建物の空調エネルギー使用量はQ値と暖房度・日(HDD=ヒーティング・デグリー・デイズ)と
冷房度・日(HDD=クーリング・デグリー・デイズ)によって決まるという考え方があります。
欧米では常識なのですが、日本ではなじみが薄い考え方です。なぜかというとこの考え方は「全館
連続空調」を前提にしています。日本の空調の考え方には必要なところで必要なときだけ空調を使う
「局所間歇空調」でしたから、いつも空調することに罪悪感のような心理的な抵抗があるのかもしれ
ません。
しかし、断熱性能を高めていくと部分間歇空調をしても全館連続空調をしても実際に使う空調エネ
ルギーの差はほとんどなくなってきます。
「ザルで水を汲む」という例えのように熱を垂れ流しにする断熱性の低い建物では、空調を切るこ
とが最大のエネルギー節減策になりました。しかし、空調を切っても室温変化が小さい建物では空調
のスイッチを切っても熱損失が減るわけではありませんし、空調を切った時間に失われたエネルギー
を次にスイッチを入れたあとに補わなければなりません。
Q値が5.0の建物で2004年1月1日の0時から7時までの 7時間暖房を切ると44KWのエネルギーが節
約できて 3.7℃温度が下がり、Q値が1.5の建物で 7時間暖房を切ると11KWのエネルギーが節約でき
て 0.3℃温度が下がります。
次に暖房を入れたときに室温を回復するために前者では37KWの、後者では10.8KWのエネルギーを必
要するので実際のエネルギー節約量は前者が(44-37=)7KWHに対し後者は(11-10.8=)0.2KWHにし
かなりません。
(※ ここでは空調開始後すぐに暖房設定温度に戻す計算をしたので板のグラフの注とは少し省エ
ネ量が違っています。)
「0.2KWのエネルギーでも節約できるならこまめにスイッチを切る方がいい」と思いますか?
連続空調するときにQ値5.0の建物で12KWの能力の、Q値1.5の建物で3.6KWの能力のエアコンが必
要とすれば、スイッチを切って節電するにはQ値5.0の建物で12+37/3=24KWの能力の、Q値1.5の建
物で3.6+10.8/3=7.2KWの能力のエアコンが必要になります。
連続運転するときに比べて約2倍の空調機を使って一日連続空調したときの数%の省エネをするこ
とにどれだけの意味があるでしょうか?
連続空調のときには電力消費量のピークは大きくなりませんが、間歇空調ではピーク消費量が大き
くなるため電力契約量と基本料金が増加することがあります。
熱損失率(Q値)と呼ばれる性能値を小さくして空調負荷を減らし、間歇空調によって瞬間的な空
調負荷を増やさないようにすることが省エネルギーの第一歩です。

温度変化の小さい外断熱工法の建物では、7時間空調を切っても0.3度しか室温低下しない。室内の
温度が温度が下がらないので、空調を切っても熱損失はほとんど減らない。
熱損失の削減量=省エネルギー量は元の温度に戻るまでの10時間で次の式で計算できます。
省エネルギー量=0.3℃×Q値(1.5)×床面積(120)×時間(10/2)=270WH
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間歇暖房でスイッチを切った時間に節約した電力とほぼ同じ電力を通電後温度回復するまでに必要
とする。
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熱容量の小さい内断熱建築物ではQ値が大きくなるよりも温度低下の割合が大きい。
7時間で3.7℃室温が低下し、その後3時間あまりで室温が回復する。
熱損失の削減量=省エネルギー量は元の温度に戻るまでの10時間で次の式で計算できる。
省エネルギー量=3.7℃×Q値(5.0)×床面積(120)×時間(10/2)=11,100WH
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間歇運転で44KWHの電力を節約して室温を3.7℃下げたことでその後使った電力を差し引いても
11KWHの節約になりました。
ここで示した省エネルギー量はエアコンからの発熱量です。電力使用量は発熱量の約1/4になり
ます。
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外断熱と内断熱では間歇空調したときの温度変化はどう違うのでしょうか?
