有限会社 日本外断熱総合研究所          Japan Institute of Insulation
2-7-2既存建物断熱改修の進め方(2/2)
Sustainable Housing  断熱改修の進め方

既存建物の断熱改修 建物の構造と改修の要点


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建物の構造と改修の要点

1.木造建築物

 日本の木造建築物の建築工法には様々なものがあります。
 古い建物のほとんどが「在来工法」と呼ばれる軸組み工法ですが、ここ数十年「在来工法」の中 でも様々な改良タイプが現われています。
 他に「枠組工法」や木質系工業化住宅があります。
 建物が持つ構造的特性を理解し、それぞれに相応しい断熱改修を行う必要があります。

 断熱改修計画を計画する前に、建物の構造方法とその特性をきちんと把握してください。
 どのような断熱材が使われているかよりも、1階の床下→外壁の空洞(間仕切壁の空洞)、外壁 の空洞(間仕切壁の空洞)→小屋裏に空気が流れないこと、小屋裏の空気が適切に外気と入れ替え られるかが重要なポイントです。
 通気層以外の外壁(断熱材の充填されている部分)や間仕切壁に床下→小屋裏への空気の流れが あると断熱は効果を発揮しませんし、小屋裏に熱気を溜めると断熱しても夏の冷房に対する効果を 発揮しません。


2.木造建築物改修のポイント

屋根と小屋裏
 夏、厳しい暑さを経験する家の多くが屋根と小屋裏に多くの問題を持っています。
 ほとんどの家の押入の天井などに小屋裏に入る「天井点検口」が設けられているはずです。 夏の昼間、「天井点検口」から天井裏に入ってみてください。おそらく40〜50℃の気温でサウ ナに入ったような思いをするでしょう。
 そのとき、天井面にどんな断熱材が置かれているかを確認すると部屋の厚さの理由が理解で きる筈です。

 屋根と小屋裏の断熱改修のポイントは、先ず小屋裏の温度を下げることです。熱せられた屋 根面に暖められた空気を屋外に排出し、代わりに比較的温度の低い外気を取り入れることで輻 射熱の影響を除きます。
さらに、天井面に充分な断熱材を補充して小屋裏から室内への熱の伝わりを減らします。


 小屋裏の換気工事は妻壁または棟仕上に手をつける必要がありますが、屋根と小屋裏の断熱 は仕上材に手をつけずに行えるため、断熱改修工事の中では比較的簡単に手を入れられる場所 です。


外壁(間仕切壁)

間仕切壁
 間仕切壁を挟む部屋はいずれも空調された室内にあるので、間仕切壁の断面には本来温度差 がないはずです。したがって、間仕切壁は断熱の対称とは考えられていません。建物の断熱性 能を示すQ値の計算でも間仕切壁からの熱損失を計算しません。

 ところが、軸組み工法の間仕切壁の空洞は床下から小屋裏に貫通する空気のバイパスになる 形になっています。暖房で室内温度が上昇すると間仕切壁内部の空気も暖められ床下から小屋 裏への空気の対流が起きて室内から熱を奪います。
 壁の断熱改修を始める前に間仕切壁が空気のパイパスになっていないかどうかを確認し、も し問題があれば空気の流れを止める措置をして間仕切壁から熱が逃げないようにします。

外壁
 外壁も間仕切壁と同様に空気のバイバスになります。断熱材が内装下地材と密着していない と、断熱材はほとんど効果をもちません。外壁内の空気の流れは断熱性能を損なう原因です が、防湿措置のない場合には結露の原因となる水蒸気を屋外に排出する効果を持つことがあり ます。

 外壁の断熱改修の基本は壁の空洞に断熱材を完全に充填すること、あるいは構造材の外側を 厚いボード上断熱材で覆うことです。
 不安定に取り付けられた50mm厚の袋入り断熱材などに比べて、完全充填された断熱材は単純 計算で2倍以上、実際には数倍の働きをします。
(つまりこの部分からの熱損失を数分の1に減らします。)

 壁の断熱改修の方法は既存断熱材の種類と建物の構造体の特性によって判断します。

 外壁の断熱改修は床や天井との取り合い部分に絡むことが多く、外壁や内壁の張替えを必要 とすることも多いので大掛かりな工事になります。内装の模様替えや外装の張替えなど大規模 な修繕工事にあわせて計画すると良いでしょう。


