3-5-4/7 断熱と「省エネ・耐久」 

断熱はなぜ必要か & どんな断熱が良いのか ・断熱と空調 ・自然エネルギーの活用 ・暖房度日と冷房度日
節水 ・耐久性と劣化 ・建物の耐久性を増す ・耐久性と建物のコスト

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暖房度日と冷房度日
 A.B.ふたつの地域の地域のどちらの気温が高いか低いかを比べるとき、普通月平均気温の最低
値・最高値を 比較することが多いでしょう。
 次のグラフは、札幌・旭川・ストックホルム・オスロの毎月の平均気温を表したものです。


 このグラフから、4都市の中では旭川の1月の気温が最も低く、札幌の8月の気温が最も高いこと
がわかります。しかし、このグラフを良く見ると、9月のオスロは平均気温が10℃以下に下がり暖
房が必要になるのに対し、旭川では外気温が15℃程度となっています。旭川の気温がオスロを下回
るのは年に3ヶ月に過ぎません。
 人の大きさを比べるときに、身長・体重などいくつかの指標があるように、暑さ寒さを比べるほか
の指標はないのでしょうか?

 冷暖房に必要なエネルギーを計算するときに使う暖房度・日、冷房度・日という指標があります。
 これは、毎日の平均気温と空調温度との差を1年間365日累積して、空調負荷計算の基礎になり
ます。


暖房度日  暖房温度をth 、ある日の平均気温をtdnとすれば、(th -tdn )>0
となる日についてのΣ(th -tdn ) 
冷房度日  冷房温度をtC 、ある日の平均気温をtdnとすれば、(tdn -tC )>0
となる日についての Σ(tdn-tC

 数式は面倒ですから、暖房温度を23℃としたときの図を見てください。 

 本来、日単位で計算すべきものですが、手元には理科年表の月単位のデータしかないのでこれをも
とに作ったデータをお目にかけます。どの都市も月平均気温が暖房温度を超えることがなく、当然平
均気温が冷房温度を超える月もありませんから冷房度日はありません。 









 それぞれの図の下に暖房度日と冷房度日の数値を示しています。冷房度日は青く塗った面積で示さ
れます。これらの都市では、冷房度日のイメージが判りませんね。

 東京・鹿児島・那覇についても下に同様な図を示しました。

 東京でも僅かなCDD値がありますが、図上では確認できません。
 私たちの実感では、夏はもっと冷房負荷があるように感じるのは、@ 内断熱工法の建物では、躯
体が大きな熱を蓄える、A 窓から室内に直射日光が差し込み室温を上昇させる という理由があり
ます。

 夏にエアコンをガンガンかけなければ眠れない理由が気温ではないことが下の図からもわかってい
ただけるで しょう。

 電灯・家電製品や人体など室内からの発熱によって、室内平均温度は屋外より3〜5℃高くなりま
すから、冷房基準温度・暖房基準温度の線はその分下に下げた方がいいかもしれません。







 ここまでは、暖房温度を23℃、冷房温度を27℃として暖房度日・冷房度日を図に示してきまし
た。冷暖房の温度設定は必ずしも一定ではありませんから、異なる暖房温度、冷房温度に対する暖房
度日・冷房度日が判ると便利です。

 異なる室内温度に対する日本と世界各地の暖房度日・冷房度日を図に示します。まず、暖房度日
(HDD)です。 
 凡例は暖房度日の大きい順(暑い順)に並んでいます。

 札幌はベルリンよりやや寒く、青森はパリと、新潟はマドリードとほぼ同じくらいの寒さです。




 次に冷房度日です。この図は外気温度と室温の差を元に計算しています。建物の表面温度が上昇す
ると、建物の温度が上昇した分だけ空調負荷が余分にかかるようになります。実際の空調負荷を計算
する場合、建物の温度上昇を補正してCDDの値を適用する必要があります。

 凡例は冷房度日の値の大きい順に並んでいます。

 ヨーロッパの都市ではマドリードが青森よりもやや暑い程度で他は札幌以下のHDD値になり、ヨーロ
ッパでは一般には冷房設備は不用なものと考えられています。

 余談になりますが、2003年の夏、ヨーロッパは35℃を超す記録的な猛暑となり、屋外で多く
の人が日射病・熱中症で亡くなりました。
 秋にドイツに出かけ夏の室内の様子を聞いたところ、「熱容量の大きな建物の室内は冷房がなくて
も高温にはならず、室内の暮らしは何も問題なかった」ということです。




