断熱材内部の絶対湿度は断熱材と室内、断熱材と屋外の透湿抵抗比にしたがって屋内と屋外の
絶対湿度の中間値になります。下の図は室内側の気温が20℃湿度60%、屋外側の気温 が0℃湿度
50%として、屋外側の透湿抵抗を1としたとき屋内側の透湿抵抗の比率によって断熱材中の絶対
湿度がどのように変わるかを示したものです。室内側の透湿抵抗が大きくなるほど絶対湿度が下
がることが判ります。

断熱材中で外側ほど温度が低くなりますから、相対湿度は外側に向かって高くなります。上の
温度と絶対湿度の関係を相対湿度で表したものが次の図です。1:1の場合には壁の外側の相対
湿度は 100%を超え、吸放湿能力を持たない断熱材を使っていれば結露が発生します。

防湿とは断熱材を含む壁の構成要素中に結露を起こさせない対策です。吸放湿性を持つセルロ
ースファイバーのような断熱材は容積あたり空気の数百倍の水蒸気を蓄える能力があるので、最
も寒い時期の日平均外気条件で壁の中の相対湿度が 120%内外を超えないように防湿すれば結露
を起こさないようです。
壁にはコンセントや吸排水管など下地材や仕上材を貫通する設備配管が取り付けられます。貫
通部分は気密・防湿の弱点になりますから、注意深くシールするとともに、余裕を見た透湿抵抗
値を持たせるようにします。
気密・防湿層は多くの場合ポリエチレンシートなどを材料として作られます。気密・防湿層を
構成する素材はポリエチレンシートのほかに樹脂系断熱材やアルミサッシ・樹脂サッシを初めと
した固体の材料が使われます。
シートとシート、シートとサッシなど材料の接合部は重ねあわせたりテープで張り合わせたり
して性能を発揮するように考えられていますが、新しい風船が時間が経つとしぼんでいくように
気密防湿層の性能は時間の経過とともに低下していくと考えておかなければなりません。
上に示したセルロースファイバー使用を前提とした図では透湿抵抗比が1:1〜3の場合を示し
ていてこういう低い倍率では劣化後の性能比率が大きく変わることはありませんが、ポリシート
と構造用合板のように1000倍近い差がある場合、施工精度や劣化によって著しい性能差が発生す
る可能性があります。
気密・防湿性能の劣化は結露による建物の朽廃に直結します。そして、性能の劣化は避けるこ
とができません。
建物を容易に朽廃させないようにするにはどうすればいいでしょうか?
私は新築当時の性能を前提にするのではなく、数十年後の劣化した性能を前提に建物の仕様を
決めることが最も効果的だと思います。
特集でご紹介した次の図のような二重に気密・防湿層を設ける工法は論外ですが、これ以外に
も構造用合板やOSB合板を外壁の外側に貼ることも避けたほうがいいでしょう。
気密防湿層の性能が1/10程度まで下がったとしても結露を起こさせないような設計姿勢で
造られた建物はあなたの財産を守ってくれます。

防湿層、合板、フェノールフォームなど透湿抵抗の大きい部材に囲まれた部分で配管からの漏
水や雨水の浸入があると構造体がぬれた状態になりやすく、更に防湿層が劣化する、施工精度が
悪いなどの条件が重なると合板や断熱材に結露が起きることがあります。
「気密と防湿」に示した図は東京など最低気温が0℃前後のところでは内外と透湿抵抗が1:
2程度でも結露が起きないことを示しています。
しかし、外気の相対湿度が高いところで室内側の透湿抵抗値が下がると思わぬ条件で結露が発
生するリスクがあります。木造住宅では気密・防湿層の性能を過信すると建物の耐久性を損ない
かねません。
次のグラフはグラスウールなど鉱物繊維系の断熱材を使う場合の屋外側と屋内側の面材の透湿
抵抗比に望まれる比率を示しています。
横軸は外気温度で、線の色は外気の相対湿度を示します。なお、外気の相対湿度が50〜70%の
ときは壁内部の相対湿度が80%を越えないように、外気の相対湿度が80%を超えるときは壁内部
の相対湿度が5%以上増加しない条件で計算しています。

