3-4 木造建築物の断熱 (5/10)
木造建築物の断熱
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面材の透湿性能
 繊維系断熱材、特にグラスウールやロックウールなどの鉱物繊維系断熱材を使用する場合、「断熱材の暖かい側に透湿抵抗の大きな素材を使い、断熱材の外側には透湿抵抗の小さな素材を使う」とバイブルのように繰り返し語られています。

 これは、室内と屋外の温度差が大きい暖房シーズンに壁体内結露を防ぐためには避けられない問題ですが、建物を建てる場所や使用する断熱材によって壁を構成する素材の透湿抵抗の組み合わせにはいくつかのバリエーションがあります。

 ここで十分に注意が必要なことは、構造用合板が大きな透湿抵抗を持つことです。
 構造用合板は内装壁下地に使われる石こうボードの3倍以上の透湿抵抗を持つようです。
 下の表は代表的面材について透湿性能と壁倍率を応急的に調査した結果ですがこの種のデータがなかなか手に入らない現状では確実に結露を防止できる設計がされていないのではないかと憂慮されます。

材料 厚さ 湿気貫流率
g/m2・h・mmHg
湿気貫流抵抗
2・h・mmHg/g
透湿係数
g/m・h・mmHg
壁倍率
石こうボード
9.5
0.95
1.1
0.009
12.5
0.72
1.4
0.009
1.0〜2.9
シージングボード
 アセダスR

12

0.75

1.3

0.009

1.0〜2.0
 アセダスD
12
1.08
0.9
0.013
ダイライトMS
 外壁下地
12
0.33
3.0
0.004
2.0〜3.0
9
0.44
2.3
0.004
1.5〜2.5
ドリームボード かべ震火 
9
3.5
ダイライトMK
 クロス下地
12
0.64
1.6
0.008
2.0〜2.5
9
0.53
1.3
0.005
1.5〜2.0
フレキシブル板
6
0.0016
2.0
パーティクルボード
12
0.0014
2.5〜3.0
ハードボード
5
2.0〜2.5
針葉樹構造用合板特類2級
12
3.0
9
0.097
10.3
0.00087
2.5
OSB合板 11.1
0.033
30.6
0.00036
構造用合板
8.8
0.048
20.6
0.00043
MDF スターウッド
9.0
0.383
2.6
0.00344
2.5〜4.0
SIP ノバポン
9.0
0.081
12.4
0.00073
3.0
※ 壁倍率は構造方法や取り付ける釘・ビスの種類によっても変わります。
  事前に必ず認定条件を確認してください。

  構造用合板、OSB合板など木質系面材の透湿性能は平衡含湿比や相対湿度によって大きな変 化を示します。湿潤環境では透湿性能が大きく、乾燥環境では透湿性能が小さくなる傾向が認め られます。
  アメリカの規格では乾燥時の透湿性能をドライカップ、湿潤時の透湿性能をウエットカップと 表示しています。


鉱物繊維断熱材を試用する場合
 繊維系断熱材のうち、吸放湿能力をほとんど持たないグラスウールやロックウールなどの鉱物繊維系断熱材(ミネラルウールMW)を試用する場合、最も安全な方法は外壁の内側にグラスファイバー入り石こうボードなど壁倍率の高い下地材を貼って壁倍率をクリアーし、外壁外側には防風紙がグラスウールボードのような透湿抵抗の小さい面材を使用することです。これで壁倍率が不足する場合はシージングボードのような透湿抵抗の小さな面材を選択し、必ず結露計算によって安全を確かめてください。
 シージングボードと石こうボードの透湿抵抗はほぼ同等ですから、当然防湿層がない場合は結露が起こります。

セルロースファイバーを使用する場合
 セルロースファイバーは古紙をほぐして繊維状にした断熱材で、最大自重の25%近い水蒸気を吸湿して繊維細胞中に取り込みます。この作用のため、鉱物繊維断熱材を使った場合には当然結露するケースでも結露が顕在化しない性質があります。

 これまで、セルロースファイバーの使用方法は通常鉱物繊維系断熱材と同様に防湿層を設けていましたが、近年防湿層を使わない施工方法も定着してきました。しかし、建設場所の温度・湿度環境に応じて適切な性能の面材を選定するシステムが出来上がっているわけではありません。

 セルロースファイバーの吸湿特性を十分に生かした断熱設計をしようとすれば、吸湿特性と使用される場所の環境特性を把握した上で「非定常解析」による結露計算を行う必要がありますが、吸放湿や繊維細胞内の水分移動を反映する非定常解析プログラムは開発途上です。

 アメリカ・カナダや北欧で経験的に言われていることからすれば、外気条件を最も寒い時期の月平均気温と湿度に設定して定常分析(結露計算)をして壁の内部の相対湿度が120%を超えなければ、結露に関してほぼ安全と考えられます。 しかし、セルロースファイバーの吸放湿メカニズムはまだ理論的に解明されていないので、上記の120%をやや低めに見たほうが安全でしょう。

 セルロースファイバーの平衡含湿率は下の図のように相対湿度が上がるほど含湿量の増加量が大きくなる傾向があります。ここで、含湿量の大きさに目を向けていただきたいのですが、相対湿度約95%で吸水率23%ということは、55kg/m3で充填されたセルロースファイバーは1m3あたり約12.65Kgの水蒸気を繊維細胞の中に蓄えることができることを意味します。
 セルロースファイバーは約15gの水蒸気で飽和する20℃の空気の800倍もの水蒸気を内部に蓄えて結露を顕在化させにくい性質があります。

 このような吸放湿特性を生かすには北欧など寒冷地では断熱材の内側と外側の面材の透湿抵抗比を3:1程度に、東京など比較的温暖な土地では1:1程度にするのがいいと言われています。
 結露防止性能は壁に使われるセルロースファイバーの量や面材の透湿抵抗にも関わるので、壁の厚さが薄い場合には透湿抵抗の大きな面材を使うほうが安全かもしれませんが、室内環境を安定させる効果は少なくなります。


 上の図は寒冷地と温暖地のセルロースファイバーを使った壁の検討事例です。水蒸気圧を露点温度に変えて示しているので3:1、1:1の比率が示されませんが、室内側面材と屋外側面材で変化する水蒸気圧は左が3:1、右が1:1です。
 この図ではシート状の面材を使うと考えて図化しています。現場では内装下地などボード類の透湿抵抗を含めて検討してください。

 最も寒い月の平均気温結露検討して結露域が生じているわけですから、グラスウールやロックウールなど鉱物繊維を使えば平均気温以下になるときは必ず結露が起こりますが、セルロースファイバーを使う場合は安全と考えられます。しかし、厳密なチェックは有効な非定常解析ツールの開発に掛かっています。

やむを得ず構造用合板を使用するとき
 ある建材メーカーが「オトカベ」という名の防音用壁仕上材を販売しています。その中に音の(つまり空気の振動する)エネルギーを干渉させて弱めるためにボード表面に小さな穴をあけたものもあります。
 どんなものか判らない方は「オトカベ」で検索してみてください。

 これほど多くの穴をあける必要はありませんが、構造用合板の表面に面材としての強度を損なわない程度に穴をあけ、透湿抵抗を下げてやらないと断熱材内部で結露を起こすか、壁の内側に強力な防湿層を必要とすることになります。

 穴の直径は2〜3mm、ピッチは縦横150mm程度でいいだろうと考えています。


 ここに書かれていることに基づいて建築される場合、ご自分の判断と責任で行ってください。当社は実施設計に関与した建物に対してのみ責任を負います。
 

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