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特集7 地球温暖化防止条約 2005年 3月
先月、京都議定書が地球温暖化防止条約として発効しました。これにより、日本は2008年から2013年の間、二酸化炭素の排出量を1990年に比べて6%削減する責任を負ったことになります。
6%の削減と言っても、今の排出量は基準年度より8%増加しています。単純計算で14%、現在の排出量を基準にすると11.1%の排出量削減が必要になります。
EU諸国は8%のCO2排出量削減の責任を引き受け、その実現に向かっています。彼らは京都会議の開かれた1998年暮から9年がかりで対策を進めていますから、年率 0.9%で削減すれば目標を達成できます。日本では11.1%の削減を2008年までの3年でしなければならない訳ですから、年率3.7%とヨーロッパの4倍以上のスピードで二酸化炭素排出量を削減しなければなりません。
二酸化炭素排出量は統計的に産業部門によるもの、民生部門によるもの、運輸部門によるものに分けられます。民生部門におけるEU諸国やカナダの排出量削減対策の特徴は住宅の断熱性能の向上による空調エネルギーの削減です。ドイツでは新築住宅の年間空調エネルギーは一律に70KWH/m2と日本の次世代省エネ基準の約半分の水準に制限されています。融資や税制で優遇を受けられるものは年間空調エネルギーが20KWH/m2以下の超低エネルギー住宅と呼ばれるものです。
さらに、既存の住宅でも断熱改修が進められていて、新築住宅ほどの断熱性能を持つわけではありませんが従来の半分以下のエネルギーで空調できるように改善が進められています。
通商産業省と建設省は「住宅に掛かるエネルギー使用の合理化に関する建築主の判断の基準」という告示を出しています。いわば「次世代省エネルギー基準の奨め」といったものですが、断熱性能の向上は建築費の増大に繋がるので実際にこれを採用するかどうかは「建築主の判断に委ねる」という姿勢です。
日本で断熱を考える場合、住宅金融公庫の融資を受けるかどうかで断熱性能の水準が規定されています。さらにその上に「環境共生住宅」「省エネルギー住宅」といった規定があり、「これらの規定の定める断熱性能のどれを採用するか?」と考えることが多いのではないでしょうか?
しかし、「断熱性能をどのレベルにするか」、「どんな空調をするか?」、つまり断熱性能と空調システムの最適な組み合わせは、「公庫の定めるいくつかの断熱性能の中から最適なものを選べばいい」という単純なものではありません。
最近会う人にこんな話をします。
−断熱性能を3倍・4倍にすれば空調に必要なエネルギーのコストは3分のT・4分の1に減らせます。しっかり断熱すると工事費が嵩むと言いますが、工事費が嵩むのは外断熱にするためのコストで断熱材を増やすコストは微々たるものです。増加したコストもも毎年の空調費が減るのでローンと空調費を合わせた支払はほとんど増えません
ドイツの気候は日本よりずっと寒いのに、今ドイツで建てられている住宅は日本の次世代省エネ基準の家の半分程度のエネルギーで空調できます。断熱性能が低く寒い家の弊害はヒートショックによる死亡率の高さなど経済的な指標では比べられないものも沢山あります。−
「そんなことは知らなかった。これから建てる家は是非そういうものにすべきだ。」多くの方からそんな感想を戴きます。
京都議定書の目標達成のためにはいささか遅きに失した感はありますが、地球温暖化防止条約の発効は「私達が経済的にも環境負荷の面からも豊かで快適な暮らしを送るためにどうすればいいか」を考える契機になるのではないでしょうか?
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特集6 空調費はいくらなら? 2005年 1月
「高気密・高断熱」、「次世代省エネ基準対応」断熱性能を謳い文句にした様々な高断熱住宅があります。
これらの住宅で快適に暮らすためにどれほどのエネルギーを使用しなければならないか、そのためにどれだけ支出 があるのかは意外と知られていません。
建物が直射日光から受ける輻射熱を正確に計算することが難しい、建物内部で発生する空調以外の熱が家ごとに異 なるなどの理由で、正確に空調エネルギーとその費用を計算することは難しいのですが、大まかな数値は建物の断熱 性能を表すQ値と建物が建つ地域の暖房度日・冷房度日を元に計算することができます。
建物から熱損失で失われるエネルギー=建物のQ値×(暖房度日+冷房度日)×24/1000(KWH)
必要な空調エネルギー=建物から熱損失で失われるエネルギー/使用するエネルギーの単位あたり発熱量/効率
必要な空調エネルギー=必要な空調エネルギー×エネルギー単価 |
この式をあてはめてみると、次世代省エネ基準の建物でも意外と空調のための費用がかかるものだと言う実感があ ります。
例えば、東京で床面積120uの次世代省エネ基準の戸建住宅は年間6160KWHの電力を消費し、22円/KWHの 電力料金としても空調に必要なエネルギー費は 135,500円になります。一般の公庫融資住宅が 11130KWHの電力を 消費し、 244,800円のエネルギー費を必要とするのに比べれば確かに省エネといえないわけではありませんが、それ でもまだ節約したくなる額ではないかと思います。
ひとつの提案として、1年間の空調エネルギー費を10万円以内に抑える、あるいは最も空調エネルギーを使う厳 寒期に一ヶ月の空調エネルギー費を1万円以内に抑えられる断熱性能の家を造ってみたらどうでしょうか?
