有限会社 日本外断熱総合研究所          Japan Institute of Insulation
3-2断熱の良い家造り講座(7/7) 断熱工法あれこれ
Sustainable Housing  断熱の良い家造り講座

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断熱工法あれこれ


内断熱工法

現場発泡

 内断熱工法の中で最も一般的に使われていた断熱工法です。
 これまではフロンガスで発泡させたウレタン樹脂をノズルから吹き出
して外壁コンクリートの室内側に15〜25mmの断熱層を形成していま
した。

 地球温暖化の原因となるフロンガス(HCFC141b)の生産および輸入が
2003年末限りで認められなくなったため、使用される素材が代替フロン
を含むウレタン、アイシネン(ポリイソシアネート系断熱材)などに代
わっています。

 ウレタンの熱伝導率0.022W/m・kありましたが、アイシネンの熱
伝導率は0.037W/m・kですから、アイシネンに発泡ウレタンと同等
な断熱性能を得るためには50%以上厚みを増やす必要があります。
 室内仕上げは吹き付けた断熱材の上にGL工法でプラスターボードを張る方法が一般的です が、木材で下地を組んでプラスターボードを張ることもあります。

 内断熱工法には共通して次の欠陥があります。
1.  床・天井のスラブ周りにヒートブリッジができ、ここからの大きな熱損失を防げな い 
2.  熱損失の大きい床・天井回り、室内で熱が供給され難い押入や家具の裏に結露しや すい
3.  構造体が蓄熱・蓄冷するため、夏は室内に大きな輻射熱、冬は冷輻射により空調負
荷を増加させる



複合版貼付

 SI工法とも呼ばれる断熱材とプラスターボードの複合版をコンクリートに直張りする工法で す。
 吹付け工程が省略されるため工期の短縮に繋がりますが、コンクリートの仕上がりに凹凸があ ると内装の仕上がりも悪くなるほか、ボードの裏側に隙間ができると次の複合版GL工法と同 様、低温のコンクリート面に室内空気が触れて激しい結露を起こす恐れがあります。
 日本住宅公団が採用していたため、「公団方式」と呼ばれることもあります。




複合版GL

 断熱材とプラスターボードの複合版をGLボンドを使ってコンクリートに団子張りする工法で す。吹付け工程が省略され、工期が短縮できますが、コンクリートと複合版の間に大きな隙間が できます。

 この隙間はボードの継ぎ目、床・天井との取り合い部分で気密・防湿処理ができないので、冬 は室内の水蒸気がこの隙間に侵入してコンクリート面で激しい結露を発生させ、ボード裏ではコ ンクリートに冷やされた空気が下降気流(ダウンブラスト)となります。
 「壁の下に付いているコンセントから冷たい風が吹き出す」といった話をよく聴きますが、壁 上部から暖かい空気が壁の裏側に入り、冷やされた空気が壁下部から室内に戻る循環気流が断熱 効果を損ないます。

 夏はこの逆で、室内空気は壁の下部からボードの裏に回り、コンクリートに温められて壁の上 部から室内に戻ってきます。

 内断熱が導入された当初、グラスウールを使った工法が問題になったのと同じように、気密・ 防湿対策を考えなければこの工法の問題は解決できないと思いますが、おそらく簡単な改善方法 は見つからないでしょう。




外断熱工法

ヨーロッパの基本的断熱工法

 ヨーロッパの建物は伝統的に 構造壁の外側に中空層を持ちそ の外側に主として煉瓦の外装壁 を持つ二重壁工法です。オイル ショック以来、中空層内部に断 熱材を充填して省エネルギーを 図るようになりました。
 右の写真はスウェーデンマル モ市の建築現場で見た17cmの 断熱材を使った建物の施工風景 です。
 スウェーデンではこの工法がおよそ80%を占め断熱の主流に なっています。
 地震のないヨーロッパでは厚さ10cmほどの煉瓦を積んで5〜 6階建ての建物の外装を仕上げますが、日本で煉瓦を積もうと 思えば煉瓦の厚さもずっと厚くなり、そのために大きな土地面 積が利用できなくなるので、日本にこのままの形で建てられた 建物はほとんどない筈です。
 雨水などで濡れる煉瓦を乾燥させるため壁の上下に通気口を設ける例が増えていて、断熱材と
煉瓦の間の空洞を「通気層」と解釈する説もありますが、これを通気層と考えるかどうかは難し
いところです。

 最近、この工法の結露計算をしてみました。外気温度が5℃以下に下がると断熱材内部に結露
は起きないものの外装の煉瓦には結露が起き、上に書いた「通気層」説にも合理的根拠を見つけ
ました。



通気層工法

 通気層工法はヨーロッパの二重壁の外装を透湿抵抗の小さい煉瓦壁から透湿抵抗の大きいボー ド類に替える目的で開発された外断熱工法です。
 (「通気層は日本独特な工法」と書いていましたが、北欧では凍害防止のため通気を取ること が当たり前に行われています。中欧・南欧では凍害対策としての意味は薄いようです。−フィン ランド在住のKさんからご指摘がありました)
 (余談になりますが原則的に「内断熱工法」のない欧米では「断熱」といえば「構造体の外側 にあるもの」と決まっているので、「外断熱工法」という言葉自体が日本独特です。)
 数年前までは、通気層のない外断熱工法で充分な断熱性能・耐火性能・結露防止性能を備えた ものはほとんどなかったので、「外断熱工法」と言えば「通気層を持つもの」と考えられている 方も多いと思います。

