0-4-2 特集バックナンバー(1/3)
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特集21 省エネルギーに王道はない 2006年 11月
 展示会などに出掛けると面白いものを目にすることがあります。今回のお話も展示会で見かけたものがきっかけです。

 今回見かけたものは蛍光灯に取りつける反射板です。

 プラスティック製の鏡でできた反射板を蛍光灯に取り付けるだけで蛍光灯からの照度を60%から 100%増加させるというアイデア商品、帰ってからインターネットで調べてみると数社からよく似た製品が発売されています。

http://www.mmm.co.jp/cmd/ecp/newlux/index.html
http://www.higasi-osaka.com/nissin/cut1.htm
http://www.iwork.jp/sun/

 器具にカバーが着いた照明器具や家庭用のサークライン蛍光灯用には使えないかもしれませんが、学校の教室やオフィスなどでは充分に省エネの役に立ちそうです。

 40W用で毎日8時間・1年間使って節約額は1300円あまり、定価では6年以上使わないと元が取れない計算ですが、新たに照明器具を取り付ける費用などを考えれば確かに費用節減効果は大きくなります。

 これからの省エネルギーは確かに小さい努力の積み重ねになるという実感があります。
 土壇場の逆転満塁ホームランのような劇的な省エネはありえません。
 住宅の空調エネルギーの削減にしても断熱性能を高め、僅かな地中熱を取り入れ、太陽熱温水器や太陽光発電機、さらに将来は風力発電機を使うことも視野に入れるといった進め方になるでしょう。
 太陽光発電機の問題点は今の電気料金と設備の設置費を比較すると電気の発電コストが電力会社から買うよりも高くなること、風力発電では発電機が発生する音や、一度風が止まったあと再び風車を回すシステムの問題があるようです。

 蛍光灯用反射板は40W用で1時間当たり40銭ほどの省エネにしかなりませんが小さな省エネの積み上げが「一般の住宅に比べて○○%エネルギー消費が少ない」という違いに結びついていきます。

 次のような言葉を肝に銘じては如何でしょうか?

 エネルギー使いやすく、省エネなりがたし。
 一瞬のエネルギー浪費軽んずべからず。



特集20 断熱のしすぎはあるか? 2006年 10月

 多分、ヨーロッパやカナダなどの寒冷地には「断熱のしすぎ」という考え方はないと思い
ます。どんなに断熱しても熱は温度の高いところから低いところに向かって流れていきま
す。

 暖房シーズンは室内から屋外に向かって熱が流れ、その熱の流れる量だけ熱エネルギーを
補充する必要があります。断熱するほど失われる熱が少なくなるので、暖房に限れば断熱し
すぎて暖房エネルギーが多く必要になることはありません。

 しかし、冷房中の熱の流れはもう少し複雑になります。

 冷房が必要になるのは屋外から屋内に熱が流れ込むからです。同時に室内では照明器具や
電気製品人体などから、熱を発生しているので外から流れ込む熱と内部で発生する熱をあわ
せた負荷に対し冷房をかける必要があります。

 ここで、外部から室内に流れ込む熱は良い断熱をするほど小さくなりますが、断熱性能を
高めていくと内部で発生する熱は屋外に排出されなくなり、無限大の厚さで断熱したとすれ
ば冬でも内部発熱と等しい冷房が必要になります。

 そんな極端な断熱をすることは不可能ですが、次のグラフに示すように冷房負荷はQ値が
一定の数値を下回ると増加するようになります。


 普通に言う空調負荷は緑色で示したもので、熱交換換気をすると却って空調負荷が増大す
るなど、常識と違った変化があります。


 戸建住宅ではなかなか1を切るようなQ値を出すことは難しいですが、下のグラフのよう
に集合住宅の住戸では1以下のQ値を出すこともそれほど難しくありません。

 このことが地域の環境条件やここの家庭の内部発熱量によっては空調エネルギー消費量を
却って増加させることになることがあることを忘れてはなりません。



 最近、プラズマテレビなど家電製品の消費電力が増加する傾向があり、断熱性能と空調消
費エネルギーの関係についてより細かく検討をする必要が高まっているように感じます。



