2-1-2/8 あなたの家物語、始まる(2/8)
あなたの家物語、始まる

あなたの家物語始まる ・あなたの家に欲しい性能 ・暮らし心地って 資金計画 建物の耐久性
省エネルギー 快適な家 ・夏の安眠対策 物語の終わりは来るか?


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付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
暮らし心地って?
 「暮らし心地」、あまり聴きなれない言葉です。「住み心地」ならきいたことがあるような気が しませんか? 「住む」というより「暮らす」というほうが様々な生活の側面を想定しているよう な気がします。「住み心地」が家の居住性能を問題にしているとすれば「暮らし心地」はそこに暮 らす人の心の満足土までを問題にしたい私の気持ちを込めた造語です。

 日本の家は夏の蒸し暑さを避けるために、伝統的に風通しの良い造り方を求めてきました。
 あの「家の造りは夏を旨とすべし、冬は如何なるところにも住まる」の考え方です。

 今のように冷房も暖房もなく、地球温暖化もヒートアイランド現象もなく、隣の家との間隔も充 分にあった時代、夏は蚊帳を吊り、縁側を開け放して暮らすほかに快適な暮らしをする方法はあり ませんでした。

 日本の家はそのころからの伝統を引き継ぎながら変化を加えられて今の姿になっています。

 皆さんが、特に深く考えないで家を建てる準備や分譲マンションを購入する手続を進めたとした ら、どんな構造方法を選んだとしても間違いなく「日本的な」性質を持つ家を手に入れることにな るでしょう。「日本的な」家の性質は当たり前すぎて、ここで私が指摘しても「なぜそれではいけ ないの?」と思う方のほうが少なく、中には「妙なことを言う」と思う方もいらっしゃるかもしれ ません。


日本の住まいの特徴
 日本の家の特徴は開け放すことを考えたつくりです。昔の家は廊下があり、縁側はすべて解放で きる引き違いの掃き出し窓(戸)が付けられていました。柱と柱の間を開放して蔀戸と呼ばれる戸 をはめ込んでいたのが原型です。
 蔀戸
 外国の窓を見ると最高だけを目的とした嵌め殺し窓や、縦軸・横軸の回転窓、内倒し・外倒し窓 など採光を最大の目的にして通風をあまり考えていないものが多いように感じます。

 今のように冷房も暖房もなく、地球温暖化もヒートアイランド現象もなく、隣の家との間隔も充 分にあった時代、夏は蚊帳を吊り、縁側を開け放して暮らすほかに快適な暮らしをする方法はあり ませんでした。

 日本の家はそのころからの伝統を引き継ぎながら変化を加えられて今の姿になっています。

 皆さんが、特に深く考えないで家を建てる準備や分譲マンションを購入する手続を進めたとした ら、どんな構造方法を選んだとしても間違いなく「日本的な」性質を持つ家を手に入れることにな るでしょう。「日本的な」家の性質は当たり前すぎて、ここで私が指摘しても「なぜそれではいけ ないの?」と思う方のほうが少なく、中には「妙なことを言う」と思う方もいらっしゃるかもしれ ません。

 最近、お台場や汐留に限らず、都心でもまた郊外の駅周辺にも高層マンションが「林立」という 表現が当を得るように建てられています。あんな建物で窓を開けたら突風が吹き込んでくるのでは ないかと思うのですが、外観を見ると低層住宅・中層住宅と同じように引き違いの掃き出し窓がベ ランダに向かってついているようです。
 かつて公団アパートを「立体長屋」と揶揄した言い方がありましたが、タワーマンションなって も木造の長屋文化を連綿と継承しているようです。

 こうなってしまう理由はどこにあるのでしょうか?

