0-4-3 特集バックナンバー(2/3)
これまでの「特集」のバックナンバーです。                     有限会社 日本外断熱総合研究所

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特集14 非定常分析全盛の意味するもの 2005年11月

  昨日、ある講習会に参加しました。

 次世代基準を上回る次の時代の断熱基準をどのように考えたらいいか?を模索しようと言う試みで、日本の貧弱な 断熱基準を国際的な土俵に立てるものにしていくためには遅きに失した感もあるものです。

 しかし、その中で話された内容はアプローチの面からも、断熱技術の面からも技術論の面からもいささか期待はず れなものでした。

 技術的なアプローチとしては、既に存在する木造住宅の充填断熱工法とと外張り断熱工法を組み合わせて両者の熱 貫流抵抗を足した性能を実現することを目指すアプローチがされていました。
 軸組(枠組)内部に断熱材を充填し、さらにその外側にも断熱材を貼ればそのどちらかだけに断熱したものより断 熱性能は大きなものになることは誰にもわかることです。

 しかし、使う断熱材の種類(性質)によって夏又は冬の結露を促進してしまうことがありますから、「どんな断熱 方法を組み合わせても大丈夫だ」という訳ではありません。

 講師もこのことは一応理解しているものと思いますが、結露の危険があるかどうかに就いて非定常解析というシュ ミレーションだけに依存し、定常解析や壁構成の透湿抵抗比のバランスについてまったく考慮していないのではない かと思われる例が見受けられました。

 一例を挙げると次のようなものです。 



 この壁ではBの住宅用グラスウール断熱材が、いずれも高い透湿抵抗を持つA−防湿層と、D−」フェノールフォー ム断熱材に挟まれています。軸組(枠組)材やC−構造用合板が湿気を含んだ場合、水蒸気の逃げ場がないのでこの 壁の中のグラスウール断熱材は濡れる恐れがあります。雨漏りがあったときなど、湿気の逃げ場がない欠陥工法だと 言ってもいい問題のある壁構成です。

 ところが壁構成についての定性的な検討を省略して、この壁の結露を非定常解析によって「結露しない」として結論 づけます。 


  非定常解析は次のような性質を持っていますから、適用と評価はこの性質をよく理解して行う必要があります。


 1.  環境条件(特に室内環境条件)を少し変更すると解析結果がまったく異なることがあります。
(特に部分間歇空調をする場合、冬型結露では空調を切ったあとに、夏型結露では空調を効かせ過ぎたときに 最も危険な状態になります。)
 2.  危険域の設定が難しい。
(結露があるか・ないか、つまり相対湿度が100%になるかだけを解析判定の基準にしているケースが多く 見られます。夏が高温多湿な日本では断熱しなくても相対湿度が80%以上になることがありますから、ヨー ロッパのように相対湿度を80%以下に保てるかどうかを判定基準にできない事情もあります。壁の中で高湿 な状態が長時間続くような工法はカビや腐朽菌の繁殖を招く恐れがあります。)

 

 現在の「次世代省エネ基準」を上回る断熱基準を考える場合、「どの程度の断熱性能値が必要になるか」が先ずはじ めに検討されなくてはなりません。
 100ミリ以上の充填断熱に匹敵する断熱性能を求めようとすると枠組壁工法では2×6など幅の厚いスタッドを 使う工法がまず思い当たりますが、在来木造住宅では充填断熱と外張り断熱、それに壁の内側への付加断熱を組み合 わせた断熱材の組み合わせになると思います。
 在来木造住宅の構造体の継手が金物で補強されるようになり、軸組の屋外側から室内側に金物が貫通しない建物は ほとんどなくなっていますから、壁の外側にいくらかの断熱を付加することは金物がヒートブリッジになり結露の原 因となることを防ぐ有効な手段になります。

 次に必要なことは防湿層の位置を明確にすることです。防湿層に使う材料はシート系のものでも樹脂断熱材でも構 いませんが、防湿層を中心に壁の室内側、屋外側に向かって透湿抵抗が順次小さくなるように壁構成を定めることが 結露の不安のない建物を造る秘訣です。
 上の壁構成のように繊維系断熱材をふたつの防湿層で挟むことは避けなければなりません。

 木造住宅の場合、「次世代省エネルギー基準」の次の高い断熱性能を持つ仕様は以上のような考え方を満たす工法を 採用することで解決策を見つけることができます。それではコンクリート造や鉄骨造の建物ではどのような対策が可 能でしょうか?