前者の場合、Q値を東京で2.2(換気を含まない場合1.8)、札幌で 1.2(換気を含まない場合0.8)に することで、後者の場合、Q値を東京で1.04(換気を含まない場合0.64)にすることで充分な性能を得るこ とができます。さすがに札幌ではQ値を 0.62(熱交換換気をした場合換気を除いて0.46)にしなければなり ませんから少し厳しい目標かもしれません。
一ヶ月の空調エネルギー費1万円は1日330円ほどですから、1KWのヘアドライアーを1日に15時間つける だけで家全体が暖房できる断熱性能を意味しています。
そんなに断熱すれば断熱工事費が大変な額になるだろうとお考えかもしれません。しかしそれほどでもないので す。木造住宅では壁の断熱厚さが10cmを超えると壁の厚さを増やしたり付加断熱をしたりといった対応が必要で すが、RCの外断熱では断熱材の使用量が増えるだけのことでコスト上昇は微々たるものです。
断熱設計を考える場合、「その設計仕様で快適空調をするのに空調費がいくら掛かるか」を先ず考えてください。
実際に支払える額と必要な額に差があると「空調を我慢した暮らし」をせざるを得なくなります。
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特集5 通気層を考える 2004年12月
また冬がやってきました。
冬は暖房のシーズン。断熱材の仕事は暖房や冷房で使うエネルギーの消費量を減らすことです。
断熱材は家全体を覆う「布団」のようなもので、断熱材を厚くするほど少ない空調エネルギーで家を暖めたり冷やしたりすることができます。
しかし、これも断熱材が正しく使われていてのことです。断熱材を使ううえでいくつかのルールがあり、このルールを守っていれば、断熱材の性能に応じた断熱効果が期待できると言ってもいいでしょう。
断熱材を使ううえでのルールは建物の構造や使用する断熱材によっていくらかの違いがあります。
熱損失を少なくするためのルール
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建物を断熱材で(熱橋ができないように)切れ目なく覆うこと
(屋根(または天井)・外壁・床・(または基礎)の断熱が連続して建物を覆うように断熱することが基本です。
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断熱材を貫通して屋内と屋外を移動する風の流れを生じさせないこと
(特に繊維系断熱材を使う場合に防風層。気密層が必要です)
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B |
コンクリート造の場合は断熱材とコンクリートを密着させること
木造の場合は内壁と断熱材を密着させること
(これらの部分が密着していないと空気が対流を起こし、熱を逃がします)
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C |
木造重点断熱の場合、マット状断熱材は充填する部分よりやや大きめに切断して上下・左右を枠材に密着させる。
(大きすぎても小さすぎても断熱性能が低下します)
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D |
断熱材の費用を惜しまない (断熱材の厚さの目安100mm)
(断熱材は最も値段の安い建材ですが、断熱材の量に反比例してエネルギー消費は減少します) |
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E |
間仕切壁内部を床下から天井裏に空気が流れないように措置すること
(ほかの部分を断熱しても、この措置をしないと間仕切壁が熱を逃がします) |
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結露を防ぐためのルール
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繊維系断熱材を使う場合、断熱材の室内側に防湿層が設けられていること
コンクリート象の建物に発泡樹脂系断熱材を使う場合、外断熱であること
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A |
熱橋は最小限に抑えられていること
(目標 建物外部の面積の2%以下) |
