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特集27 エネルギーコストはどう変わる 2007年 6月

 最近の食品価格、値上げラッシュです。

 銅やステンレスそれに原油価格の価格上昇はオリンピック景気に湧く中国の需要拡大が最大の原因と言われていますが、天ぷら油やマヨネーズ、その他農産物由来の製品価格が急激に上昇しています。

 サトウキビやとうもろこしなどバイオエタノール向け農産物需給が拡大する中で、これらの価格が上昇し大豆の生産の減少が見られる。

 バイオエタノールなど植物起源のエネルギー利用はまだ始まったばかりで、今年4月末から首都圏50ヶ所のガソリンスタンドで3%のバイオエタノールを含むETBE方式のガソリンが売られているに過ぎない。2010年には販売されるガソリンの20%がバイオエタノールを含むことにする計画になっている。

 ETBE方式ではガソリン中に3%のバイオエタノールしか混合できないそうだが、アメリカやブラジルではすでに直接混合方式のガソリンが作られていて、アメリカでは2017年までにバイオエタノールの混合率を15%にまで高める計画だそうだ。

 今、世界で生産されているバイオエタノールの7割がブラジルとアメリカで作られているそうだが、現状では石油の数%から十数%を占めているに過ぎない。

 数十年先には石油資源の枯渇が現実のものとなり、例えば燃料電池に水素を供給するにもほぼ100%をバイオ燃料で供給しなければならなくなる。

 そのときに私たちは農産物を食料とエネルギーの需要を満たすために使わなければならなくなり、農産物価格・エネルギー価格は必然的に上昇する宿命を負っている。

 エネルギーの価格を基準にすれば石油火力発電と持続可能な太陽光発電を比較すると約三倍のコスト差があるそうで、エネルギーコストは約3倍に増加するまで抑制は効かないのかもしれない。
 そのとき農産物起源の食料品価格がどこまで上昇するのか私に判断できる根拠はない。

 ただ、そのときの空調コストは同じように空調するとすれば3倍以上のコストがかかるものになっていると考えなければならないだろう。


特集26 「美人薄命」、「美邸薄命?」 2007年 6月

 特集の交信を暫くサボってしまいました。

 日本の建築物は欧米の建築物に比べて極めて短命だと言われます。

 ヨーロッパの都市を歩くと、百年いや数世紀を経て未だ普通に使われている建築物が自然に目に飛び込んできます。建物が石やコンクリートで作られているか、木で作られているかに関係なくヨーロッパの建物は長く使われています。

 私の周りを見回すと、そろそろ還暦を迎える私のまわりにある建物の大半は私が生まれてから立て直されたもので、中には私が二度目の建替えを目撃することになった建物も少なくありません。

 日本では木造住宅がほとんどだが、ヨーロッパでは石やコンクリートで作られる家が多い。
 日本の気候は高温多湿で木材が腐りやすいのに対し、夏が乾燥したヨーロッパでは建物が長持ちするのは気候の違いによる。
など、建物が長持ちしないことを擁護する後付けの理屈はいくらでも並べることができます。もしかすると家よりも土地の価格が高く、相続のたびに換金しては分配することがスクラップ&ビルドの最大の理由なのかもしれません。

 原因はともあれ、私たち日本人が家を最も頻繁にスクラップ&ビルドしている事実は間違いなさそうですし、住宅を社会的な資産と考えず、煮ようと焼こうと持ち主の好きにすればいい個人資産と考えているといっていいでしょう。
 「せいぜい30年住んだらまた建替えよう。」私たち日本人の過去の経験はそんな住宅観を育んでしまいました。

 これに対してヨーロッパ人の考え方はかなり違うようです。彼らは家の寿命は適切に手入れしていれば永久に続くと考えている言ってもいいでしょう。
 「今はわたしが住んでいても、将来は息子家族が住むとは限らない。誰かに売ってほかの町に住むかもしれないし、自分が将来ほかの場所に住むことになれば誰かに売ることになるかもしれない。」

 こう考える彼らは「自分の好みだけで家を造るより、売りたくなったときに人が欲しがるような魅力ある家を造ったほうがいい。」「家の傷みは被害が大きくならないうちに手入れしていい状態に保った方がいい。」と考えます。

 今は自分の財産でも、将来他人が欲しがる魅力ある家に保つことで自分の利益を増すことになります。

 日本の家は30年も経てば逆に解体費を支払って処分する耐久消費財であり、ヨーロッパの家は30年経っても新築時と変わらない値段で取引される財産になります。

 日本人は私有財産である家が他方で社会的なストックとして評価されることに気がつかなければ、30年サイクルのスクラップ&ビルドから解放されません。


 日本の家が短命な理由を私を含む高断熱推進論者の多くは、「不十分な結露予防対策や湿気に対する備えを欠くことが建物の耐久性を損なっている」と考えていますが、それ以外の人たちの間からは、「きちんと断熱すると建物の意匠設計に制約が多くなる」、「断熱という一面からだけの評価で建物全体を評価しようとするのは偏ったものの見方ではないか」といった反論を受けることがあります。