特集13 ある実験 2005年10月

 建築の設計を仕事にしていると「何か自分の理想の建物像を持っている」と思われているようです。
 数日前、あるプレハブ住宅メーカーの技術をテレビで紹介していました。「NHKが私企業の技術を電波に乗せるなん て昔では考えられないなぁ」などと思いながら見ていると、オリジナルのセラミック素材だったのでしょうか? バ ーナーでパネルの裏側を炙りながらその反対側に手を触れさせて、「断熱がいいから熱くないでしょう?」と言って いました。

 そのときは何気なく見過ごしていましたが、同じような「実験?」に心当たりがあります。

 軽量コンクリートだったかALCだったか覚えていませんが、昔、下から火を焚いてその上にパネルを載せ、「断 熱性能が高いから下の階が火事になっても上の階は熱くない」と言っていました。
 こういう実験は定常状態になるまで加熱しないと意味がありませんし、定常状態に達するまでの表面温度は必ずし も断熱性能を表現している訳でもありません。

 人間も動物だからでしょうか? 火を見るとなんとなく興奮状態になります。理屈抜きに説得されてしまいます。

 しかし、ALCや軽量コンクリートがそれほど大きな断熱性能を持つものでないことは熱貫流抵抗を比べてみれば すぐに判ることです。

 厚さ10cmのALCの熱貫流抵抗は0.83m2・K/Wと厚さ4cmのグラスウール10kg品と同じ程度です。この程度の断熱 性能を「断熱性能がある」と説明されても納得する方は少ないでしょう。

 この実験にはもうひとつの落とし穴があります。

 大きなやかんに水を入れ、2〜30秒火に掛けてから触ってもまだそれほど熱くはなっていません。厚さ10cmのパ ネル1m2の温度を上げるには20リットルの水と同じ熱が必要です。さらに、パネルは水と違って内部で対流を起こ しませんから、裏側への温度の伝達はゆっくり進みます。

 これとは少し違う実験を考えてみました。厚さ10cmの氷の片側をバーナーで少し炙ります。当然氷は炎のあたった 表面が少し融けるだけです。そこで私はこう言います。「反対側を触ってみてください。断熱がいいから熱くならな いでしょう?」。

 誰も断熱がいいと信じてはくれないでしょうが、二つの実験は同じ意味を持っています。


特集12 答えられない質問 2005年 9月

 建築の設計を仕事にしていると「何か自分の理想の建物像を持っている」と思われているようです。
 「先生は(この『先生』という呼び方は馴染めないのですが「そう呼ばないで」と言ってもまず聞き入れて貰えません)こんな家を建てたいという理想の建物像を持っていますか?」と尋ねられると答えに窮してしまいます。
 ハウスメーカーがモデルハウスモデルハウスを建てるように「建築の専門家も自分なりの住まいの理想像、発注者から様々な条件がつけられなければいつか建ててみたい家を持っているのではないか?」という推察をされても仕方がないと思うのですが、私の場合『住まいの理想像』といったものがある訳ではありません。
 住まいは設計する人・工事する人の理想像を実現するために作るものではなく、限られた敷地に限られた予算で家を建てる人の現在と将来のより良い生活を保証するものでなければならないと考えています。

 建築設計をするものにとって、出来上がった設計は注文に対するひとつの解決策としての意味を持っています。注文者から与えられた課題を適切に解決し、快適な暮らしを実現できて設計ははじめて意味を持ちます。
 私達が持っているものはバラバラに分かれた部品としての建物の構成要素です。

 居間・寝室・厨房・階段などの空間、構造材・断熱材・サッシ・ドアなどの建築材料、そして空間や建築材料を組立ててひとつの建物に作り上げる設計技術が頭のポケットの中に収められています。
 ポケットに断熱に関するデータをどれだけ持っているかを別にすれば、多くの同業者も私と同じような考え方で設計していると思います。

 家を建てそこに住もうとする家族が「設計条件」を整理してくれる訳ではありません。本人や家族が作った間取り図をもとに様々な話をします。私にとってこの雑談とも思える話(ヒアリング)が重要で、これがなければ家族がどんな暮らしをしようとしているのかを理解することができません。
 ヒアリングが終るとはじめの間取り図が描かれた理由を考えながら、より使い勝手の良い間取りと建物全体のデザインを考えて行きます。構造計画や断熱計画建物全体の形などを考えながら、ポケットの中から取り出し組立てる素材を選んで行きます。

 話が横道にそれてしまいました。設計手法についてお話するつもりはありませんでした。
 マンションディベロッパーやハウスメーカーは「大多数の家族に受け入れられる『理想の住まい』が存在する」という前提で仕事を進めているように思います。これに対して個人住宅設計者は「異なる生活をしている家族に押し付けられる『理想の住まい』は存在しない」という立場に立っているようです。

