|
「良い建物」、「快適な住まい」と呼ばれるものはこれらの思いをバランス良く満たすものと言ってもいいでしょう。
また、良い建物が満たすべき条件は社会システムやテクノロジーの変化とともに変わっています。
蒸し暑い夏を迎える日本では、冷房がほとんどなかった数十年前まで広い敷地に風通しの良い開放的な家を作ることが理想とされていました。
都市への人口集中が進み広い住宅地の取得が困難になった社会的事情や、手軽に冷暖房が利用できるようになったここ数十年住宅の造り方は変化し、多様化しています。
家造りの変化と多様化の中で、古い伝統的な考え方や習慣と新しい考え方や理論がぶつかり合い、様々な混乱を生じています。新しい理論がめまぐるしく変わることも混乱に拍車を掛けています。
とりわけ、気密や断熱を含む室内環境の問題での混乱は非常に大きなものです。
日本の建築物は建物の外部環境から厚さ寒さの影響を受けやすい造り方で建築されてきました。
今でも「日本の建築技術者の中には外部の温度変化や日射の影響を受けにくい快適な室内環境を守るノウハウを持つ人たちはほとんどいない」と言ってもいいでしょう。
混乱する住宅マーケットの中で、官民ともに根本的な指針を示すことが出来ない状態が続き、日本の住宅の性能は世界でも類を見ないほど貧弱なものです。
イメージを売るハウスメーカーやプレハブ各社の住宅が、パンフレットやCMで作られるイメージとかけ離れたものであるという指摘はあとを断ちません。
快適な暮らしを実現するために家が満たさなければならない条件には多くのものがあります。
「ただひとつの条件が満たされれば快適な家ができる」というほど単純なものではありません。
屋外の気候変化の影響を受けやすく、暑さ寒さのバリアとしての機能を持たない日本の家を「きちんと断熱する」ことは重要な対策です。
日本では断熱は北海道や北欧など、厳しい冬の寒さに対するもので温暖な地域では本来必要ではないものと考えられています。吉田兼好の「冬はいかなるところにも住まる」という思想が今も日本の住まいに残っています。
暖房しても冬寒い家は夏も冷房の効かない暑い家になります。夏の日射は屋根表面を50℃〜80℃に暖め、室内をエアコンをフル運転しても凌ぎきれないほどの猛烈な暑さにします。
熱負荷を科学的に捉え適切な断熱をすれば、木造の建物でもRC造の建物でも空調費を掛けずに夏を涼しく、冬を暖かく暮らすことが出来ます。
断熱性能は冬の寒さと夏の暑さに備えるために不可欠ですが、さらに冬は温度差をなくし結露の危険を防ぐこと、夏は輻射熱に備え、多量の水蒸気を含む外気が建物の外側で結露を起こさないように配慮することが快適な良い家を造るキーポイントになります。
|