特集19 省エネを考える 2006年 10月

 ここ暫く、メールマガジンでも新しく更新した記事でもマンネリ気味になるほど省エネのことばかり書いています。
 食傷気味に感じていらっしゃる方もあるかもしれませんがお許しください。


省エネに限りなし
 クールビズを着て冷房温度を上げること、ウォームビズを着て暖房温度を下げることが省エネだと思っている人がこの国にはまだまだ多いようです。

 大雑把な話をすると断熱性能を2倍にすれば空調エネルギーは2分の1になり、断熱性能を3倍にすれば空調エネルギーは3分の1になります。

 ところで、地熱が16℃として外気温度を70%ほど地温(または地下水温)に近づくように熱交換できれば換気で取り入れる外気を地盤と熱交換するだけで年間暖房では 1600KWH、冷房では600KWHのエネルギーを地熱から得ることができます。
 このエネルギー量はQ値が4以上の建物には「焼け石に水」ほどの小さなものですが、Q値が 1.5ほどの建物になると、暖房エネルギーの30%、冷房エネルギーでは80%近い省エネ効果を示し、Q値が4.5の建物と比較すると空調エネルギーをトータルで80%以上削減します。
 (いずれも東京で、暖房20℃、冷房28℃設定の場合)


 ここまで消費エネルギーを削減すると、必要な空調エネルギーは年間約3500KWH、給湯を含めても7000KWHになり、その約半分は太陽熱利用の温水システムで賄うことが可能です。

 さらに、太陽光発電システムを導入してヒートポンプで給湯すれば、出力ベースで購入エネルギーを6000KWH程度、消費電力量ベースで3000KWH程度まで削減することができます。
 実はここでは照明動力や厨房のエネルギーについては何も省エネ策をとっていません。それでも出力ベースで購入エネルギーを1/5、消費電力ベースで1/4.5になるわけですから、「我慢が美徳」という考え方を強調するのは如何なものでしょうか?

 太陽熱や地熱のようにふんだんにあるエネルギーを活用して快適に暮らすことを忘れ、「我慢する」選択を奨めるのはいかにも知恵がありません。

 すでに造られた建物で暮らすときにある程度の我慢を求められるのは仕方ないとしても、慢しなくてもエネルギーを使わずに快適に暮らせることを知らせるほうがより好ましく思われます。

 「地中熱エネルギーを使う」というと新しい考え方のように聞こえるかもしれませんが、実は昔からある身近なエネルギーです。

 横穴式住居、竪穴式住居は地熱を利用するのに適した形態の建物でした。
 寝殿造り、書院造りよりも古い時代、私たちの祖先は地中熱を身近に使っていたわけです。

 ただ「地熱を使おう」と言っても地熱を活用する機器がまだ充分に揃っているわけではありません。
 ジオヒートポンプ、ヒートパイプなどいくつかの利用可能な技術がありますが最も手軽に使えるものは井戸水と外気とを熱交換するシステムではないでしょうか?

 暫く検討の時間を戴き具体的な提案をしたいと思っています。






 知恵を使うものは快適に暮らし、知恵を使わないものはクールビズ、ウォームビズに身を包んで働く時代になるのでしょうか?


 地熱の利用には、噴出する熱水や水蒸気をそのまま利用する方法と、地中に冷媒を循環させ熱交換して利用する方法、地下に水を流し込んで熱により水蒸気に変化したものを回収する方法などがある。
 日本は火山が多いため、火山のない国と比べると地熱資源に恵まれている。
 八幡平などで地熱発電所が稼動している。