 ふたつの立場は矛盾するようですが実はそれほど矛盾するものではありません。
 大半のビジネススーツが既製品として売られ、高級紳士服はオーダーメイドで作られるように、マンションや数十坪の敷地に容積率・建蔽率を守りながら建てられる住宅はどんなに工夫しても限られたバリエーションに納まってしまいますが、少し敷地が広くなったり床面積が大きくなったりするとバリエーションの変化が可能になります。

 振り返って見ると2005年の今、私はオーダーメイドの服を造るように断熱の良い建物作りに取り組んでいます。数年経ち、RC外断熱など断熱性能の高い住宅が普及するとモデルハウスとしてプロトタイプを示さなければならない時期が必ず来るでしょう。
 でも、そのモデルハウスは私の理想の建物ではなく、一般的な設計条件の解決策に過ぎません。


臨時特集 総選挙に思う 2005年 9月
 参議院での郵政民営化法案の否決を受けて行われた総選挙は自民党の圧勝に終った。
 この選挙は「郵政選挙」、「劇場(劇画)型選挙」、「国民投票型選挙」などと呼ばれ、過去なかったほど具体的政策課題が表面に出た選挙だった。

 「具体的政策課題が表面に出た選挙だった」と言うのは間違いで、「郵政民営化を前面に出して戦った」小泉自民党に対して「今の政策課題は『郵政民営化』だけではない!」と年金をはじめとする幅広い政策課題を争点にしようとした岡田民主党が惨敗した選挙だったと言うことができる。
 民主党は基本的に郵政民営化賛成と見られていたが、衆参両院の審議を通じて独自の民営化路線を明確に示すことができなかったように見られていたうえ、選挙戦を通じて「全逓など支持労組を配慮して抜本的改革案を提起できない」とのレッテルを貼られてしまったことが自民党の歴史的躍進を許すこととなった。

 結果論になるが幅広い政策課題を争点にするにしても小泉−竹中ラインによる『郵政民営化法案』の問題を示し、なぜ国会に提出された民営化法案に反対したのかを明らかにすることがこの選挙を有利に戦う前提だった筈だ。

 郵政民営化を建築の断熱に例えれば、「内(官)から外(民)へ」という原則論は間違っていない。しかし、断熱材を「内から外に」移動しさえすればいいかと言うとそれほど単純ではない。使用する断熱材の種類と厚さ、サッシの性能、ヒートブリッジの処理方法など建物を建てる地域の気候条件によって異なる対処が必要になる。

 選挙戦終盤に一部のマスコミで語られた郵貯資金の運用方法に関する危惧も郵政民営化の陰に隠れた問題のように見える。アメリカ財務省は「3兆$(340兆円)の郵貯資金が米国債の受け皿になる」と歓迎していると言われるが、「大量の資金が一極集中的にドルに向かえばかつて経験したように再びドル安によって国民の財産が失われかねない」という指摘にも説得力がある。
 国民の資産を保全するために資金運用先がヨーロッパ、アメリカ、アジアなどに適切に分散されるような保証も必要になるだろう。

 戦後60年の日本の政治は大型タンカーのように、「急に止まれない」、「急に舵を切れない」ものと思われてきた。しかし、今度の総選挙は小選挙区制に基盤を置く議会の大勢がちょっとした「風」によって「嵐」が吹いたように景色を変えることを示した。
 近代の「選挙による政治体制の変化」は時としてドラスティックに進むことがある。国家社会主義ドイツ労働者党が世界恐慌化の行き詰まった経済状況下で現状打破を唱え、巧みな宣伝によって従来の政党に失望した中産階級の支持を得て躍進、数回の選挙を経て議会の圧倒的多数を獲得して独裁体制を確立するまで歴史にブレーキは掛からなかった。

 選挙結果がドラスティックに変化する仕組み自体悪いものとは言えない。変化する社会に政治が変わるために私達はこの仕組みを作った。振り子のように選挙結果が変化して政権交代が可能になるには現実的な感覚を持った健全な二大勢力が存在する必要があることは言うまでもありません。


特集11 外断熱工法のコスト 2005年 8月

 「外断熱工法はいいものだ。だけど高いのが玉に瑕だ」 

 世間の外断熱工法に関する一般的認識を一言で言えば「良い、しかし高い」の一言に尽きるようです。
 このサイトでの説明も「外断熱は高い」という前提に切り込むことなく、「高いとしてもそれ以上の価値がある」と説明することに力をいれていました。 
 外断熱工法の家を建てる方、買う方も、「良い物を手に入れるのだから、少しくらい高いのは仕方がない」と考えられていると思います。 

