有限会社 日本外断熱総合研究所 > 断熱・気密・防湿 4-2-8-2(12/19) 断熱改修のマニュアル
既存建物の断熱改修

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断熱と暮らし
2-1断熱とライフスタイル
2-2住まいと健康
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2-6断熱改修の進め方

断熱技術講座
3-1やさしい断熱講座
3-2断熱の良い家造り講座
3-3コンクリート造の断熱
3-4木造建築物の断熱
3-5断熱と「省エネ・耐久」
3-6断熱仕様とQ値
3-7日本の気象と断熱工法
3-8熱負荷のメカニズム

マニュアル
4-1快適な家造り
4-2断熱改修のマニュアル
4-3RC建築物の断熱改修

付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板

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断熱と暮らし
2-1断熱とライフスタイル
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断熱技術講座
3-1やさしい断熱講座
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3-9空調設備

マニュアル
4-1快適な家造り
4-2断熱改修のマニュアル
4-3RC建築物の断熱改修
4-4省エネな家造りの進め方

付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
・ はじめに 
第1章 家はどう働くか 第2章 断熱 第3章 気密 第4章 防湿 第5章 システムとして働く家
第6章 材料(1) 断熱材 ・ 材料(2) 気密材 ・ 材料(3) 防湿材
第7章 建物の現状を知る 第8章 屋根と天井 ・ 外壁 ・ サッシとドア ・ 床と基礎
・ 気密性能の改善 ・ 敷物とカーテンなど ・換気と空調システム ・床の湿気対策
第9章 家の使い方・暮らし方
第8章 各部分の断熱改修
外壁

 外壁はほとんどの戸建て住宅にとって最も熱損失量の大きくなる部分です。ドアやサッシを除いても、建物全体からの熱損失のおよそ35%が外壁からのもので、ドアやサッシを含めると半分以上の熱が外壁から失われています。

 外壁からの熱損失を抑えることによって建物の断熱性能は大幅に改善できますが、建物の種類や構造によって外壁の断熱改修は手間や費用の掛かるものになりかねません。
 木造住宅で従来から使われている繊維系断熱材を使った断熱工法で既存建物の外壁改修を行おうとすると、室内側の防湿層の設置、屋外側への通気層の設置、床板から外壁・外壁から小屋裏への気流止めの措置など外壁の表裏ばかりでなく床から小屋裏まで建物全体にわたる大改修工事になりかねない恐れもあります。

 将来節約できる空調費に比べて多大な費用を要し、投下費用の回収が見込めない断熱改修は現実的ではありません。欧米では建物建築後100年近くあるいはそれ以上の期間建物を定期的に更新しながら使い続ける習慣があり、このような社会風土の中では築後数十年を経た建物でも将来相当期間使い続けるという暗黙の了解があり、「年間僅かな節減でも、積もれば大きな節約になる」という認識があります。ところが日本では「建築物の存続期間はせいぜい3〜40年で、建物が古くなればスクラップ&ビルドするのが当然」といった雰囲気が支配的です。

 こういった社会的な雰囲気自体も問題ですが、ここでの主題を外れるので話を元に戻しましょう。

 築後20年を経た建物は余命20年ほどを残すだけという認識ではなかなか本格的な断熱改修工事自体を目的にすることは難しいと思います。


 しかし、「建物の増築にあわせて」、「建物の傷んだところを直すついでに」といった都合があれば建物の寿命を延ばしながらより快適な暮らしができるような改修・改善が可能になることも事実です。

 以下、なるべくコストをかけないで効果を期待できる外壁の改修方法をご紹介します。


 在来木造工法 
 古い在来木造工法では土壁が使われている場合(K値=約1.5W/m2K)もありますが、土壁が使われていないケースでは無断熱(K値=約5.2W/m2K)またはグラスウール10kg品(厚さ50mm)が使われている(K値=約1.4W/m2K)場合が大半を占めていて、断熱不足のため大きな熱損失があります。
K値
W/m2
Q値
W/m2
年間熱損失
KWH
対応する年間空調費
無断熱
5.2
6.48
37510
275,100円
土壁
1.5
1.87
10830
79,400円
GW10Kg-50mm
1.4
1.77
10250
75,100円

 これらの建物で外壁の断熱改修ができれば大きな省エネと空調費の削減が可能ですが、これらの断熱仕様の建物は一般的に次のような問題点を孕んでいて、断熱改修を面倒なものにしています。

@  壁の湿内側に適切な防湿層が施工されていないケース、屋外側にモルタル塗りの壁など透湿抵抗の大きな素材が使われているケースがあり、断熱材を入れると壁内結露を激化させる恐れがある。
A  1階外壁下部の空洞が床根太取り合い部分で床下スペースと、外壁上部の空洞が小屋裏スペースと繋がっているため、通気性のある繊維系断熱材内部を外気が通り抜け、壁の中を冷やす恐れがある。
B  既存の断熱材(GW−50mm)が充填された壁では外壁または内壁を剥がして既存断熱材を撤去する必要がある。

 したがって、一般に繊維系断熱材の充填工法による断熱改修を行おうとすると、外壁の表裏両面と外壁に絡む床に手をつける大掛かりな改修が必要になり、断熱改修というよりは大規模な改修になってしまいます。

