有限会社 日本外断熱総合研究所          Japan Institute of Insulation
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熱の移動と水蒸気
 建物の内外に、あるいは建物内部に温度差がある場合、熱は「伝導・対流・輻射」の三つのプロ セスで温度差をなくす方向に移動します。
 建築の断熱は主に熱伝導を小さくすることによって熱の移動を抑えようとするものですが、対 流・輻射による熱移動が大きくなると、せっかく断熱材を使っても十分な断熱効果を得ることがで きません。
 十分な断熱効果を得るためには断熱性能だけだなく、断熱材の内部に空気の対流を起こさないこ と、隙間風などによる熱ロスを防ぐこと(気密)、屋外の温度変化の影響を避けるため外壁外側に 熱容量の大きい蓄熱体を置かないようにすることが必要です。

 断熱材内部には大きな温度差が発生します。断熱材は比較的水蒸気を通しやすいものが多く、断 熱材の外側に透湿抵抗の大きい素材があると断熱材の外側で結露を発生することがあります。
 その他、結露は室内や建物の部材の温度が下がるときにもおきやすい傾向があり、水蒸気の性質 を考慮していない断熱では「結露は断熱の副作用」と言えるほど結露が頻発します。

 結露は建物の耐久性を損ない、健康被害の元になりますから、断熱工法の選択にあたっては、 熱性能・気密性能・防湿(露)性能への十分な配慮があることを確かめる必要があります。


断熱性能の指標 「K値」と「Q値」
 「内断熱と外断熱のどちらが良いか?」「外張り断熱は充填断熱より優れているか?」
 建物が木造や鉄骨造でも、ブロック造やコンクリート造でも、「どんな断熱工法を選択すればよい か?」について関心をお持ちでしょう。
 詳しいことは判らなくても、「外断熱は良い、内断熱や充填断熱は良くない」あるいは「外断熱工 法では通気層をもつものの方が優れている」と信じている方もいらっしゃるようです。
 そういう先入観で断熱を考えている方には「ちょっと待ってください」と申し上げなければなりま せん。
 
 屋根・壁・建具など建材の断熱性能(熱貫流率=K値)はそれぞれの材料の熱伝導率と厚さによっ て決まります。複数の素材を組み合わせた材料では、(直列につながれた抵抗《熱貫流抵抗》の回路 を流れる電流《K値》を求めるように)個別の材料の熱貫流抵抗を加えて部材全体の熱抵抗を求め、 K値を求めます。

 屋根・壁・建具など様々な部材を集めて建てられる建物の断熱性能は熱損失率(Q値)で表されま す。
 例えは良くありませんが、K値を一科目の成績とすれば、Q値は総合成績のようなものです。特に 秀でた成績の科目がなくても、コツコツと平均点以上の成績を取った学生の総合成績が上位に来るよ うに、ヒートブリッジなど大きな断熱欠陥のない建物のQ値が良い値を示します。
 「どんな断熱工法を使うか?」という視点から断熱性能を考えるのではなく、「どの程度の熱損失 率(Q値)を目標に建物を設計するか?」を考える方が合理的な設計ができます。

K値とは
 建物の構成要素(例えば外壁・屋根・サッシなど)1uあたり 外気温度と室内温度の差1℃ ごとに 当該部分から損失する熱量(W)を示す数値 熱貫流率

Q値とは
 建物外装面各部分の熱還流率(K値)と換気による熱損失をもとに求められる 床面積1uあた り 外気温度と室内温度の差1℃ごとに 建物の外装面から損失する熱量を示す数値 熱損失

 この他に隙間相当面積(C値)と呼ばれる気密性能を表す指標があります。
  気密性能の低い建物では壁の内部での結露や建物内部の温度のバラツキが大きくなります。


住宅金融公庫融資とQ値

 住宅金融公庫は融資区分の中で次のような断熱性能の基準を定めています。正確に言えば、このQ 値を満たさない場合に各部分の断熱材の厚さの制限を受けます。
 戸建住宅のQ値
T地域
U地域
V地域
W地域
X地域
割増融資額
断熱構造基準
2.8
4.0
4.7
5.2
8.3
な し
環境共生住宅基準
1.8
2.7
3.3
4.2
4.8
100万円/戸
次世代省エネルギー基準
1.4
1.9
2.4
2.7
2.7
250万円/戸

 戸建以外の住宅のQ値
T地域
U地域
V地域
W地域
X地域
割増融資額
断熱構造基準
2.8
4.0
4.4
4.9
7.1
な し
環境共生住宅基準
1.8
2.7
3.1
3.6
3.9
100万円/戸
次世代省エネルギー基準
1.4
1.9
2.4
2.7
2.7
250万円/戸
それぞれ表の数字以下の数値となるように断熱性能を定める

