3-5-2/7 断熱と「省エネ・耐久」 

断熱はなぜ必要か & どんな断熱が良いのか ・断熱と空調 ・自然エネルギーの活用 ・暖房度日と冷房度日
節水 ・耐久性と劣化 ・建物の耐久性を増す ・耐久性と建物のコスト

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付録
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付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
付5RC外断熱工法と
付6間違いだらけの外断熱に
断熱と空調
 この項で説明することは次のような内容です。

1.  建物の熱損失係数(Q値)が大きいと空調中に大きなエネルギーが失われるばかりでなく、空調を切った後も大きなエネルギーが失われます。
 この傾向は暖房において顕著に現われます。
2.  熱容量の小さい木造や内断熱工法のRC建築物では空調しない時の室温が外気温度変動幅の60%程度変動するので、短時間に大きな空調負荷がかかります。
 熱容量の大きい外断熱工法のRC建築物では室内温度変化がゆっくり進むので一日あるいは数日間の平均気温に対応する空調をすれば室温を適正な温度に保てます。
3.  日平均気温を元に計算した暖房度日(HDD)や冷房度日(CDD)は日射による建物表面温度の上昇を考慮していません。
 夏の屋根表面の温度上昇は特に大きく、年間空調負荷や空調設備の能力の算定にあたって適切に補正する必要があります。
4.  建物の空調設備の設計にあたっては上の条件を考慮したうえ、適切な断熱によって空調負荷を減らし、小さな空調設備で経済的かつ快適に暮らせるように配慮すべきです。

1.  建物の熱損失係数(Q値)が大きいと空調中に大きなエネルギーが失われるばかりでなく、空調を切った後も大きなエネルギーが失われます。 
 建物を暖めたり冷やしたりする熱は外気と室内との温度差、建物表面が請ける耐用の輻射熱など主に建物外部からの影響です。Q値が大きいほど外部環境から受ける影響が大きくなります。

 「熱容量の小さい内断熱工法の建物は冷えやすいけれど暖めやすいので、短時間しか空調しない場合には断熱を浴するよりも必要なときだけ暖めるほうが経済的だ」という意見を目にします。

 内断熱工法の建物が外断熱工法の建物に比べて暖めやすい理由は建物の熱容量が1/4程度しかないことですが、同じQ値だったとしても外断熱工法の建物の1/4は暖めにくいと考えるほうが適切かもしれません。

比較例1 まず、外断熱工法の建物と内断熱工法の建物を連続空調する場合のエネルギー使用量と温度変化を見てください。

外断熱工法 連続空調
内断熱工法 連続空調

 どちらも室温は20℃に保たれ空調機の出力はQ値と温度差に比例した熱損失から内部発生エネルギーを差引いた数値になります。(外断熱工法は内断熱工法の約1/5)
 気温データは2004年12月31日のものです。

比較例2 次に、夜間は暖房を切ることにして、朝7時から夜23時の16時間だけ暖房することにして、外断熱工法は最大出力4KW、内断熱工法は12KWの空調機を使ったときの室温変化とエネルギー消費の様子を見てください。

外断熱工法 深夜暖房OFF
内断熱工法 深夜暖房OFF

 いずれも朝7時にスイッチを入れるとフル出力で運転を始めます。外断熱工法の建物では夕方18時過ぎに暖房設定温度に達し、空調を切るまで連続空調と同じように20℃を維持します。内断熱工法の建物では空調を切るまでフル運転を続けることになりました。

比較例3 最後に、昼間外出して暖房を止めている場合を見てみましょう。朝7時から9時と夕方19時から24時の7時間だけ上と同じ4KWと12KWの出力を持つ暖房機を使うものとします。
 12月28日に間歇暖房を始めたとして4日目にあたるとしたグラフです。


 どちらも空調機の出力が不足していて室温を暖房設定温度まで上げることが出来ません。
 間歇暖房をする場合、空調停止期間に失われた熱エネルギーを補うために大きな空調能力を持つ暖房機が必要になります。