 地熱は二酸化炭素を出さず一年を通して安定した供給が得られるため、次世代のクリーンエネルギーとして注目され、現在効率的な利用について研究・開発が進められている。

 地上と地下の温度差を利用する方法(地中熱)もあり、この場合は地下の温度が特に高くなくても利用できる。



特集18 車と断熱 2006年 7月

  梅雨明けも目前に迫ってきました。 
 鬱陶しい梅雨が明けると夏本番になります。 

 家族揃ってくるまで海や山にお出かけの方もいらっしゃるでしょう。 

 お子様が小さい時期は、親子ともによい思い出作りの機会ですから家族での楽しい夏休み
の 思い出を作ってください。 

 夏、車に乗っているときはエアコンが効いて快適ですが、しばらく車を停めているだけで
車 内は灼熱の環境に変わります。高速道路のサービスエリアで30分ほど休憩しただけでもハ
ンド ルが触れないほど熱くなり、車のキャビンは40℃以上という経験がどなたにもあるでし
ょう。 


車の断熱は内断熱工法に似ている 
 自動車はどうしてあんなにすぐに暑くなり、冷房を入れると急速に涼しくなるのでしょ
う? 

 これまで私は自動車の鉄板の裏側にはウレタン断熱材が吹きつけられているようなイメージ
を持っていましたが、これは間違いだったのではないかと思っています。車の屋根部分は僅か
な暑さの断熱材があるとしても、ドアの鉄板や床の鉄板の内側に断熱材はなく、せいぜいフロ
アマットやドアの内装材が断熱材の仕事を分担していると考えたほうがよさそうです。 

 窓の断熱性能も住宅と比べるとずっと低いものです。大型バスを除けばペアガラスのウイ
ン ドウを持つ車などまずありません。(赤外線を遮断するガラスは出回り始めたようです) 


 今年の2月、BBSに次のような質問を戴きました。
 「はじめまして、北海道の、−10度の、車の内部断熱について、教えてください。
1、最適な断熱材 
2、使うときの注意点 <空気層は、どれくらい必要か?> 
湿度も8−90%になります。よろしくおねがいします。」

 車の断熱と言ってもトレーラーハウスのようなものの断熱を考えていらっしゃるのか、ある
いは乗用車の断熱改修(改造)を考えられていらっしゃるのか判らなかったので追加の質問をさ
せていただき、そのままになっていました。

 しかし、よく考えてみると車の天井やドアなどの部品の中で断熱できる部分は限られていま
す。自動車メーカーで設計時点から断熱設計するのでなければあとで変更すること自体不可能
に近いことかもしれません。

 車が受ける空調負荷のうち最大のものは1m2あたり1KWを超えると言われる太陽輻射熱と 
高温になるエンジンルームからの熱伝導です。加えて窓から差し込む日差しによる空調負荷と
乗り込んだ人の体温による発熱や呼吸による水蒸気の発散があります。



 車のキャビンの床面積を約4m2として、次のような屋根・窓・床・ドア(ガラス以外)・ 
車内の仕切りの面積があると考えQ値を計算すると、20近い値になってしまいます。
部分   面積(S)   K値   S×K 
屋根
4.0
4.0
16.0
2.0
7.0
14.0
床 
4.0
7.0
28.0
ドア
2.4
5.0
12.0
仕切り1
1.2
1.0
1.2
仕切り2
1.2
3.0
3.6
合計 
 
74.8
Q値
74.8/4=
18.7


 普通の住宅に比べて4倍のQ値を持つうえに、4KW近い輻射エネルギーを受ける訳ですから
自動車のエアコンが住宅用に比べて大きな能力を持たなければならないわけです。

 自動車には熱容量がほとんどありません。できるだけ軽く作り燃費性能を上げることが自動
車つくりの使命ですから、熱容量を大きくするために自重を増やすと言った選択は許されてい
ません。

 私の目から見れば、乗用車の断熱性能をもう少し向上させる可能性はあると思いますが、そ
れが経済的なものになるかは判りません。

 ここではっきり言えることは、自動車の断熱、従来の住宅の断熱工法、木造やRCを含む高
断熱住宅のQ値と熱容量を比較すると同じような比率の関係があります。





 自動車のようにすぐ暑くなる家は、冬にはすぐ寒くなる家です。住まいの断熱は屋外の環境
が変化してもその影響を受けにくいものにしなければ快適な暮らしを実現することはできませ
ん。

 車を買うときにしばらく駐車しておいてもキャビンが暑くならない車を探すことは難しいか
もしれませんが、空調を切って外出して帰宅後に暑くない家を造ることはそれほど難しいこと
ではありません。