 個別のQ値の数値は知らなくても、「断熱性能の良い建物を建てると融資額が増える」くらいの認 識をお持ちの方は多いでしょう。
 Q値が決まると建てる地域の環境条件によって、建物内部を一定の温度に保つために必要な空調装 置の規模や年間に必要とするエネルギーの量と費用の目安が計算できます。

 例えば、東京(W地域)に建つ、床面積120uの戸建住宅を外気温度0℃のときに室温23℃に保つに は、それぞれ次の容量の設備で暖房が賄えます。

断熱構造基準 Q値4.7
  暖房設備出力=4.7*120*(23−0)
        =12927W

次世代省エネ基準 Q値2.4
  暖房設備出力=2.4*120*(23−0)
        =6624W

次世代省エネ基準 Q値1.4 北海道(T地域)を
準用
  暖房設備出力=1.4*120*(23−0)
        =3864W
値と暖房設備能力 (東京)
Q値 (W/u・K)
4.7
2.4
1.4
暖房設備出力(KW)
12.9
6.6
3.9
※ 間歇空調をする場合割増が必要になります

※ RC外断熱の場合は熱容量が大きく室内温度 の 変化が小さいので、最低気温(約0℃)では なく、 日平均気温(約5℃)を基準に空調機械 の能力を求 めることができます。

 次に、1月1ヶ月間を23℃に保つのに必要なエネルギー量と電力料金を比較します。エアコンを使 うと仮定し、エアコンの効率(COP)を3、電力料金を1KWHあたり22円、1月の平均気温を5. 1℃とします。

断熱構造基準
  使用電力量 =4.7*120*(23-5.1)*24*
31/3
        =2503.7KWH
  必要電力料金=2503.7*22
        =55081円

次世代省エネルギー基準
  使用電力量 =2.4*120*(23-5.1)*24*
31/3
        =1278.5KWH
  必要電力料金=2503.7*22
        =28127円

次世代省エネルギー基準(T地域基準)
  使用電力量 =1.4*120*(23-5.1)*24*
31/3
        =745.8KWH
  必要電力料金=2503.7*22
        =16407円
Q値と空調電力使用量 (東京)
Q値 (W/u・K)
4.7
2.4
1.4
使用電力量(KWH)
2503.7
1278.5
745.8
電力料金 (円/月)
55,081
28,127
16,407
※ 常時23℃に保つ場合

※ 照明器具や家電製品から発生する熱量がある  ときは、相当するエネルギーを差し引きます。

※ 冷房設備の能力と使用エネルギーも同じよう  に計算できますが、Q値は輻射熱の影響を考慮  していないので、内断熱など大きく輻射の影響  を受ける建物では外気温度を補正する必要があ  ります。

 断熱性能を設定する場合、断熱性能を高めるほど建築工事費は増加しますが、空調設備とその運転 に要する費用はそれ以上に減少します。
 設備の運転費用は建物が存続する期間発生する半永久的なコストなので、融資基準のQ値ギリギリ に決めないで、将来も含めたトータルな支出が少なくなるようにQ値を決める方が合理的です。

 「断熱厚さの最適化」の項で、断熱材の適正な厚さを解説します。

断熱工法の特性

 断熱工法を選定する前に対象となる断熱工法の特性を知っておく必要があります。ここでは比較的 良く採用される工法の断熱性能(K値)と価格について簡単に触れます。
 RC造等では選定する断熱工法によって外装材の種類が限定される傾向があるので、RC・ブロッ ク造用の断熱工法では外装を含む価格を表示しています。
 なお、ここに表示している「価格/u・K」は断熱性能あたりの断熱工事費を比較する指標にはな りますが、地域ごとに異なる空調エネルギーコストを考慮したものではありません。
 K値のほぼ等しい工法のコスト比較用としてのみご参照ください。

木造・鉄骨造建築の断熱工法
名称
充填断熱工法−MW  (木 造) 充填断熱工法−MW (鉄骨 造) 外張断熱工法−押出法FP
断熱厚 K値 価格/ u 価格/u× K値 価格/ u 価格/u× K値 価格/ u 価格/u×
25mm
2.29
2,390
5,473
2.07
2,390
4,947
 1. 44
1,030
1,483
50mm
1.15
2,910
3,347
1.04
2,910
2,402
0.72
1,130
813
75mm
0.77
3,430
2,641
0.69
3,430
2,366
0.48
100mm
0.57
4,950
2,822
0.51
4,950
2,525
0.36
125mm
0.46
5,470
2,516
0.41
5,470
2,243
0.29
150mm
0.38
5,990
2,276
0.35
5,990
2,097
0.24
 ※ 木造充填断熱工法は見付面積の20%は木材として
   鉄骨造充填断熱工法は外壁支持金物を使うとして計算しました
   価格は仕上げを含まない材工価格(参考値)です