 グラフに示した室温は室内の空気と床や壁の持つ熱エネルギーの平均値を示しています。
 比較的暖めやすい空気の温度はグラフよりも大きな値を示しますが、床やコンクリートの壁の温度はグラフよりも低くなっています。

 三つの例で消費する空調エネルギーの量を比較すると次のようになります。
空調使用エネルギー
比較例1 比較例2 比較例3
外断熱工法
62.4KWH
61.3KWH
28.0KWH
内断熱工法
229.8KWH
204.0KWH
84.0KWH

 一日7時間の空調で空調機暗中に暖房設定温度を回復するには想定の約2倍25KWの暖房設備を導入する必要があり、このときの暖房エネルギーは174KWH/日となります。
 外断熱工法の連続空調に比べて最大8℃も室温を下げるにも拘わらず、6倍の空調設備を取り付け3倍近いエネルギーを消費しながら満足できる暖かさを感じられない、断熱性能が不充分だとどんなにエネルギーを使っても快適さを得られない理由がここにあります。

比較例3 内断熱工法で暖房能力を25KWにしたもの



2.  熱容量の小さい木造や内断熱工法のRC建築物では空調しない時の室温が外気温度変動幅の60%程度変動し、短時間に大きな空調負荷がかかります。 

 次のグラフは2004年の東京の気温と空調をしていない外断熱工法と内断熱工法の室内温度がどのように変化するかを重ねたものです。
 内断熱工法の建物の室内温度は春の3月下旬から5月中旬に掛けてと秋の10月初旬から11月中旬に掛けて暖房温度を挟んで、6月下旬と8月下旬から9月下旬までは冷房温度を挟んで激しく変動しています。
 一方、外断熱工法の建物の室内温度は日単位で大きく変動することなくサインカーブに近い曲線を描いています。

 暖房度日(HDD)や冷房度日(CDD)は一日の平均気温を元に計算します。
 外気温度の日平均が暖房温度または冷房温度とほぼ等しいとき、空調エネルギーの消費量はほぼ0になると計算されますが、温度変化は場の大きい熱容量の小さい建物では一日の半分が空調が不要な室温になるときでも残りの半分の時間は空調を必要とすることになります。

 昼間の室温が32℃になっても夜中には24℃まで下がる日に、「一日の平均室温は28℃になるのだから、少しぐらい暑くても冷房は我慢しろ」と言われても暑いときには暑いのです。

 したがって、熱容量の小さい建物では日値平均気温を基準に計算したHDD,CDDで計算するより、時間ごとの気温を基準にしたHDH(Heating Degree Houres)や、CDH(Cooing Degree Houres)といった概念で空調負荷を考える必要があります。

 2004年の気象庁観測データから一般に使われるHDDの値とCDDの値、および時間ごとの負荷に基づいて計算した修正値との間には次のような差を生じます。略算的に理科年表の月別平均気温を使う場合には8月の平均気温27.3℃では28℃で冷房するときは夏の冷房負荷は0になりますから、観測密度が細かいほど、空調温度と平均気温が近付くほど、空調度日の値の計算は観測密度の高いデータが必要になります。

暖房度日
暖房温度
18
19
20
21
22
23
正規の計算  (a)
1348
1551
1772
2003
2245
2501
時間単位の計算(b)
1395
1595
1809
2038
2281
2535
誤差率  (b/a)
1.03
1.03
1.02
1.02
1.02
1.01

冷房度日
冷房温度
24
25
26
27
28
正規の計算  (a)
340
251
170
108
58
時間単位の計算(b)
372
281
203
140
93
誤差率  (b/a)
1.09
1.12
1.19
1.29
1.60

 RC外断熱工法の建物は瞬間的な熱負荷があっても大きな熱容量を持つため外気温度が大きく変動しても室温は平均気温に同調します。熱容量の小さいRC内断熱工法や木造の建物では時間単位の負荷によって室温が大きく変動するので、日平均気温から計算したものよりも大きな空調負荷を受けることになります。