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あなたのお宅はこのルールに照らし合わせて、どうだったでしょうか? 既に建っている建物の場合、問題があったとしても簡単に改修する訳には行きません。 でも、これから家を建てようとしているのなら、後から直すのに比べればずっと安い費用できちんと断熱された家を手に入れることができます。
きちんとした断熱をするための費用は掛かりますが、毎年の空調費の節約がその費用を支払って余りあるものになります。
普通の木造住宅の50mmの断熱材は計算される断熱性能の半分以下の性能でしか働いていません。コンクリ−トの建物の内断熱も熱橋から大きな熱損失をしています。
真面目に断熱することにより、室内を快適な温度に保つ費用は1/3〜1/4以下に減らし、今までよりも少ない費用で快適に暮らすことができます。
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特集4 通気層を考える 2004年11月
木造建築でもRCの外断熱工法の建築物でも通気層はよく知られるようになってきました。
通気層を設ける目的は、透湿・拡散・漏気などにより室内から防湿層を通り抜け断熱材の中に抜け出した水蒸気が 外装材の内側で結露しないように速やかに壁の外に排出することです。
この他に通気層には夏の日射で暖められた外装材を冷やす効用もありますが、これはあくまでも副次的なもので す。
ところが「○○工法」と名付けられた外張り断熱工法の中には、給気口にダンパーを取り付け「冬は冷たい外気を 取り入れないようダンパーを閉じる」ものもあり、冬の結露防止を目的とした通気層を「冬に塞ぐ」意味を考えてし まいます。通気層自体が冬の結露防止を目的にしたものだからです。
通気層内の空気は夏の昼間、壁面が直射日光で熱せられているときに外気温度との差が大きくなり、大きな浮力を 受けて最も流速が大きくなります。反対に冬の夜中、放射冷却で冷やされると室内から伝わる僅かな熱でほんの少し 暖められるだけになります。このときに結露防止に必要な通気量を確保できる設計が要求されます。
つまり、室内から伝わる熱が通気層内に防湿層と断熱材をを通り抜けた水蒸気を搬出できる対流を起こすように設 計する必要があります。
壁面と空気の粘着量の計算から、「通気層は18mm以上の厚さを持たなければならない」と言われ、また通気層の高 さは7〜8m程度を限度とすべきであり、中高層建築物では3階以内ごとに区切って給気口・排気口を取り付けるべ きと言われています。
小屋裏換気に倣って通気層の給排気を考えると、給気口・排気口の面積はそれぞれ通気層を持つ壁面積の1/600程度 とする必要がありそうです。開口部で通気層が中断されるところでは横に切り回すよりもサッシ下に排気口、サッシ 上に給気口を取り付ける方が安全な考え方でしょう。
厳密な計算をするには流体力学に基づく計算が必要だと思いますが、残念ながら今の私にはその分野の充分な知識 はありません。
この他にも通気層には風圧により壁の隙間から雨などが侵入する問題など様々な検討課題があるようです。
単純に考えると「ガスとしての水蒸気は外気に解放された通気層から瞬時に放出される」筈ですが、未解明な問題 点が残されています。
外装材にガラスを使えば議論より有効なよい実験ができるでしょう。
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特集3 四つの外断熱工法 2004年10月
この2週間ほど、「四つの外断熱工法」をテーマにコンテンツの書き換えを進めています。
発端は、9月に始めた夏の水蒸気量のデータ解析です。気象庁の気象台・測候所の観測データに気温と相対湿 度が含まれていて、気象庁ホームページからアクセスできます。
このデータのうち6月中旬から8月下旬までのものの一部を「日本の気候と外断熱工法」に掲載したので、ご 覧になった方も多いと思います。
私は静岡市に10年ほど住んだ経験があり、その経験から日本の何箇所かで大気の最高露点温度が26℃を超え るところがあるだろうと考えていました。解析の結果、太平洋側の地域ばかりでなく日本海側にも大気の露点温 度が26℃を超える地域が広がっており、データを解析した僅かな地点の中でも室戸岬の外気の露点温度の最高 値は27.8度に達していました。
露点温度27.8℃の凄い意味がお分かりでしょうか? 繊維系断熱材を使うと28度で冷房したとしてもコンク リート表面が結露寸前になり、冷房設定温度を下げるほど逆転結露の危険が増します。室戸岬以外でも露点温度 が26℃を超えるところは関東・甲信越以西の各地に広がっています。
それほどエネルギーを使わなくても冷房を充分聞かせることのできる高断熱な建物で、逆転結露を気にしなが ら冷房をセーブしなければならないのは何かが間違っていると考えるのが普通の感覚だと思います。