 平たく言えば「見かけの良い建物を造るために断熱性能や耐久性能を少しくらい犠牲にしてもいいじゃないか」と言うことなのですが、建物のデザインと断熱性能や耐久性能は両立が困難なものなのでしょうか?
 断熱性能や耐久性能に対する高レベルの要求があるヨーロッパの建築物はデザイン的なレベルでは妥協を強いられているのでしょうか?

 「美人薄命」の真疑はともかく、タイトルに書いた「美邸薄命」には全く必然性がありません。良いデザインの建物でも充分な耐久性や断熱性を持つ建物を造ることも出来れば、デザインも耐久性も断熱性もすべてレベル以下の建物を造ることも出来ます。


特集25 「人間はどこから来て、どこに行くのか?」 2007年 6月

 このタイトルはパクリです。でも内容はパクリではありません。

 宇宙の歴史は137億年、ビッグバンから宇宙が始まったと考えられています。

 そして地球は46億年ほど前に形成され、38〜40億年前には地球に原始生命が発生したと考えられています。
 27億年前      - シアノバクテリアが大量発生
 25億年前      - 縞状鉄鉱層が形成される。
 22〜24億年前    - 現在分かっている最古の氷期。→ ヒューロニアン氷期
 20数億年前     - 大気中の酸素の増加  
 (海中の鉄イオン濃度の低下で、余剰となった海中の酸素が大気中にも多く供給されるようになった)

 20億年前 - 現存する最古かつ最大の小惑星衝突 → フレデフォート・ドーム 
 20億年〜19億年前 - 最初の超大陸出現か? 
 大陸移動説によれば、大陸は数億年程度の周期で離散集合を繰り返していると考えられ、この頃、ヌーナ大陸と名づけられた超大陸が出現したと考えられている。

 10億年〜6億年前  - 多細胞生物が出現したと考えられている。
 8億5千万年前頃  - 1年は約435日
 8億年前〜6億年前 - 大規模な氷河時代であったとされる。
 6億年前〜     - カンブリア爆発と呼ばれる生物の多様化が起こる。 
 短期間 (約1000万年) の間に生物の種類を多く増やした。この頃から多くの化石が発見されるようになる。

 古生代 (約5億7000万前 - 約2億5000万年前) -三葉虫などの生物が現れる。 
 4億3千年前頃   - 生物の大量絶滅(オルドヴィス紀末) 
 4億年前      - 陸上植物が出現
 温暖期
 氷河の消滅。この頃、大森林が各地に形成され、石炭の元になったとされる。地質時代では石炭紀という名称がついている。

 3億6千万年前   - 生物の大量絶滅(デヴォン紀後期)
 3億5千万年前〜2億5千万年前- 大規模な氷河時代だったとされる
 3億年前      - 昆虫が拡大
 ゴキブリもこの頃に出現。身近な生きている化石とされる

 2億5千万年前   - 生物の大量絶滅 (ペルム紀)
 地球史の中で何度か生じた生物の大量絶滅の中で最大とされる。海生生物のうちの95から96%、全ての生物種で見ても90%から95%が絶滅したとされる


 中生代 (約2億5000万年前〜約6500万年前) 
 2億2千万年前   - 生物の大量絶滅 (三畳紀末)
 2億2千万年前   - マニコーガン・クレーターの形成
 カナダにある北アメリカ最大のクレーター (直径約100km)

 2億年前 - パンゲア大陸の分裂がはじまる
 大陸移動説、プレートテクトニクス説による。2億5000万年前頃に諸大陸の衝突で1つに固まっていたパンゲア大陸が再び分裂をはじめ、現在の大陸の姿へと徐々に変化しはじめた

 2億年前?     - 哺乳類の出現
 1億5千年前    - 始祖鳥


 1億年前 〜 1000万年前
 恐竜の全盛時代
 約7000万年前   - インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突
 プレートテクトニクス説によれば、インド亜大陸の北上でユーラシア大陸と衝突したことにより、約2500万年前頃からヒマラヤ山脈の形成がはじまったと考えられている。

6500万年前     - 生物の大量絶滅 (白亜紀末)。この頃、恐竜が絶滅。
 隕石の落下による環境の激変を原因とする説が有力と考えられている。→ K-T境界、チクシュルーブ・クレーター