3.  暖房度日(HDD)や冷房度日(CDD)は日射による建物表面温度の上昇を考慮していません。
 夏の屋根表面の温度上昇は特に大きく、年間空調負荷や空調設備の能力の算定にあたって適切に補正する必要があります。 

 日射による建物の熱取得を計算する方法にμ値があります。建物の向く方向と日除けの形状・窓面積により熱取得を計算します。

 計算方法が複雑なのであまり正確な計算をした例を見かけません。窓にオーニングやルーバーなどの日除けを取り付けること、「熱線反射ガラス」と呼ばれる室内への輻射熱の侵入を防ぐガラスの採用により、μ値を小さくすることが出来ます。

 μ値は窓からの日射による建物の熱取得ですが、建物の壁や屋根面が日射によって暖められ、室内温度が上昇しますがこの影響を考慮した熱負荷については現在の熱負荷計算では考慮することがありません。

 しかし、鉄板屋根など熱容量の小さい表面材を使う場合屋根の表面温度は80℃近くまで上昇して室内に大きな熱負荷を掛けます。防水層をシンダーコンクリートで押さえた場合などでも屋根の表面温度は50℃前後まで上昇します。


 太陽からの輻射による熱負荷のメカニズムは次のようなものです。
 高温の太陽からは大きな熱エネルギーを持つ電磁波が放射されています。地球の大気圏外ではこのエネルギーは1mあたり約 1.3KWのエネルギーを持っていますが、大気圏内のほこりや水蒸気に一部のエネルギーが吸収されるため地表面で最大 1KWになります。季節や時間により太陽光の入射角度が変わり雲の量によって途中で吸収されるエネルギーの割合も変わるので、輻射エネルギーは一定していません。

 日射を受けた物体の表面に電磁波があたるとエネルギーのほとんどは熱エネルギーに変わり物体の表面温度を上昇させます。
 表面温度が上昇すると物体内部に熱伝導で熱が伝えられるほか、物体の表面からは温度に応じた遠赤外線が放射されます。

 すぐ前に「鉄板屋根の温度が80℃近くまで上昇する」と書きましたが、この温度で物体が放射する遠赤外線と太陽からの輻射熱が等しくなるので、輻射熱でこれ以上の温度に暖められることはないのです。

 次の図は真夏の快晴の日に日射を受ける水平面に厚さ5〜15cmの断熱材と厚さ18cmのコンクリートを置いたときに表面温度がどのように変化するかを示したものです。

 熱容量の小さい断熱材は厚さを変えてもほぼ一様に表面温度が80℃まで上昇しますが、熱容量の大きいコンクリートは50℃に達することはありません。

 「断熱材の厚さが薄いほど熱容量が小さい筈なのに最高温度が低いのはなぜだろう?」と疑問を感じた方がいらしたら、本質をよく理解された方です。
 実は断熱材の裏側に厚さ18cmのコンクリ-トがあると想定しています。断熱材からコンクリートに熱が伝わるため僅かですが表面温度の上昇が緩やかになります。



 図の四つのケースの表面の最高・最低・平均温度を気温と比較すると次のようになります。

  平均温度 最高温度 最低温度
EPS 50
40.3
79.4
27.1
EPS100
40.8
81.2
27.1
EPS150
40.9
81.8
27.1
コンクリート
180
33.4
47.0
27.1
外気温度
30.5
34.4
27.1


 この表が意味することは例えばコンクリートが露出するうち断熱工法の建物で28℃で冷房するときに平均気温を30.5℃として計算すると屋根の外気温度と室温の差は30.5℃-28℃=2.5℃になりますが、実際の屋根の平均温度は33.4℃になるので34.4℃-28℃=5.4℃で計算しないと正しい結果が得られないということです。
  100mmのEPSを使った外断熱工法では40.9℃-28℃=12.9℃とより大きい温度差を前提に冷房負荷を計算しなければなりません。

 何人かの方を、「外断熱工法のほうが表面温度が大きくなって、冷房負荷が大きくなるの?」と失望させたかもしれません。確かに、外断熱工法と内断熱工法で同じ厚さの断熱材を使っていれば冷房負荷は温度差に比例しますから、薄い断熱材を使ったRC外断熱工法ではRC内断熱工法よりも熱負荷の大きいものが出来る可能性があります。