外気温度が8℃室内温度が20℃で7時間暖房を切ったあと、外断熱工法では0.3℃、内断熱工法で
は3.7℃室温が低下します。
熱損失率が約3.3倍違うことも温度の下がり方の違いの原因ですが、12倍以上も温度が下がるもう
ひとつの原因は「熱容量」と呼ばれるものです。
コンクリートを断熱材の中に包み込んだ外断熱工法の建物は温度が変化しにくい性質を持っていま
す。

間歇空調したときの内断熱と外断熱の室温を比べると熱容量が大きく熱損失率(Q値)が小さい外
断熱工法の建物ではほとんど温度低下を示しませんが、熱容量が小さく熱損失率(Q値)が大きい内
断熱工法の建物では4℃近い温度低下を示します。
この費は最低気温が8.1℃と冷え込みの弱い夜でしたが、RC内断熱の室温は16.3度まで下がりまし
た。
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RC外断熱のQ値を1.5、内断熱のQ値を5.0で計算しています。内断熱の集合住宅ではもう少しQ
値が小さくなることがありますが戸建住宅ではこの程度でしょう。どちらも連続空調したとすると外
断熱工法の消費エネルギーは約4分の1になります。
この説明に「内断熱工法の建物は間歇暖房できるから、Q値で示されるよりも遥かに省エネに使え
る」と反論する人たちがいます。
彼らが内断熱工法のRC建築物でどれだけの節電が可能と考えているのか判りませんが、両方を連
続空調した場合は内断熱工法の建物は外断熱工法の4.18倍のエネルギーを必要とし、上の図で示すよ
うに午前0時から午前7時まで空調を切ったとして、外断熱工法で連続空調した場合の3.8倍のエネル
ギーを必要とします。
10時間も暖房を切って節電をしても1日に必要なエネルギーの10%の節約ができないのですか
ら、仮にもう10時間スイッチを切っても使用電力量は20%ほどしか減らすことができません。暖房
しない部屋を増やしてもそれほど省エネにはなりませんし、温度の低い部屋には結露やカビが発生し
ます。
年間にQ値 1.5の外断熱の建物とと同じエネルギーを使って、Q値5.0の建物を暖房するとすれ
ば、東京で暖房度日(HDD)が450程度になる暖房基準温度を探すことになります。
12〜2月の3ヶ月(90日)の平均気温を7℃とすればこの間平均5℃温度を上げて12℃に保つとそれだ
けでHDDが450になります。同じエネルギーを使って20℃と12℃の生活のどちらを選ぶのが賢明でしょ
うか?
さらに、同じ電力を使っても電気料金には違いが出てきます。
電気料金は基本料金と従量料金に分けて計算され、基本料金は瞬間最大使用量で決まります。間歇
空調するときは間歇運転開始後のピークに合わせて契約電力量を決めなくてはいけません。
上の図で間歇空調のときの出力を見ると内断熱で15KWの発熱量、外断熱では5KWの発熱量です。
外断熱の連続空調のときの最大発熱量は 2KWほどですから断熱の仕方によって空調用契約電力の大き
さは7〜8倍も違って来るのです。契約電力が 5KW大きくなるだけで、1年間の基本料金は 73.4KWH
の電力量料金と同じ1638円も上がってしまいます。
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ほかにも間歇空調しなくても、快適さを損なわずにエネルギー消費を減らす方法があります。
それは自然エネルギーの積極的な利用です。
空調しながら省エネする高断熱の住まい
空調しないで省エネする低断熱の住まい
高い断熱性能を持つ建物は、空調温度を少し下げて長期の外出をしても
余分なエネルギーを浪費しません。
「やさしい外断熱講座・長い外出のとき」に
内断熱と外断熱のそれぞれについて
暖房設定温度を3℃下げて外出した場合の電気料金と
空調を切って外出し帰宅後に設定温度に戻すまでの電気料金を
比較していますのでご覧下さい。
内断熱では空調を切らない場合7,216円も余分な電力料金が掛かりますが、
外断熱では僅か126円と60分の1しか余分な負担がありません。
このことはよく断熱された建物では空調しながら省エネできるのに対し、
断熱が不充分な建物では空調のスイッチを切らない限り省エネできないことを示しています。
カビ・アレルギー、ヒートショック、そして建物や家財の健康もを考えていますか?