例えば外気温度がマイナス15℃で湿度が80%になるところでは屋内側面材は屋外側面材の85倍
の透湿抵抗を持たなければならないと読みます。
この図からも外気温度が低く、相対湿度が高いほど室内側に強い面材が必要とされることが判
ります。防湿層の性能が劣化してくると低温・高湿な環境ほど問題を起こしやすいので北欧など
では屋外側面材の透湿抵抗を極力小さくする設計が行われています。
天井断熱の場合、断熱材の小屋裏側には気密・防湿系の材料は使われません。天井材の裏に防
湿シートを貼るか下地に防湿塗装をするなど天井面から断熱材中に水蒸気が抜け出しにくい措置
がしてあれば充分です。天井断熱する場合、小屋裏は大きな通気層と考えてください。軒裏など
小屋裏の低い部分から外気を取り込み、棟や破風など高い部分から暖まった空気を排出します。
切妻屋根では妻壁の上に有効な排気口を取り付けることができます。是非取り付けてくださ
い。
寄棟など船の底を載せたような形の屋根では排気口がないと小屋裏に空気が篭り、屋根に日が
当たると60℃を超える高温になり、夏の小屋裏にはサウナが隠されている常態の家が少なくあり
ません。
このような家で冷房を掛けてもエアコンの機器が悪く無駄に電気を浪費します。
この熱は断熱材を通って室内に及び「灼熱」の室内にします。棟換気装置など小屋裏の排気に
充分配慮してください。給気口・排気口の有効面積の有効面積の目安は、それぞれ直下の階の床
面積の 600分の1です。金網など防虫・防火措置をするときは有効面積が小さくなりますから充
分な有効面積を確保するようにしてください。
夏の暑い日に小屋裏の換気の悪い家が不快なことは誰にもすぐに判りますが、冬に小屋裏の換
気がいい家は寒いのではないかと考える方が多いでしょう。「小屋裏の換気を止めて暖かい空気
を閉じ込めた方が暖かく暮らせるのではないか?」と、
しかし、冬に小屋裏を閉じることは小屋裏に水蒸気を篭らせ結露を促進する原因になります。
屋根断熱するときは屋根面と断熱材の間に通気層のようなスペースを確保して水蒸気や熱せら
れた空気を屋外に輩出できるよう配慮してください。
地震の多い日本の建築物はは筋交によって耐震性を持たせてきました。最近では枠組壁工法の
ように軸組に構造用合板などの面材を張って耐震性を持たせることが多くなっています。面材の
中には大きな透湿抵抗を持つものも多く、一つ間違えば壁内結露の原因になりかねない状況があ
ります。
また木質系面材の透湿抵抗は素材が置かれた相対湿度によって大きく変化するので適切なデー
タで結露の有無を検討する必要があります。
日本のJISでは素材ごとにカップ法という測定方法でひとつの透湿抵抗値を測定しています
が、欧米ではドライカップ法とウエットカップ法により比較的乾燥した状態と湿潤な状態のふた
つの透湿抵抗値を測定します。ふたつの透湿抵抗値を比べるとウエットカップ法の透湿抵抗値が
小さくなります。
JISで示された透湿抵抗を使うと結露しない場合でも「結露あり」と判定される可能性が大き
くなります。
構造用面材を使う場合には内装下地用の壁倍率の大きい面材や外装下地用の透湿抵抗の小さい
面材が開発されているので、これらの利用を心がけ、透湿抵抗の大きい面材を外部に使うのは避
けるようにしましょう。
断熱の良い家造り講座>木造建築物の断熱> 面材の透湿性能に各種面材の透湿性能を纏めてい
ます。
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水蒸気を排出しやすく壁倍率も高い面材は構造用合板などに比べて価格が高いのが難点です。構造用合板など透湿抵抗の高い面材を問題を起こさずに使うテクニックを紹介しておきましょう。
それは、面材を壁に取り付ける釘ピッチ以上の間隔で面材にドリル穴を開けることです。ドリル穴からは水蒸気が自由に抜けることができるので透湿抵抗の低い面材と同じように使うことができます。
従来、防湿シートとしてポリエチレンフィルムが使われてきました。最近「スマートベーパーバリア」または「スマートベーパーリターダー」と呼ばれる防湿フィルムが開発されています。木質系面材と同様にドライカップ法とウエットカップ法により異なる透湿抵抗値を持つ防湿シートです。このような面材を使うことで夏型結露にも冬型結露にも安全な断熱設計が可能になる可能性があります。
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床下は元々外気に開放されたスペースでした。したがって、そのような床下を持つ建物では基
礎断熱は考えられませんでした。床を断熱する場合、天井の断熱の上下を逆にした関係になりま
す。床材を防湿層とするか、床材の下に防湿シートを張ってその下側に断熱材を密着させます。
畳など断熱性能のある床材を使うときは床下地材におおきな透湿抵抗を持たせないようにしま
す。従来杉板など幅の狭い隙間のある下地材が使われていましたが、構造用合板など大きな透湿
抵抗を持つ床材を使うことも多くなっています。
杉板など隙間のある下地材を使って欲しいところですが、床の剛性を面材で確保する場合は構
造用MDFなど透湿抵抗の低い素材を活用してください。
ここでも上でご紹介したドリル穴のテクニックが使えます。
日本の住宅地の多くは水はけの悪い沖積平野に広がっています。建物の防湿を考えるとき、室
内から出てくる水蒸気と同時に、地盤から蒸発する水蒸気への対策も重要です。
「敷地内に降った雨が基礎の周りから基礎内部に浸透して床下の湿度が上昇し、床下がいつも
かび臭い」そんな家が数多くある筈です。
排水の悪い土地に建物を建てるときは基礎の周りに透水排水管を巡らせ、流末を屋外に出すと
ともに埋め戻しには排水の良い砂やレキ混じりの土を使うなど敷地の排水に配慮するべきです。
基礎断熱は床下を地下室のような部屋と見なして床下空間全体を断熱し、床の断熱を省略する
断熱方法です。基礎下の土の温度は外気ほど温度変化の幅が大きくなく、基礎外周の断熱対象面
積も床の面積より小さくなります。
基礎外周は外壁と同等な熱貫流抵抗を持つ断熱材を使って断熱しますが、温度差の少ない土間
下部は50mm程度の断熱材を敷き込めばいいでしょう。
床下部分に空気が対流しないように室内の空調された空気を循環させます。
ここで、基礎断熱するときの注意事項をいくつかご紹介しておきます。
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1. |
建物のどの部分でも床下に入れるように基礎の区画ごとに床点検口を取り付けておきましょう。
床下が汚れると循環させる空気も汚れますから、何年かに一度点検と清掃をしましょう。 |
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2. |
先に束基礎だけコンクリートを打ち、後から防湿コンクリートを打つ方法は基礎と防湿コンクリートの間にコンクリート収縮による隙間を作る原因になります。シロアリ対策として問題があります。 |
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3. |
基礎フーチングの下には断熱材を敷きこまないでください。断熱材の圧縮強度は地盤の耐力より小さなものです。
フーチング部分はヒートブリッジになりますが、建物全体からの熱損失はそれほど大きくなりません。構造の安定を優先させてください。 |
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