 50mm以上の断熱材を使用した外断熱工法では屋根からの熱負荷が内断熱工法を上回ることはありませんし、私どもが推奨する100mmを超える断熱材を使った外断熱工法では輻射熱の影響も僅かなものになります。さらに、屋根からの熱負荷は建物全体の熱負荷の1/3〜1/4にしかなりません。

 外気平均温度30.5℃の日に内断熱工法と外断熱工法の建物が受ける冷房負荷を確認しておきましょう。
内断熱工法
  断熱材など 厚さ Q値 温度差 冷房負荷
屋根 ウレタン
25
0.55
5.4
8.55
外壁 ウレタン
25
2.26
2.5
16.27
土間・基礎 EPS
50
0.56
0.75
1.21
サッシ 普通サッシ
 
1.19
2.5
8.57
換気 0.5回/H
 
0.40
2.5
2.88
合計  
 
4.96
 
37.48
外断熱工法
  断熱材など 厚さ Q値 温度差 冷房負荷
屋根 EPS
125
0.15
12.9
5.57
外壁 EPS
100
0.46
2.5
3.31
土間・基礎 EPS
50
0.56
0.75
1.21
サッシ H-5等級
0.19
2.5
1.36
換気 0.5回/H
0.40
2.5
2.88
合計  
 
1.77
 
14.34


4.  建物の空調設備の設計にあたっては上の条件を考慮したうえ、適切な断熱によって空調負荷を減らし、小さな空調設備で経済的かつ快適に暮らせるように配慮すべきです。 
 良く断熱することは空調時に建物の外壁・屋根などを通じて建物内から屋外に失われる熱エネルギーを減らし、空調に必要なエネルギーを減らすことです。
 したがって、良い断熱は空調に必要なエネルギーを合理的に減らすものでなくてはなりません。

 空調エネルギーを合理的に減らすことがどんなことか考えてみてください。
 このサイトでモデルとして使っている床面積120m2の戸建住宅を断熱しないで建てるとQ値は16.8程度になります。一冬、エアコンを使って常に20℃に暖房するには毎年約71万円の電力料が掛かります。

 次に、この建物を内断熱するとQ値は約 4.2になり、一冬の暖房に要する電量料は約18万円と半分以下に少なくなります。

 この建物を外断熱した場合、Q値は 1.6程度まで、暖房電力料は 7万円弱まで下がり、建物の耐久性も3倍程度に伸びます。

 無断熱や内断熱の空調電力量を毎年払いつづける負担は大きいですから、当然なるべく暖房を付けないで寒さを我慢した生活をすることになります。

 ここで、断熱に掛かる工事費と空調に要する電力料を比較してみましょう。

断熱の仕方と工事費・空調費
Q値 断熱工事費 空調電力料金/年 40年分の空調電力料金
(割引現在価値)
断熱工事費+空調電力料金
無断熱 約16.8
0
713,000
16,898,000
16.898,000
内断熱 約 4.2
1,000.000
179,000
4,292,000
5,292,000
外断熱 約 1.6
3,600,000
68,700
1,628,000
5,220,000

※ ここでは工事費を 無断熱建築物23,200,000円、
           内断熱建築物24,200,000円、
           外断熱建築物26,800,000円として計算しています。

 最も工事費のかかる外断熱が40年間のコストが最小になるのは当然として、無断熱/内断熱の建物は40年後には寿命を迎えます。しかし、外断熱の建物は40年間のコストが最小になるうえにさらにまだ60年以上も使える余禄があります。
 「断熱性能を高めると建築工事費が増加し、ローン返済額が増える」面ばかり強調されますが、「断熱性能を高めるとエネルギーも節約でき、空調設備が小規模で済む」など省エネ・コスト削減面の効果が大きいことにも注目してください。

空調設備
 暖房設備 
 空調設備の設備容量は建物のQ値と室内温度と屋外温度の差、そして空調設備の運転方式によって決まります。全館連続空調で室温が常に一定に保たれている場合の設備容量は次の式で表されます。 