床、または基礎
 床部分の断熱は床材の裏側、または基礎で行います。基礎に換気口のある家では床下に、換気口 のない家では基礎に断熱しているはずですが、まったく断熱していない家、断熱材を使っていても 働いていない家も多く、「足元が寒い家」は日本の家の代名詞と言ってもいいほど良く普及?して います。
 「冷え性」が日本の国民病と言われるほど多い中で、日本では床暖房が驚くほど普及していま す。しかし、床の断熱性能を放置して床暖房を入れても床から床下に大量の熱が失われるのですざ ましい光熱費を払う方も珍しくありません。
 床暖房は床の断熱性能を改善してから取り付けないときちんと働きませんが、床の断熱性能を改 善すれば床暖房は不要になるほど床の温度が上昇します。
床の断熱
 床材に密着するよう断熱材を取り付けます。繊維系断熱材を使う場合、たるみが出ないよう 根太の下にすのこ状の断熱材受けを取り付け断熱材を隙間なく敷き詰めた上に断熱材を張りま す。
 簡単に断熱するには灘幅に合わせて切断した樹脂系断熱材を床材の裏側に両面テープや接着 剤で貼り付ける方法があります。
 床と外壁または間仕切壁下部の土台廻りに隙間があるときは壁への空気の流れを塞ぐように してください。


基礎の断熱
 木造住宅の基礎はRC建築物と同様、外側から断熱するほうが結露の発生を防ぐ、室温を安 定させるなど良い効果をもたらします。
 しかし、既存の基礎の底版を外側から断熱することは先ず不可能ですし、周りを掘り返すこ とができないことも多くあります。そのような場合、内側から断熱することもやむを得ないで しょう。
 内側から断熱する場合でも、外週の土台の下側はできる限り外側から断熱してください。

 既存建物の床夜基礎の断熱を考えるとき、建物の建っている土の状態は重要です。湿った 土、普通の状態の土、乾燥した土の熱伝導率は3:2:1とも言われ、水分を含ませないほど 断熱性能が良くなります。

 建物周辺の水はけを改善することで、熱損失を減らすことができると思います。

 土・砂・岩石などの熱伝導率の測定例として次のようなものがあります。
種別 土壌 石灰岩 花崗岩 硅岩 コンク
リート
木材
水分量
4%
67%
0.2%
30%
-
-
-
熱伝導率
0.15
0.51
0.56
0.27
1.65
2.57
3.28
6.72
1.6
0.12

 水分量が少ないほど熱伝導率が小さいことが判ると思いますが、地下水や伏流水は水の移動 によって熱を移動させるので、建物の基礎内部の浅い場所に雨水を浸透させない工夫が望まれ ます。

 建物を新築する場合には基礎底までの埋め戻しに砂や砂利などを含む水はけの良い土で埋め 戻すことも合理的な考え方です。



3.コンクリート建築物

 日本のコンクリート建築物のほとんどすべてが外壁屋根の内側から断熱材を吹付け(貼り付け)
る内断熱工法で断熱されています。

 内断熱工法で断熱された建築物は外壁の室内側表面に断熱材があり、断熱材の外側の躯体(コン
クリート)の温度が冬は外気温度に同調し、夏は輻射熱を溜め込むため外気温度より更に高温にな
ります。
 室内の床・壁などの躯体も断熱材の外側の躯体と一体に作られているため、建物から屋外に熱が
逃げやすい構造になっています。

 多くの方が持っている「コンクリートの建物は夏暑く、冬に冷え込む」という印象はコンクリー
ト造の特色ではなく、内断熱された鉄筋コンクリート造の特徴と言っても間違いではありません。

 内断熱されたコンクリートの断熱性能を改善するには次のような方法があると考えられる方があ
るかもしれません。
1.  既存の内断熱材を更に厚く断熱しなおし、断熱性能を改善する。
2.  床と壁の境界部分に断熱材を追加して断熱補強する。
3.  建物の熱橋を外側から断熱材で包んで断熱性能を改善する。


 しかし、上に示したような断熱改修をしてもコンクリートの温度が外気に同調するので「コンク
リートの建物は夏暑く、冬に冷え込む」特性はまったく改善されません。

 下の図のような外断熱工法による断熱改修は一見内断熱工法による断熱改修の1.と同じように見
えるかもしれません。

 確かに、空調しているとき、外断熱でも内断熱と外断熱の併用でもバルコニー部分からほぼ同じ
熱損失が起きます。バルコニーのない部分の熱橋では熱損失に大きな差がありますが、バルコニー
や廊下では内断熱にしても熱損失の差は僅かです。

 それでは内断熱の増し張りによる断熱改修とと外断熱による断熱改修の差はないのでしょうか?
 実は大きな違いがあります。それはコンクリートの温度です。
 内断熱工法で断熱材を増し張りしてもコンクリートの温度は外気温度と同調するままで元の内断
熱工法と違いがありませんが、外断熱改修したコンクリートの温度は外気温度と室温の中間にな
り、外側の断熱材の厚さを増やすほど室温に近付きます。