 ここまで大袈裟な改修は考えていない方が多いでしょう。より簡便な方法があります。
 ひとつは外張断熱と呼ばれる方法で外装部分にボード状の断熱材を張る方法です。
 外部にサイディングなどを貼る場合には断熱材の厚さは30mm以内になりますから熱伝導率の小さいフェノールフォームボードを使い、湿式工法と呼ばれる断熱材表面を直接仕上る場合はEPSなどより多くの断熱材の中から適切な断熱材を選択することができます。

元のQ値
W/m2
フェノールフォーム30mm
またはEPS50mm
改修後のQ値 年間節減額
無断熱
6.48
0.79
241,500円
土壁
1.87
0.61
53,500円
GW10Kg-50mm
1.77
0.60
49,700円

 外壁の状態にもよりますが、より簡便な断熱改修の方法があります。壁の空洞に既存の断熱材がないこと、建物の外装がサイディングなど透湿抵抗の小さい材料でなされていることがこの方法を採用できる条件です。それはブロアーを使ってセルロースファイバーを壁の空洞に吹き込む方法です。

 重ねて言いますが、モルタル塗りの外壁や防水性の強い塗料を塗った建物では通気層をもたない限り内部結露で建物を早く傷める原因になりますから、この方法をとるべきではありません。
 セルロースファイバー以外にも吹き込み用断熱材がありますが、吸放湿しない断熱材を使う場合には防湿層をきちんと施工しないと内部結露するのでお奨めできません。

 断熱材は壁内装下地の石膏ボードの間柱間隔ごとに、上下に直径30mmほどの穴をあけ、ここから壁の空洞にホースを差し込んで断熱材を充填します。窓やドアのある部分では壁に穴をあける数が多くなります。
 壁と床下が接する部分では床下、または外壁の下部の仕上を剥がして壁の外側から、断熱材が床下にこぼれないような措置を必要とします。

 この方法による断熱効果の改善は次のようになります

元のQ値
W/m2
セルロースファイバー100mm
改修後のQ値 年間節減額
無断熱
6.48
0.46
255,600円



 枠組壁工法 
 プラットホーム工法である枠組壁工法の建物では、外壁と床下、外壁と小屋裏は連続せずにそれぞれ独立しています。この場合、在来木造方法のように気流止めや断熱材のこぼれを心配する必要はありません。
 外装に小幅のサイディングが使われていて無断熱の場合はセルロースファイバーの吹き込み工法が最適な選択肢になります。

 その他の場合には在来木造工法と同様外張断熱工法の手法による断熱改修が適当だと思いますが、サイディングの一部を剥がして既存の断熱材を取り出すことができれば防湿層なしのセルロースファイバー吹き込み断熱で外壁の大半に手をつけずに断熱改修を終ることも可能です。
 幅の広い(600mmなど)サイディングが使われていて、外壁の透湿抵抗がやや大きいときには室内側壁下地の石膏ボードに透湿抵抗の大きい塗料を塗り、水蒸気が壁の中に進入しにくい条件を作ります。
 熱損失係数(Q値)、空調費の節減額などは在来木造工法と同じです。


 鉄筋コンクリート造 
 EIFS、EWISなどと呼ばれる湿式外断熱工法による断熱補強によって外壁の断熱性能を補強します。繊維系断熱材を使った乾式外断熱工法による断熱改修も不可能ではありませんが、コンクリートに多数のアンカーを打ち込む必要があり、既に入居者のいる既存建築物では工事期間中入居者を退去させない限り、実際に乾式外断熱工法を採用するのは難しいでしょう。
 内断熱のRC建築物の外壁を断熱する効果は次の二つの効果の合計です。

 @  壁の一般部分の熱貫流率を約1/3に減少させる
 A  熱橋からの大きな熱損失をなくす

 基本的な考え方はRC建築物の屋根と同様、既存の断熱材の2倍以上の熱貫流抵抗を加えることなので詳細は「屋根と天井」を参照してください。

 元の断熱性能をウレタン20mm、25mmとしたときの断熱性能の改善はおよそ次のとおりです。

既存断熱材
旧断熱材の
熱貫流抵抗
新規断熱材の
熱貫流抵抗
新規断熱材(EPS)
の必要最低厚さ
改修前の
熱貫流率(K)
改修後の
熱貫流率(K)
ウレタン20mm 一般
0.91
1.82
65mm
0.96
0.33
熱橋
0.00
7.00
0.51
ウレタン25mm 一般
1.14
2.24
80mm
0.79
0.29
熱橋
0.00
6.83
0.42

 さらにこの断熱改修がQ値と年間空調費を改善する効果を比較してみましょう。

既存断熱材
元のQ値 追加する断熱材
(EPS)の厚さ
改修後の
Q値
年間空調費節減
ウレタン20mm 一般
1.08
65mm
0.37
30,100円
熱橋
0.81
0.06
31,800円
合計
1.89
0.43
61,900円
ウレタン25mm 一般
0.89
80mm
0.33
23,800円
熱端
0.80
0.05
31,800円
合計
1.69
0.38
55,600円
Q値は外壁・熱橋部分だけの要素です。

 外壁からの熱損失に伴うエアコンを使用した場合の年間空調費は、以上の断熱改修により16,100〜18,300円まで削減されます。


 「断熱改修」の説明には「余談」になりますが、上の二つの表に内断熱工法の問題点が凝縮されています。断熱改修前の熱貫流率を見ると熱橋部分からは面積あたり7〜9倍の熱損失があり、断熱改修の効果は面積で1割にも満たない熱橋部分の省エネ効果が全体の半分以上を占めています。

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