 設備容量=Q値×床面積×(室内暖房温度−最低外気温度) 

 ここで、建物の熱容量の大きい外断熱のRC建築物では外気温の変動に対して室内温度が緩やかに変動するので最低外気温度を日平均気温の最低値または月平均気温の最低値としても弊害がありませんが、熱容量の小さい木造住宅や内断熱のRC建築物では外気温度の変動が短時間の内に室内温度を変動させるので最低外気温度を少なくとも日最低気温の月平均値としなければなりません。
 「断熱仕様とQ値・空調コストの目安」で使用したQ値を使って延べ面積120uの戸建住宅の空調負荷(=設備容量)を計算しました。

Q値 設計最低外気温度 連続空調時の設備容量
外断熱RC 1.6
5.0℃
≒2.88KW 
内断熱RC 4.2
0.0℃
≒10.08KW 
高断熱木造 1.4
2.5℃
≒2.94KW 
一般木造 4.7
0.0℃
≒11.30KW 

 さらに、局所間歇空調を行う場合は一旦下がった室温を回復させるための負荷が加算されます。 
 「鉄筋コンクリート造などの断熱」、「木造などの断熱」で使った熱容量をuあたりに置き換えた数値と夜中に8時間空調を切った場合の温度低下を回復するために必要となる負荷量を次の表に示しました。 

熱容量/u
温度低下 温度回復に 
必要な負荷量
左の負荷量 
/設備容量 
(単位kcal/K・m2) (単位WH/K・m2)
外断熱RC
300
348
0.45℃
18.80KWH 
10h00m
内断熱RC
80
93
6.0℃
66.95KWH 
6h54m
高断熱木造
60
70
2.0℃
16.80KWH 
6h48m
一般木造
60
70
7.0℃
58.80KWH 
7h06m

 間歇運転による温度回復に必要なエネルギーはほぼ運転を停止した時間空調機を運転するのに匹敵するものとなります。「そんなに長時間空調しなくても温度は上がるのでは?」と首を傾げる方があるかもしれませんが、空調を入れた後空気の温度は比較的早く上昇しても、床や壁など建物本体の温度はなかなか回復しません。 

 「床暖房が快適だ」と言われる理由の一つは暖房を切っている間に冷えた床の温度がなかなか回復しないことにあります。床を直接暖める方が空気を介して床を暖めるより暖房としては効率的です。 

 しかし、床から熱が奪われないようにきちんと断熱すれば床暖房でなくても同じように快適に暮らせます。

 ヨーロッパの鉄筋コンクリートの建物ではほとんどの場合暖房に小さなパネルヒータしか使われませんが、床が冷えることもなくまるで日本の床暖房された室内のような快適さがあります。  

 「冷え性の方が多い」、「床暖房が好まれる」など日本独特の傾向の原因は、建物の温度を下げてしまう熱損失率(Q値)の大きい内断熱と局所間歇空調システムにあります。 

 こまめに空調機のスイッチを切り間歇空調でエネルギーを節約してもいても、その結果は建物自体の温度を下げ、冷え性・神経痛などの原因を作っているのです。

冬の一日あたりのエネルギー需要(室温=23℃ COP=3.0)
Q値 設計平均外気温度 1日の空調負荷 1日の電気料金 50℃の温水換算
外断熱RC
1.6
5℃
≒69.1KWH
510円
2.2t
内断熱RC
4.2
≒181.4KWH
1330円
5.7t
高断熱木造
1.4
≒61.5KWH
443円
1.9t
一般木造
4.7
≒203.0KWH
1490円
6.5t




 冷房設備 
 冷房も基本的に暖房と同様にQ値が小さく熱容量が大きい建物は冷房負荷が小さく、室内温度変化も少なくなるので小さな空調機器で充分に建物を快適な温度に保つことができます。 

