断熱・気密・防湿>2断熱と暮らし>2-6外断熱・高断熱の勧め
住宅以外の建物用途別 外断熱・高断熱の勧め
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付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
 
外断熱工法で断熱した医療施設のメリット
 人の出入りの多い医療施設では空調で使うエネルギー費は大きなものになります。
 医療関係施設は建物の規模も大きいので、住宅に比べるとQ値と呼ばれる熱損失率は小さくなり
ますが、出入口の開閉頻度も高く、室温をほぼ一定の温度に維持するために床面積あたりの冷暖房
費は住宅よりもはるかに高いものになります。

 木造住宅で「高気密・高断熱」という言葉をお聞きになったことがあると思います。多くの日本
の木造住宅は密度10kg・厚さ50mmのグラスウール断熱材を使っています。これに対して高
気密・高断熱仕様の木造住宅は少なくともその3〜6倍の断熱性能を持っています。

経済性
 十分な断熱材を使った鉄筋コンクリート建築物のの高断熱工法が「外断熱工法」と呼ばれる断熱
工法です。従来の内断熱工法の建物では屋根・外壁・窓とヒートブリッジからの熱損失がそれぞれ
約1/4を占めています。
 外断熱工法では内断熱工法の2〜3倍の断熱性能を持つ断熱材で建物全体を寝袋に入れたように
すっぽり包み込むのでヒートブリッジからの熱損失を最小にしたうえに、残り3/4の熱損失を1
/3程度まで減らすので、建物全体からの熱損失をおよそ1/4に減らすことが出来ます。

 つまり、外断熱工法で造った建物では内断熱工法の建物に比べて空調エネルギー費を1/4以下
に削減できます。
 既に医療施設を運営されている方は、過去数年の電力料金をチェックしてみてください。冷房も
暖房もしない5月・10月と空調のピークになる8月・1月の差が1/4に縮まります。
(多分、2月分(検針時期によっては3月分)はそれほど高くないと思うかもしれません。それで
も、毎月の料金を日数で割って1日あたりで比較すればはっきり判ります)
 灯油や重油を使っていればその使用量を比べてみてください。

 もうひとつ空調関係で削減できる費用があります。それは空調設備費です。
 「エネルギーの使用量が1/4以下になるので空調設備も1/4に減るのだろう」とお考えでし
ょうか? 実はもっと減らすことが出来ます。

 内断熱工法で断熱された建物は外壁のコンクリートが断熱材の外側にあって、冬は冷たく冷やさ
れ夏は熱く熱せられています。ところが外断熱工法で断熱された建物では外壁のコンクリートは断
熱材の内側にあって室温に保たれています。私たちは断熱材の内側にある素材の重量と比熱の積を
熱容量と呼んでいますが、外断熱工法で断熱した建物は内断熱工法で断熱した建物の4倍近い熱容
量を持っています。
 室内の温度は断熱材の内側の物質の温度とともに変動するので、外断熱工法で断熱された建物は
内断熱工法で断熱された建物に比べて外気温度の変動による影響を約1/16、室内で発生する熱
の影響を約1/4しか受けません

 したがって、内断熱工法で断熱した建物では暖房は冬の夜中、冷房は夏の昼間の負荷ピ−ク時に
フル運転するように設備設計します。外断熱工法で断熱した建物では一日の空調負荷を均等に出力
できる空調設備があれば充分に機能を果たすことが出来ます。
 このような考え方で空調機器を設計すれば空調機器の規模は1/10程度まで小さくすることが
出来ます。

 先日、ある老人福祉施設を内断熱で建築した場合と外断熱で建築した場合の空調設備と空調エネ
ルギーを比較してみました。
  770坪ほどの建物で暖房設備の出力は内断熱工法で連続空調する場合で約160KW、内断熱の場合
は38KWと約4:1、エアコンで空調する場合の電力料金は年間 616万円と97万円と6:1の比率になり
ました。冷房についての計算はしませんでしたが、外断熱工法では冷房運転をほとんど必要としな
い筈です。
 内断熱工法で間歇空調する場合暖房設備の設備能力は空調を切る時間の熱損失を補うためより大
きくなり、外断熱工法の6倍程度の暖房設備が必要になるでしょう。


