有限会社 日本外断熱総合研究所 > 断熱・気密・防湿 4-2-8-7(17/19) 断熱改修のマニュアル
既存建物の断熱改修

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マニュアル
4-1快適な家造り
4-2断熱改修のマニュアル
4-3RC建築物の断熱改修
4-4省エネな家造りの進め方

付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
・ はじめに 
第1章 家はどう働くか 第2章 断熱 第3章 気密 第4章 防湿 第5章 システムとして働く家
第6章 材料(1) 断熱材 ・ 材料(2) 気密材 ・ 材料(3) 防湿材
第7章 建物の現状を知る 第8章 屋根と天井 ・ 外壁 ・ サッシとドア ・ 床と基礎
・ 気密性能の改善 ・ 敷物とカーテンなど ・換気と空調システム ・床の湿気対策 
第9章 家の使い方・暮らし方

換気と空調システム

 断熱性能を高め、より気密になったあなたの家は以前よりずっと少ないエネルギーで空調で
きるようになった筈です。
 断熱と気密に関する改修工事を終ったときに、あなたの家の熱損失係数がどの程度改善した
か確認しておいてください。
 屋根・外壁・床・サッシなどのひとつだけを断熱改修しただけでは、「少し空調が効くよう
になったかな?」程度の印象しかないかと思いますが、いくつかの断熱改修を組み合わせて行
った後では空調設備が過剰なほど大きすぎることがあります。

 建物の断熱性能と空調機の能力には自動車の車体の重さとエンジンの排気量のような関係が
あり、断熱性能に見合った能力の空調機が設備されているときに空調を適切に運転できます。

 断熱改修前のあなたの家を3000ccのエンジンを必要とする普通自動車に例えるなら、断熱
改修後のあなたの家は2000ccか1000cc、もしかすると軽自動車のエンジンが適当なコンパ
クトカーに変身しているかもしれません。

 大きすぎるエンジンをつけた車を経済的に運転できないのと同じように、大きすぎる空調設
備を持つ建物も経済的に空調することができません。


換気システム
 「気密性能の改善」に書かれたように気密シールして空気漏れを減らした家は、風のない穏
やかな日にはどうしても換気が不足します。
 建築基準法の規定は既存の建物には適用されませんが、2時間に1回程度の換気能力を持つ
換気装置を設け室内を換気する必要があります。
 この換気装置は必ずしも熱交換タイプである必要はありませんが、1回/2時間の換気はQ
値を0.4上昇させる効果があるので熱交換換気に変更することで熱損失をおよそ0.24減らすこと
ができます。
 レンジフードなど厨房用の換気装置は換気量が大きく常時換気用のシステムとしては適しま
せん。
 プロペラ方の換気扇なら15cmのもの1台、浴室やトイレの天井に取り付けるダクトタイプの
換気扇なら2〜3台程度で充分でしょう。

 レンジフードは専用の給気口を持たないと家の中の暖かい空気を集めて排気し、家中の温度
を下げてしまいます。近くに給気口がない場合は「同時給排型」と呼ばれるタイプに交換する
ことをお奨めします。

 厨房でIH機器を使う場合、ガス燃焼に伴う水蒸気の発生がありません。レンジフードは換
気量を抑えたIH用の物を使って換気量を減ら空調負荷を小さくします。


空調システム
 先ず、断熱・気密改修の前後でQ値がどの程度変わったかを確認しておきましょう。次のよ
うな表を作り改修前後のQ値を比較すると良いと思います。

断熱改修前後のQ値
部位 改修前
(W/m2K)
改修後
(W/m2K)
屋根・天井
外壁
サッシ・ドア
基礎・床
換気
気密
「気密」の項のQ値は、C=0.7q/S東京の1月の平均風速3.4m/sより、
Q=0.4×C/0.7/1.2として求めても良い。

 屋根と外壁を断熱改修したRC建築物、および断熱改修後のQ値が2.5以下になる木造の建物
では空調設備容量を全館連続空調するものとして計算するのが適当です。
 全館連続空調の空調設備は局所間歇空調に比べて大幅に小さな設備で対応できます。