 ひとつだけ暖房と冷房で異なる問題があります。暖房では日射が壁を暖めると空調負荷を減らしますが、冷房では空調負荷を増加させます。冬の日照時間は短く輻射エネルギーも少なくなりますが、夏は日照時間が長く輻射エネルギーも大きくなります。 
 東京の8月の平均気温は27.2℃前後ですから、室内の冷房温度を27℃とすれば冷房度日(CDD  Cooling Degree・Days)を基準にすると僅かな冷房負荷があるに過ぎません。ところが日照を受ける内断熱 の外部に剥き出しになったコンクリートの温度は日中60℃程度まで上昇し、夜中になっても40℃程までにしか下がらず、薄い断熱材を透過して室内に熱負荷を与え続けます。 
 内断熱のRC建築物では、外気の日平均温度が40℃近くまで上昇したと同様な熱負荷を受けることになります。 

 日射を受けているときは外断熱の建物でも外装表面こそ内断熱のコンクリート以上に温度が上昇しますが、外装材の熱容量が小さい上に充分な厚さの断熱材があるためコンクリート温度はほとんど上昇しません。詳細な検討はできていませんが、内断熱と同様な考え方をすれば外気の日平均温度が35℃程度と考えてよいと思います。 
 以上の仮定のもとに空調負荷を計算したものを次の表に示しました。 

夏の一日あたりのエネルギー需要(室温=27℃ COP=3.0)
Q値 設計平均外気温度 1日の空調負荷 1日の電気料金 16℃の冷水換算
外断熱RC
1.6
35.00
≒20.04KWH
270円
2.88t
内断熱RC
4.2
40.00
≒131.41KWH
1150円
12.29t
高断熱木造
1.4
35.00
≒23.04KWH
236円
2.51t
一般木造
4.7
35.00
≒112.32KWH
794円
8.47t

 新型のエアコンはもっと高いCOPを表示しているものがあります。COPは自動車の燃費のよ
うなもので、最高効率の数値を見ても余り意味がありません。家電製品に表示されているのは車で
言えば高速道路を一定の速度で走行する時の「定速巡行燃費」に相当するものです。この計算で使
用すべきCOPは空調シーズンの効率の平均値で、車の10モード燃費に相当するものです。

 空調専門家の意見を聞いてみる必要がありますが、太平洋沿岸など冬の日照が期待できる地域では、太陽熱温水器を使ってQ値を小さくした建物を暖房できる筈です。同様に井戸水や地熱が利用できる地域では冷房も自然エネルギーに切り替えられる可能性があります。

 このように建物の断熱性能を高めることで、生活の快適さを失わずに環境負荷の小さい生活に切り替えることができます。 
 一度、Q値の大きい建物を建てると断熱改修をするにしても余分な費用がかかりますから、新築時に良く検討してください。 



 換気設備 
 従来の木造住宅は天井裏・床下などに多くの隙間があり、特別換気を考えなくても自然に空気が入れ替わるようになっていました。長年このような家に住み続けてきた日本人は「換気の必要性」について考えることはほとんどありませんでした。

 家の中では温まって軽くなった空気が上昇して建物の上部にたまり、冷たい空気が下部に溜まります。建物の外装部には室内気温の高い上部ほど中から外へ、室内気温の低い下部ほど外から中への圧力がかかります。
 上下温度差は断熱性能が低い建物ほど、また隙間相当面積の大きい建物ほど大きく、温度差による換気圧力は温度差に比例します。

 さらに、風の強い日には風上から風下に向かって風圧力がかかり、これらの圧力に応じて隙間から自然換気が行われます。この自然換気量は隙間の大きさと風圧力によって決まり人為的に制御することができません。
 風のないときに適正な換気が行われるような隙間を持つ建物では強風時には過大な換気量になり、台風などの強風時に適正な換気が行われる建物では風がないときにはほとんど換気されません。
 コンクリートの建物や高気密・高断熱の建物にはほとんど隙間がありません。僅かな隙間から充分な換気量を確保することはできませんから、換気設備により適切な換気を行う必要があります。 



 人が生活するとき(軽作業時)一時間当たり0.022m3の炭酸ガスを出します。0.022m3の炭酸ガスを0.1%まで希釈するのに必要な0.03%の炭酸ガスを含む大気の量は次の式で計算され、建築基準法などではひとりあたり30m3の換気量が求められています。

