有限会社 日本外断熱総合研究所 > 断熱・気密・防湿 >マニュアル 4-2快適な家造り掟破りのテクニック(1/3)
 快適な家造り 掟破りのテクニック
 ・ 総合編 ・ コンクリート造編 ・木造編

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3-2断熱の良い家造り講座
3-3コンクリート造の断熱
3-4木造建築物の断熱
3-5断熱仕様とQ値
3-6断熱と「省エネ・耐久」
3-7日本の気象と断熱工法
3-8熱負荷のメカニズム
3-9空調設備

マニュアル
4-1快適な家造り
掟破りのテクニック
4-2断熱改修のマニュアル
4-3RC建築物の断熱改修
4-4省エネな家造りの進め方

付録
付1断熱用語辞典
付2断熱材性能比較リスト
付3住まいと断熱の掲示板
付4M邸WEB見学会
 

総合編
なぜテクニック?
 「断熱の良い家造りのコツなんて簡単だ!」の多くのセクションは、断熱や結露防止を理論的
にやさしく理解していただけるよう解説を進めています。

 しかし、一般の建築主の皆様にとって 100ページ近いコンテンツの全てに目を通し、その内容
を理解して実際の家造りに生かすことはかなりの時間と労力が必要です。
 「もっと簡単に要点を知りたい」と思われる方もあるでしょうし、コンテンツ全体をお読みに
なったあとで、「では具体的にどうすればいいのか?」と考え込まれる方もあるでしょう。

 そんな方たちのために家を作るときに必要なテクニック集として、あるいは設計中のチェック
リストとしてこのセクションを作りました。

 このページはRC造・木造など建物の構造区分に関わりなく基本的な事柄を纏めた総合編で、
別にコンクリート造編、木造編を準備しています。
 あなたの建てる家に応じて必要なところをお読みください。


断熱は基準以上に
 「次世代省エネルギー基準で、この地域で求められる断熱性能は、K値○○ですから、厚さ○
センチの断熱材を使えば充分です。」
 基準は一人歩きを始めます。上にあげた次世代省エネルギー基準の各部分の断熱性能は「最低
この程度の断熱性能を持たせなさい」という基準で、「これ以上断熱してはいけない」というも
のではありません。
 断熱材は、無垢のフローリングや外壁に貼るタイルなどほかの高価な建材に比べて決して高い
ものではありません。更に、断熱材を使う量を2倍、3倍と増やすほど、空調エネルギー費を2
分の1、3分の1と減らし、掛かった費用を毎年払い戻してくれます。

 地震のない北欧では多くの断熱材を充填するために2×6、2×8などのスタッドを使って大
量の断熱材を充填します。比較的暖かい日本の本州ではここまで多くの断熱材を使用する必要は
ありませんが、2×4や在来木造の壁に断熱材を完全充填するくらいの断熱をしても断熱しすぎ
るわけではありません。

 「そんなに断熱すると工事費が○十万円も高くなりますよ」あなたの依頼先の設計担当者は言
外に「高くつくからそんな断熱はやめた方がいい」という筈です。ここでひるむことはありませ
ん。
 仮に工事費が 100万円高くなったとしても毎年のローン返済額は3万円ほど高くなるだけです
が、毎年の空調費はそれ以上に少なくなる筈です。

 断熱仕様と年間空調費の関係について「断熱仕様とQ値」に纏めています。もっと詳しく知り
たい方はこちらをお読みください。

 
断熱と気密
 断熱と気密は切り離して考えられません。特にグラスウール、ロックウールなどの鉱物繊維系
断熱材(mineral wool【MW】)は気密性がほとんどなく、断熱材のほかに建物に気密性を持た
せる必要があります。
 鉱物繊維系断熱材を気密部材なしに使用すると隙間風が屋外と室内の空気を入れ替え、自然換
気により室温を外気温に近づけるほか、温度と絶対湿度に差のある外気と室内空気が壁の中で混
じりあい壁の中で結露を起こす原因になります。

 コンクリート造の建物の躯体はそれ自体が強力な気密材ですからコンクリート側の気密を考え
る必要はありませんが、木造建築物では気密層(および次の項で説明する防湿層)の選択は重要
です。

温度と湿度を同時に考える
 日本の建築関係者は温度と相対湿度に無頓着な建築設計を進めています。水蒸気量を相対湿度
で考える習慣がそのあらわれです。
 冷房中、暖房中の室内には床と天井付近で5℃前後の温度差があります。冷房や暖房を切ったあ
と、部屋の温度は大きく変化します。さらに、断熱材の室内側と屋外側には暖房中で40℃。(強
い日射を受ける場合)、暖房中で20℃の温度差があり、大きな相対湿度差が生まれます。

 次の図は暖房中の室内空気と冷房中の屋外空気の絶対湿度を一定にしたとき温度変化による相
対湿度の変化を表したものです。断熱材内部は温度差が大きく絶対湿度の差はほとんどありませ
んから、低温部分では結露しやすい傾向があります。
 壁の中の絶対湿度がどうなるかを想定しながら断熱設計を進めます。