 過去、通気層を持たない外断熱工法で外装材の凍害・膨れなどのトラブルがありました。これ らの現象はアスファルト防水やシート防水で防水層の裏側に結露水が溜まり防水層が膨れる減少 と同じメカニズムで発生しますから、結露しないように水蒸気を逃がすことで解決できます。
 そのひとつの方法が通気層、もうひとつがサイディングなど透湿抵抗の小さい外装材を使用す ることです。

 通気層工法に対して、「外気を積極的に外装材の内側に取り入れることにより、断熱材内部に 冷たい外気が侵入し断熱材内部を冷やして結露を起こしたり、断熱性能を低下させる」との批判 があります。
 通気層工法では、一般にロックウール・グラスウールなど鉱物繊維系の不燃断熱材が使用され ることから、外気が断熱材中に入る恐れがまったくないとは言い切れません。

 通気層に取り入れられる外気の冷却効果に関する定量的な考察文献を知りませんが、断熱材の 表面にタイベックなどウェザーバリアを用いる、風を通し難い高密度品を使うなどの配慮が必要 でしょう。

 このほか、梅雨末期まだコンクリート温度が低いときに外気の湿度が急に上昇すると、ほとん ど透湿抵抗のない繊維系断熱材を透過した水蒸気がコンクリート表面で結露を起こす恐れがあり ます。
 建設する地域の気候条件、内部発熱量などによってはコンクリート表面からの吸湿を抑える工 夫が必要なケースがあるでしょう。




湿式外断熱工法

 湿式外断熱工法はポリスチレン板を断熱材として使い透湿性 モルタルで外装仕上げを行う外断熱工法の総称です。欧米で は、EIFS工法(External Insulation Finishing System)、またはEWIS工法(Extenal Wall Insulation System)と呼ばれています。ドイツではこの工法が新築建物の 80%を占めます。

 湿式外断熱工法は可燃性断熱材を使うものとして従来耐火構 造の建物には使用できませんでしたが、建築基準法の性能規定 への移行に伴い使用可能となりました。
 断熱材の取り付け方法には様々な方法があり、私がこれまで に見たものだけでも
1.  コンクリート表面を樹脂モルタルで平滑に仕上げ、
グラスファイバーネットで補強した後、EPS板を圧
着する
2.  日本のGL工法のようにEPS板を団子貼する 
(ただしEPS板外周全体にモルタルを塗る)
3.  壁にガイドレールを一定の間隔でビス止めし、EP S板を固定する
などがあります。
 これらのうち、梅雨時の逆転結露対策として最も有効と考えられるものは断熱材がコンクリー ト面に密着する1.、次いでEPS板一枚ごとに裏側の隙間が独立している2.です。



断熱型枠工法

 押出し法ポリスチレンフォーム、ネオマフォーム、珪酸カルシウム板など断熱材を型枠として コンクリートを打設し、断熱材とコンクリートを一体形成する工法です。
 型枠解体・断熱材貼付けの工程が省略でき、残材の発生も減るため低コストの外断熱工法とし て幾つもの工法が名乗りをあげています。
 これまでに発表されている断熱材を型枠と兼用する工法では、断熱材が25mm前後と内断熱 工法並みの厚さしかないものがほとんどで、省エネ性・快適性を充分に満たし皆様に推薦できる ものは現在までのところありません。

 型枠断熱工法の中には外壁の外側だけでなく、内側の型枠にも断熱材を使い「両面断熱」にな る工法があります。(Ex.「AAB工法」と呼ばれるブロック状型枠を用いるもの)
 両面断熱ではコンクリート温度が外気温度と室内温度の中間になるので、内側断熱材とコンク リートの境界面に結露が発生する恐れがあり、本州の温暖地でも内側の断熱材の厚さは外側の1 /2以下に抑える必要があります。

 さらに、両面断熱工法では型枠をはずしてコンクリート表面のコールドジョイント・ジャンカ などの打ちムラを確認できないため、耐用性に問題のある欠陥が見逃される恐れもあります。

 外断熱工法は断熱材の性能が一定水準であることと、仕上げまで含めた壁の構成システムが断 熱とスムースな水蒸気の排出を実現できてはじめて機能します。断熱型枠工法のシステムでは、 透湿性に配慮せずに断熱材表面にタイルを張るなどシステムとして未成熟なものも多く見られま す。

 ロックセルボードの打ち込み工法はタイルや石を貼った外装下地として優れています。ロック セルボードが熱伝導抵抗と同時に大きな透湿抵抗を持ち、コンクリートからの水蒸気の浸透を抑 えるためです。しかしながらロックセルボードは他の樹脂系断熱材に比べて高価で充分な断熱性 能を持たせようとすると工事費が割高になります。関東などでは次世代省エネ基準を辛うじてク リアする35mm程度の断熱厚さで使われることが多くなっていますが、省エネという観点から見る とより厚い断熱が望ましいでしょう。


 省力化工法であるこの工法から今後優れた外断熱工法が生まれてくる可能性は充分あり、注目 に値する分野であることにも触れておきたいと思います。。


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