鉄筋コンクリート建築物の外断熱工法はヨーロッパでも気温の低い北欧・中欧で発展した技術です。
定常分析で説明できる結露は断熱性能と透湿性能にばらつきがあり、高温側の透湿性能が大きいとき に発生しやすくなります。
地中海沿岸を含めヨーロッパの夏は日本に比べて温度と湿度が低く、冷房が必要になることは先ずありませ ん。外気に含まれる水蒸気が躯体表面で結露を起こす「逆転結露」を心配する必要もありませんから、繊維系断 熱材を使っていても室内側に防湿層があれば充分です。ところが残念なことに日本の大部分の地域の気候はヨー ロッパと異なり多湿です。夏と冬で水蒸気の流れる方向、結露の危険のある場所が反対に移動します。
「四つの外断熱工法」のもうひとつのきっかけは「ロックセルボード」の物性を確かめたことです。お恥ずか しい話ですが、これまで良く調べもしないで「樹脂系断熱材と同等な性質を持つ無機質の断熱材」と考えていま した。ところが、この「ロックセルボード」、コンクリートに比べて約 3.6倍、樹脂系断熱材に比べて7倍以上 も水蒸気を通しにくい断熱材です。
そこで、「四つの断熱工法」という切り口が浮かびました。ここで言う「四つ」は @ 水蒸気にほとんど抵 抗しない繊維系断熱材、A 水蒸気の移動に少し抵抗するがコンクリートよりも抵抗力が小さい樹脂系の断熱 材、B コンクリートよりも水蒸気の移動に強く抵抗するロックセルボードのような断熱材、C 水蒸気をまっ たく通さないフォームグラス の4種の断熱材に対応します。
@、Aの断熱材を使う断熱工法ではコンクリートが防湿層の役目を果たします。これに対して、B、Cの断熱 材を使う断熱工法では木造の外張り断熱工法のように断熱材が防湿層の役目を果たします。
フォームグラスは材料・施工費共に高価なため日本ではまだほとんど施工事例がありませんが、欧米では確立 された施工技術があります。ロックセルボードに関しては素材の大きな透湿抵抗を生かす防湿施工技術がまだ充 分に確立されておらず、寒冷地での凍害温暖地での逆転結露を防ぐ納まりの開発が課題だと思います。
4種類すべてが完全な状態ですぐに使えると考えてはいませんが、それぞれの断熱材を使った断熱工法で、壁 の中も温度と露点温度がどのような状態になるかを知ることができます。
理論上、結露を防ぐために理想的な断熱工法は断熱材が防湿層を兼ねるB、Cの断熱材を使うものです。しか し、防湿施工に問題があれば水蒸気の逃げ道に様々なトラブルが起きる心配があります。
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特集2 日本の冬は暖かいか? 2004年9月
日本でも、ようやくコンクリート外断熱工法や高気密高断熱の建築物に関する情報が得られるようになってきました。「断熱の良い住まいが欲しい」と願う消費者に比べて、マンションディベロッパーや設計事務所・建設業者などの断熱に対する考え方は「京都議定書」以前、ことによると「オイルショック」以前とほとんど変わっていないと言っていいでしょう。
「高い断熱性能の建物が欲しい」とマンションディベロッパーや設計事務所に話をした消費者に彼らが返す言葉は、「北欧やカナダのような寒いところの断熱方法が、なぜ日本で必要ですか?」というものです。
本当に日本では今普通に行われている断熱が適当なものなのでしょうか?
最近、建築とは畑違いの方々にお目にかかる度にこのサイトの紹介を兼ねて、「日本の気候は北欧やカナダより暖かいが、日本の家の中は世界で一番寒い。」「一日中氷点下の気温が続く北欧でも家の中は沖縄の冬よりも 暖かい」というお話をします。
中にはそう話した後でも、「うちは湘南の海岸に近いところで海が近いため冬は寒く夏は暑くて堪りません」と仰る方もいらっしゃいました。海辺の近くは温度変化の少ない海水の影響で、内陸部や盆地に比べて暑さ・寒さが緩やかなのに、誰もが自分の住むところの気候は厳しいと考えている理由は建物の断熱性能が貧弱なことの現われです。
建物の断熱性能と空調に使うエネルギーコストは反比例の関係にあります。断熱性能を2倍、3倍、・・・と増やしていくと空調に必要なエネルギーの量は1/2、1/3、・・・と減っていきます。もし、「北欧やカナダのような寒いところの断熱方法が、なぜ日本で必要ですか?」という指摘が正しければ、「今使っている断熱材よりも多くの断熱材を使うために必要な追加費用は、断熱材を増やしたために節約されるエネルギー費よりも多くなる」筈です。
本当に今普通に行われている断熱が合理的なものなのでしょうか?