 ひとつはそれほど断熱性能を高めていないことにあります。Q値が 2.7程度で次世代省エネ基準 をクリアするために、これ以上断熱性能を高めようという動機はディベロッパーにはありません。
 床面積100m2なら暖房温度を20℃に設定しても年間暖房費は1戸あたり約65,000円、夜遅く帰る 人以外は昼間から暖房したままで掛けようと思う暖房費ではありません。冷房に掛かる費用は暖房 に比べればもっと少なくなりますが、冷房も窓を開けてまだ暑さが収まらないときにやむを得ず使 うものという意識があります。

 ヨーロッパ人なら間違いなく断熱性能をもっと高めて暖房に必要な費用を減らさなければならな いと考えるはずです。
 場所によっても違いはありますが、ヨーロッパには建築用の木材が少なかったからかギリシャや ローマの時代から石やレンガを積んで造った建物がたくさん造られてきました。

 私たちから見ると日本より暖かいのではないかと思うスペインやイタリアでも、東京の気温より 涼しく、普通の住宅で冷房を必要としません。反対に長く寒い冬に石やレンガの建物を一旦冷やし すと暖めるために大きなエネルギーを必要とするので、「窓を開けるにしても必要以上に大きくし ない。建物の構造体の外側に空気層を挟んでもうひとつ壁を造る」など屋外に対して閉じた家を造 る伝統があります。


 私たち日本人も、エアコンや暖房を使い始めて以来家を正しく断熱することを学ぶべきだったと 思います。

 建物の熱環境を考えるときに重要な二つの概念があります。熱損失率と熱容量です。

 熱損失率は建物内部と外部の温度差を基準にして建物から失われるエネルギーの大きさを示す単 位で、小さいほど少ない空調費で暖房や冷房ができます。
 熱容量は建物を1℃暖めたり冷やしたりするのに必要なエネルギーの大きさを示す建物固有の値 です。
 「熱容量が大きい建物は暖めたり、冷やしたりするのに大きいエネルギーを必要とするから空調 費がたくさんかかるに違いない!」と思った人、いませんか?

 空調でエネルギーを必要とするケースには二つあります。ひとつは部屋を同じ温度に保つときに 必要なエネルギーです。熱損失率と温度差と床面積を掛けると1時間ごとに必要な同じ時温度に保 つエネルギーの大きさが求められます。連続して空調するときに必要なエネルギーはこの「同じ温 度に保つエネルギー」だけです。

 次に何時間か空調エネルギーの供給を止めたとします。「同じ温度に保つエネルギー」が与えら れなくなると暖房なら温度が下がり、冷房なら温度が上がって、外とバランスする温度になると温 度変化が止まります。

 「一旦温度が下がる(冷房なら上がる)」ということは数時間温度を保つエネルギーが供給され なかった結果です。もし空調を続けていれば「温度が下がる(冷房なら上がる)」ことはなかった 筈です。
 また、もう一度空調設定温度に戻すために必要なエネルギーは、空調を切ったために節約したエ ネルギーよりは小さくなります。そうでなければわざわざこまめにスイッチをON−OFFする意 味がありません。

 判っていただけるでしょうか? 連続空調を基準にすれば「下がった温度をもう一度上げる」の は本来先に使っていたはずのエネルギーをあとに繰り延べて使い、いくらかのエネルギーを節約し ようとしたことになります。

 間歇空調の省エネ効果を具体的なデータなしに力説する人が多いのですが、間歇空調で空調を切 ったときに省エネ効果が高いのは熱損失係数が大きい建物の場合です。空調を止めることでザルで 水をすくうように浪費するエネルギーを減らすことは出来ますが、熱損失係数が小さくなるほど間 歇空調による省エネ効果は小さくなり、熱損失率が小さくなったことによる省エネ効果が大きくな ります。

 下の表は外気温度5℃のときに各種の断熱工法とQ値によって一日7時間空調を切りその後暖房を 再開するときの室温低下の幅と空調エネルギーの削減量、及びその建物で空調を連続運転したとき のエネルギー使用量(いずれも一日あたり)を表しています。
断熱工法
Q値
W/m2・K
熱容量
WH/℃
7時間空調を
切ったときの
室温低下
間歇空調による
空調エネルギーの
削減量
連続運転したときの
空調エネルギー使用量
内断熱工法
5.0
10000
5.00℃
19,918WH
204,720WH
4.0
4.08℃
13,257WH
161,520WH
2.7
2.79℃
5,307WH
105,360WH
外断熱工法
2.7
40000
0.75℃
1,491WH
105,360WH
1.5
0.49℃
384WH
53,520WH
木造住宅
5.0
5000
8.41℃
30,641WH
204,720WH
2.7
5.07℃
10,543WH
105,360WH
 外気温度は東京の1月の平均気温を想定して5℃とした。