 HDD、CDDの精算値
 「日本の気象と外断熱工法」で大気中の水蒸気量をチェックした地点について、2003年11月〜2004
年10月までの気象観測データから暖房度日、冷房度日を精算しました。
 月平均気温から計算した上のグラフと大きな違いはありませんが、数値を示しておきます。
場所
HDD
CDD
18
19
20
21
22
23
23
24
25
26
27
28
札幌
3322.4
3592.9
3886.7
4198.5
4520.0
4849.4
83.1
51.9
30.2
14.7
4.9
0.0
盛岡
3011.6
3269.8
3542.0
3829.4
41.4.9
4550.1
105.4
66.7
35.5
11.3
0.9
0.0
高山
2763.8
3008.2
3261.6
3521.1
3790.4
4075.2
123.4
66.1
25.7
6.9
0.4
0.0
長野
2616.1
2858.7
3109.0
3365.8
3633.7
3911.7
219.6
148.6
92.6
53.9
24.9
7.5
石巻
2551.7
2813.2
3086.4
3375.1
3675.4
3986.6
79.9
32.2
6.3
0.1
0.0
0.0
秋田
2578.3
2826.4
3086.3
3364.4
3639.4
3940.7
171.0
121.1
80.9
49.1
27.6
13.5
新潟
2016.2
2247.4
2488.3
2738.2
2998.2
3266.9
304.1
222.6
159.8
111.1
72.1
40.9
甲府
1813.8
2022.7
2240.6
2472.3
2713.0
2965.9
393.1
290.3
196.4
120.3
66.0
26.5
金沢
1789.6
2006.8
2236.0
2475.8
2722.4
2979.6
428.8
326.8
236.0
162.0
102.8
57.6
銚子
1581.2
1815.1
2062.2
2320.9
2589.0
2871.6
185.7
120.8
67.2
25.0
2.5
0.4
名古屋
1606.1
1805.1
2018.0
2239.9
2475.5
2721.3
499.5
386.7
280.8
184.7
105.1
53.0
浜田
1485.7
1697.6
1931.9
2176.4
2428.5
2686.8
375.3
276.2
184.7
113.3
105.1
53.0
東京
1405.0
1607.7
1827.0
2057.6
2300.0
2554.0
500.1
397.0
299.4
209.6
175.0
102.1
大阪
1415.5
1600.8
1800.8
2013.4
2241.1
2481.6
608.7
487.9
375.1
268.4
175.0
102.1
静岡
1311.1
1502.2
1707.7
1930.8
2165.6
2408.7
439.5
329.1
230.6
146.0
78.4
38.2
福岡
1268.7
1455.8
1658.4
1879.7
2117.6
2362.6
577.1
462.3
353.2
252.8
168.6
100.2
高知
1242.6
1420.1
1616.5
1824.5
2047.1
2285.0
497.1
380.6
277.5
182.3
96.0
35.8
室戸
1193.2
1376.7
1580.0
1803.4
2045.0
2303.7
277.5
179.9
95.4
34.1
6.4
1.1
鹿児島
979.8
1140.3
1313.4
1502.0
1708.3
1935.8
654.7
531.6
416.8
308.4
208.2
118.3
那覇
144.2
213.9
299.2
406.8
539.4
681.4
850.6
650.1
472.3
325.5
204.9
98.0
※ 相川・潮岬・呉は欠測データがあるため精算値が計算できませんでした。

 表は概ねHDDの大きい順に並べています。CDDは下に行くほど大きくなる傾向がありますが、
石巻・銚子・静岡・室戸など外洋に面した場所では夏冬の温度差が小さく相対的にCDDの値が小さ
くなっていることが判ります。

 銚子・静岡・室戸などは国内でも有数の水蒸気量の多いところでもあり、平均気温が低いうえに水
蒸気量が多いため、冷房を使わない場合でも逆転結露の恐れが特に高くなります。
 この問題の詳細については「日本の気象と断熱工法」において取り上げます。



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