 新生代 (約6500万年前現代) 
 霊長類の出現
 約5500万年前に現れたアダピス類が初期の霊長類と考えられている。これより前の約7000万年前に北米に出現したプレシアダピス類のプルガトリウスを最古とする考え方もある。

 約4000万年前   - 南極大陸で氷河の形成がはじまり、徐々に寒冷化。
 これ以前は非常に温暖な時期だった。→古第三紀、海水準変動

 約2500万年前   - アルプス・ヒマラヤ地帯などで山脈の形成がはじまる
 テチス海が消滅し、造山運動により隆起。→ 新第三紀、Geology of the Himalaya

 2500万年前    - 最古の類人猿と思われる化石?
 アフリカのケニヤで発見された。

 約2000万年前   - 現存する最古の湖の形成
 バイカル湖、タンガニーカ湖。→ 古代湖

 約1500万年前   - ヨーロッパに隕石が落下、クレーターを形成する
 現在のドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州にあるリース隕石孔、シュタインハイム・クレーター

 1300万年前    - ヨーロッパ、南アジア、東アジアなどユーラシア各地にも類人猿の化
石が現れる。

1000万年前 〜 100万年前
 1000万年〜500万年前 - アフリカでグレート・リフト・バレーの形成が始まる
 人類誕生に大きな影響を与えたとする説がある

推定約600万〜400万年前 - 琵琶湖の形成
 琵琶湖は世界に現存する湖の中では3番目に古い湖と考えられている

 約600万〜500万年前 - ヒトとチンパンジーが分化したとされる
 ヒト亜科とチンパンジー亜科の分岐。
 猿人の出現。直立二足歩行の開始
            アウストラロピテクス (猿人) 
 最初の人類とされる

約250万年〜約180万年前 - 石器の使用がはじまった


100万年前 〜 10万年前

 概ね70万年前頃 - 10万年周期の気候変動が見られるようになる(氷期・間氷期)
 約50万年前 - 北京原人
 約23万年前 - ネアンデルタール人の出現
        温暖期のピーク。 
 この後、緩やかに寒冷化へと向かい、14万年前頃に氷期のピークとなった。

 約20万-19万年前 - ホモ・サピエンス (現在のヒト) の出現
 アフリカに出現、10万年前頃にユーラシア大陸にも拡大したと考えられている

 約14万年前 - 氷期 (リス氷期) のピーク
 この後、急速に温暖化へと向かった

 約13万-12万年前 - 温暖期のピーク
 現在よりも温暖であったと考えられている。この後、急速に寒冷化し、約11万年前頃から緩やかに上下を繰り返しながら徐々に氷期へと向かった。約2万年前頃がもっとも最近の氷期のピークとなった (ウルム氷期)。 

10万年前 〜 1万年前
 約7万3000年前   - スマトラ島のトバ火山の大噴火。スマトラ島のトバ湖はこの時の噴火
によって形成されたカルデラ湖
 ここ10万年ほどでは最大級の噴火とされ、地球の気温が数年間3〜3.5度低下した。ヒトのDNAの解析によれば、7万年ほど前に人類の人口が一万人以下に激減し、遺伝的な多様性の多くが失われ現在の人類につながる種族のみが残った「ボトルネック効果(遺伝子多様性減少)」があったと考えられるが、これがトバ火山の大噴火に関連すると考えられている。

 約5万年前   - クロマニョン人
- 隕石の衝突でバリンジャー・クレーター (アメリカ・アリゾナ州) が
形成される。

 約3万年前 - ネアンデルタール人が絶滅
 最古の洞窟壁画
 現在知られている古いものでは、南フランスのショーヴェ洞窟壁画 (約3万年前?)がある。また、ラスコー (約1万8千年〜1万6千年前)、アルタミラ(約1万4千年〜1万3千年前)など多くの洞窟壁画がある。 

 約3万年前〜2万年以前 - モンゴロイドがアメリカ大陸に渡る
 氷河期の時代にベーリング海峡は地続きになっていた。この頃、ユーラシア大陸から無人のアメリカ大陸に人類が移り住んだと考えられている。約1万年前頃までには、南アメリカ大陸の南端地域まで到達した。 

 約2万年前 - ウルム氷期 (最終氷期)のピーク
 海面が現在よりも 100m から最大で 130m ほど低かったと考えられている (海水準変動を参照)。その後、温暖化と寒冷化の小さな波をうちながら、長期では徐々に温暖化に向かった 

約1万6千年前 - 東南アジアにあったとされるスンダランドが、海面上昇により徐々に後退
 海面の上昇により、他にも、アラスカとロシアの間にあるベーリング海峡 (氷期には陸続きだった) の海没や、大陸と地続きだった日本も徐々に島化が進んだ。