 0.022m3/(0.001-0.0003)=31.43m3

 えっ?「寝ているときの炭酸ガス排出量はいくらか?」ですって、建築基準法では寝ているときも同じ換気が必要です。

 この他、室内で発生するハウスダスト、調理や入浴に伴う水蒸気・煙・オイルミスト、建材から蒸発するVOCなどの排出を目的に0.5回/h以上の換気量が求められていて、諸外国ともほぼ一致した数値です。
 インテリジェントビルが話題になった頃、アメリカで空調費の削減を目的に換気回数を1回/3hに落としたオフィスビルが建てられ、シックビルディング問題が発生しました。換気回数を1回/2h(0.5回/h)に変更して問題が静まったことも0.5回/hという換気回数の定着に関連しています。 

 カナダでは、2003年からホルムアルデヒド・VOC対策を行うことによって換気回数の加減を1回/3hに変更したようです。 

 換気は汚れた室内の空気を屋外に出し、新鮮な外気を屋内に取り込み、室内を快適にします。
 しかし良いことばかりではありません。空調された室内の空気と屋外の空気では空気の温度と水蒸気量が大きく違います。冬は暖められ加湿された室内の空気を排気して冷たく水蒸気の少ない外気を取り入れ、夏は冷房した空気を排出して、湿った暖かい空気を取り入れます。
 理科年表から東京の1月と8月の外気の温度と湿度を抜粋し、室内の空気の水蒸気量を算出して比較しました。 

平均気温
平均
相対湿度
平均
水蒸気量
室内外
気温差
顕熱
WH/kg 
室内外
水蒸気量差
潜熱
WH/kg

1月
外気
5.8℃
50%
2.8g/kg
-16.2℃
-4.52 
-5.5g/kg
-3.43
室内
22.0℃
50%
8.3g/kg

8月
外気
27.1℃
72%
15.9g/kg
0.1℃
0.03 
2.5g/kg
1.56
室内
27.0℃
60%
13.4g/kg
屋外がが高い場合+、低い場合−

 上の表の顕熱・潜熱はそれぞれ空気1kgあたりのエネルギー差で、延べ面積120m3の建物で0.5回/hの換気をすると1時間あたり換気される空気の重量は約180kgになりますから、時間あたりの熱負荷は顕熱・潜熱とも次のような数値になり、顕熱だけを考えてもQ値を約0.4W/u・K上昇させます。

換気に伴う空調エネルギー 
顕熱
潜熱
冬1月
0.81KWh
0.62Kwh
1.43KWh
夏8月
0.05KWh
0.28KWh
0.33KWh


 この表の数値は1時間あたりですから、断熱性能の高い建物では空調負荷の数値と比べても相当な大きさになります。
 換気に伴う熱負荷は、熱交換換気装置を使うことで6割近く削減が可能です。(と言っても、トイレ・浴室やレンジフードの換気量を除きます)
 熱交換換気装置には水蒸気を交換しない顕熱交換型と水蒸気の持つエネルギーも熱交換する全熱交換型の二種類があり、顕熱交換型は顕熱の約60%を、全熱交換型は顕熱と潜熱の約60%をそれぞれ回収します。

 熱交換換気装置を取り付けた場合ヒートロスを60%カットして、換気空調負荷は次のように減少します。

顕熱交換型 全熱交換型
冬1月
0.94KWH
0.57KWH
夏8月
0.30KWH
0.13KWH

 全熱交換換気装置は排気の持つ水蒸気を吸気側に回収するので、同時に排気の持つ臭いを吸気側に取り込みます。排気系統を一般の室内と浴室・トイレ・キッチンなどと区分する必要があります。喫煙者のいるお宅では喫煙区画の排気にも注意が必要です。

 熱交換換気装置の仕組みは顕熱交換型と全熱交換型で熱交換器の材質に透湿性があるかないかの違い以外大きな差はありません。寒冷地用では内部で結露を起こし、凍結の恐れがあるので凍結防止ヒータを持つものもあります。