 しかし、本当に外断熱はコストの掛かるものなのでしょうか? 将来、いつまでも「外断熱は高い」と言われ続けるのでしょうか? 
 ドイツで聞いた話では湿式外断熱工法のコストはm2あたり80〜120ユーロですが、日本で同じ物を施工すると25,000円と2〜3倍のコストになります。 
 多くの外断熱建築で使われている樹脂サッシもヨーロッパではアルミサッシの半額ほどで手に入りますが、日本では樹脂サッシはアルミサッシの2倍程度の価格になります。 

 アルミサッシと樹脂サッシの素材、つまりアルミ地金と塩化ビニルの素材の価格を比べるとアルミの35万円/tに対して塩ビは20万円/tほどで、同じ面積のサッシを作るのに必要な素材の重さはアルミのほうが多いということですから、樹脂サッシの価格は量産効果が反映する前の過渡期にあるといえるでしょう。
 高い鋳型を作り工場を動かしてもフル操業できなければ稼働率が価格に反映するわけです。

 ヨーロッパの湿式外断熱工法のコストも現場に大型プラントを持ち込み、高い作業効率で施工して実現されているものです。狭い日本の工事現場でコストダウンを実現するにはもっとコンパクトな施工装置が必要になります。

 外断熱工事のマーケットで少ない外断熱工法が分け合っている今は「外断熱は高い」という「常識」が通っていますが、外断熱マーケットが広がるにつれて「外断熱は良い、しかも安い」と言われるようになる筈です。

 「商品ライフサイクル」という言葉をご存知でしょうか?
 どんな商品も新製品として市場に紹介されるときの価格は高く、どうしても欲しい人しか買えない価格が付けられています。シェアが拡大するにしたがって価格が下がり、更にシェアを増やします。
 古くは自動車、テレビ、エアコンが、最近ではパソコンや携帯電話がそのように普及の道を辿りました。
 RC外断熱工法の建築物の普及の速度がどれくらいの速さかは判りませんが、同じように価格破壊が進むことは間違いないでしょう。

 さあ、そこで今が思案のときです。あなたは今外断熱工法の建物を手に入れますか? それとも次の建替え・買い替えのときまで先に延ばしますか? 


特集10 断熱論議 2005年 7月

 このホームページをご覧戴いた方から、日本の建築では大部分のRC造の建物が内断熱工法で断熱されていることに関して、「日本でもどういう断熱が良いのかきちんと議論する必要があると思う」といったお便りを戴くことがあります。 

 このホームページをご覧になって、表記のような感想を持たれることはそれなりに理解できますが、数年間に渡ってこの問題と取り組んできた私にしてみれば、「今さら何を議論する必要があるのだろうか?」と思わず考えてしまいます。 

 議論をするまでもなく、断熱性能や居住性能に関する比較は既に明白になっていて、議論すべきことを探すのに苦労するほどです。 

 室内温度の変化が小さいのは外断熱工法で、大きいのは内断熱工法。
 空調エネルギーを多量に消費するのは内断熱工法で、省エネに貢献するのは外断熱工法。 
 工事費が余分に必要になるのは外断熱工法で、工事費が安いのは内断熱工法。しかし、内断熱工法では工事費が安くてもランニングコストが嵩み、耐用年数も短いのでトータルに経済的とは言えない。 

 「RC建築物の断熱に外断熱工法と内断熱工法のどちらが良いか議論してみよう」と言うのは、ちょうど「煙草が 健康に良いか悪いかを議論してみよう」と言うのと同じように既に科学的に結論づけられた物事に論議を蒸し返すこ とにほかなりません。 

 ちょうど、煙草がやめられない私のようなスモーカーが、「煙草に百害があるとしても、多少の利はあるはずだ」と理屈を並べるように、「内断熱工法をやめられない理由を免罪符のように並べること」がその議論の中身になるで しょう。 


 そんなわけで、私は「断熱工法に関して必要な議論は既に出尽くしている」と考えています。皆様から内断熱工法と外断熱工法に関してデータのご希望があれば手持の範囲で資料を提供することはできますが、私にとって断熱工法は議論の対象ではなくなっています。 



特集9 熱の移動と温度の分布 2005年 5月

 4月末からのいわゆるゴールデンウイークの大半を新しいコンテンツ「内断熱工法と外断熱工法」を書き上げるた めに使いました。

 皆さんがお読みくださるときには数十分もあれば何が書かれているかお判りだと思いますが、たったこれだけのも のでも、書き上げるには試行錯誤も含めて相当の時間が掛かります。 