 約1万4千年前〜約1万年前 - イヌを飼い慣らしたと考えられている。

1万年前 〜 現在
 約1万年前   - 最後の氷期 (最終氷期) が終わったとされる。
- ヨーロッパ中部の火山活動が終息へ
農耕革命 (農耕の開始) 

 前5000年頃〜前3000年頃 - 完新世の気候最温暖期 
 この頃、海面は現在よりも数メートル(4mから10mまで諸説あり)程度高かったと考えられている。

 前3000年頃 (5000年前) 初期の文明が現れる
 古代エジプト文明、メソポタミア文明など
 人為による環境破壊がそろそろ表面化

 紀元前後 古代ローマ、漢などの古代帝国が出現

 14世紀半ば   - ヨーロッパでペストの猛威。一説では人口の3割近くを失ったとされ
る。


 14世紀半ば
〜19世紀半ば
- 小氷期とされる。

 16世紀半ば
〜17世紀初頭
- 太陽黒点の活動が低下 (マウンダー極小期)
 最近のものでは、もっとも活動が低下した時期とされる。

 14世紀半ば
〜19世紀半ば
- 小氷期とされる。

 18世紀後半 - ヨーロッパで産業革命がはじまる。エネルギーの大量消費時代がはじ
まる。

 20世紀
 21世紀
- 人口の爆発的増加、砂漠化、地球温暖化や資源枯渇の懸念。 
- 新エネルギーの開発と実用化。バイオ技術の発展。多極化する世界


 宇宙の歴史173億年に対して地球の歴史は46億年、宇宙の誕生以来を1年に例えれば地球が生まれたのは9月27日午後2時27分16秒と日暮れに近い時間でした。
 そして、10月10日午前1時5分27秒には原始生命が生まれています。
 恐竜の全盛時代は年末も押し詰まった12月29日の22時13分38秒から31日の19時まで、霊長類の出現は恐竜の全盛期の30日15時39分ごろ、私たちホモ・サピエンスの出現は除夜の鐘が鳴り始める23時54分です。

 実に宇宙の歴史を1年とすれば、私たちホモ・サピエンスはまだ6分の歴史しか持っていないことになります。
 しかも産業革命以降のエネルギーと資源を大量消費する時代時代はせいぜい300年でした。 宇宙の歴史を1年に例える尺度で計れば0.5秒の間に過去の天然資源の蓄積を消費しつくそうとしていることになります。

 文明を発展させてきた私たちホモ・サピエンスは、ほかの動物例えば恐竜や類人猿、あるいはネアンデルタール人に比べて人間は何が違うのでしょうか?

 ホモ・サピエンスは声帯の構造がネアンデルタール人などとは異なっていろいろな声を明瞭に発声できたということが判っています。
 豊かな話し言葉がさらに豊かな文字表現を生み意思疎通の手段を獲得できたことで、仲間同士の意思疎通に加えて世代間の意思疎通が可能になりました。
 徒弟制度や教育など経験や知識を引き継ぐことや、専門的な職業を持つことも私たち人類だけが行なっている方法です。

 人間がほかの生物と明らかに異なった生き方を始める契機となったのは約1万年前に農耕と牧畜を始めたことでした。
 農耕の進展と共にほとんどが森だったヨーロッパは畑を作るために森が伐採されてほとんどが農地になりました。

 次の大きな変化は産業革命です。化石燃料とと鉄を手に入れた人類は地球が30億年掛けて蓄えてきた資源の数種類を枯渇寸言のところまで使い果たそうとしています。

 私たちホモ・サピエンスは動物の中で最も優れた知性の力で文明を作ってきましたが、更に将来に向かって、より繁栄した暮らしを続けるために知恵を絞らなければならないときを迎えています。

 こう考えると、建築や住宅のあり方をもっと文化人類学のような切り口で考え直してみることが必要なのではないかと思い当たります。


特集24 無暖房住宅に思う(その2) 2007年 1月
 無暖房住宅についてもう少し書かせてください。

 建物の断熱性能を高めていくと無暖房住宅ができます。

 建物には内外温度差とQ値によって
 E=Q(Q値)×S(床面積)×(ti−to)(内外温度差)

の熱が建物の内外を貫流しています。

 E=内部発熱となるようにQ値を決めれば、つまり、

 Q=内部発熱/(S×(ti−to))とすれば無暖房住宅が出来上がるはずです。

。それではそのときのQ値はどの程度になるでしょうか?