 熱交換型換気装置の使用によって、換気で失われるエネルギーの半分以上を回収することができますが、有効に稼動する期間は夏と冬のピークだけで年間平均して効果的に働くわけではありません。
 適切に機能させるためには定期的なメンテナンスとそのための費用も必要になりますから、建設地の環境特性や住宅の大きさによっては小型の熱交換換気扇など簡易型設備を検討しても良いでしょう。




 ここまで見てきたように換気によって大きなエネルギーが失われるとともに、冬の室内を乾燥させる原因になります。換気設備の設置が義務付けられた背景にはシックハウス症候群と呼ばれる建材中の化学物質の問題がありました。 
 「外断熱工法の建物ではコンクリート躯体や内装材の温度が内断熱工法ほど上昇しないので、内断熱工法の建物に比べて化学物質濃度が20%程度しかない」といわれます。健康上問題のない建物では合理的な範囲で換気量を減らせるような制度が造られれば、空調コストの削減ができますので今後に期待したいと思います。


除湿・加湿設備
 換気設備の項でお話したように0.5回/hの換気をしている場合、冬は室内の多量に水蒸気を含む空気が排出され、水蒸気の少ない外気が吸気されて室内が乾燥傾向になります。夏は逆に室内の相対湿度が上昇します。換気による水蒸気の移動に比べれば絶対量は少ないものの、このほかに壁を水蒸気が通り抜ける「透湿」による水蒸気の移動もあります。
 もう一度、このサイトで例にあげている120m2の建物を例にして、建物の水蒸気移動量を確認しましょう。 

平均
水蒸気量
平均
水蒸気圧
換気による
水蒸気移動量 
透湿による
水蒸気移動量
一般 全熱交換換気

1月
外気 2.8g/kg 3.36mmHg
-990g/h
-396g/h
-109g/h
室内 8.3g/kg 9.96mmHg

8月
外気 15.9g/kg 18.36mmHg
450g/h
180g/h
38g/h
室内 13.4g/kg 16.08mmHg
屋外に水蒸気が浸入+、室外に損失−

 全熱交換換気を行わない場合、冬は1時間あたり1.1リットルの水に相当する水蒸気が失われ、夏は0.5リットルの水に相当する水蒸気が増加する計算です。全熱交換換気を行なえば、加湿・除湿の対象となる水蒸気量はそれぞれ0.5リットル、0.2リットルと半分以下に減ります。
 隙間相当面積(C値)の大きい木造住宅では換気量・透質量ともに大きくなるので適正な加湿・除湿量を求めることができません。(おそらく倍程度にはなるでしょう)

 上記の数値に室内で発生する水蒸気(呼吸・汗など人体から発生する水蒸気、炊事等の生活から発生する水蒸気)が加わるので、実際に加湿しなければならない水蒸気量は上記の数値よりも少なく、除湿しなければならない水蒸気量は多くなります。

 全熱交換換気装置を使う場合には、室内に濡れタオルを置く、植木鉢や熱帯魚の水槽を置く、浴槽のお湯を流さないなどの対策で特別な加湿設備の必要はなくなるかもしれません。これらの対策は内断熱工法の建物や外断熱工法の建物でも大きなヒートブリッジがある場合などには結露を招くことになりますから、建物の性能を良く知ったうえで行ってください。
 どうしても乾燥する場合には加湿器を設置してください。 

 エアコンで冷房する場合、特別な除湿装置の必要はありません。梅雨にも除湿運転ができるよう、室温を下げずに除湿運転のできる機種を選んでください。エアコンを間歇運転すると熱交換器にカビが生えカビの胞子を撒き散らします。充分送風運転をした後にスイッチを切るよう習慣付けてください。

 輻射冷房など新しいタイプの空調設備を採用される方が徐々に増えています。室内の空気の移動が少なく快適な空調ができますが、日本の夏の湿度を考えると除湿能力が不足しがちです。補助的に小型エアコンまたは除湿機を使われたほうがいいでしょう。


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