 断熱改修前後の空調特性の変化
屋内の部屋の間の温度差 空調エネルギーの使用量 室内温度の安定
改修前  空調しても屋根や外壁から屋外に大きな熱が失われるため空調室と日空調湿の温度差が大きくなる。  建物から大量の熱が屋外に失われるためエネルギー消費が大きい。  熱損失が大きいため、空調OFF後急速に室温が低下する。
改修後  屋外に失われる熱の量が減り、建物内の部屋の間の温度差が小さくなる。  Q値の減少に応じて空調エネルギー使用量が減少する。  Q値の減少に応じて室温低下速度が緩やかになる

 適切な空調設備の容量(出力)
 適切な空調設備の出力は、改修後のQ値に基づいて次の式で計算できます。

 暖房機出力=Q値×床面積×(暖房温度−外気温度)×安全率(W)
 冷房機出力=Q値×床面積×(外気温度−冷房温度)×安全率(W)

 外気温度は建物の種類に応じて次の値を採用します。
熱容量の小さい建築物 (木造・RC内断熱) 熱容量の大きい建築物 (RC外断熱)
暖房  最も寒い月の日最低気温の平均値  最も寒い月の日平均気温の平均値
冷房  最も暑い月の日最高気温の平均値  最も暑い月の日平均気温の平均値

 安全率は空調方式により、次の値を採用します
全館連続空調方式 局所間歇空調方式
暖房
1.0
1.5〜2
冷房
1.2
1.8〜2.5

 以上の計算は過剰設備となることを防ぐためにチェックするものです。空調能力が不足して
いても断熱改修前よりも空調の効きが悪くなることはありません。


 空調機器の配置
 Q値が1.5以上の建物、特に窓の断熱性能がやや劣るでは暖房機の放熱器を窓下に配置するの
が効果的です。暖房機の熱で生じる上昇気流が窓や外壁で冷やされた空気が下降気流となって
生じるコールドドラフトを解消します。床暖房も床全面に配置するより外壁に沿った部分に配
置するのが合理的といえるでしょう。
 さらに大きなQ値を持つ建物で温風を発生する暖房機を使う場合は、噴き出し口が部屋の長
手方向に向かって温風を吹き出すようにすると空気が大きな対流をするようになり、部屋の中
の温度差が小さくなります。
 断熱改修した建物では従来1部屋で使っていた空調機で居間とダイニングなど2部屋以上を
効率的に空調できることもあります。部屋の境に下がり壁や建具があると空気の循環が妨げら
れるので、断熱改修にあわせて内部のリフォームを考える、サーキュレータやファンで室内の
空気を攪拌して温度差を減らすのも良い方法です。


 注意が必要なこと
 ダクト方式で冷房する場合、冷気がダクトの廻りや吹き出し口で結露を招く例が良く見られ
ます。冷房器から出た低音になった空気に大量の室内空気を混ぜて室内空気の露点温度より充
分高い温度にしてダクト内を通せばこういう問題は起きません。

 ダクト式よりもエアコン本体から室内に直接吹き出す方式のほうが問題を起こしにくいシス
テムです。


 空調機器の熱源
 各種熱源の発熱量とコストは次のようになります。
 灯油  都市ガス LPガス  電力  深夜電力
単位
3
Kg
KWH
KWH
価格 (円)
40
124
270
23
8
発熱量(KWH)
10.29
13.95
27.91
1.00
1.00
効率
0.85
0.85
0.85
1〜3
1〜3
発熱量あたり価格
4.57
10.45
11.38
7.67〜23
2.67〜8

 灯油、都市ガスなどの利用可能なエネルギーは機器の効率や換気条件によって変わります。
例えばボイラーを屋外に設置するか室内に置くかで効率が20%以上低下することがあります。
室内の開放型燃焼装置を使う場合(余りお奨めできませんが)、換気を増やすことによる効率
の低下などに配慮する必要があります。
 また、効率は定格運転時の効率ではなく、空調期間を通じた効率で考える必要があります。
運転−停止を繰り返すときは連続運転するときよりも効率が落ちますから、最盛期に長い停止
期間を持つ過大な設備は望ましくありません。
 上の表のほかに太陽熱(ソーラーコレクター)、地熱(井戸水)というエネルギーコストと
しては無料のエネルギーもあります。


 エネルギーコストだけでなく、設備のコストと耐用年数も考えて適切な空調機器を選択しま
しょう。


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