特集17 フローとストック 2006年 6月
また梅雨の季節がやってきました。 
 今回の特集で扱う問題は前回の特集と同じものです。と言いながら視点が変わっています。
 皆様の中には、まったく別の問題ではないかと感じられる方がいらっしゃるかもしれませ 
ん。
 ブログにも書いておいたのでご覧の方は、「また同じ文章を!」と思われるでしょうか? 
 平成8年の建設白書は次のように住宅ストックの形成の必要性を述べました。 
(住宅ストックの量及び活用状況比較) 
 欧米においては、成熟社会になる前に豊富な資金・資本蓄積等の経済力を利用して良好な住 宅ストックを形成したのであり、経済活力が相対的に低下した現在では住宅の新設に頼ってい ない状況にある。
 日本の住宅も1人当たりの住宅数では欧米の状況に追い付いたが、借家の規模が欧米に比べ 小さいことなど、依然として課題は多い。 

(住み替えが少ない理由) 
 日本の住宅の寿命は、建築時期別のストック統計から試算してみると、過去5年間に除却さ れたものの平均で約26年、現存住宅の「平均年齢」は約16年と推測されるが、アメリカの 住宅については、「平均寿命」が約44年、「平均年齢」が約23年、イギリスの住宅につい ては、「平均寿命」が約75年、「平均年齢」が約48年と推測され、日本の住宅のライフサ イクルは非常に短いものとなっている。

 ここに書かれた年数はTOPICSでご紹介した住宅情報2004年5月12日号の特集「マンションって
結局何年住める」とは大きくかけ離れています。 
 住宅情報の数字も平成8年建設白書よりと書かれていますが、「日本のマンションにひそむ
史上最大のミステーク」が間違えたものを引用したのではないかと推量しています。 

 ここで指摘されている問題は次の点にあります。

 欧米は成熟社会になる前に良好な住宅ストックを形成し、社会的住宅ストックを形成した。
 現代では住宅供給の主役は新築ではない。

 日本では一人当たり住宅数は欧米並みになったが、狭い家を頻繁に建て替えてストック形成
が進まない。


背景にあるものは社会制度
 欧米でも新築住宅が建てられていないわけではありません。土地価格が日本ほど高くはない
としても、欧米の建設費が特別安いわけでもありません。
 それでも、日本に比べてはるかに耐久性の高い建物が建てられ、営々と維持されています。
結婚してスウェーデンで暮らしている日本人女性に「スウェーデンの人たちは住宅の耐用年数
をどれくらいと考えているんですか?」と尋ねたところ、「永久に持つとは思っていないとし
ても、100年くらいで駄目になるとは誰も思っていないようね!」と言う返事が返ってきま
した。 
 「それだけ長い耐用年数があるのなら、住宅ローンは何年くらい借りられるんでしょう?」
と続けると、「50年くらいは借りられるようですよ。建物を担保にしていれば貸した側には
リスクがないから」と言う返事。 
 建物が100年程度は普通に使われる社会ではローンの返済期間を35年に限る理由もない
わけです。 

 日本の伝統的な建築工法の軸組工法は多くの職人技を必要とする建築技術の集大成です。大
工・左官を頂点とする多くの技術が家造りを支えていました。 

 「家の仕事は職人がすることなので、素人が手を出すものではない」欧米人がDIYでペン
キ塗りや屋根の修理など家の手入れを趣味のように楽しむのに比べて、日本人は家ができるま
では注文をつけても、修理や改善に自分の力を使わない傾向があります。 

 その結果、欧米では建物は完成後20〜30年経ち、細かい手直しが加えられ、住み慣らさ
れた段階で建物の値打ちが最も高く評価されるようですが、日本の住宅は新車で買う自動車と
同じように新築・未使用のものが一番高く、一旦登記されると1〜2割価格が下がるなどと言
われています。 


脱スクラップ&ビルドを目指して

 私たちがこれまでと同じような住まいの造り方・住まい方を続けるとしたらどういうことに
なるのでしょうか?