 時間をかけて計算し、グラフに面白い結果が出て感激したものの計算結果を精査すると間違いがあり落胆したこと もありました。また、これまで固定観念に囚われ見えていなかったものが突然良く理解できたこともありました。 

 何度かご覧になった方の中にはお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、「内断熱工法と外断熱工法」の書き出しにある内外20℃の状態から屋外の温度を5℃に下げた場合の経時的温度変化のグラフは、内断熱工法と外断熱工法との温度変化への追随の仕方の特性を良く表しています。

 ここに現われているのは躯体コンクリートにしっかり蓄熱させ厚い断熱材で包む外断熱工法と、室内の空気や家具に加えてほんの一部の区体にしか蓄熱できない内断熱工法の違いです。 

 内断熱工法のコンクリート躯体は無断熱のコンクリートと同様、外気の温度変化に対してまったく無防備な状態にあることは自明ですから、あえて補足説明をする必要はないでしょう。 

 もうひとつ内断熱工法の持つ問題に対する認識を新たにしたのは、「定常分析」と呼ばれる温度−水蒸気圧(露点温度)分布から結露の有無を検討する手法についてです。
 下左の図で画面の中央付近に温度と露点温度(1次)の線に囲まれた三角形ができ、結露があることを示しています。これまでは「ほら、結露がある」と納得してしまっていましたが、実際の結露の現場を見るとこの図から説明で きる結露量があると思われる事例が数多くあります。 
 これは下右のように非暖房室では暖房室よりはるかに室温が低く、断熱材の表面や石こうボードの中、更に室温が下がればクロス表面にも結露が起きると考えることで理解できます。 
 内断熱工法では非暖房室の室温が蓄熱しないコンクリート温度つまり外気温度に近付く性質があることは、上の説明のとおりです。 


 今回の検討の中で空振りに終ったアイデアもひとつご紹介しておきましょう。それは断熱材の密度が温度変化に影響するのではないかと言う仮定です。 
 熱伝導率が同じで密度が異なる断熱材の内部に凾狽フ温度差があると温度差と熱伝導率に比例した同じ熱エネルギーが移動します。熱を受け取った部分の温度は重量と比熱に反比例して上昇しますから、「密度の大きい断熱材を使うほど温度の伝達速度が遅くなるのではないか?」と考えたのですが有意差は認められませんでした。



特集8 布団とカーテン 2005年 4月

 皆さん、おやすみになるときはきっと布団を掛けておやすみですよね? カーテンのように薄い布切れを掛けて寝たのでは寒くて眠れない筈です。 

 「何を突然に?」と言われそうな書き出しになりました。 
 良い断熱と不充分な断熱をどう比較できるかと考えていて、数日前に思いついたのが「布団とカーテン」の例えです。 

 ドイツや北欧の建築物の断熱は木造の充填断熱でもコンクリートの(日本で言うところの)外断熱でも10〜15cmの断熱材を使っています。木造の充填断熱で壁厚の半分しか断熱していない例はありませんし、バルコニーのヒートブリッジにも熱損失を最小限にくい止める工夫があります。これは何も彼らが良心的に断熱性能の高い建物を立てているということではありません。 

 ヨーロッパの厳しいエネルギー節減政策に合致させるにはこの程度の断熱が必要だということもありますが、断熱の良い建物ではエネルギーを浪費せずに快適な生活ができ、長い目で見れば結局安くつくことが理解されているのでしょう。 

 ヨーロッパの建物を見た後で日本の建築断熱を改めて振り返ると、日本の断熱はカーテンのような断熱であることが見えてきます。 
 壁との間に対流の起きる空気を残し、厚さも充分でないまるで壁の中にカーテンを仕込んだような断熱では建物を有効に断熱し、快適な暮らしを保証することはできません。 
 このサイトではかなり前から「日本の家は世界で一番寒い」と言ってきましたが、その寒さは本来「布団」のような断熱材を使わなければならないところを「カーテン」のような断熱材で代用していることの当然の帰結です。 

 「断熱とライフスタイル」でご紹介しているように「布団」で断熱した家は暖かいので冬でも夏と同じようにタオルケット1枚で休むことができます。「カーテン」で断熱した家は断熱性能が不足するので体温維持のために服や布団を季節に合わせて取り替える必要があります。 

 「冬でもタオルケット1枚で眠れる家は夏には恐ろしいほど厚くなり、汗を流しながら寝るしかないのでは?」とご心配な向きもあるかと思いますが、心配は要りません。断熱の良い家は外気温度の影響を受けにくく、冷房も良く効きます。さらに小屋裏など高いところに換気窓をつければ夜の涼しくなった外気を取り入れることも難しいことではありません。


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