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断熱計画を考える前に
古来、日本の在来木造住宅は束石の上に土台を置き、柱を立てて柱間を貫で繋ぎ、「小舞」と呼ばれる竹の網を芯にした土壁を持っていました。
土壁は暖まりにくく冷めにくい素材で、古い木造住宅には日本の夏を快適に過ごすための知恵が生かされていました。
今、私達が「在来木造住宅」と呼ぶものはコンクリートの基礎を持ち、柱と間柱で合成された軸組の内側と外側にそれぞれボード上の内装材・外装材を貼ったもので、古来の木造住宅とは外壁の構造が大きく変質していますが、床や小屋組の構造方法は伝統的な技術を踏襲しています。
木造建築物の構造方法には「在来木造」のほか、古くは学校・事務所建築で使われた方杖付きトラスを特徴とする洋小屋構造、欧米の住宅建築工法で日本でも1970年代から使われるようになった枠組壁工法があります。
枠組壁工法はプラットホーム工法とも呼ばれ、床・壁・屋根の機能がそれぞれのパネル内部で完結しているので断熱する場合にも比較的簡単・単純な対応ができます。しかし、「在来木造工法」では部材相互が複雑に入り込んでいるため、床下から外壁・間仕切壁の中を通って小屋裏に至る複雑な空気の流れが発生するなど、断熱計画を立てるうえで考慮すべき多くの項目があります。
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断熱と気密・防湿
どんな建物を断熱する場合でも断熱・気密・防湿性能に関する一貫した論理が欠かせません。
これらの性能は次のような意味を持っています。
断熱
使用する断熱材が建物内外の温度差に応じた熱損失を抑える性能。建材の部分ごとの断熱性能はK値、建物全体の断熱性能はQ値で示されます。
気密
鉱物繊維系断熱材のように通気性を持ち吸湿しない断熱材を使うとき、暖房された室内から壁の中に空気が漏れ出すと断熱材が低温になる屋外側で結露を起こします。
仮に結露を起こさないとしても、室内空気と屋外の空気が自由に対流を起こすような建物では空気の移動によって熱が運ばれるために大きな熱損失が起こります。
室内空気の漏れ出しを防ぐために断熱材の室内側にポリエチレンシートなど空気を通さない「気密層(エアーバリア)」を設置します。このシートで次の防湿機能を併せ持つものは「気密・防湿層(エアー&ベーパー・バリア)」と呼ばれます。
断熱材の屋外側では強風時に雨が侵入したり、風が空気を入れ替たりします。ここにポリエチレンシートなど水蒸気を通しにくい素材を使うと結露の原因になるため、防風と防水の目的で透湿抵抗の小さい「タイベック」などで「防風層(ウェザーバリア)」を設置します。
在来工法の木造住宅では外壁・間仕切壁の空洞が床下・小屋裏に通じた構造になっています。暖房中に壁の空洞内部の空気が暖められると「床下→壁→小屋裏」の空気の流れができ、この空気が建物から熱を奪うので大きな熱損失を生じます。
枠組壁工法の建物では外壁の「気密・防湿層」を1階床と小屋裏の防湿層とに連続させれば問題ありませんが、在来工法では床下の土台と小屋裏の繋ぎ材まで延長するほか、間仕切壁の上下にも気流を防止する措置が必要になります。
防湿
水蒸気は風に乗って移動するだけでなく、素材内部を浸透する性質があります。気密性能を高めて空気の流れを抑えても水蒸気の移動を完全に止めることはできません。気密層を兼ねて断熱材の室内側にポリエチレンシートが使われてきましたが、相対湿度が高いほど透湿抵抗が小さくなるスマートベーパーバリアも開発されています。
適切な内外の透湿抵抗比は内外気温差によって変わりますので、スマ−トベーパーバリアがどこでも使えることはありませんが、比較的温暖な日本の本州などでは適当なものではないでしょうか。
発泡樹脂系断熱材を使うときは断熱材自体が気密・防湿性能を持つので断熱と気流対策を満足すればよく、セルロースファイバーや炭化コルクなど吸湿性のある断熱材を使うときは気密・防湿について鉱物繊維系断熱材よりも緩い考え方で対応できます。
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調湿
調湿は、建物の使用材料の平衡含湿比によって建物内の湿度を調整する機能です。
多くの自然材料は周辺の湿度が増加するとより大きな水分を含み、周りが乾燥すると水分を吐き出す性質があります。
調湿材料として知られているものに珪藻土や木炭がありますが、多くの自然建材が調湿機能を持っています。
調湿機能を持つ建材の例を挙げると、
木材とその加工品、土壁、コンクリート、畳、レンガ、木綿、革製品、珪藻土、・・・。
金属やプラスティックを除くほとんどの素材が調湿性能を持っていると考えても間違いではありません。