建物が造る室内環境が、住む人を健康にしたり、病気にしたりします。
低温・高湿部分を持つ部屋に繁殖するカビ・ダニ・バクテリア類
高温になる部屋で高まるVOCなど化学物質
よそのお宅にお邪魔したとき、玄関先で異様な臭いを感じたことはありませんか?
室内温湿度の不安定な家は直接・間接に住む人の健康を蝕みます。
断熱性能の良い建物の室内温度は二つの面で安定しています。
ひとつは時間の経過による温度変化が少ないこと、
もうひとつは場所による温度差が少ないことです。
建物内部と屋外の間を行き交う熱の流れを遮ること、
断熱材の内側に建物本体を取り込むことで室内の熱環境が安定します。
内断熱工法で断熱した建物と、外断熱工法で断熱した建物の室内の温度変化を比べると
外断熱工法の建物は内断熱工法の建物の1/10以下になります。
仮に夜、暖房のスイッチを切った後内断熱の建物の室温が5℃下がるとき、
外断熱工法の建物の温度変化は約0.5℃程度とほんの僅かです。
内断熱工法の建物を暖・冷房しているとき、
床と天井付近では5℃前後の温度差があると言われています。
空調していない部屋と空調している部屋の温度差はもっと大きくなります。
布団を詰め込んだ押入の外壁側やトイレ・洗面脱衣室などは
暖房室に比べて気温が10℃以上下回ることも珍しくありません。
熱が屋外に逃げにくい外断熱工法の建物では屋内に大きな温度差はできません。
室内の天井と床の温度差は1℃以内、
建物内の温度差も2〜3℃と極めて小さくなります。
昔の日本の木造住宅はほとんど気密性がありませんでした。
天井裏や床下はもちろん壁にも隙間があって
隙間風によって屋内の水蒸気は屋外に排出されていました。
コンクリートとアルミサッシで区切られた現代の住宅では
隙間風が水蒸気を排出してくれることはありません。
そんな造り方をすればエアコンもストーブもほとんど役に立ちません。
木造住宅でも壁下地には防湿フィルムが張られ、
室内には水蒸気がこもりやすくなっています。
水蒸気がこもりやすく、温度差の大きい家は結露の起きる家です。
快適な室内環境の基準とされる20℃−相対湿度60%で空調したとき
屋内に6℃余りの温度差があれば必ず結露が起きます。
屋内に4℃の温度差があれば、結露は起きないとしても、カビが発生しやすい環境になります。
従来、外断熱の説明と言えばここで決まって結露・カビ・ダニによる健康被害の話が出てきまし
た。
専門外のコメントは控えます。
興味のある方は「カビ アレルギー」、「真菌症」などのキーワードで検索してみてください。
温度変化の少ない家ではこれまでとまったく違う生活が始まります。
外の気温が急に寒くなっても、暑くなっても室内の気温はほとんど変化しません。
夏・冬別の布団を用意する必要がなくなります。
(余分な収納品がなくなる押入だって広々としています)
「季節の変わり目」だからと前置きのつく体調不良の多くとも無縁になるでしょう。
温度が高くなる部屋では
建材や家具からホルムアルデヒドやVOCがさかんに蒸発して
シックハウス症候群と呼ばれる化学物質過敏症を発症させます。
物にとっても温度・湿度の不安定な環境は好ましいものではありません。
高級な家具・木製の楽器・骨董品・絵画などは
乾燥・湿潤を繰り返すと割れたり塗装や絵の具にひびが入ったりして価値を損ないます。
日本の美術館の中にも所蔵品の収蔵庫に外断熱工法を採用しているところがあります。
内断熱の収蔵庫を建て、温度・湿度を空調機で管理するのに比べて
外断熱工法で造った収蔵庫は管理が容易でコストもかかりません。
美術工芸品・家具・楽器と同じように、
木で作られた建物や建具類も湿度変化が少なければ傷みにくくなります。
極端な低温がなく結露のない建物には木材腐朽菌が繁殖しにくく、
厚恩になり乾燥し過ぎることもないので木材の割れも少なくなるからです。
外断熱したコンクリートの建物は大きな温度変化をしないので
コンクリートの伸縮を原因とするクラックができにくく、
小さなクラックができたとしても雨水や結露水が染み込むことがなく、
コンクリートの中性化が進みません。
鉄筋が錆び始めるまでの期間が長いので、内断熱の建築物に比べて長期間保ち続けます。
良い家は長持ちします
住宅は財産か?
