有限会社 日本外断熱総合研究所          Japan Institute of Insulation
2-7-1既存建物断熱改修の進め方(1/2)
Sustainable Housing  断熱改修の進め方

既存建物の断熱改修 建物の構造と改修の要点


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既存建物の断熱改修

はじめに
 「昔建てた内断熱のRCの住宅に住んでいる。若いうちは気にならなかったのだが、最近寒さが 身に凍みるようになった。できれば自宅も外断熱に改修したい」

 外断熱の賃貸マンションを建てるために建設事例を見て研究したいとのご要望を頂き、ご案内し た方が食事中にふと漏らされた言葉です。

 ほかにも、「次の大規模修繕工事のときに外断熱改修ができないものか?」と秘策を練っている 新築マンションを購入された方、「建て替えの時期を迎えた分譲マンションを外断熱工法で建て直 したい。30年余り内断熱のマンションに住んで、住民すべてが結露など内断熱工法の住み心地に嫌 気がさしている」とおっしゃる管理組合の理事さん、「入居者が変わるたびに結露やカビで汚れた クロスや石膏ボードを張り替えなければならない」と嘆くマンションオーナーなど、多くの声を聞 きます。


 皆さんが辟易としている内断熱工法の建物を待ち望んでいた外断熱工法に改修・建替えするのだ から、スムースに合意ができるかと言えばなかなか簡単に話が進む訳ではありません。

 建物には断熱改修が容易にできる部分と過大な費用を要する部分があります。

 「どれだけの工事が可能でどれだけの効果があるか」、「そしてどれだけの費用がかかるのか」 を明らかにしなければ改修工事をするかどうかの合意に至ることはできません。

 個人住宅や賃貸マンションではオーナー個人が決断できるデータが揃えば断熱改修をはじめられ ますが、分譲マンションの場合、さらに、管理組合員の合意が必要です。

 分譲マンションの断熱改修のご相談を受けるたびに、私は「一部のメンバーだけが先走らないよ う居住者の非公式な勉強会を開けませんか?」と言うのが口癖になっています。


断熱改修の進め方
 断熱改修はどのように進めればよいでしょうか?

 断熱改修の主な目的は既存建築物の各部分の熱貫流抵抗を増し、建物全体の熱損失係数を小さく して空調消費エネルギーを減らし、少ないエネルギーで快適に暮らせる家に作り変えることです。

 構造体が結露や雨に濡れないよう正しく行われた断熱改修は、副作用として建物の耐久性を増し 耐用年数を延ばす効果を持ちます。

 建物の素材・構造方法によって具体的な断熱改修の手法は異なりますが、概ね次の表に示すよう な考え方で断熱改修を進めればよいでしょう。
断熱改修の目標と手法

 できるところから手 をつける  新築するときのように完全な断熱を目指すことは良いことですが、 費用も嵩み工期も長くなります。
 完全な改修を目指すより、少しずつでもできるところから手を着け たほうが改修効果を実感できます。
 コストがかからず、 効果の大きいところか ら改修する。  壁や床の断熱改修では既存の内外装を撤去して復元するなど大きな 費用は掛かります。これに比べて屋根の断熱改修は少ないコストで大 きな効果が期待できます。
※ マンションでは最上階の住戸だけに効果が集中します。
 ついでの機会を利用 する。  例えば内装や外装に手を入れなければならない場合、少しの費用を 追加するだけで断熱改修できることがあります。
 K値を現状の40%以 下に減らす  最終的に建物のQ値を減らし、エネルギー消費を減らすことが断熱 改修の目的ですが、一度に理想的な改修ができないことも多いはずで す。改修部分のK値をしっかり減らしましょう。
 工事費の掛からない 工法を検討する  入居者は既存の借入金を抱えていることも考えられるので、極力負 担を減少できる工法を採用したいものです。
 原則に従えば外断熱工法により断熱改修する場合、既存の内断熱を 撤去するのが原則ですが、改修の場合は内断熱を存置する方が現実的 です。
 騒音・振動の少ない 工法を採用する  近隣への騒音・埃による被害のほか、入居者の中に高齢者・乳幼児 がいる場合、工事中の建物内で生活ができなくなる恐れがあります。   

 


断熱改修とは


 水漏れのひどい桶の隙間を埋めたり箍(たが)を締めたりして漏水量を減らすように、熱を蓄えら れない建物から外部に逃げる熱の量を減らす仕事です。


改修可能性

断熱改修は投資効果を考えて
 技術的に断熱改修できない建物はありません。お金を惜しまなければ内断熱された建物をコンク
リートの骨組みだけを残して内部外部の仕上げをすべて撤去し、バルコニーなど「熱橋」となる部
分も作り直せば完全な外断熱の建物に変身させることも不可能ではありません。

 一方で、改修にかけるお金は、「改修後の空調コストの減少」や「快適さの増加」に見合わなけ
れば捨て金になってしまいます。

 見返りを考えながら改修する場合、重要なのは改修後の使用可能期間です。

 数百万円単位の改修投資をしても5〜10年で建物が寿命を迎えるのでは断熱改修費用を空調費
の削減や快適さの増進で取り戻すより、多少多めの空調費を使うほうが得策になります。


改修後の使用可能期間
 断熱改修工事には、使用可能期間を延ばす効果もあります。通常、10〜12年周期で行われるマン
ションの大規模修繕の3サイクル目までが合理的なコストで建物を使用できる目安と考えられてい
ます。

 断熱改修後残存耐用期間が3倍に伸びるとしても、過去に二度の大規模修繕を行った建物では構
造体のクラックの状況や中性化の進み具合について詳細な建物診断を行って、残存耐用年数を増す
ため断熱改修と構造体の充分な補強策を併せて行うか、建替えるかを比較検討すべきでしょう。


改修計画5W1Hの決定
 なぜ(Why)、どこに(Where)、何を(What)、いつ(When)、だれが(Who)、どのように(How)
断熱改修工事を行うかを整理しましょう。

 屋上(屋根)、外壁の外断熱改修、ペアガラスへの交換は比較的工事がしやすい改修工事なの
で、マンションなどでも関係者の合意が得られやすい改修です。

 一方、土間スラブ下や、基礎の内側を断熱しようとすれば当該部分の居住者が仮住まいに移転す
る必要がありますし、他の居住者も騒音・振動などの影響を蒙ることになり、工事費も断熱効果の
向上に比べて大きくなるのできちんとした見通しなしには取り組めません。

 断熱改修工事費だけでなく、仮住まいへの移転費用、工事中の騒音・振動対策も考えることも大
切です。


予備調査

  1.  図面から、改修建物の各部分の断熱仕様を拾い出しK値・Q値を把握します。
     (集合住宅の場合は住戸別にQ値を算出し、改修後のQ値と比較できるように整理した方が
    良いでしょう)
  2.  二度の大規模修繕を終えた(概ね築後24年以上の)建物では、柱・梁などの構造体を避けた
    雨に濡れやすいコンクリートから鉛筆程度の太さのコアを採取して、中性化の進んだ深さを確
    認します。


断熱改修計画

 次のページの手順に添って改修計画を策定します。






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