2-1-5/8 あなたの家物語、始まる(5/8)
断熱とライフスタイル

あなたの家物語始まる ・あなたの家に欲しい性能 ・暮らし心地って? ・資金計画 ・建物の耐久性 
・省エネルギー 快適な家 ・夏の安眠対策 物語の終わりは来るか?


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マニュアル
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4-2断熱改修のマニュアル
4-3RC建築物の断熱改修
4-4省エネな家造りの進め方

付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
省エネルギー
 「省エネルギーのためにあなたは何をしていますか?」
 こう聞かれると、多くの方は快適さを我慢して冷房や暖房をつけないようにして犠牲的精神を発
揮することが省エネルギーだと答えるのではないでしょうか?

 それでは、冷房や暖房は本来は使うべきではない設備で、しっかり使うことは「贅沢は敵だ!」
と非難される行為なのでしょうか?

 私はそういう考え方は人間が本来目指すべき方向とは全く違う誤った考え方だと考えています。
 冷房や、暖房は室内環境を快適に保つために室内の熱エネルギーを調節する装置です。私たちが
ここで使うエネルギーが非常に大きくなり、しかも化石燃料に多くを依存していることが問題なの
であって、小さなエネルギーであるいは化石燃料に依存している問題さえ解決すれば、決して快適
さを我慢することはありません。「快適さを我慢すべき」と考えると人間らしさを捨ててしまうと
言ってもいいと思います。

 「(快適に犠牲的生活を送るために?)夏にはクール・ビズを冬にはウォーム・ビズを着用しま
しょう」などと聞くと、「もっと頭の使い方があるんじゃないの?」と言いたくなります。

 第2次世界大戦のときに「ほしがりません勝つまでは!」が国を挙げてのキャンペーンになりま
したが、省エネルギーは決して終ることのない、勝つ日がくることのない人類共通の課題になって
きています。

 今わたしたちが使っている原油を初めとする化石燃料や原子力などのエネルギーのいくつかを、
人類は産業革命から僅か300年ほどで使い果たそうとしています。

 メタン・ハイドレートなどまだ利用されていない化石燃料が存在しますが、化石燃料の使用が大
気中の炭酸ガスを増加させ、地球環境を変化させて人類の存続を危ぶませていることが省エネルギ
ーが必要な理由です。
 建築基準法やエネルギー政策は数年から10年単位という短い時間単位で見直しが行なわれ、基準
や規制が変更されますが、家は数十年、長いものでは 100年以上も使い続けることができるもので
すから、今の規定に基づいて建てれば充分なのか? それとも将来を見越せば充分過ぎる配慮をし
たほうがいいのかを良く考えて家造りの方向を決めてください。

日・独の住宅エネルギー使用量比較


 今、ドイツと日本の住宅が必要とする年間空調エネルギーを比較すると、ドイツでは上の図の左
端のように、地域の気候に関係なく、空調エネルギー消費量を一律に70KWH/u・年に規制してい
て、これ以上空調エネルギーを使う建物を建てることはできません。
 さらに、政策誘導目標20KWH/u・年を達成した建物は融資・徴税で優遇されます。

 日本では建築基準法などによるエネルギー使用量の規制制度はなく、住宅金融公庫の融資を通じ
て省エネ誘導を行っています。
 その誘導目標は、地域によって異なりますが、上の図に示すようにドイツの規制の建物の約4倍
のエネルギーを使用するレベルで、次世代省エネ基準の建物でもドイツの一般規制が求めている省
エネ基準に達しません。
 日本の政策誘導目標である「次世代省エネ基準」の建物はドイツの誘導目標住宅の6倍近い空調
エネルギーを必要とし、温暖地ほど多量のエネルギーを使う構造になっています。


日本の住宅の断熱性能基準
 旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)が定めた断熱構造基準、環境共生基準、次世代省エネ基
準は地域によって次のようなQ値を持ち、年間およその消費エネルギー量を次のように決めていま
す。
T地域
U地域
V地域
W地域
X地域
Q値 熱損失係数
(W/u・K)
断熱構造基準
2.8
4.0
4.7
5.2
8.3
環境共生基準
1.8
2.7
3.3
4.2
4.8
次世代省エネ基準
1.6
1.9
2.4
2.7
2.7
年間消費エネルギー
(MJ/u)
断熱構造基準
840
1030
1030
1030
1100
環境共生基準
470
610
680
800
610
次世代省エネ基準
390
390
460
460
350
年間消費エネルギー
(KWH/u)
断熱構造基準
233
286
286
286
305
環境共生基準
131
169
189
222
169
次世代省エネ基準
108
108
128
128
97

住宅の断熱性能の目標値
 ここで技術的に細かい検証はしませんが、次世代省エネ基準の消費エネルギーをドイツ並のm2
あたり年間70KWHの空調エネルギー消費まで減らすとすれば、Q値を次のように定めればいいことに
なります。

