特集22 RC外断熱工法 2006年 11月
日本にはまだ余り普及していないRC外断熱工法。
もともと木の家に住んできた日本人が本格的にコンクリートの家に住むようになったのは昭和30年代半ばに日本住宅公団が大規模に供給を始めた賃貸住宅。
ヨーロッパのコンクリート建築では石造・煉瓦造の伝統を引き継いだ二重壁構造が当たり前だったのに比べ、日本のコンクリート建築は「内断熱」という外部環境の影響を受けやすい造りになっていた。
もっと正確に言えば昭和40年代前半は無断熱、防湿シートと繊維系断熱材を使って結露というより天井裏に水溜りができる時代を経て1970年代にウレタン吹付けの内断熱が定着した。
多くの方が、コンクリートの建物は冬は寒く夏は寝られないほど暑い建物になるという印象をお持ちなのは内断熱工法の建物に対する印象で「内断熱工法=コンクリート造」のイメージが定着してしまっている。
賃貸マンションのオーナーはRCのマンションは結露が多く、入居者の入れ替わりごとにカビの生えたクロスを張り替えなければならないと嘆き、RCの社宅に住む住人たちの中には結露とカビの中で子育てを強いられている方たちが多い。
石造など熱容量の大きい建物の伝統を持つヨーロッパでは構造躯体を冷やさない建物の建て方が伝えられてきた。夏でもほとんど冷房を必要としないヨーロッパは冷え込む冬の間でも熱容量の大きい建物を暖かく保つわざを伝えてきた。そうでなければコンクリートよりも更に熱容量の大きい建物を冷やしてしまえば、静岡大学の「ねずみの実験」のように住む人まで凍死しかねない。
ヨーロッパに比べて少しだけ温暖だった日本では少しだけ寒さを我慢すれば、コンクリートの建物でも何とか暮らせたということか?
空調する習慣もなく炬燵や火鉢が採暖の手段だった日本では、家が外気に対する温度バリアにならないことに誰も疑問を持たなかったと言ってもいいのだろう。
室内環境が外部からの影響を受けやすい内断熱工法が、日本の標準仕様として普及したと考えることができます。

上の図は内断熱工法と外断熱工法で断熱した建物を空調しないとき、および朝6時から9時までと夕方5時から夜の11時まで空調した場合の室温の変化をグラフにしたものです。
空調しない場合でも内断熱工法の室内では毎日大きく温度が変動していますが、空調した場合でも暖房を切ったときは暖房中に最大9.8℃ほどの温度低下と冷房中に3.4℃ほどの温度上昇があります。外断熱工法では暖房中の温度低下が0.5℃未満、冷房中の温度上昇が0.2℃未満ですから、RC内断熱工法の建物ではRC外断熱工法の建物に比べて暖房では約20倍、冷房でも約17倍の温度変化があることになります。
上の図でも判るように、内断熱工法が外断熱工法に変わって行けば、RC住宅の住み心地は劇的に変化します。
今、内断熱工法の建物では毎日平均気温を中心に室温の変化幅が外気温度の変化幅の60%ほど変化していますが、外断熱工法に代わると外気温度の変化幅の5%未満に収まることになります。
自動車の走行に伴う振動や路面での安定性が車種ごとによって違うように建物の断熱仕様によって室内環境の安定性が違うことがだんだん理解されてきたのではないでしょうか。
性能の高い車で高速道路を100Km/h以上出してもほとんど振動を感じることがありませんが車によっては 80Km/h以下で走っていても車を制御できなくなることがあります。また、制御できたとしても「乗り心地」には大きな違いがあります。
これまで、外断熱工法は建築費が高くなると言われることが多かったのですが、車で言えば大衆車と超高級車の価格差が数倍もすることを思えばRC内断熱工法の建築費とRC外断熱工法の建築費の差は同一車種の一般仕様と上級仕様の差よりずっと小さな範囲に収まります。
これまで、私がこのサイトやNPOのサイトなどを通じて多くの方とお話をしてきた中で、多くの方が外断熱工法の採用を諦めています。どうしてこんなに話が纏まらないのだろうかと考えたこともありますが、実は簡単なことです。