 空調機器の出力が半分になっても空調工事費は半分にはなりません。3/4から2/3程度の工
事費が必要になるでしょう。

 大きな建物のQ値は3.0前後、小規模な建物のQ値は5.0前後になり、エアコンで空調して
いる場合の年間空調費は床面積1mあたり少なくとも年間1,320〜2,200円/mほど
になるのではないでしょうか? 外断熱工法で断熱すればこれを330〜550円/mまで減ら
すことができます。

※ 上記の例では2,427円/m・年と339円/m・年になりました。

 (ここに示した金額はあくまでも理論値です。建物性能と空調温度設定に基づく実績値をチェッ
クしてください)
 空調費の節約額は坪当たりで約3,300〜5,500円/年ですから10年で33,000〜
55,000円、寿命と割引率を考えたライフサイクルコストの節減額は坪当たり10〜16万円
になります。外断熱工法を採用することによる建物のコストアップは採用する外断熱工法の種類と
建物の規模にもよりますが断熱サッシを含めて13万円前後、既に断熱サッシを採用しているとす
れば6〜7万円/坪程度です。*
(*正確な工事費差額は壁・屋根などの面積から計算します)


室内環境衛生
 ここまで、外断熱工法で断熱した建物の空調費を中心にコストの比較をしてきました。
 しかし,外断熱工法が優れているのはコストの面ばかりではありません。

室内温度差と浮遊真菌数
 外断熱工法でしっかり断熱された建物に比べると、一般の内断熱工法で断熱された建物は冬には
壁・屋根・窓・床など建物の外周部から4倍以上の熱を失い、夏は取得します。

 内断熱工法で断熱された建物では建物外周部を貫流する熱エネルギーのほとんどが直接空気を冷
やし、あるいは暖めるので、 

 外壁回りで冷やされた空気が床付近に、空調機で暖められた空気が天井付近に溜まる
 外壁回りで暖められた空気が天井付近に、空調機で冷やされた空気が床付近に溜まる

傾向があり、天井付近と床付近の温度差は5℃近くになることが知られています。

 さらに、内断熱工法では建物の床と外壁が接する部分は「熱橋」と呼ばれる断熱できない部分になります。この部分は床暖房などで十分な熱が加えられていない限り建物内で最も低温な部分となり空調を切った夜間には僅かな温度低下でも結露を発生させる恐れがあります。結露の発生は言うまでもなくカビやダニの発生に繋がります。

 長野県大町市のある病院で一昨年病棟の断熱改修工事が行われました。2棟ある病棟のうち1棟を外断熱改修したものです。お茶の水女子大学・生活科学部の田中辰明教授の調査では、二つの病棟の浮遊真菌数に5倍以上の差があったと報告されています。
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関連資料


化学物質濃度
 夏、内断熱工法で断熱されたコンクリートの温度は屋根では70℃近く、壁でも最高60℃近くまで上昇し、夜になっても40℃を下回ることがありません。高温になったコンクリートは内装に使われる合板・塗料・接着剤・ビニールクロスなどから大量の有機化学物質を蒸発させ「シックビルディング症候群」(「シックハウス症候群」と呼んだ方が馴染み深いでしょうか?)の原因になります。外断熱工法で断熱されたコンクリートの温度は30℃を超えることがなく、同じ建材を使った比較では室内有機化学物質量が約1/4と少なくなります。


耐久性
 内断熱工法で断熱された鉄筋コンクリートの建物は、コンクリートの大きな温度変化、コンクリートに直接かかる雨風によって、亀裂の発生・炭酸ガスによる石灰成分の流失などによる激しい風化作用を受け、コンクリートの耐久性は外断熱工法で断熱したものに比べて1/3以下に短縮されます。
 「いや、100年以上も持つ必要はないんだよ!」と仰るかもしれませんが、耐久性の違いは定期的な建物の修繕コストの差に現われてきます。分譲マンションの性能を維持するため高額な維持管理基金・修繕積立金が積み立てられるように、内断熱工法で断熱した建物の外壁を健全な状態に保つには多くの費用が必要です。
フラウンホーファー建築物理研究所ホルツキルヘン支所の
コンクリート対候性試験場にて (ミュンヘン市郊外)

 鉄筋コンクリート造の建物の耐久性についての詳細な説明はこちらをご覧下さい

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