 次世代省エネ基準の表を変更した目標値
T地域 U地域 V地域 W地域 X地域
Q値 熱損失係数
(W/u・K)
0.90
1.22
1.31
1.41
1.95
年間消費エネルギー
(MJ/u)
252
252
252
252
252
年間消費エネルギー
(KWH/u)
70
70
70
70
70
年間電力料金換算値
(単位:千円)
46.2
46.2
46.2
46.2
46.2
想定した空調度・日
(参考)
3224
2376
2219
1972
1500
 この表は空調消費エネルギーがQ値と空調度・日に比例するとして機械
的に計算しました。輻射熱による躯体の蓄熱などは考慮していません。

電力料金換算値は床面積120uの住宅を想定
エアコンの効率(COP)=4 単価22円/KWH


 ここに示した断熱性能はT〜W地域ではRC内断熱工法を使って実現することが極めて難しいも
のです。
 しばしば、「内断熱建築物では間歇空調によって空調エネルギーが節約できるので、連続空調し
なければ建物が冷えてしまう外断熱工法の建物より省エネルギーが可能だ」と「内断熱工法のRC
建築物でも充分省エネができる」かのような反論を見ることがあります。(かと言って、「具体的
にどれだけのエネルギーで生活できる」という解説を見たことはありません。)

 しかし、一日に2回10時間ずつ空調のスイッチを切ったとしても通日通電した場合の20%ほ
どしか節電できませんし、4時間で連続運転の80%の電力を使うと瞬間的なエネルギー消費は5倍
近く増加するので空調機器と基本料金ばかりが大型化することになります。



具体的な省エネ手段
 したがって、エネルギー消費を効果的に減らすには、
 1.断熱性能を高めてQ値を減らすこと
に取り組む必要があります。さらに、
 2.暖房では日射エネルギーを室内に有効に取り込むこと、
 3.冷房を含めて地熱エネルギーを活用すること、
 4.太陽熱温水器などによってソーラーエネルギーを暖房に利用すること
などが有望な省エネルギーの実践方法です。

 自然エネルギーを使うにしても、建物の基本的な断熱性能が東京でQ値 1.5程度までに高められ
ていないと、効果的な自然エネルギーの利用を進めることができないでしょう。


 エネルギー価格は、今後30年ほどで現在の2〜3倍に上昇する可能性がありますが、将来空調負
荷を減らすために断熱改修しようとすれば、今しっかり断熱しておくよりも数倍も費用が掛かりま
す。多大な費用を掛けて断熱改修するなら、解体・新築を選ぼうかと考えることになるかもしれま
せん。



連続空調と間歇空調
 「連続空調はエネルギーを浪費するので、間歇空調をしたほうが経済的だ。」
 多くの日本人はこれが常識だと思っています。しかし、熱損失率を小さく抑えた建物でどのよう に空調エネルギーを使い、室温がどう変化するかを比較するとその実態を具体的に理解できます。


 先ず、Q値4.68の内断熱建築物を連続空調したときの室温と間歇空調したときの室温を比べてみ ます。空調機の最大出力は 10.5KWHとします。
 暖房温度を20℃とすれば、連続空調では当然常に20℃に保たれています。0時から6時まで の6時間空調を切るとその間に室温が約 2.8℃低下し、空調再開後5時間ほどでもとの温度に戻り ます。
 (実際には室内の空気の温度はもっと早く暖房温度まで回復しますが、床温度など温めにくい部 分の温度の回復には更に時間を要します。)


 次に上のケースで空調エネルギーをどれだけ使っているかを比較しましょう。
 

 間歇空調では空調を使わない時間はエネルギーを使用しませんが、空調再開後暖房設定温度に達 するまでに空調機器の最大能力で運転を続けます。
 空調を切った時間に使わなかったエネルギーがすべて節約になるのではなく、空調再開後使うエ ネルギーのうち連続空調より大きくなる部分を差し引いたものが間歇空調によって節約できるエネ ルギーになります。

 ここでは、空調を6時間中断した結果 8.9KW (7.7%)を節約したことになります。
休止期間
運転期間
合 計
連続空調との差
連続空調
35.03KWH
80.57KWH
115.60KWH
0.00KWH
間歇空調
0.00KWH
106.70KWH
106.70KWH
-8.90KWH


 Q値 1.50の外断熱RC建築物で同じように連続空調したときの室温と間歇空調したときの室温を 比べてみます。空調機の最大出力は 3.05KWHとします。
 連続空調では内断熱同様常に20℃に保たれています。0時から6時までの6時間空調を切ると その間に室温が約0.21℃低下し、空調再開後5時間ほどでもとの温度に戻ります。
 (0.21℃低下すると言うべきなのか、ほとんど低下しないと言うべきなのか?)