ほとんどの方が普通のサラリーマンで預金残高や所得から計算できる借入額では僅かな差に思える断熱工法を外断熱工法に変えることによる工事費の差額が準備できないと言うことだったのです。
同じことは自動車を購入するときにもあることだと思います。
ベンツやBMWなどのヨーロッパからの輸入車が買いたいけれどランクを落とさざるを得ないということはよくあることだと思います。10人のうち9人以上がこれに当てはまるでしょう。私がこのサイトを通じてRC外断熱の住まいを望んでも手に入れられない方に一瞬の夢を見せてしまったのか? と思うと罪なことをしたような気もします。
この裏返しを考えれば、「自己資金が充分ある」あるいは「充分な所得があって必要な融資が受けられる」のいずれかの条件が満たされていれば外断熱工法の家を造ることはもっとハードルの低いことになります。
国産車も含めて高級乗用車の市場シェアくらいまでは早くRC外断熱建築物のシェアを伸ばせるはずですし、その実現のために努力を始めたいと思います。
設計者や施工業者のRC外断熱工法に対する理解が充分でないことがRC外断熱工法の建物の品質にバラツキを生んでいる原因があるように思うことがあります。
外断熱工法では建物の躯体を外側から保温するように断熱材で覆うのが大原則です。断熱を意味する英語のInsulationは日本語で「絶縁」と訳されることもある単語です。つまり熱が電気のように流れるとした場合に断熱の切れ目は電気回路の絶縁の切れ目のようにショートを起こすというくらいの慎重さが必要になります。(少しだけ大袈裟ですが、)
しかし、外断熱工法の経験が不十分だと様々な場所で大きな断熱の切れ目をつくってしまいます。
(Ex. バルコニーの取り付け部分、パラペットの天端などヒートブリッジになりやす
いところです。)
ヒートブリッジができそうだと感じると断熱補強をしなければならないと考えるのは内断熱工法の断熱性能を改善するときの発想で断熱性能が不足していると感じたときに内断熱の要領で断熱補強をプラスして安心するのです。
確かに断熱補強をすればその部分のK値は増加しますから熱損失率(Q値)も僅かに改善します。しかし、断熱補強によって失うものを見落としています。
内断熱工法によって断熱補強をすると断熱補強した部分では室内から躯体に熱が供給されにくくなり、躯体温度が低下します。
ヒートブリッジによる局部的な熱損失と温度低下を防ぐために断熱補強すると熱損失を僅かに減らす代わりに大きな面で温度低下させるという悪循環を招くことになるのです。
こういう断熱を建物全体に及ぼしたものがAAB工法など「両面断熱工法」とも呼ばれるもので、コンクリート温度が外気温度と室内温度の中間になるため建物の蓄熱能力が半減することになります。
ヒートブリッジの悪影響を防ぐためにしたつもりの対策が却って問題点を大きくする。RC外断熱工法への正しい理解がないとより大きな問題を招くことが断熱補強だけでなく、逆転結露対策や建物全体の断熱のバランス、断熱性能と空調設備のバランスの取り方の違いによって大きな時建物の性能の違いがもたらされます。
RC外断熱工法を正しく普及するにはRC外断熱工法の建物の断熱性能と空調設備の能力に対する正しい知識に基づく設計管理のもとに施工を進める必要があります。
RC外断熱の建物は優れた省エネ性・室内環境の安定性を持つとともに、熱伸縮の原因になる躯体温度変化が少ない構造体は既存のRC内断熱に比べて数倍の耐久性をもっています。
優良な住宅ストックを形成するために一部の高級住宅だけでなく広汎な住宅需要に少しでも多く応えられるよう、汎用型ローコスト住宅のプロトタイプの提案を急ぎたいと思います。
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