に抑えられているので建物の断熱
性能を高めてもあまり省エネには結びつかないと考えているのでしょうか?
良い断熱をすると、必要なときに費用を気にしないでエネルギーを使い、快適な暮らしができ
るようになります。今の日本で建物の断熱性能を高める最大のメリットはここにあり、併せて国
内の空調エネルギー消費を削減することができます。
反対に断熱性能を改善できなければ、今後のCOP協議の中でヨーロッパを相手にした協議で
大きなハンデを負うことになるのではないでしょうか?
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