 S:床面積      120m2
 ti:室内温度    20℃
 to:外気日平均温度  5℃
 内部発熱:      470W
とすると
 Q=470/(120×(20-5))=470/1800≒0.25

 普通に2時間に1階の換気をするだけでQ値は 0.4になるので0.25というQ値はかなり小さな数字です。熱交換換気をしたとしても換気によるQ値は0.10ほどですから、建物の屋根・外壁やサッシからの熱損失を0.15に抑えるのは不可能に近いことと言ってもいいでしょう。

 470Wという内部発熱は白熱灯などの電気器具を使って月額7500円ほどの電力料金に匹敵します。大型TVやパソコンを使っている家庭ではもう少し大きな内部発熱があるかもしれません。
 家庭により内部発熱の大きさには大きな違いがありますから実情にあった検討が必要です。

 次に冷房シーズンについて考えて見ます。

 「無暖房住宅」と言う言葉はあっても「無冷房住宅」という言葉はありません。
 外気温度が暖房温度を超える場合、先程の式でQ値を計算すると

 S:床面積      120m2
 ti:室内温度    28℃
 to:外気日平均温度 30℃
 内部発熱:      470W
とすると
 Q=470/(120×(28-30))=470/-240≒-2.0

 実際にはありえないマイナスのQ値の建物でないと「無冷房住宅」にならないことが判ります。

 前にQ値を変化させていくと冷房負荷・暖房負荷がどのように変化するかを検討したことがありますが、今回は外部からの貫流熱と内部発熱(470W)に分けて年間冷暖房負荷の変動をチェックしてみたところ次のような傾向を確認することができました。

 先ず暖房負荷の内容を確認します。室温を20℃に保つとき、Q値 0.5で約 2000KWHの年間暖房負荷がありますがその大半が内部発熱で賄われます。Q値 1.5では 7500KWHの年間暖房負荷があり、内部発熱以外に約5000KWHの暖房エネルギーを必要とします。
 Q値が 4.5の建物が20000KWHの暖房負荷を持つのに比べてQ値が 1.5になると約 1/4の暖房負荷になります。


 次に冷房負荷では驚くような結果が出ました。Q値が 0.5に近づくと外部から貫流する熱による冷房負荷はほとんどなくなり、内部発熱による冷房負荷負荷がほとんどを占めます。
 冷房負荷のトータルがQ値= 2.0あたりで最小になり、Q値が 1.5以下になると急に増加することにも注意が必要です。


 上の二つの空調負荷(暖房負荷と冷房負荷)を見ると「無暖房住宅を造るにはQ値を 1.0以下にしたほうがいい、しかし冷房を考えればQ値を 1.5以下にしたくない」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

 断熱だけで空調負荷を減らそうと考えればそれ以外の方法はないのです。
 しかし、もうひとつ別の考え方と結びつけると新しい道が開けてきます。


 サイトの中で何度も紹介していますから、もうご存知の方がいらっしゃるでしょう。そうです。自然エネルギーを使って暖房時にはエネルギーを外から取り入れ、冷房時にはエネルギーを外に持ち出せば断熱性能を極端に高くしなくても空調エネルギーを減らすことができます。

 自然エネルギーを使って内部発熱を暖房時には増やしたり、冷房時には減らしたりするようにすれば断熱性能だけに頼らなくても空調エネルギーを削減することができます。


 内部発熱に加えて地中熱や太陽熱(窓からのダイレクトゲインや太陽熱温水器による集熱)を考慮に入れるとQ値を1減らしたと同じ程度のエネルギー削減効果があります。
 自然エネルギーは天候や昼夜によって得られるエネルギーの大きさが変動するので熱容量の大きい室温を安定させる建物のほうが適していると考えて良いでしょう。


 地中熱には内部発熱による冷房負荷をほぼ帳消しにする程度の効果があります。

 夏の輻射熱が建物の表面温度(特に屋根)を上昇させると内部発熱と同様に室温を上げ冷房負荷を増加させるので冷房負荷を減らす工夫が必要です。

 下のグラフで地中熱を使うと内部発熱による冷房負荷をほぼゼロにしていることを確認してください。


 今回のグラフはRC外断熱工法の建物の熱容量を前提として作成しました。

 木造住宅やRC内断熱工法の建物でも多少の違いはありますがエネルギー量に大きな違いはありません。

 以上の検討結果から、太陽熱・地中熱など自然エネルギーを活用した空調システムを持つ住宅ではQ値を 1.5〜 2.0程度に計画すれば年間空調エネルギーを 3000KWH、(消費電力ベースで750KWH)に抑えられるのではないでしょうか?