このサイトの中で断熱工事費と空調エネルギー費のライフサイクルコストの試算をした部分が、得する家造り講座>断熱の基礎知識>断熱厚さの最適化にあります。
その試算結果は東京で、充填断熱で100mm、湿式外断熱で75mm、乾式外断熱で75〜100mm、札幌では充填断熱で150mm、湿式外断熱で125〜150mm、乾式外断熱で125〜150mmが最も経済的というものでした。
多くの家庭でもっと空調したいときに我慢しなければならない背景には空調費の節減を考えないおざなりな断熱がナショナルスタンダードになっている日本の断熱事情があります。
RC外断熱工法では内断熱工法の4〜5倍の断熱性能が、外壁の空洞に断熱材を十分な密度で充填した高断熱住宅は一般の充填断熱工法の4倍程度の断熱性能があり、いつも快適に暮らすための空調費はいずれも1/4〜1/5と極めて省エネで快適な暮らしをすることができるうえ、建物の耐久性を大幅に伸ばすことができます。
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特集1 日本の断熱 2004年8月
日本の多くの建物でほとんど効果のない断熱工事が行われています。
鉄筋コンクリート建築物の内断熱工法、密度10kg厚さ50mmの断熱材を使った木造住宅の充填断熱工法です。
欧米では木造建築物でもRC建築物でも、建築断熱に使う断熱材の性能は熱貫流率が少なくとも0.5w/m2・K程度ですが、日本の標準的な外壁の熱貫流率はこの2.5倍程度になります。
これは正確に施工され、断熱材が100%のの働きをした場合の熱貫流率の比較であり、RC内断熱では壁からの熱損失の約30%を占める熱橋からの熱損失を、また木造建築物では断熱材の隙間からの空気の対流による 熱損失を含んでいません。
建築の断熱設計にこれほどの原因があるのは、建築費のコストを抑えると言う意識が働いた結果だと思いますが、私たちが建築物を断熱する目的は空調エネルギーを節約して、快適な暮らしを実現することです。しかし、コストを抑えてしっかり断熱しなかった結果、工事費を節約したよりはるかに大きい空調費用がかかるのが今行 われている日本の断熱です。
木造建築物
日本の在来木造工法は、壁の中に筋交い・胴縁などの構造材・造作下地が複雑に入り込んでいるため、マット 形状の断熱材を隙間なく充填することが難しい構造体になっています。断熱材は隙間なく充填しなければ断熱効果を発揮しません。胴縁や筋交いを内蔵し、複雑な形状を持つ在来木造工法の壁をしっかり断熱するには吹き込み断熱工法以外に適切な工法はありません。
もう一つの問題は、床下から小屋裏にかけて、外壁・間仕切壁の空洞が繋がっていることです。一般に床下にも小屋裏にも外気が入る構造になっていますから、壁の中の空気の流れを止めなければどんなに断熱材を使っても壁の中の空気が対流を起こし熱が失われていきます。
枠組壁工法の建物では各階の床が1枚のパネルになって壁の中の空気が階ごとに区切られていますから、対流による熱損失はそれほど大きくなりません。
さらに、ほとんどの在来木造工法の建築物には気密・防湿層がありません。水蒸気を含んだ室内の空気が、暖かいまま屋外に漏れ出しても結露は起きませんが、断熱改修によってきちんと断熱すると断熱材の外側の温度はこれまでよりずっと低くなり結露が起きるようになります。断熱とともに、気密・防湿措置を講じることが問題の発生を防ぎます。
RC造建築物
RC造の内断熱工法は、コンクリート躯体のこのサイトで初めから取り上げているように熱橋付近に大きな熱損失と表面結露の危険があり、内部結露の危険もあります。
内断熱工法で断熱したRC建築物は外部環境に露出された構造体が雨・風や日射による熱伸縮による劣化作用を受けやすく、室内環境も外部環境変化の影響を強く受けます。強い熱射を受ける夏に60〜70℃まで暖められる躯体は、外気温度が下がる夜になっても室内を暖め続け、大きな空調負荷を与えます。
断熱改修のマニュアル
新しく掲載した「断熱改修のマニュアル」は、既存の建物を少しでも住みやすく暮らせるように改造するための指針です。断熱改修は「断熱材を増やすこと」とお考えの方も多いと思いますが、決して断熱材の量だけの問題ではありません。断熱材を増やすことは先ず建物の気密・防湿性能に関係し、さらに改修された建物の熱損失性能とバランスの取れた(小さな)空調設備にすることに関係します。
さらに、断熱改修された建物の特性を知り、上手に住みこなすことも考えてください。
断熱改修のマニュアルは、新築する建物の断熱ノウ・ハウをまとめたものではありませんが、書かれた内容を理解して戴けば、新築に使えるテクニックがたくさん含まれています。新築でこれらのテクニックを使うコストは、手戻りがない分改修に比べてずっと少なくなります。
新築を計画している方も、是非あなたの家の計画にこのマニュアルを役立ててください。
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