結露の防止
 「内断熱工法では結露が起きる。」
 外断熱ブームに火を着けたといわれる「史上最大のミステーク」では定常計算による温度・
露点温度分布図を元に露点域があるために結露が起きると説明しています。


 この図のように内断熱工法では断熱材とコンクリート躯体の間に結露域が存在することは確
かですが、樹脂系断熱材の透湿係数から結露量を計算してみるとそれほど大量の結露が発生す
ると判断できません。
 しかし、実際に結露のある建物を見ると上の図で示されるように断熱材内部で結露を生じ、
それが壁表面まで染み出してカビを生やしたとは考えられないほどの状況が見られます。

Pic2-7-2-1 内断熱建築物の結露

 上の写真は関東地方北部にあるある社宅でみたカビの様子です。
 リビングダイニング(LD)では開放型ストーブが焚かれ室温は20℃以上に保たれているよ
うですが、この部屋は寝室として使われ、普段はほとんど暖房されていません。LDと寝室の
間には常に大きな温度差があるようです。
 寝室の室温が15度まで下がり居間の水蒸気が寝室にも流れていれば下の図のように結露域は
プラスターボード表面まで広がります。

 外断熱改修をすると下の図のようにコンクリートの温度が上昇して室温の低下の下限が高く
なり結露がおきにくくする効果があります。
 (グラフの室温・外気温度が上の図と異なっています。比較しにくくて済みません。)

 断熱改修前のグラフでは室温と躯体温度の差が約16℃あり、室温がその1/2の 8℃下がる
と結露が始まりましたが、外断熱改修後のケースでは室温と躯体温度の差が約 7℃に縮小し、
室温が躯体温度まで下がっても結露が起きることはなく、Pic2-7-2-1 に示したような結露を
確実に止めます。
 内断熱工法の建物にはヒートブリッジとなる幅木・天井回縁回りに結露する傾向もあります
が、コンクリート温度を高めることでこの結露対策にもなります。


空調負荷の低減
 断熱材の使用量を増やすことで冷房や暖房の負荷を減らし、エネルギー消費を減らすことが
できます。コンクリートを外側から断熱材で包むことで室温の変化幅が小さくなり、Q値が減
る以上に空調エネルギーの使用を減らすことができます。


4.コンクリート建築物改修のポイント

屋根
 コンクリート建築物の屋根の断熱方法にはコンクリートの上に断熱材を並べ鉄板などで屋根
を葺く「置屋根工法」と、防水したコンクリートの上に断熱材を並べ、歩行用に軽量コンクリ
ートで押さえる「断熱防水工法」があります。
 「断熱防水工法」の押さえコンクリートは内断熱工法の屋根スラブと同じように輻射熱を受
けて蓄熱するので木造住宅の小屋裏換気と同様輻射熱の影響を緩和できる「置屋根工法」の方
が好ましい断熱方法です。

 「断熱防水工法」では庇など建物本体から突き出したした部分も完全に断熱しないと結露水
で防水層の膨れを招きます。脱気筒を設けることも結露防止に役立ちます。


外壁
 内断熱材を撤去することは建物の熱性能としては望ましい方法ですが、掛かるコストを考え
れば内断熱材を残すほうが現実的です。片持ちの片廊下で建物本体を断熱すると廊下の幅が不
足する場合には、手摺壁のラインにサッシを取り付け、手摺の外側から断熱することも検討で
きます。


基礎
 基本的に木造建築物の基礎断熱の項で説明した内容と変わりません。


5.その他共通事項

サッシ
 新たに設置する断熱材と断熱ラインを揃えて断熱サッシをとりつけることで最大の断熱性能
を持たせることができます。しかし、この方法を採用すると大掛かりな工事が必要になりま
す。
 以下の選択肢の中から、窓の断熱方法を選んでください。
サッシの断熱対策
費用 効果
1.  既存のサッシを撤去して断熱サッシを取り付ける 特大
2.  既存のサッシの外側に断熱サッシを取り付ける
3.  既存のサッシ枠を利用して、扉とガラス(ペア・Lo−E)を交換する
4.  既存のサッシに入るLo−E単板ガラスに交換する
5.  既存サッシの内側にプラスティック建具を取り付ける(3. 4. と併用)
6.  既存のサッシ枠を使い、単板ガラスを真空ガラスに入れ替える
5.の代わりに木製建具を使うとサッシ・ガラス面の結露が激しくなります。避けてください