 外断熱工法でも間歇空調の空調エネルギーは、空調再開後、設備能力一杯で運転します。


 ここでは、空調を6時間空調を中断しても、下の表のように連続空調に比べて 0.22KW (0.75%) しか節約できません。
休止期間
運転期間
合 計
連続空調との差
連続空調
9.31KWH
20.40KWH
29.71KWH
0.00KWH
間歇空調
0.00KWH
29.49KWH
29.49KWH
-0.22KWH

 熱損失の大きい建物、熱容量の小さい建物では空調を OFFにすると急激に内部の温度が外部温度 に近づくので内外温度差が減った分だけ時間当たり熱損失が減少します。反対に熱損失が小さく熱 容量の大きい建物では空調を OFFにしても室温はほとんど下がらず時間当たり熱損失もほとんど減 りません。次に空調を入れたときに空調を切っていた時間に使わなかったエネルギーとほぼ等しい エネルギーを必要とすることになります。

 RC外断熱とRC内断熱の建物で連続空調と間歇空調したときの比較を、同じグラフでしてみるとど ちらがよりエネルギーを消費しないか良く判ります。


 RC外断熱工法の建物では間歇空調しても連続空調しても目に見えた室温の違いはありません。



 空調で消費するエネルギーの大きさは外断熱工法の方が遥かに小さくなります。

 ここで使用した外気温度条件は比較的暖かかった2004年1月1日のもので、日平均外気温度が約 10℃です。この日の空調消費エネルギーを外断熱工法の連続空調と等しくなるように内断熱工法の 建物を空調すると日平均室温を13℃程度までにしか維持できないことになります。

 このように、熱損失の大きな建物で省エネルギーを実践しようとすれば空調を切り、室温を落と すことが唯一の省エネ手段になります。断熱性能の高い家では、小さな熱損失率のために空調を使 いながら省エネを続けることができます。

 さらに、電力の基本料金や空調機器の能力は連続空調をする場合は日平均空調負荷を基準に決め ることができますが、間歇空調する場合の基本料金や空調機器の能力は間歇空調でスイッチを入れ た後の最大負荷を基準に決めます。間歇空調すると連続空調に比べて設備能力や基本料金が3〜5 倍ほど大きくなります。


建物内部屋と部屋の間の温度差
 適切に外断熱工法で断熱された建物は一般に建てられている内断熱工法で断熱された建物に比べ て3倍以上の断熱性能があります。
 同じ大きさの建物で居間を空調しているとき、部屋の外壁から屋外に逃げる熱エネルギーと、ほ かの部屋に流れていく熱エネルギーを考えてみましょう。
 暖房室の外壁から屋外に逃げるエネルギーは断熱性能が劣る内断熱工法の方が3倍以上大きくな ります。

 次に、ほかの部屋に流れるエネルギーです。
 すべての部屋を同じ温度で空調しているときは部屋と部屋の間に温度差はありません。間仕切壁 を通ってほかの部屋に熱が流れることもありません。
 暖房室と隣接する部屋が空調されていないときは、温度差に応じたエネルギーが居間から隣接す る部屋に流れます。内断熱工法の建物では隣接する部屋からもエネルギーの多くが外壁から外部に 流れ出すのに対し、外断熱工法の建物では熱容量の大きな躯体に蓄熱され、徐々に建物全体を暖め ていきます。

 次のグラフは1日16時間20℃で暖房している暖房室に隣接する無暖房室の1週間の温度変化をシ ミュレートしたものです。


温度変化の様子はモデルの設定条件によって変わることがあります


  •  内断熱1に比べて外断熱1の温度変化が少ないのは熱容量が大きいためです。
  •  ここで想定した外気温は東京の1月の外気温とほぼ等しい5℃、内断熱1のQ値は6.48、 外断熱1のQ値は次世代省エネ基準の 2.7、外断熱5のQ値はT地域の次世代基準(1.4) に近い1.5です。(Q値の単位は W/u・K)
 適切に設計された外断熱工法の建物(外断熱5)では建物の外部に損失する熱エネルギーが少な いため、非空調室の気温も空調室に接近して空調室の室温に近い状態で平衡状態になるのに対し、 断熱性能が不十分な外断熱工法の建物(外断熱1)と内断熱工法の建物(内断熱1)では隣室から 受けた熱を外壁から外部に奪われるのでより低い温度で波動を繰り返します。

 外断熱の建物が持つ大きな熱容量が時間の経過に伴う温度変化を小さくし、外壁の高い断熱性能 が建物内部の場所による温度のバラツキを小さくします。
 外断熱1のように断熱性能の不十分なものでは空調室と非空調室の間に大きな温度差ができ、低 温になる部屋でヒートショックによる健康被害、さらに結露やカビを発生させる恐れがあります。

 適切に設計された外断熱工法の建物は、間歇空調しても屋内に大きな温度変化がおきないだけで なく、空調室と非空調室の温度差も縮小して快適な暮らしを実現します。


 省エネルギーの話から快適さに話が流れ始めてきたので、この項はそろそろ終わりにします。



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