 間歇空調をしてもQ値の大きい内断熱工法の空調消費エネルギーをQ値の小さい外断熱工法並み に減らすことはほとんど不可能なことが想像できるでしょう。
 外気温度が5℃の日にQ値5.0W/m2・Kの建物で53,520WHの発熱量で暖房したとき室温は外気温度 より5.6℃高くなるので室温は日平均10.6℃にしかなりません。

※ 熱損失率が小さいほど空調に必要なエネルギーが小さくなります。
※ 同じ熱損失率の建物では熱容量が大きいほど室内の温度変化が小さくなります。


 上の表でも判るようにQ値が大きく熱容量が小さい建物ほど間歇空調によるエネルギー消費削減 効果が大きいことが判ります。またどんな建物でもQ値を減らすことが空調エネルギーの削減に有 効なこともわかるでしょう。

 連続運転する空調設備は、室温を維持するだけの能力を持てば充分ですが、間歇運転する空調設 備は一旦冷やした室温を回復するために室温を維持する3倍程度の能力を必要とします。
 外断熱工法と内断熱工法では熱損失性能に3倍程度の違いを持たせているとすれば、必要な空調 機器の能力は内断熱工法の建物のほうが10倍近く大きなものになります。


 今の経済状況では、空調費の経済性について次のように考える方が多いと思います。
 「仮に空調の電気代が1/4になるとしても年間の節減可能額は10〜15万円、今後30年で節 約できる金額は300〜400万円にしかならない。それなのにそれと同じくらい工事費が増えるとした ら、わざわざ断熱にお金を掛けても暖房費の一部を先払いするだけじゃあないの?」

 そういう考え方もあると思います。運良く電気や灯油などエネルギーが今と変わらない価格で購 入できれば、建物に掛けたお金は空調エネルギー費を先払いしただけになります。
 でも、考えてみてください。灯油の価格はこの数年で50%以上あがりました。
 バイオエタノール生産のためという理由でまだバイオエタノールの供給が始まる前から食料油や マヨネーズの価格は上がり始めています。

 原油の埋蔵量は(狼少年のように)あと30年分と言われ続けています。埋蔵量が無限でないこと は誰でも知っています。仮に埋蔵量が無限だとしても、制約なしに化石燃料を使い続けられないこ とを地球環境は私たちに教えてくれています。
 一説にはエネルギーの供給価格は今後3倍程度に上昇するだろうと伝えられています。そうなる とすれば、300〜400万円の断熱工事への投資は今後30年の内に600〜800万円のエネルギー費の削減 に結びつきますし、より長期に使うことができる建物にしておかなければ子供や孫の時代まで使い 続けることもできません。
 建物がどんなに耐久性があって長持ちしたとしても、ガソリンが高ければリッターあたり2Kmほ どしか走らない往年の名車に誰も乗りたがらないように、省エネな建物でなければ壊して建て替え る以外の選択はできなくなるでしょう。

 過去の暮らし方に基づく生活習慣に流されることなく、現在と将来の暮らしを見つめて合理的な 「暮らし心地」を求めた家造りを進めてください。


日本の建物と断熱
 日本の住宅の起源は「寝殿造り」「書院造り」にあると言われます。1950年代までの住宅は
南に縁側と開放的な掃き出し窓を持ち、「風通し」によって夏の暑さを少しでも和らげる造りを目
指していました。
 蒸し暑さを和らげるためには、家の中を屋外の木陰の環境に近づけることです。庶民の住宅に暖
房も冷房のない時代に培われた技術には断熱や気密という概念はまったくなかったと行ってもいい
でしょう。
 高度成長期に都市への人口集中が進み、「公団住宅」など新しい形式の住宅が造られるようにな
り、エアコンや気密性能が高いアルミサッシが登場しても住宅の熱環境に対する基本的な認識は従
来と大きく変わりませんでした。