 同時に注意したいもうひとつの問題があります。夏の太陽からの輻射熱の大半は建物の屋根面に受けます。屋根の温度が上昇すると熱は小屋裏に伝わります。輻射熱は内部発熱よりも膨大なエネルギーを持ち、冷房負荷に与える大きさも内部発熱よりもはるかに大きなものがあります。

 熱負荷計算では断熱材の外側の温度を外気温度と想定していますが換気の悪い小屋裏の温度(つまり天井の断熱材の外側の温度)は50℃台後半にまで上昇し、想定の数倍の熱負荷を室内に与えることになります。

 一般に天井の断熱材を壁より厚くする傾向があるのもこの熱負荷を少しでも減らそうとするものですが、熱くなった小屋裏の空気が速やかに換気されるような対策をするほうがより室内環境を安定させます。

 屋根断熱を行なう場合でも断熱材の外側の温まった空気が比重により上部から外に排出されることが冷房負荷の削減に有効です。

 なお、エネルギー量の試算はSMASHなど認定プログラムによるものではないので暫定値とご理解ください。


特集23 無暖房住宅に思う 2007年 1月
 昨年12月、講談社から「無暖房住宅のススメ」という本が発売されました。

 新聞広告でこの本を見つけ、ほんのタイトルも私がこのサイトで扱っている問題と極めて近いので気になっていました。

 Yahoo!掲示板でこの本の内容に関連した投稿があり、とりあえず内容も知らないままコメントをつけたのですが、そのままにしておくわけにもいかず、昨日ようやくこの本を手に入れました。

 この本は山梨県を本拠に本州各地に支店網を持つ株式会社サンワホームの社長によって書かれたものです。その意味ではやはり「宣伝本」ということになりますが、日ごろ同じようなことを考えている私には比較的抵抗を感じないで読むことのできるものでした。

 断熱性能や省エネには直接関係のない「木曽檜」を使った家が協調されていることなど多少の違和感を感じることはありますが、宣伝本として自社商品をアピールすることに多少の理解を示してもいいのではないかという気もします。

 ただし、このサンワホームが東北や長野県にとどまらず、関東一円から西では広島県にも営業拠点を持つ企業にしては無暖房住宅の性格は寒冷地に偏ったものであるという印象は否めませんでした。

 松本や仙台に比べて東京での年間空調費が高くなる、つまり暖房コストはほとんどゼロに近づくのに対して冷房コストが減らないために夏の暑さが激しい地方ほど年間空調コストが高くなるのです。

 この無暖房住宅の開発に当たって、松本の信州大学と共同研究したようなので、寒冷地向けの仕様になることは仕方がないのかもしれませんが、いかにも力任せに断熱したという印象が強く、これが本当に適切な断熱計画と空調設備計画のミックスなのか? という疑問が消えません。


 無暖房住宅の考え方を整理しておきましょう。建物の熱損失率を小さくしていくと暖房シーズンに建物内部から外に失われる空調エネルギーは次第に少なくなり、照明その他の生活排熱と建物から屋外への熱損失が釣りあうようになると無暖房住宅になります。
 ところが冷房シーズンには屋外から室内への熱の流れをどんなに小さくしても建物内部で熱が発生するので無冷房住宅にはならないのです。ラジエターから放熱できない車があればいずれ冷却水が沸騰してオーバーヒートするように無暖房だけに配慮した家は夏は大きな冷房負荷を抱えることになります。

 冷房を必要としないヨーロッパに近い気候特性を持つ地域ではヨーロッパ型無暖房住宅を建ててもなんら支障ありませんが、冷房が必要になる地域では熱損失率を小さくしすぎると内部発熱が建物内に篭るために冷房期間が長くなり、冷房費が却って増加することもあります。


 こういう傾向は先ず建物の断熱性能を決め、建物の断熱性能に合わせて必要な空調設備の能力を決める従来からの建築設計の進め方に下人があるような気がします。

 限られたエネルギーを有効に使わなければならないこれからの時代、建設地で得られる地中熱や太陽熱など自然エネルギーを把握し、「できる限り自然エネルギーで空調や給湯に必要なエネルギーを賄う」考え方が不可欠になります。

 また、10の自然エネルギーが得られる地域でしっかり断熱性能を高めて 5のエネルギーで空調ができるようにしても実際のエネルギー消費を削減できるわけではありません。わざわざお金を掛けて充分な断熱性能を持たせたのに断熱性能を高める意味がないかもしれません。


 例えば、床面積120m2の住宅で換気のために取り入れる外気を16℃の地下水と熱交換するだけで、暖房では年間800KWH(約15%)の、冷房では年間600KWH(約80%)の熱エネルギーを節約することができ、集熱面積10m2の太陽熱利用設備を取り付けると暖房・給湯をあわせて年間約3390KWHの太陽熱エネルギーを利用できます。