RC造・ブロック造建築の内外断熱工法
名称
内断熱工法-現場発泡・湿タイ 乾式外断熱工法-MW・乾タイ 湿式外断熱工法-EPS・モルタ
断熱厚 K値 価格/ u 価格/u× K値 価格/ u 価格/u× K値 価格/ u 価格/u×
25mm
 1.36
9,240
12,566
1.64
1.22
13,000
15,860
50mm
0.95
0.91
0.66
14,000
9,240
75mm
0.77
0.63
33,000
20,790
0.45
15,000
7,200
100mm
0.66
0.49
34,000
16,320
0.34
16,000
5,440
125mm
0.59
0.39
35,000
13,650
0.28
17,000
4,590
150mm
0.53
0.33
36,000
11,880
0.23
18,000
4,140
 ※ 内断熱工法・乾式外断熱工法のK値には床・金物からの熱損失を含みます
   価格は一般的な外部仕上げ・内装下地を含む材工価格(参考値)です

 赤の文字は施工上・使用上問題があるもの。
 青の文字は断熱性能が不足すると考えられるもの。
 ※ 価格/u×Kは断熱抵抗値あたりのu単価(参考値)です

  断熱工法メーカー・販売業者の方へ
   お取り扱いの工法について掲載のご希望があればお知らせください

 左は上のK値の計算結果をグラフに的 またものです。

 省エネルギーな住まいにするためには 概ねK値< 0.6となるように断熱工法を 選択するのが望ましい。

 ウレタンは断熱性能が高く、一番下の 青い点線のように高い断熱性能を持つ。 しかし、内断熱では熱橋の影響を受け実 線のように性能が低下する。

 木造外張断熱工法は50mm以上の断熱が できないものが多くあります。

 鉄骨造の充填断熱は木造充填断熱とほ ぼ類似の値を示します。



 グラフの実線部分のみが実用可能と考 えられます。
 多く使われているウレタン内断熱、木 造外断熱のK値が比較的高いことにご注 目ください。

サッシの断熱性能
断熱性能 K値 価格/u 価格/u×
指定なし
6.04
H-1等級
≦4.
65
H-2等級
≦4.
06
H-3等級
≦3.
48
H-4等級
≦2.
90
H-5等級
≦2.
32
塩ビサッ
≒1.
16
 サッシは屋根・外壁に比べて断熱性能が劣り、建物 全体の断熱性能に大きな影響を持ちます。
 枠部分とガラス部分では特に枠が熱を通しやすいた め、同じサッシ部材を使っても小さなガラスを使った サッシほどK値が大きくなる傾向があります。
 左の表では掃出し窓(1717程度)を基準として価格 を比較しています。


  まだ未完成です。

 2004年12月、新年に向けてサイトリニューアルをしながら考え込んでいます。

 これまで、HDDやCDDの値から適切な断熱厚さを決められないかと考えていました。
 建物の耐用年数を想定し、断熱工事費と空調費の合計が最小になるような断熱厚さを提案しよう とする考え方です。この考え方で断熱設計すると過剰な断熱をしてしまう恐れはありませんが、考 え方が複雑で、皆様に理解していただくくことがなかなか難しいのです。
 最近アップした「断熱仕様とQ値」に、様々な断熱仕様のQ値と東京での年間空調費を掲載しま した。

 私達は生活するうえで、年間空調にこれくらいの金額なら空調に使ってもいいという腹積もりが あります。その金額を超えてしまうとどんな断熱性能の家を造っても空調費を節約するようになり ます。おそらく、多くのお宅で10万円が空調費の目安になるのではないでしょうか?

 このページの住宅金融公庫融資とQ値の項で公庫融資住宅のQ値として次の表を示しました。

 戸建住宅のQ値
T地域
U地域
V地域
W地域
X地域
割増融資額
断熱構造基準
2.8
4.0
4.7
5.2
8.3
な し
環境共生住宅基準
1.8
2.7
3.3
4.2
4.8
100万円/戸
次世代省エネルギー基準
1.4
1.9
2.4
2.7
2.7
250万円/戸

 戸建以外の住宅のQ値
T地域
U地域
V地域
W地域
X地域
割増融資額
断熱構造基準
2.8
4.0
4.4
4.9
7.1
な し
環境共生住宅基準
1.8
2.7
3.1