3-5-6/7 断熱と「省エネ・耐久」 


断熱はなぜ必要か & どんな断熱が良いのか ・断熱と空調 ・自然エネルギーの活用 ・暖房度日と冷房度日
節水 ・耐久性と劣化 ・建物の耐久性を増す ・耐久性と建物のコスト

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付6間違いだらけの外断熱に
要約
 このページでは、内断熱工法で建てられた建物が構造的に劣化しやすいことを説明しました。
 主な劣化の原因は熱伸縮によるクラックの発生とクラックから炭酸ガスを含む雨水結露水が浸透し、中性化を進めることです。中性化は鉄筋を錆させ、膨張性の錆はコンクリートを破壊します。
 コンクリート表面に錆色の「シミ」が出ていたら劣化が進んでいるサインです。
 温度変化が少なく雨水からも守られた「外断熱工法」の建築物では、「構造的劣化」が起こりにくい分だけ「設備的劣化」・「社会的劣化」が起こりやすいと考えることができます。
 「設備的劣化」・「社会的劣化」を防ぐために考えておきたいことを「次のページ」にまとめましたのでご覧下さい。 

耐久性と劣化
 建築物の劣化の原因は構造種別によって木造であれば木材の腐朽や喰害、鉄骨造では鋼材の錆、そ
してコンクリート造ではCOの化学反応によるコンクリートの中性化といった異なるメカニズム
によって進行すると考えられています。 
 しかし木材腐朽菌やシロアリなど害虫の繁殖も、鋼材の錆・コンクリートの中性化といった化学反
応も結露水や雨水が構造材に作用することによって促進されます。建築物の劣化はまず第一に水の作
用によるものです。

 コンクリート構造物への水の作用はクラックやコールドジョイントの有無によって影響が大きく異
なります。 
 クラックの発生の仕方はコンクリートに含まれる水分量やコンクリートが受ける温度変化の大きさ
によっても異なります。コンクリートが外部環境に剥き出しになり、雨水に濡れやすくさらに内部結
露も起こりやすい内断熱のコンクリート構造物は外断熱の構造物に比べて極めて短い期間で耐久性を
失います。


コンクリート建物の劣化
化学的作用による劣化 
 コンクリートの化学的劣化は次の表に示す、@ 水和物の分解、A 膨張性化合物の生成、B 水
和物の溶脱による多孔化 という三つのプロセスによって進行します。 

 モータリゼーションの国際化や中国を始め世界的な工業開発の進展に伴う大気汚染の進行により酸
性雨が恒常化し、雨によるコンクリートの劣化が急激に進み始めています。 

 ヨーロッパには石灰岩や大理石の装飾彫刻を施した17〜19世紀の建物が数多く残っていますが、近
年になってこれらの彫刻が溶け始め、酸性雨現象が急激に進んでいることを物語っています。 
劣化メカニズム  
主 な 事 例 
水和物の分解  炭酸ガスによる中性化など 
膨張性化合物の生成  酸性雨中の硫酸根によるエトリンガイトの形成 
 アルカリ骨材反応 
水和物の溶脱による多孔化  硝酸・塩酸との反応 

水和物の分解
 古くから知られている劣化メカニズムは炭酸ガスによる水酸化カルシウムの中和反応による
コンクリ ートの中性化です。小学校の理科の実験で石灰水に息を吹き込んだ記憶をお持ちの
方もいらっしゃると 思います。あの反応と同じ化学変化がコンクリートの中で起こり石灰を
溶かし出しコンクリートのアル カリ性を失わせます。 

 コンクリートのアルカリ性が失われると鉄筋に赤錆が発生します。赤錆はもとの鉄筋に比べ
て体積が 大きく周辺のコンクリートの結晶構造を破壊してコンクリート表面に達する大きな
割れ目を造ります。 コンクリート表面に錆色の染みができていれば、そのコンクリートは鉄
筋まで中性化していると考えら れます。 

クラックから錆水が流れ出している例
 日本建築学会のJass 5によれば中性化の進行速度は水セメント比によって異なるとされ、普通コンクリートの中性化の進行は右の図のように進むと説明されています。
 この図によれば、水セメント比が45以下ならば、50年で1cm未満と中性化は緩やかに進むことになります。 

 しかし、この中性化速度はコンクリートにクラックやコールドジョイントができることまで考えたものではありません。

 コンクリートに下右の図のような割れ目があると浸入した雨水が
CO2を運び、クラック内部からも中性化を進めます。




 内断熱工法の建物は温度変化のたびに熱伸縮による応力が発生します。
 紙に窓のような四角形の穴をあけ、周囲を引っ張ると隅の部分から破れるように、力が加わるとコンクリートにも弱いところを狙ったようにクラックが発生します。

新築間もないコンクリートにもクラックができています 

 また雨水や結露水に濡れやすい場合と、外断熱のコンクリートのように熱伸縮によるクラックが発生しにくく外部を外装材で覆われ雨水から保護されている場合とでは、中性化進行速度に大きな差があります。


 炭酸ガスとの反応で起きる現象にエフロフレッセンス(白華)があります。コンクリートから溶け出した炭酸カルシウムが壁の表面に結晶したもので、エフロフレッセンスがあれば中性化が進んでいる証拠です。

 先日、まだ分譲中の新築マンションの壁面にエフロフレッセンスを見つけました。

 エフロフレッセンスはコンクリート中に水の流れる道があり、水に含まれる炭酸ガスとコンクリート中の石灰分が化学反応を起こして溶け、再び結晶した証拠です。壁の色が濃く、白い汚れが目立つこともありますが、意外な中性化の進展の早さに驚きました。


膨張性化合物の生成
 エトリンガイトはセメントバチルスとも呼ばれ、古くから固まったコンクリートの結晶組織を破壊する硫酸化合物として知られていす。 
 
 生コンクリート中にエトリンガイト生成成分を入れると「急速に固まる」・「コンクリートの凝結時の収縮を防ぐ」などの性質を持つため、昔ほど忌み嫌われなくなっています。しかし、生コンクリートに含まれている時には無害な硫酸根も固まったコンクリートに水溶液の形で働くと急速に局部的な膨張反応が進み、周辺のセメント水和物の結晶構造を破壊します。 

 エトリンガイトの生成は次の化学式で表され、結晶中に多くの結晶水を取り込むために体積が膨張します。

 3CaO・Al2O3・CaSO4・12H2O+2( CaO + H2SO4 )+18H2O=3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O

 膨張性化合物を生成する反応にはシリカ成分を含む骨材とセメントの成分とが膨張性化合物を生成する「アルカリ骨材反応」も知られています。この反応にも水の介在が不可欠で、乾燥状態では緩やかに湿潤状態では急速に反応が進みます。 

 アルカリ骨材反応は大きな社会問題になりましたが、レディミクストコンクリート工場における素材管理が進んだ結果、発生事例は少なくなっています。


水和物の溶脱による多孔化
 NOxなど硫酸根以外の酸性成分はセメント化合物を溶解し、コンクリートを多孔質化します。いわばコンクリートのスポンジ化が起こり、空洞の増えたコンクリートの圧縮強度が減少します。


 コンクリートの劣化は、熱伸縮など一部に物理的劣化を除くと化学反応によってコンクリートの耐力が失われます。雨水・結露水などの「水」が化学反応を促進します。 
 結露を起こしやすい、あるいは雨水に濡れる内断熱工法の建物は「劣化に対して無防備」と言ってもいいでしょう。


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