 ただし、この太陽熱というものが私たちが熱エネルギーを必要とする冬に少量しか手に入らず、あまり多くを必要としない夏に余分に手に入るなかなか厄介な存在です。
 集熱盤を大きくすれば手に入るエネルギー量は増えますが本当に熱エネルギーを必要とする冬に充分な量を手に入れようとすれば夏に多くの余剰なエネルギーを集めることになり、エネルギー利用効率(利用可能なエネルギー/集めたエネルギーの比率)は小さくなります。反対に集熱盤を小さくすればエネルギー効率は上昇しますが、実際に利用可能なエネルギーの絶対量は小さくなります。


 計算の仕方が違うので正式な比較にはなりませんが、東京での「無暖房住宅」(Q値= 0.7)の年間空調費(電気代)が25,832円なのに対し、Q値= 1.5の建物に地中熱によるパッシブな熱交換換気を導入したときの年間空調費が36,000円、(同じ計算式でQ値=0.7の建物の年間空調費を計算すると12,000円)であり、更に太陽熱を利用すると電気代が約20,00円減額になるので実質的な年間空調費が6,000円まで抑えられることになります。

 地下水(地中熱)を使った熱交換換気システムは除湿も可能なので断熱+通常の換気を行なうシステムに比べて充分快適な室内環境を実現することが可能になります。


 積雪のある北日本や、冬に日照が期待できない日本海沿岸ではこれと同様な考え方を取るのは難しいと思いますが、地域の気象条件に適した断熱+空調システムによって建設費とランニングコストの合計であるライフサイクルコストを最小にする家造りを極めたいと思います。



特集22 RC外断熱工法 2006年 11月

 日本にはまだ余り普及していないRC外断熱工法。
 もともと木の家に住んできた日本人が本格的にコンクリートの家に住むようになったのは昭和30年代半ばに日本住宅公団が大規模に供給を始めた賃貸住宅。

 ヨーロッパのコンクリート建築では石造・煉瓦造の伝統を引き継いだ二重壁構造が当たり前だったのに比べ、日本のコンクリート建築は「内断熱」という外部環境の影響を受けやすい造りになっていた。
 もっと正確に言えば昭和40年代前半は無断熱、防湿シートと繊維系断熱材を使って結露というより天井裏に水溜りができる時代を経て1970年代にウレタン吹付けの内断熱が定着した。

 多くの方が、コンクリートの建物は冬は寒く夏は寝られないほど暑い建物になるという印象をお持ちなのは内断熱工法の建物に対する印象で「内断熱工法=コンクリート造」のイメージが定着してしまっている。

 賃貸マンションのオーナーはRCのマンションは結露が多く、入居者の入れ替わりごとにカビの生えたクロスを張り替えなければならないと嘆き、RCの社宅に住む住人たちの中には結露とカビの中で子育てを強いられている方たちが多い。

 石造など熱容量の大きい建物の伝統を持つヨーロッパでは構造躯体を冷やさない建物の建て方が伝えられてきた。夏でもほとんど冷房を必要としないヨーロッパは冷え込む冬の間でも熱容量の大きい建物を暖かく保つわざを伝えてきた。そうでなければコンクリートよりも更に熱容量の大きい建物を冷やしてしまえば、静岡大学の「ねずみの実験」のように住む人まで凍死しかねない。

 ヨーロッパに比べて少しだけ温暖だった日本では少しだけ寒さを我慢すれば、コンクリートの建物でも何とか暮らせたということか?
 空調する習慣もなく炬燵や火鉢が採暖の手段だった日本では、家が外気に対する温度バリアにならないことに誰も疑問を持たなかったと言ってもいいのだろう。

 室内環境が外部からの影響を受けやすい内断熱工法が、日本の標準仕様として普及したと考えることができます。



 上の図は内断熱工法と外断熱工法で断熱した建物を空調しないとき、および朝6時から9時までと夕方5時から夜の11時まで空調した場合の室温の変化をグラフにしたものです。

 空調しない場合でも内断熱工法の室内では毎日大きく温度が変動していますが、空調した場合でも暖房を切ったときは暖房中に最大9.8℃ほどの温度低下と冷房中に3.4℃ほどの温度上昇があります。外断熱工法では暖房中の温度低下が0.5℃未満、冷房中の温度上昇が0.2℃未満ですから、RC内断熱工法の建物ではRC外断熱工法の建物に比べて暖房では約20倍、冷房でも約17倍の温度変化があることになります。

 上の図でも判るように、内断熱工法が外断熱工法に変わって行けば、RC住宅の住み心地は劇的に変化します。
 今、内断熱工法の建物では毎日平均気温を中心に室温の変化幅が外気温度の変化幅の60%ほど変化していますが、外断熱工法に代わると外気温度の変化幅の5%未満に収まることになります。