 スクラップ&ビルドを繰り返す社会は売上高の割に自己資本が少なく資本の回転率に依存し
ている企業のイメージに重なります。優良な住宅ストックを持ち、子供、孫の世代に引き継ぐ
社会は売上高に比べて大きな資本蓄積を持つ成熟企業のイメージと共通するものがありま
す。 

 私たちが、自分の老後や子供・孫の世代を考えるとき、売上高の水準を維持しなければ倒れ
てしまう自転車操業型・フロー中心の道を目指すのか、大きなストックに裏打ちされた蓄積を
持つ道を目指すのかという分岐点が目の前にあります。

 フローの道は高齢化社会に入って福祉・介護などサービス業のニーズやハイテク技術など
先 端産業への就労シフトが続くなかで、建設業が就労構造の足かせになる恐れを感じさせま
す。

 建設業は一時就労者の20%近くを雇用した産業ですが、自動車・コンピュータと雇用のウエ
イトは新規産業に移動しています。出生率が1に近づいている社会は、建設業のパイの拡大を
必要としているわけではありません。 

 私たちは家を建てるときに、「人生に1〜2回家を建てるライフスタイルを目指すのか、2
〜3世代に一度家を建てるライフスタイルを目指すのか」という選択の機会に直面していま 
す。
 この機会は、「古くなっても住める家、貸せる家、売れる家を建てるのか? それとも数十
年で解体費を使って処分しなければならなくなる廃棄物予備軍を作るか?」という判断を迫っ
ています。 


特集16 経済性の比較・何を比べるか?! 2006年4月

 しばらく特集の更新をしていませんでした。 
 外断熱工法と内断熱工法のコスト比較というと一つ前の特集のように先ず空調コストの比
較 を思いつきます。もうひとつ建設コストの比較があるのですが、きちんと断熱した外断熱
工法 の建物の建設費は内断熱工法や無断熱の建物に比べて割高になるため、無意識的に正面
からの 比較を避けていたかもしれません。 

 建設費の比較にはいろいろと難しいものがあります。
 コンクリートの建物といっても建物外部の仕上げ方法は様々なものがあります。
 それぞれの断熱工法によって、内装や外装の考え方に違いがありますから、内部・外部の
仕 上を同じ条件で建設費を比較することが出来ないこともあります。

 例えば、内断熱工法の建物では一般に外部にタイルを張り、内部はプラスターボードなど
の 下地を張って内装しますが、外断熱工法の建物では湿式工法では断熱材にモルタル系の仕
上材 を塗ることが、乾式工法ではボード系の外装材を張ることが一般的です。

 内断熱工法でも、見掛けの重厚さを求めて外装にタイルを使うことは必ずしも良いことで
は ありません。

 分譲マンションの大規模修繕工事に大きな費用がかかる原因のひとつには、タイルに隠さ
れ た構造体のクラックを点検するための費用が大きいことをいつも指摘しています。

 屋根防水層が内部結露による膨れることは多くの建築関係者が知っています。低温になる
建 物外側にタイルや防水層のような透湿抵抗の大きな材料を使うことは建物に問題を招く種
を蒔 いているのです。


 理屈に叶わない建物を造ると多額の修繕費が掛かったり耐用年数が短くなったりと、せっ
か く造った建物を充分に使いこなす前に建物の使用価値が失われることになります。


 これまで何度も日本では住宅を初めとする建築物の耐用年数が短く、欧米先進国の数分の
1 ほどの短い期間が経過すると建て替えられていることをご紹介してきました。
 この短い期間で建物が建て替えられる理由のうち最大のものが結露や雨水が原因となる湿
気 と温度変化による伸縮によるクラックで、前者はすべての建物の、後者はRCなどの建物
の劣 化を促進する原因になっています。


比べる基準は建設費/耐用年数 

 空調費を見ると外断熱工法と内断熱工法の建物の毎年の費用の差は一般的な住宅1軒当た
り 8万円程度に、また建築工事費の差は440万円程度になります。
 空調費の差額が建築費の差額を取り戻すには55年かかる計算ですから、これまでの日本
人 の感覚では「建物が壊れるまでに取り戻せない無駄な投資」になるかもしれません。