それとも耐久消費財か?
財産=土地や預貯金のようにいつまでも価値を保つもの
耐久消費財=電化製品や車のように一定の期間使えば換えるもの
「高度成長期」と呼ばれた1960年代以降、日本の住宅産業は住宅をスクラップ&ビルドする耐
久消費財として「建設ブーム」を作り出し発展してきました。
今、スクラップ&ビルドの最大の問題は廃棄物の処分です。
設備機器、内装材、断熱材、石膏ボード、コンクリート、鉄筋、様々な素材を分別・再生処理する
ために多くの費用がかかります。
焼却・埋立処分していたときに比べれば解体のための費用は大きく増加しています。
解体した後で、また同じような建物を造り直すなら建物を内装・設備の耐久消費財部分と、財産と
して価値を持ちつづける躯体(スケルトン)部分に分けて造り、躯体部分を長期に使用しつづけ耐久
消費財部分をリフォームしたらずっと経済的だというスケルトン−インフィル分離の考え方もこんな
時代を写しています
外断熱された躯体の寿命は100年以上、手入れをすればそれ以上使い続けることだって充分でき
ます。
住宅ローンを払い終わる35年後ごろには内断熱のコンクリート住宅の建替が課題になりますが、
外断熱工法で建てられた住まいは100年以上に渡って機能を保ちます。
心地の良くない家は、建物の耐久性以上に愛着を持てない家になり、「住宅ローンの支払が終った
ら古い家にはもう消え去って欲しい」そんな気持ちで見ている家を長く修理して使い続けたいとは思
わないのも人情かもしれません。
だからこそ、家を造るときはしっかり考えて愛着の持てる家、子供にも孫にも住み続けて欲しいと
思える家を造って欲しいのです。
愛着のもてないものを手に入れると物を粗末にすることになります。
私は車をぴかぴかに磨き上げるような趣味はありませんが、欧米人が暇があれば家の手入れをする
習慣は見習いたいものと思います。
欧米ではベンツやボルボを乗り潰すまで使うようなものを大切に使う文化があります。住宅は車よ
りももっと長く使い続けられます。ヨーロッパの都市の一角には数世紀を生き続けてきた中世からの
町並みを見ることもあります。日本では20年以上昔に建てられた建物は無償、あるいは解体費分を土
地代から差し引いて売買されます。
ヨーロッパで建築後50年以上経つ古い建物も新築の建物と大きな違いのない値段で取引されている
のを見ると、不動産も資産運用の手段だといわれていることを再認識します。
日本でも良い建物を造れば必ず良い買い手に見い出され、誰かが再使用する資産として評価される
ようになるでしょう。
また、あなたが古い建物を壊そうと思っても、構造体がしっかりしているかどうか調べてくださ
い。新築するよりずっと安い費用でもう一度リフォーム(再生)させることもできるはずです。
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