 赤系統の線で表した冬の室内の水蒸気量は暖房設定条件で決まります。一方、青系統の線で表した夏の水蒸気量は建物を建てる地域の夏の外気条件で決まります。
 後者については日本の気象と断熱工法の項に2004年の気象観測データから計算した各地の最高露点温度を表で示しています。


 夏の結露の心配のない寒冷地では外気の結露を心配する必要はありませんし、強い暖房を必要
としない(外気温が常に15度以上の)温暖地では冬の結露を心配する必要はありません。

 断熱材の中に水蒸気が入りにくくすることも「気密」と呼ぶことがありますが、空気の流れを
止める材料の中にも水蒸気の浸透を許すものがあります。水蒸気の移動を阻むと言う意味で「防
湿」と呼ぶべきでしょう。

 
サッシの断熱性能と日除け
 断熱サッシの熱貫流率はH−1〜H−5等級に区分され熱貫流率で表すと4.65〜2.33W/Km2
以下の等級になります。普通サッシや樹脂サッシを含めると熱貫流率の範囲は6.80〜1.16W/m2
Kと6倍の差があります。
 この熱貫流率を熱貫流抵抗で表すと0.14〜0.86m2K/Wとなり、サッシの断熱性能は壁や屋根
に比べて小さなものです。壁や屋根をしっかり断熱していてもサッシの断熱性能が不充分だと面
積の少ない冊子からの熱損失が大きな割合を占めることになります。

 サッシの熱貫流抵抗が壁の熱貫流抵抗の1/4〜1/5以下にならないように適切な断熱性能
を持つサッシを選択してください。
 なお、同じ部材を使ってもサッシの熱貫流率は小さな窓ほど大きくなりますから、できる限り
小さな窓を作らないことが省エネ効果を高めます。小さな窓をふたつ作るよりも二倍の面積を持
つ窓をひとつ作るほうが断熱的に優れています。

 窓は熱伝導で熱の逃げ道になるほか、直射日光が差し込むと大きな輻射熱を取り込みます。
 地上に降り注ぐ太陽光線が持つ熱エネルギーは、光線軸に垂直な面に対し最大で1KW/m2にな
ると言われていますから、1m2の窓から差し込む光は小さな電気ストーブに相当する熱源になり
ます。トップライトや西日を受ける窓をはじめ、夏の日の差し込む窓には庇や外装ブラインドを
設け、不必要な熱を室内に入れない工夫をすれば無駄に冷房を使わなくても快適に暮らせます。

空調設備
 エアコンや温風器など空調設備機器は「○畳用」など部屋の広さに対応した能力が表示されて
います。
 高い断熱性能も持つ建物ではこの表示はまったく当てになりません。

 建物全体の熱損失率(Q値)を求め、Q値に基づいて必要な設備の能力を計算してください。
 Q値から空調設備に必要な能力を求めるとき、「連続空調」をするか「間歇空調」をするかで
空調機に求められる能力は大きく変わります。
 断熱の良い建物では「連続空調」をしても「間歇空調」をしても使用するエネルギーに大きな違
いはありませんが、機器の能力は間歇空調の方が倍近いものになります。

 「連続空調」で空調機器を選んだとしても、冷暖房のピーク時期以外は「間歇空調」も可能です
から、「連続空調」を前提に小規模な空著機器とすることをお奨めします。
 ただし、しばしば2週間以上空調を切って留守にすると予定している場合は、帰宅後の空調の
立ち上がりを考慮すると間歇空調を選択しても良いでしょう。
 しかし、熱容量の大きなRC建築物では一旦室温が下がると回復に時間が掛かりますから、
「連続空調」を前提に設備の能力を決め、空調機を設定温度を下げて1台だけ運転しておくこと
をお奨めします。
 

換気設備
 2004年に改正施行された建築基準法の規定により、1回/2時間の24時間換気設備の設
置が義務付けられました。
 この規定は「新築病」、「シックハウス症候群」とも呼ばれる「化学物質過敏症」への批判を換気
のみによって解決しようとする意図が感じられます。化学物質の揮発量は建材の含む化学物質の
量や建材の置かれた温度に関係しますから、F☆☆☆☆☆などの発生源対策や建材の温度監理な
ど総合的対策を考えれば換気だけに頼って揮発した化学物質を排除しようとする考え方は良いア
プローチとは思えません。
 このような対症療法が必要になるほどシックハウス問題が深刻だったと考えればいいのでしょ
うか?

 換気は室内外の空気を入れ替えることですから、空調中は熱損失を大きくする効果がありま
す。このページの
断熱と気密
に示したように、過大な換気はエネルギーの損失になるので、必要
なところに必要なだけ過剰でない適切な換気が行われるべきです。
 例外として外気温が室温以下に下がった夏の夜、何らかの原因で室温が上がりすぎたときな
ど、充分に換気しても良いときがあります。

 空調中の換気には熱交換換気装置が有効です。空調度日が2500度日を超える場合には熱交換換
気を検討してみてください。一方、換気によって室温を下げる場合は高低差の大きくなる位置に
吸気窓・排気窓を取り付けると、エネルギーを使わずに暖かい空気と冷たい空気の比重差によっ
て効率よく換気できます。