 日本には、いえ、日本だけでなく世界中どこにも、元々建物を断熱するという考え方はありませ
んでした。
 建物を断熱するようになったのはオイルショックが起きた1970年代以降ですから、建築断熱の歴
史はせいぜい30年あまりにしかなりません。
 断熱はオイルショックの石油供給不安のなかで、より少ないエネルギーで暖かさを確保しようと
北欧やカナダなど寒冷な気候風土の地域から普及が始まりました。当時の断熱の目的は暖房の消費
エネルギーを減らすことでしたが、「石油の供給不安に備え少しでもエネルギー消費を減らそう」
といった意識のものでした。
 日本でもオイルショック後、住宅金融公庫の融資基準のなかに一定の断熱仕様が盛り込まれるこ
とになりました。
 (私の恩師、宮野秋彦・名工大名誉教授は「GHQ時代にアメリカから断熱に関する文献が取り
寄せられ、日本でも断熱を検討するよう指示があった」と仰っていました。)

 1990年代以降、地球環境問題中でも地球温暖化防止対策の手段として断熱が注目されるようにな
ります。ヨーロッパやカナダは居住環境を損なわずにエネルギー消費量を削減する目標を定め、建
物建設地の気候に応じた断熱性能を法律で規制しています。

 日本には住宅のエネルギー消費量を規制する法律はありません。住宅金融公庫の融資に当たっ
て、耐久性能を向上させたものと一定の省エネ性能(次世代省エネ基準)を持ったものに割増融資
が適用される程度です。
 それ以前に住宅の空調エネルギー消費に対する考え方がヨーロッパとは根本的に違っています。

 木造でも石や煉瓦を使う熱容量の大きい欧米の建築物は一旦空調を切ると室内が底冷えするよう
な寒さに見舞われます。一旦建物が冷えると数日間暖房しないと室内が適温にならないことも珍し
くありません。
 そのような理由から、断熱が普及する以前から欧米では躯体の外側に空気層を持ち、更に外装壁
を設ける二重壁構造の建物が一般的でした。空気は比較的熱伝導の少ない素材です。そして空調は
躯体の温度を下げないように全館連続空調で行うのが常識とされています。
 現在の欧米の石やレンガそしてコンクリートを使った建築物は二重壁の空洞に断熱材を充填した
構造で、日本ではこのような断熱工法を外断熱工法と呼んでいます。

 日本の伝統的な住宅の建築工法は熱容量の小さい木造建築です。建物の断熱性能がそれほど良く
なく、建物が冷え切ったとしても暫く空調を入れると建物全体がとは言えませんが、使用する部分
の室温を比較的早く適温にすることができます。つまり、しっかり断熱をしなくても使わない部屋
を空調しないことでエネルギーの使用量を増やさないで済ませるのです。
 財団法人建築環境・省エネルギー機構が発行している「住宅の省エネルギー基準の解説」のp.72
には年歓談冷房負荷の計算に関して次のように解説しています。

 「本計算では、全館、連続暖房(あるいは冷房)が条件になっている。この条件はもちろん現実
とは異なるものであり、かつ、それを推奨するものでもない。あくまで、年間暖冷房負荷という指
標を算出する場合の計算条件として提示しているに過ぎない。暖冷房の条件が異なれば、暖冷房負
荷の計算結果も異なり、それによって建物の熱性能評価値も影響されるという考え方もあろうが、
本告示ではそのような影響は小さいと判断し、この影響を問題としない立場をとった。」

 ここでは、「欧米と同じ全館連続空調で建物のエネルギー消費性能を計算しているが、実際には
部分間歇空調をするので実際のエネルギー消費は計算結果ほど大きくない。」と言いたいのだと思
います。しかし、必要充分な部分間歇空調をすることは決して簡単なことではありません。

 寝る前の寝室、入浴前後の洗面脱衣室、使用する前のトイレをを充分に間歇空調できるでしょう
か?さらに常時使っている居間などでも空調を我慢しながら暮らしていることがないでしょうか?
 日本の入浴前後の死亡率が他の先進国や開発途上国に比べても格段に高い事実や、多くの日本人
が自分の家を寒い家だと思っている現実は、「部分間歇空調をすれば空調エネルギーを削減でき
る」と考え、充分な断熱性能を持つ建築物に背を向けていた「つけ」だと思います。
 また、国土交通省は「建物の省エネ性能をどうするかは国が口を出すことではなく、建築主が自
己の判断で決めることだ」という立場をとっています。しかし、その判断の基準として示されてい
るのは上に引用したような「次世代省エネルギー基準」ですから、建築主は余程良く勉強しない限
り満足な省エネルギー性能を持つ建物を手に入れることはできません。


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