 自動車の走行に伴う振動や路面での安定性が車種ごとによって違うように建物の断熱仕様によって室内環境の安定性が違うことがだんだん理解されてきたのではないでしょうか。

 性能の高い車で高速道路を100Km/h以上出してもほとんど振動を感じることがありませんが車によっては 80Km/h以下で走っていても車を制御できなくなることがあります。また、制御できたとしても「乗り心地」には大きな違いがあります。

 これまで、外断熱工法は建築費が高くなると言われることが多かったのですが、車で言えば大衆車と超高級車の価格差が数倍もすることを思えばRC内断熱工法の建築費とRC外断熱工法の建築費の差は同一車種の一般仕様と上級仕様の差よりずっと小さな範囲に収まります。


 これまで、私がこのサイトやNPOのサイトなどを通じて多くの方とお話をしてきた中で、多くの方が外断熱工法の採用を諦めています。どうしてこんなに話が纏まらないのだろうかと考えたこともありますが、実は簡単なことです。
 ほとんどの方が普通のサラリーマンで預金残高や所得から計算できる借入額では僅かな差に思える断熱工法を外断熱工法に変えることによる工事費の差額が準備できないと言うことだったのです。

 同じことは自動車を購入するときにもあることだと思います。
 ベンツやBMWなどのヨーロッパからの輸入車が買いたいけれどランクを落とさざるを得ないということはよくあることだと思います。10人のうち9人以上がこれに当てはまるでしょう。私がこのサイトを通じてRC外断熱の住まいを望んでも手に入れられない方に一瞬の夢を見せてしまったのか? と思うと罪なことをしたような気もします。

 この裏返しを考えれば、「自己資金が充分ある」あるいは「充分な所得があって必要な融資が受けられる」のいずれかの条件が満たされていれば外断熱工法の家を造ることはもっとハードルの低いことになります。

 国産車も含めて高級乗用車の市場シェアくらいまでは早くRC外断熱建築物のシェアを伸ばせるはずですし、その実現のために努力を始めたいと思います。


 設計者や施工業者のRC外断熱工法に対する理解が充分でないことがRC外断熱工法の建物の品質にバラツキを生んでいる原因があるように思うことがあります。

 外断熱工法では建物の躯体を外側から保温するように断熱材で覆うのが大原則です。断熱を意味する英語のInsulationは日本語で「絶縁」と訳されることもある単語です。つまり熱が電気のように流れるとした場合に断熱の切れ目は電気回路の絶縁の切れ目のようにショートを起こすというくらいの慎重さが必要になります。(少しだけ大袈裟ですが、)

 しかし、外断熱工法の経験が不十分だと様々な場所で大きな断熱の切れ目をつくってしまいます。
 (Ex. バルコニーの取り付け部分、パラペットの天端などヒートブリッジになりやす
     いところです。)

 ヒートブリッジができそうだと感じると断熱補強をしなければならないと考えるのは内断熱工法の断熱性能を改善するときの発想で断熱性能が不足していると感じたときに内断熱の要領で断熱補強をプラスして安心するのです。

 確かに断熱補強をすればその部分のK値は増加しますから熱損失率(Q値)も僅かに改善します。しかし、断熱補強によって失うものを見落としています。

 内断熱工法によって断熱補強をすると断熱補強した部分では室内から躯体に熱が供給されにくくなり、躯体温度が低下します。
 ヒートブリッジによる局部的な熱損失と温度低下を防ぐために断熱補強すると熱損失を僅かに減らす代わりに大きな面で温度低下させるという悪循環を招くことになるのです。

 こういう断熱を建物全体に及ぼしたものがAAB工法など「両面断熱工法」とも呼ばれるもので、コンクリート温度が外気温度と室内温度の中間になるため建物の蓄熱能力が半減することになります。

 ヒートブリッジの悪影響を防ぐためにしたつもりの対策が却って問題点を大きくする。RC外断熱工法への正しい理解がないとより大きな問題を招くことが断熱補強だけでなく、逆転結露対策や建物全体の断熱のバランス、断熱性能と空調設備のバランスの取り方の違いによって大きな時建物の性能の違いがもたらされます。

 RC外断熱工法を正しく普及するにはRC外断熱工法の建物の断熱性能と空調設備の能力に対する正しい知識に基づく設計管理のもとに施工を進める必要があります。


 RC外断熱の建物は優れた省エネ性・室内環境の安定性を持つとともに、熱伸縮の原因になる躯体温度変化が少ない構造体は既存のRC内断熱に比べて数倍の耐久性をもっています。

 優良な住宅ストックを形成するために一部の高級住宅だけでなく広汎な住宅需要に少しでも多く応えられるよう、汎用型ローコスト住宅のプロトタイプの提案を急ぎたいと思います。



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