 空調費を比べても、数百万円の建設費の差額に比べると僅かなものでしかありません。
「空 調費が安くなる」と言われても「なるほど!」という実感に乏しいでしょう。

 しかし、1〜2割安いと見える内断熱工法の建物の建築工事費も耐用年数で考えると極め
て 割高なものです。

 断熱方法によって建物の耐用年数が変わると考えると建築工事費の意味が変わってきます。
 例えば「24,600,000円で建てた40年程度経てば建て替えなければならない建物と29,000,
000 円で建てた 100年は使える建物の空調費が年間8万円違う」と考えたとき、どちらがどれ
だけ 得になるでしょうか?

 前者では建物の定額償却費が615,000円後者では290,000円になります。 

  24,600,000円/ 40年=615,000円/年
  29,000,000円/100年=290,000円/年

 これだけで毎年325,000円の違いがあるうえに空調費が80,000円違いますから、年間400,
000 円以上のコストの差があります。

 実質的な建物の償却費が32万円以上も安くなることから目をそらして、 8万円の違いしか
な い空調費が建築費の差額を何年で取り返せるかと考えても賢明な選択は出来ません。 

 それではどうして実質的に割高な内断熱工法の建物が建てられ続けていて、外断熱工法の
建 物が増えてこないのでしょうか?
 外断熱工法の建物の耐用年数に比べて住宅ローンの返済期間が短いことがその原因になっ
て いると思います。

 住宅ローンの返済期間は最長35年でそれ以上のものはありませんから、外断熱工法の建
物 を建てても内断熱工法と同じ期間で返済しなければなりません。
 15%ほど高い建物を建てると住宅ローンの返済額も15%ほど大きくなります。年間に支払
う 空調費が少なくなる分、空調費を含む総額の差は半分ほどに減りますが建ててから返済を
終わ るまで若干負担増があります。

 返済を終わったあと、60〜70年にわたってローン負担のない時期が来るのですが、自分の
老 後か後継者の時代になるか判らない将来の負担の少なさよりも目先の負担の方が重大な意
味を 持つと思ってしまうのでしょう。

 次の図は元利金等返済額を償却費とみなしたものです。

 35年の返済期間だと返済額と空調費を足した合計は僅かながら外断熱工法のほうが高くな
っ ています。
 耐久性の高い建物について10年か15年借入期間が長くなれば実質的な負担はまったく変わ
ら なくなります。

 さらに、空調費は一定額で変動しないように書かれていますが、最近の原油価格上昇に見
ら れるようにエネルギー費は長期的に上昇しています。燃料電池用の水素価格は今のガソリ
ン価 格の3倍になるとの試算もされているようです。

 やや乱暴な考え方ですが、物価上昇率が金利水準とほぼ同じなら、上の金利を考えない償
却 費と空調費で考えた総合バランスが成り立つと考えてもいいでしょう。

 高齢化社会を迎える今、家造りが「一世一代の仕事」にとどまっていては豊かな時代を作
る ことは出来ません。 ヨーロッパの高級住宅地には建てられた時代を物語る様々な様式の
建物が並んで、町が住宅 博物館のような景色を示しています。 


ドイツ・シュトゥットガルトの住宅地


 良質で快適な住宅を含む資産ストックを親から子へ、子から孫へと引き継ぐことで本当に
豊 かな暮らしを伝えていくことが可能になります。 



特集15 もっと快適に、もっと経済的に! 2006年1月

  今回の特集は先ずお詫びから始めます。

 外断熱工法と内断熱工法の空調コストを比較する場合、これまで何の疑問もなくどちらも
同 じ温度設定で消費するエネルギーの大きさを比べ、そしてエネルギーコストを比較してき
まし た。

 現に今でもそういうページがこのサイトの中にたくさんあります。

 しかし、外断熱工法の室温分布と内断熱工法の室温分布は明らかに違うものです。

 例えば、床と天井の中間・つまり床上1.2mあたりの温度を基準にして20℃で暖房して
い るとき、外断熱工法の建物では天井も床もほとんど同じ温度ですが、内断熱工法の建物で
は床 免の温度は17.5℃天井付近の温度は22.5℃程度になっています。