ポリエチレンシートなどの気密防湿層を使う断熱工法では、外壁に関係する軸組、屋根の野縁・床の大引きや根太のうち、防湿シートの屋外側にある調湿素材の機能を封じ込めていることになります。
どの断熱工法を選ぶかを考えるときに、断熱性能と防湿性能と調湿性能はそれぞれをバラバラに選択できるわけではありません。
ある種の断熱工法にはこれら「三点セット」が組み合わされて付いてきます。
もちろんあなたが既存の断熱工法と違う「三点セット」をつくっても構わないのですが、一般的なものよりも更に優れたものを作り出すことは難しいかもしれません。 |
主な断熱方法について断熱性能、防湿性能、調湿性能を比較して表にまとめました。
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断熱工法
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断熱材種類
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断熱性能
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気密・防湿性能
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調湿性能
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備 考
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充填断熱
工法 |
鉱物繊維系断熱材 |
壁厚さまで充填可能 |
透湿抵抗の大きいポリエチレンシートを壁の室内側に使用 |
ポリエチレンシートに阻まれて、構造材の調湿性能を生かしにくい |
内装にビニール
クロスなどを使
うと木材の調湿
性能は生かされ
ない |
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セルロースファイバー |
壁厚さまで充填可能 |
セルロースファイ
バーの吸放湿によ
り結露を回避す
る。
繊維系断熱材の中
では気密性が高
い。 |
構造材の調湿性能に加
えて断熱材も調湿する |
発泡樹脂断
熱材 |
壁厚さまで充填可能 |
断熱材が気密材をかねる |
調湿性能は低い。 |
外張断熱
工法 |
鉱物繊維系断熱材 |
断熱材の厚さと取り付け方法によって異なる。 |
構造体の外側をポリシートで囲う。
取り合いが少なく気密施工は単純。 |
構造体の調湿能力を最も生かしやすい条件は揃っている。
内装にビニルシートのような透湿し難い素材を使うと意味がなくなる。 |
支持具を使えばより厚い断熱材も使用可能 |
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発泡樹脂断熱材 |
30mm程度の断熱厚さが限界になることが多い |
断熱材が気密材をかねる |
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木造住宅の断熱方法には様々なものがありますが、工法によって室内温度とエネルギーの消費量さらに室内の湿度の変動幅など室内環境に大きな違いを生じます。

上の図では桃色で示した外気の湿度(%)変化に対して、水色で示した室内空気の湿度はやや小さくなっています。これは主に外気湿度が温度が変化する影響で大きく変動しているのですが、建物の調湿機能が大きければ室内湿度の変化幅はもっと小さくなる筈です。
また、黄色で示した室内機温は暖房で常に20℃に維持されるため外気温度の変化に対する変化幅の比率はチェックできませんが、空調期間以外に室温と外気温の変化の比率を測定すれば建物の室温の安定さを比較することができます。
断熱方法や内装材の使い方などによって、次に示すような指標が異なった数値を示すものと考えられ、それぞれの工法の建物の特性を比較することができるでしょう。
日平均温度差 : 室内平均気温−外気平均気温
内外温度差の比率 :(室内最高温度−室内最低温度)/(屋外最高温度−屋外最低温度)
内外湿度差の比率 :(室内最高湿度−室内最低湿度)/(屋外最高湿度−屋外最低湿度)
温度変化の位相のずれ: 屋外最高気温を観測してから室内最高気温を観測するまでの時間
湿度変化の位相のずれ: 屋外最高湿度を観測してから室内最高湿度を観測するまでの時間 |
調湿性能について具体的なことは、今後各種工法のケーススタディを積み重ねて客観的データを公開したいと思います。
データの測定をお願いできる方のご協力をお願いします。住宅の種類は問いません。
特に気密・防湿シートを使った高気密高断熱住宅にお住まいの方のご協力をお願いします。 |
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