 「頭寒足熱が快適」といいますが内断熱工法の建物ではまさに「頭熱足寒」状態になって
し まい、足元の温度を外断熱工法の建物と同じにするには天井付近の温度が25℃を越すとし
ても 外断熱工法の建物より3℃ほど暖房温度を高めに設定しなければなりません。

 暖房温度を3℃高めに設定すれば同じように快適になるかといえば、そうでもありませ
ん。 頭はのぼせ上半身は汗をかくような不快感があります。

 よく、「冷房も暖房も好きじゃない」という声を聞きますが、室内の不自然な温度差に体
が 拒否反応を示しているのかもしれません。空調を切れば室内の温度差は少なくなります。

 朝起きたときにでも、床と天井の温度を放射温度計で測ってみてください。床と天井の温
度 差はほとんどない筈です。

 (別に宣伝するつもりはありませんが、放射温度計は家の環境を知るために便利なもので 
す。建築の計画を思い立たれたらお求めになっては如何でしょうか? キッチンでも油の温
度 を測るなど便利に使えます。)

 足元の寒さの解決策として日本で大評判なのが床暖房です。この床暖房、稼動させると床
面 の温度が30℃以上にあがります。「床が冷たい」問題は解消されますが、夏の冷房よりも
床の 温度を高く保って快適なのでしょうか?

 「床暖房は(床が暖まるまでの)補助的な暖房手段であり、床暖房だけで暖房を計画する
の は良くない」といった解説を目にすることもあります。床下の温度は10℃前後しかありま
せん から、床暖房で床の温度を30℃にすれば、床面からの熱損失は(30-10)/(17.5-10)と
2.6倍 も大きくなります。

 居住性を同じにして外断熱工法と内断熱工法の空調コストを比較すること自体不可能なこ
と ですが、ほぼ似た条件で比較するとすれば外断熱工法と内断熱工法の空調温度を2〜3℃
変え て比べてみるのが適当なのかもしれません。

 エネルギー消費統計によれば家の中では空調や給湯に使われるエネルギーを除いても照明
や 動力などで年間12,000MJ(時間あたり470W程)のエネルギーが使われています。

 このエネルギーによる発熱を含めて空貯負荷を計算すると東京に建つ床面積120m2の住宅
を冷暖房するときに必要なエネルギーは次のようになります。 

内断熱工法 外断熱工法
暖房
温度
エネルギー
KWH
18
16139
19
18728
20
21476
21
24427
冷房
温度
エネルギー
KWH
28
795
27
1442
26
2300
25
3387
暖房
温度
エネルギー
KWH
18
3442
19
4075
20
5569
21
6451
冷房
温度
エネルギー
KWH
28
468
27
822
26
1251
25
1475

 同じ暖房温度にしたとき、外断熱工法の建物の暖房エネルギーは内断熱工法の建物の20〜
25%になります。内断熱工法では床の温度が外断熱工法よりも2℃ほど低くなりますから、外
断熱工法の建物の暖房温度を内断熱工法の建物より2℃低く設定しても体感温度に差はないと
考えれば外断熱工法の建物の暖房エネルギーは内断熱工法の建物の16%で済みます。

 冷房エネルギーは同じ温度設定にすれば2倍程度の差がありますが、設定温度に2℃差をつ
けると4〜5倍の差に拡大します。 

 外断熱工法の消費エネルギーが内断熱工法の4〜6分の1と小さいことはもう一つのメリ
ッ トがあります。エコキュートなど非妻に比べて60%以上安い深夜電力を使った消費電力2
KW程 度の蓄熱型ヒートポンプ熱源でほとんどの空調エネルギーを賄えば、4〜6分の1のエ
ネルギ ーを1割程度のコストで購入することができるようになります。

 内断熱工法でも理屈では数台のエコキュートを並べれば空調コストを半分程度に減らすこ
と はできますが、消費電力8KWのヒートポンプ設備のコストと置き場所の確保のために実現
できないことが多いでしょう。



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